諦め猫熊はかく語りき 作:幽
贈り物の話に関しては息子IFの、CP0IFになります。
感想いただけましたら嬉しいです。
理想の人
「主の好みの人ってどんな人だと思う?」
「・・・唐突だな。」
「なんじゃ、メラン、長官の好みなんぞ知りたいんか?」
「あの人、浮いた噂なんて聞いたことあったかしら?」
「少なくとも、俺は知らんな。」
「つーか、長官の立場からして何かしら縁談話ぐれえ出そうだがな。」
「あっ、あの人もお、立場のあーる、お方だからなあ。」
三者三様にスパンダムの好み、という話題に食いついた。それにルッチがはんと息を吐いた。
それにジャブラがしらけた顔をした。
「おう、見ろ。メラン、十数年見向きもされてねえ男の空しいどや顔だ。」
「メラン、振られてばっかの化け犬のことなんか無視しろよ。」
「振られもされねえ化け猫よりも数十倍もましだよな、メラン?」
「お前ら、熟年夫婦みたいな喧嘩みたいなこと止めろ、メランが困ってるぞ。」
「「誰が夫婦だ!」」
ブルーノの呆れた言葉にジャブラとルッチが吠えた。それを横目に、カクがメランを抱き上げた。
「にしても、突然どうしたんじゃ、メラン?」
「主と結婚したいから、理想に近づく!」
「ほう、結婚かあ。」
カクはこれが俗に言う、お父さんと結婚するという物なのだろうかと微笑ましく思った。
「結婚したらね、ホウテキコウソクが生まれるからゆーりなんだよ。」
「うーん、ものすごい現実的な答えじゃの!」
よいがのお。
そんなメランとカクの会話を横目にそう言えばとカリファが口を開いた。
「・・・そう言えば、長官、立場が立場なのに縁談が出たって話も聞かないわね。」
「そういえば、俺も聞かないなあ。」
「フクロウの耳にも入っていないのなら、本格的にないのか?」
「高貴なあ、身分にゃしがらみは当然だなあ。」
「まあ、あの人が家庭を持つってのも想像できねえけどな。」
ルッチと喧嘩をしていたジャブラが顔を出した。ルッチはメランとなにやら大人げなく喧嘩をしていた。
「つーか、その場合、長官の性格からして仕事に割いてた時間を家庭に向けるんじゃねえか。」
「まあ、そうね。」
「この職場でそれが無理だからだろ。何より、そんなことになったらなあ。」
ジャブラはちらりと抱き上げたメランとしゃーしゃーうなり声を立てているルッチを見た。
「・・・越権行為はしねえだろうけどなあ。」
「子どもでも生まれたら荒れるでしょうねえ。」
「そういうカリファはなんともないのか?」
「あら、それ、どういう意味?」
「チャパパパパパパ、さあなあ。」
「だが、しかーし!御子が生まれるのはまためでてえことだ。」
ジャブラ達がメランとルッチの喧嘩、それに巻き込まれるカクの声を聞きながら騒いでいた。
「おーい、ジャブラ!」
そんなとき、CP9のいた部屋の扉が開かれてスパンダムが入ってきた。スパンダムは用のあったジャブラを見つけて叫んだ。
「てめえ、書類の期限、明日までだぞ!?」
「あ、やべ。用意は出来てるから後で持ってきますよ!」
「たく、お前、早めの提出を心がけろよ?」
呆れた風にそう言っていたスパンダムの元にメランが走り寄った。その後をルッチも追う。
他のメンバーは嫌な予感半分と、面白がっての行動でそれに近づいた。
「あーるじ!」
「ん?なんだよ、メラン。ここにいたのか?」
「ねえねえ、主、結婚するとしたらどんな人が良い?」
直接的にぶち込まれたそれにCP9のメンバーの中でゴングが鳴った。
「結婚?どうしたんだ、突然・・・・」
「侍女がね、結婚の話をしてたから。」
「ああ、そうか。結婚なあ。」
ごくりとCP9の人間は固唾を飲み込んだ。スパンダムの言葉によっては地獄か、それとも天国か決まるのだ。何よりも、聞いているカクもそわそわしてしまう。
「主はファザコンだから年上が好きだな。」
「うん、地獄が確定じゃな。」
無意識のうちに呟いたカクを尻目にメランが叫んだ。
「やだあああああああああああ!メランと結婚してよおおおお!!」
「おま、さすがに二十以上も年が離れてるのはアウトだろう・・・」
「やだあ!」
「お前さんも、もう少し年が近いのがいいだろうが。」
スパンダムにルッチがゆらりと近づいた。それにCP9は胸をドキドキさせる。
どうなる、これは?
