諦め猫熊はかく語りき 作:幽
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「麦わらの一味がお前を追いかけてきているそうだ。」
静かな声でそう言った男の顔をロビンはじっと見つめた。
スパンダムという人間のことを、本音を言うとニコ・ロビンははかりかねていた。というのも、スパンダムはフランキーに対しては関心を持っていたが、ロビンに関しては特別な接触を持とうとしなかった。
麦わら海賊団についての交渉さえもロブ・ルッチを通してのことだった。だからこそ、フランキーと何かを話した後、一人で部屋に入れと言われたときは驚いた。
向かい合ったそれはどこか疲労を感じる表情で気だるそうにロビンを見た。
冒頭の言葉にロビンは体を震わせた。
「・・・だから、私がここに来た。そうすれば、彼らを安全に出港させるという約束よ。」
それにスパンダムは首を振った。
「麦わら海賊団がこちらまで追ってこないように、足止めはした。だがな、本当にここまでやってくるというのなら俺には何もできない。」
それにロビンは眼を見開いた。
「約束が違うじゃない!」
ロビンが執務机に寄りかかるスパンダムに詰め寄った。
「彼らの安全だけは保証すると、そう約束したじゃない!」
それにスパンダムは首を振った。
「約束したとして、俺たちにも最低限、守るべき線引きがある。エニエスロビーに殴り込んできた海賊をみすみす逃せると思うのか?」
それにロビンは押し黙った。理屈はわかる。彼の立場からすれば、それは赦されることではないのだと。
けれど、嫌だとロビンは首を振った。
彼らはロビンに優しかった。死んで欲しくなかった。脳裏には、今まで散々に浴びせられた、己を否定する言葉、生きていてはいけないという思い。
うなだれて、今にも崩れ落ちそうになる。けれど、その体を、その腕を掴んだ人間がいた。
そこにいたのは、静かな眼をしたスパンダムだった。
それにロビンは初めてスパンダムの顔を、その瞳を、間近で見た。
それは黄昏の色をしていた。
照りつけるような昼のような輝きではなく、夜のように暗くはない。柔らかな色をしたそれはじっとロビンを見ていた。
そこには何の感情もない。野心も、憎しみも、蔑みもない。
平淡で熱のない眼で、それはロビンを見ていた。それはやっぱり静かな眼でこう言った。
「彼らは来る。お前を助けに。それは変えられない。だから、お前もちゃんと覚悟を決めなさい。」
「覚悟って、なんの覚悟を・・・」
「散々に、置いて来たのだろう。生きろと言われて、託されて、ここまで来たんだろう。」
だから、ニコ・ロビン。
お前も覚悟を決めなさい。
ロビンはそれが何なのかわからなかった。
スパンダムはフランキーが設計図を燃やしたときでさえも、心の底から嬉しそうに笑ったのだ。
まるで、全て自分の思うとおりに事が進んでいるとでも言うように。
スパンダムは全て、悪い方向に進んでいるはずなのに。なのに、それはまるで安堵するかのように笑っていた。
CP9、政府の諜報機関。その機関の長として、スパンダムは多くのことを欠いていた。
野心だとか、冷徹さだとか、そういったものが悉く無いようにしか感じなかった。
ニコ・ロビンにはわからなかった。それの考えていることが。
ロビンを護衛船にまで送る折、CP9の全てが少しだけ期待するようにスパンダムを見ていた。まるで、自分を選べと願うような、子犬のように従順な眼だ。
その中で、一際、ロブ・ルッチは自分が選ばれて当たり前であるというような眼をしていた。
スパンダムはその中で、少しだけ考えた後、ルッチを選んだ。彼はそれに心底当然というような顔をして、スパンダムにすり寄った。それが不服だったのか、少女がだだを捏ねたけれど、カクの側にいろと言われて渋々頷いた。