「あんた、年上って青雉のことじゃないでしょうね?」
珍しく荒い口調にスパンダムははあ?とメランを抱き上げながら言った。
「なんであの人が出てくるんだ?」
「・・・年下はどうですか?二十も離れてなきゃいいんでしょう?」
「そうだなあ。」
ごくりとカクは息をのんだ。さあ、これはどうなるのか?
「ジャブラぐらいなら許容範囲だな。」
「すごいの、さらなる地獄のような状況の上塗りしとる。」
ルッチ以外のメンバーはあーあとその後を見守る。
「あんなののどこがいいんですか?」
「おいごらあ!あんなのってどういう意味だ!?」
「能力的な意味なら俺でもいいでしょう!?」
「俺がてめえに劣るってのか!?」
「いや、俺が言いたいの、年齢であって能力的なことは言ってねえんだけど。つーか、CP9 で結婚するならって話なのか、これ?」
「そうだな、長官は誰がいい?」
割り込んできたフクロウのそれに長官は少し考えたあと、口を開いた。
「ブルーノ。」
思わぬそれに全員がざわついた。
あえてのそこ?
その言葉にブルーノは少しだけ微笑んだ。
「そりゃあ、光栄ですね。」
「・・・長官、何故、ブルーノなんですか?」
紅一点のカリファは不機嫌そうにそう言えば、スパンダムは決まり悪そうに頭をかいた。その後ろですごいじめええとした視線をするルッチの姿が見える。
「夫婦生活をする上で一番価値観合いそう。」
それにちょっと納得した。
いや、まあ、確かに。共に生活するなら能力の高さよりもそっちを選ぶのかと。
「ジャブラは、まあ、けっこうどっしりしてるから頼りにはなるんだよなあ。ルッチは、なんだろ。変なところで余裕がない感じがするんだけど。なんだろうな。」
カクはそれは恐る恐るルッチを見た。棒立ちのルッチがいた。
「余裕・・・・」
「いや、まあ、あれだな。」
あまりの発言にジャブラもちょっとルッチが哀れになった。そんなルッチを不思議そうな眼でスパンダムは見ていた。
贈り物
その日、スパンダムは仕事に一段落をしてぐったりと執務室の椅子にもたれかかった。
色々あって最終的に落ち着いたCP0にて彼女はせっせと文官として働いていた。元より、不思議なほどに口が回る部分のあるスパンダムは天竜人と相性は悪くない。
何よりも、容姿がよいわけでもないため、目をつけられることもない。
(・・・次の、待て。あれの締め切り、いつだっけ?)
天竜人直属の名前は伊達ではなく、下手な国の王室のように上質なソファのおかげか、スパンダムは眠たい思考の中でそんなことを考えていた。
その時、自分に近づいてくる存在に気づいた。
「母さん、寝るならもっとちゃんとしたとこで寝なよ。」
それに思わず目を開くと、そこにいるのは父親の遺伝子が爆発してしまった息子がいた。
「ルーシーか。」
「そんなとこで寝たら腰悪くするよ。」
「年寄り扱いはやめて。」
むくりと起き上がったスパンダムは目の前の少年をまじまじと見た。ほぼ事故というか、犯罪ではないかというもろもろを経て生まれた息子は一目で父親が誰かを察せられてしまう。
(遺伝子が爆発してるなあ。)
自分の遺伝子なんて目以外はすべて塗り替えられている。が、幸いなのか中身は自分によく似ているらしい。
(確かに、顔立ちはルッチに似てるのに、仕草やら表情は俺似だな。)
「どうしたの?俺の顔に何かついてる?」
「いいや、ただ。お前、本当に年々父親に似てくるな。」
「それ、前にジャブラさんにも言われたんだけど。まあ、いいや。母さん、この前の報告書。」
「ああ、早いな。」
スパンダムはその書類に軽く目を通した。書式だとか、書き方など問題はない。
(こいつ、まだ子どもなのになあ。いや、頭脳面でも戦闘面でも問題ないってお墨付き貰っちまったし。いいや、そりゃあいつ並の素質と、親父が調子になってつけた教師どもの課題もさらっとこなしてたんだからなあ。)
ルーシーを己の手元から離すのを嫌がったルッチの強硬であったが、息子は今では軽々とこなしてしまっている。
ルッチも、彼自身が息子と同年代でCPのエージェントをしているのだから、なにがおかしいのか理解していないのだが。
「おお、合格だ。」
「わかった。あ、あと、母さん、大人の男ってどういうものが好きなの?」
「は?なんだよ、急に。」
「何って、俺、今度初めて給料出るんだけどさ。」
「あ、そうか。初任給か。」
齢十数才で初任給。
世知辛いと言えばいいのか、立派と言えばいいのか。
いいや、その程度、この世界では当たり前で。自分自身が変えられなかっただけだ。
何かを言う資格はない。
スパンダムはそれにああと納得した。自分も初めての給料で父親にネクタイを贈った覚えがある。そのネクタイはボロボロになって父親の手元にある。
そこでふと、開け放たれていた扉の影、誰かが立っていた。肩しか見えないがそこにはちょこんとハットリがとまっている。
何をしてるんだ、父親よ。
そんなことを思いながらスパンダムはうわあとという顔をした。
ルッチとルーシーの仲は、なんとも言えない。長い間離れて過ごしたせいで関わり方が明確になっていないのか、なんとも言えない距離を取っている。
ただ、ルッチは構いたいようで話しかけてはいるようだが、元々ドライなルーシーからはけんもほろろだ。ただ、何故かスパンダムも時折わからなくなる仏頂面の微妙な感情の機微が息子にはわかるようで定期的に話しかけに入っているようだった。
なんとなく、そわそわしているように見えた。
「・・・確か、酒が良いんじゃないのか?」
「酒?ジャブラさんって、酒が好きなの?肉じゃなくて?」
「「ジャブラ!?」」
息子の口から飛び出した名前にルッチが扉の影から飛び出してきた。不機嫌そうにルーシーに近寄る。
「おい、何故そこでジャブラの名前が出てくるんだ?」
「あれ、父さんいたの?」
「質問に答えろ。」
「いや、前から稽古つけて貰ってたりしてたし。せっかくだからお礼をしようと思って。」
それにルッチはうっと口を噤んだ。
(・・・まあ、こいつも多忙だしなあ。元々の知名度のせいで仕事をふられる率もたけえし。他のCP9の奴らの方が関わったり、構う率たけえんだよな。)
「・・・・だからといって、なぜ、あいつに。」
言葉すぼみになっていくルッチにスパンダムはおもしれえなあと見物する。その様は完全に兄弟げんかだ。
スパンダムとしてもルッチへの心証なんて息子に近く、甘ったれな上の子に接している気分になる。
それを口に出したとき、非常にひどいめにあったので二度と言わないが。
「よくしてくれてる人にお礼をするのは当然じゃん。そんなこと言うなら、父さんも俺に付き合ってよ。確か、俺に振られてる任務、あったよね?」
「ああ、護衛だろ?護衛で、リゾート地に送っていくだけの奴。」
「じゃあ、父さんもそれに入れてよ。お願いね!」
ルーシーはそれだけ言うとそそくさとその場を後にした。その頭の上に、ハットリが着地する。
「・・・生意気な。」
「ガキの頃のお前に愛想があったらあんな感じだな。」
しみじみとしたスパンダムの言葉にルッチは据わった目をした。それにスパンダムはそっと口を閉じた。子ども扱いのような台詞を言うと、それは不機嫌になる。
今の外に出られている現状も、世話をした子どもたちの言うことを聞くという条件下でのことだ。下手な逆らい早めた方が良いだろう。
ルッチはむすっとしながら、スパンダムの肩に甘えるようにすり寄った。
それにスパンダムはため息を吐きながらその背を撫でた。
「・・・・のう、ルッチのやつ、やたらと機嫌がいいようじゃがなんかあったのかのう?」
「あら、知らないの?」
その場にいたカリファが楽しそうに笑った。その隣に座っていたジャブラの機嫌が少しだけ悪そうになる。
「なんでジャブラが機嫌を悪くするんじゃ?」
「ルーシーの奴、世話になってるからって俺に贈り物をしてきたんだけどよ。その買い物にルッチを付き合わせて、初任給で食事をして、あいつが買える限りで一番いい酒を貰ったんだとよ。ちびちび飲んで嬉しそうにしやがってよ。」
それにカクは無意識のように言葉を発した。
「正直、きもいのお。」
「それ、あいつに言ってやれよ。」
げんなりした様子のジャブラに、カリファが楽しそうに笑った。