ロビンは状況が状況であるが、心底不可思議な気持ちだった。
スパンダムという人間をなぜ、そこまで彼らは慕うのだろうか。CP9からはロビンにとってなじみ深い匂いがした。
血の臭いだ、刃の鋭さだ、暴力のあり方だ、冷え切った、夜の匂いがした。
世界の闇、あの日、知りたいと願った人々を、それだけで屠った残酷な世界からの暴力。
彼らはそれに似ていた。
世界のため、その言葉だけで奪うことを赦されているという事実。彼らはそうだった。
いっそのこと、兵器が人の姿をしたように彼らは冷たかった。
なのに、彼らはスパンダムを前にするとまるで人間のような顔をする。
きっと、麦わらの一味で自分がそうだったように。
海底通路を歩いているとき、ルッチはひどく饒舌だった。まるでロビンがいないように振る舞っていた。
その話の内容も本当にたわいもないことだった。
食事の約束だとか、任務を上手くやりとげただとか。
その話の内容は、ひどくルッチを俗物にさせていた。逆にスパンダムはひどく静かだった。ルッチの言葉を淡々と聞いていた。それは別に疎んでいるわけでもなく、さりとてはやし立てるわけでもない。
スパンダムはどこか、ロビンに対して気を遣っていた。関心をフランキーに向けているのに、何故か彼はロビンに対して敬意のようなものを抱いていた。
自分たちをつけているという子供の存在も、放っておけとそれは言った。
彼はただ、ルッチからも、ロビンからも背を向けた。背を向けて、その言葉だけを聞いていた。
自分を助けに来た、モンキー・D・ルフィに関してもそうだ。
ルッチは機嫌が悪そうだった。せっかく再会した親と引き離される子供のような顔で。
「すぐでも戻りますので。」
「ああ、行ってきなさい。」
スパンダムはルッチの頭を撫でて、彼のことを見送った。スパンダムはその後、ロビンを連れて道を急いだ。
ルッチのいなくなった道は、静まりかえっていた。話すこともないのだから当たり前だ。
けれど、ロビンの腕を持ち歩いていたスパンダムは口を開いた。
「・・・・お前は、政府を憎んでいるか?」
それにロビンは憎むように吐き捨てた。
「なぜ、そんなことを?」
「・・・・いや、そうだな。そう、だな。」
スパンダムはロビンのことを見なかった、頑なに目をそらしていた。そうして、ようやくスパンダムがロビンを見たのは、ルッチと別れてすぐの時。
どこかの塔が崩れたのか、けたたましい音が海底通路にも聞こえた。それと同時にスパンダムの腰に下げた小さな鞄からけたたましく電伝虫が鳴った。
それにスパンダムは目を見開いた。そうして、鞄に入れていたらしいもう一つの電伝虫を取り出した。そうして、鞄からは何故か、小さな白いネズミが顔を出していた。
「至急、応答せよ!通信室!!」
『は、はい!長官、どうされましたか?』
「いますぐこの通話を島中に流せ!」
『了解しました!』
電伝虫から慌ただしい音がした。それにロビンが固まっていると、スパンダムは電伝虫へ声を張り上げた。
「全兵に告ぐ!バスターコールが起動した!全兵、任務を放棄し、直ちに島より脱出せよ!スパンダムが告ぐ!」
けたたましいその放送を終え、スパンダムはロビンを見た。彼女はスパンダムに叫んだ。
「どういうこと!?なぜ、バスターコールが発令されたと?」
「俺の持ってる電伝虫はゴールデン電伝虫の発信をキャッチしてるんだ。」
「なら、誰がいったい?」
「・・・・ゴールデン電伝虫を使う気は無かった。俺の自室の、それこそ隠し金庫の中だ。おそらく、麦わらの一味との戦闘で、俺の部屋があった塔が崩れたんだろう。」
それにロビンの顔が曇った。だというのならば、それは、自分たちの。
「俺の責任だ。」
まるでロビンの思考を読んだかのようにスパンダムはそう言った。じっと持った電伝虫に目を向けた。
「・・・俺の管理責任だ。元より、青雉殿より電伝虫を預かる折、責は俺が取ることになっている。それだけだ、わかったな?」
まるで自分を庇うような言葉だった。責任から来るような言葉ではなかった。
スパンダムは鞄の中のネズミに気を遣いながら電伝虫をしまった。そうして、スパンダムはロビンの腰をつかみ、彼女を背負い上げた。
俵担ぎのまま、スパンダムは息を吐き、階段を上る。それにロビンは暴れた。ただでさえ、逃げるチャンスがなくなる。
「おい、暴れるな。さすがにお前を取り押さえるほどの力はねえんだ。」
そう言ってスパンダムは一歩一歩踏みしめながら階段を昇る。
ロビンはそれに、叫んだ。せめてもの時間稼ぎのために、そうして、ずっと気になっていたことを口にした。
「スパンダム!あなた、何を考えているの!?まるで、まるで、あなたは古代兵器を、いいえ、私を連れて行きたくないみたいに!」
それにスパンダムは歩みがとまった。ロビンはその言葉がそれにとって何かしら思うことがあることであったことに驚いた。
スパンダムは少しだけ黙った後、口を開いた。
「・・・昔、話をしてやるよ。」
スパンダムはそう言って、改めてロビンを背負いなおした。
「昔、学者になりたかった。」
「え?」
「でも、親父が反対してな。あの人は、俺を政府の人間にしたかったんだ。俺はそれに従った。親父に逆らうなんてできなかった。ただ、出世する気なんて欠片だって無かった。」
とつとつと語るその口調は世間話のように軽々しいのに。なんだが、スパンダムという人間の生々しい内をのぞき込んでいるかのように気まずかった。
「俺は世界なんてどうだってよかった。権力を振りかざして好き勝手にするぐらいなら、世界の隅で静かに生きていたかった。さすがの親父も、手柄を立てる気のねえ奴を出世させるなんてできねえからな。」
「なら、あなたはどうして長官なんかに。」
「この世界の、贄に会った。」
静かな声だった。平淡で、彼が諜報部員として感情を押し殺すことに慣れているのだろう、そんな静かな隠した声。その後ろにある、まるで、煮えたぎるような怒りを、ロビンは理解した。
「約束を、した。くだらねえ、狂った約束だ。でもな、それにその贄は、笑いやがった。約束だ、なんて。ひでえ話じゃねえか。」
なら、その約束のために、足掻かなくちゃいけねえだろうが。
ロビンは泣いているんじゃないかと思った。スパンダムは泣きながら、彼の中のどうしようもなさに泣いている気がした。
スパンダムは息を吐き、ロビンを下ろした。階段に座らせる仕草はやはり、丁寧だった。
さすがにロビンを背負っていたせいか、青白い肌には微かに赤みが差していた。
「・・・ニコ・ロビン、この世で最も不要な感情とはなんだと思う?」
逃げる気にはなれなかった、ロビンはなぜか素直にそれの問いかけに答えた。
「・・・偏見。」
それがロビンの答えだった。それにスパンダムは嘲笑するように笑った。ロビンはスパンダムの初めて浮かべたそれに物珍しい気分になった。
「いいや、違う。この世で最も不要な感情は、愛だ。」
滑稽な気がした。
世界の犬である彼と、悪魔と呼ばれた自分が交わすにはあまりにも滑稽な気がした。
「・・・お前はあの日、悪魔として追われる原因であるポーネグリフ、それを覚えたのは何故だ?」
ロビンは押し黙った。
「人は寂しい生き物だ。他人の中に己を受け入れることを望んでしまう。あの日、お前は人の輪の中に入りたかったんだろう。家族、友人、同士、誰もがお前を本当の意味で特別な輪の中に入れてくれなかったから。」
「あなたは何を、しっているの・・・・」
まるで過去をのぞき込まれたかのような感覚でロビンはスパンダムを見返した。それにスパンダムは軽く首を振った。
「・・・・俺の父親は、スパンダイン。あの日、オハラにバスターコールをかけた男だ。そうして、お前に懸賞金をかけた張本人。」
ロビンはそれにスパンダムをにらみ付けた。
「あなたは!あなたたちは・・・・」
「あの日、オハラを滅ぼした男の子が、オハラの最後の人間を殺すのだ。」
「私がまだ生きてる!」
「その自負があるのなら、精々足掻きなさい。」
思っていない言葉だった。考えていなかった返答だった。なのに、それはじっと黄昏色の瞳でロビンを見ていた。
「ニコ・ロビン、賭けをしよう。もしも、ためらいの橋にお前の仲間が来たのなら、そうだな。お前の復讐を遂げさせてやろう。」
そんなことはありえないのだろうけど。
ロビンはそれに場違いのように、ああ、優しい笑みだとその顔を見つめていた。
ためらいの橋を渡ったとき、俵担ぎをされていたせいでろくな抵抗が出来なかった。ただ、暴れてもスパンダムは無言で橋を渡る。
全てが変わったのは、スパンダムの護衛のために近づいてきた海兵達が何者かに打ち抜かれたとき。
炎を纏った彼らの姿にロビンはウソップの仕業だとすぐに気づいた。けれど、スパンダムに関してはロビンを担いでいるせいで撃たれなかった。
「・・・・そうか、結局、変わらんか。」
囁くようなスパンダムの声の後に、フランキーが登場した。スパンダムは何故か、嬉しそうに微笑んでいた。そうして、何故かロビンを下ろした。
ロビンには、わからない。その男が何を考えているのか。
何を、いったい、考えているのだろうか。
世界の贄、それはなんのことだ?
謝罪の言葉を口にしたフランキーにため息を吐いたスパンダムは、座り込んだロビンの背後に屈み込んだ。
こんと、何かが地面に落ちる音の後、しゅーとガス状の何かが吹き出るような音がした。
「な、なんだ!?」
そのガスは風の強い橋の上でも変わることなくスパンダムとロビン、そうしてフランキーの周りに止まった。
ロビンは何が起こっているのかと周りを見回していたとき、かちゃんと、自分の手錠が外れる音がした。そうして、拘束が解かれた瞬間も。
「え?」
ロビンが驚いた声を上げた瞬間、後ろからフランキーに向けて突き飛ばされた。スパンダムは海楼石で出来た手錠と、そうしてカギを持って立っていた。
「て、てめえ!カギ、持ってやがったのか。」
「当たり前だろ。これが一番確実だからな。このガス、すごいだろう?毒性はねえ。ただ、空気よりも重いおかげで長時間その場に止まる。目くらまし、狙撃対策にはちょうどいい。」
スパンダムはそう言って、広がった煙の中を進んでいく。フランキーとロビンは何故か、その後ろをついて行った。
スパンダムの真意を知りたかったのだ。
彼は橋の手すりまでつくと、それに座った。そうして、二人を見た。
「・・・おめでとう、ニコ・ロビン、カティ・フラム。賭けはお前達の勝ちだな。」
「ふざけないで!」
ロビンは咄嗟に叫んだ。賭けだと?いいや、何故、自らロビンの手錠を外した。
「世界のために私を捕らえたんでしょう?なら、最初からこんなことをしなければいい!どうして、そんなにあっさりしているの!?」
それにスパンダムは笑みを深くした。
「・・・・命令だった。それで済む。ただ、そうだな。言っただろう、贄に会ったと。俺はな、ずっと、この世界を憎んでいたし、間違っていると思っていた。」
「間違ってる、だと、お前は、確かに!」
「ああ、俺はその世界に恵まれている側だ。でもな、あれは、だめだった。なあ、教えてくれ。」
たった数人によって守られる程度の世界なら、さっさと壊れてしまったほうが良いと思わないか?
澄みきった瞳が、ロビンを殺す、世界の闇に頭を垂れたそれはあまりにも淡々とそう言ってのけた。
「その数人は何故、不幸になるんだ?ああ、そうだ、仕方が無いのかもしれない。けどな、納得したくなかった。俺は、あの日、あの子にあってしまったから。だから、決めていた。お前達が勝ったとき、ようやく、俺は言える。あの子達のあり方は、間違っていたんだと。」
「あなたは、その証明のためにこんなことをしたの?」
茫然とそう言った。それにスパンダムは何も言わなかった。ただ、仮面のような笑みをロビンに向けた。
ロビンはわかってしまっていた。
世界の贄、それはきっと。
「CP9の面々のあり方を、自分で否定するためにあなたは。」
そうして、ロビンの口から無意識のように言葉が出た。
「あなたは、彼らを愛しているから。」
それにスパンダムは首を振った。まるで、どうしようもないのだと、そう言うように。
「愛!愛!ああ、そうだ。俺が、一方的に哀れむように、願うように、愛しているだけならよかったのに!なのに、俺は間違えた!俺は、あの子達に、愛を獲得させてしまった。」
自らの顔を覆い、叫ぶようにそう言った。
「ただの獣であるなら、ただの兵器であるのなら、ただの、ただの、壊れたままであるのなら、あの子達が救われていたのに。それこそが人生だと納得できたのに!俺は、あの子達から、その役目を押しつける側として、人間性を奪わなくてはいけなかったのに!愛などと、それを与えてしまった。」
「なんだよ、それを、あんたは、間違いだって言うのかよ。」
フランキーは茫然とそう言った。それにロビンはスパンダムを見た。皮肉な話だと、ロビンは思った。
自分をあの日苦しめた原因である男の子は、苦しんでいる。政府の非道の果ての、世界の贄のために心を痛めている。
顔を上げたスパンダムはロビンを見た。そうして、苦笑した。ロビンは、それに、思ってしまった。
自分は、この男を、憎みきれないと。だって、そうだろう。
「あなたは、私に生きろと、どうして願うの?」
それにスパンダムは口を開いた。
「この世界が、俺は嫌いだから。」
それはルフィのように目映いものではなかった、それはいつかに見た自分を売ろうとした人間達のように冷たくはなかった。
穏やかで、けれど、ロビンを愛してはいない、そうだ、黄昏のような笑みだった。
ああ、と思う。スパンダムは、ロビンを丁寧に扱った。麦わらの一味以外で、言外にではあるけれどずっと生きろとロビンに言い続けていたから。
だから、憎みきれない。
「・・・・カティ・フラム、お前がここに来たと言うことは、変わる事なんて一つも無かったんだ。お前は設計図を燃やすことでトムが望んだ事を叶えた。ニコ・ロビン、精々、生きてくれ。生きて、こんな、誰かの苦しみと贄の果てにしか存在できない世界から逃げてくれ。」
スパンダムはそっと、橋の手すりに深く腰掛けた。そうして、手錠をぶらんを揺らして微笑んだ。
「・・・あの日、オハラに行った蛮行を俺は否定も肯定も出来ない。幼いお前はそうやって上手く生きられずに、誰かに利用されて古代兵器が復活する確率は絶対的にあった。でも、もう、大丈夫だろう。賭けの代償だ。」
スパンダムが手すりの上に立った。その意味を、ロビンは理解して、悪魔の実の能力を使おうとした。けれど、それは遅い。スパンダムはロビンに海楼石の手錠を投げつけたのだ。それによって、彼女は尻餅をついた。フランキーがロビンを受け止めた。
「これで、オハラの件がチャラになるとは言わんさ。ただ、親父も奪われねえと不公平だ。」
それにフランキーがスパンダムに走った。けれど、遅い。スパンダムの体はそのまま宙に投げ出される。
「ああ、よかった!これで、あの子達も、ようやく自由だ!」
「スパンダム!」
手を伸ばす、けれど、それは空を切った。スパンダムの姿はそのまま、海の中に消えていった。
そうして、まもなく、一枚のビブルカードが燃え尽きた。