「当て馬にされてすねてるのよ。」
「当て馬じゃねえよ!今度は俺と食事に行きたいって誘ってきたんだからな。」
「ルーシーのやつ、そういう、なんじゃろうなあ。気の使い方というか、機嫌の取り方を心得とるよな。」
一人一人を特別扱いするのが上手いのだ。
それにジャブラはあーあとため息を吐いた。
(長官とルーシーのやつ、そういう所が似てるんだよな。優しいのに、妙なところで一歩下がる。)
そのために変なものがつれやすいのだ。
が、ジャブラはその変なのに自分も含まれているのかと理解してため息を吐いた。
似合いの二人
「・・・・どうしよう。」
執務室にて顔を覆って思い悩むように机に突っ伏していた。そこにひょっこりとジャブラとカクが入ってくる。
「ちょーかん、提出の書類持ってきたぞー」
「おー・・・置いといてくれ。」
スパンダムはがっくりと机の上を指さした。二人はそれに素直に書類を机の上に置いた。そうして、カクはジャブラに囁いた。
「なあ、どうしたんじゃ?」
「あー、お前はしらねえのか?」
ジャブラの言葉にカクは首を傾げた。カクは少し前まで長期の任務でエニエスロビーを開けていたのだ。
「・・・実はな。お前以外のメンバーで。クマドリはいなかったか。あるパーティーへの潜入任務が出たんだが。」
「あー、あの、革命軍の件でのやつか?」
「俺と、ブルーノがボーイで、フクロウがバックアップで。ルッチとカリファがパーティーに出たんだが。」
カクはそれに納得した。見目の良い二人はパーティーの場などへの潜入捜査にはよく駆り出されている。
「タキシードのルッチとドレスのカリファを見た長官が、似合いの二人だなってな。」
「なるほど・・・・」
カクは全体像が見えた気がした。思えば、自分が戻ってからルッチがスパンダムの近くにいるのを見ていない。
「すねとんのか、カリファを含めて。」
「お似合いって言葉にプラスで見合いの伺いまでしたからな。」
「・・・・やめろよ、ジャブラ。俺もさすがにセクハラの自覚はあるんだよ。」
ぼやくような声に二人は机の方を見た。そこには、へこんだ様子のスパンダムがいた。
「結婚とか、そういうのって繊細な話なのに振ったのは悪かったよ。」
ぼやくようなそれにジャブラは呆れたようにため息を吐いた。
それだけではないことにスパンダムは気づいてもいないし、気にもとめていないのだろう。隣のカクも呆れた顔をしていた。
「・・・行き遅れたらあんたが貰ってやるこったな。」
「どっちをじゃ。」
「カリファに決まってんだろうが!」
さすがのジャブラも2mの無愛想な鳩を飼ってる横暴男の責任を取れとは言えなかった。
それにスパンダムが肩をすくめた。
「そうだな、カリファが我が儘娘と、年上の2mの息子の母親になれるならな。」
おそらく、殆ど本気ではなく、冗談で言われたそれに二人はなんとも言えない顔をした。ジャブラは、予定があるかどうかはさておいて、スパンダムの妻になる存在に同情した。
(この人の嫁になる人、少なくともメランの世話して、ルッチとカリファのいびり受けんのか。)
ジャブラはそっとそれに心の内で合掌した。
「なんじゃ、長官、わしという息子を忘れとるんか?」
「お前、息子枠に収まって良いのか?」
「小遣いくれるし、ええよ。」
「いいのか、そうか・・・」
困惑した顔のスパンダムにジャブラは肩をすくめた。何はともあれ、と口を開いた。
「ともかく、二人のことはなんとかしろよ。つーか、なんで見合いの話なんて出したんだよ。」
それにスパンダムはうっと口ごもった。
「どうしたんじゃ?」
「いやな、その。」
「何だよ、なんか、面倒事か?」
ジャブラの脳内にはカリファの顔に嫁に欲しがる高官たちを想像した。それにスパンダムは気まずそうに、首を振る。
「いいや、そうじゃねえよ。そうじゃねえけど。」
スパンダムは首を振った。けれど、そんなことを言われれば余計に気になるというものだ。
「なんだよ。」
「そうじゃ、どうしたんじゃ?」
その言葉にスパンダムはあーとため息を吐いて、観念したかのように口を開いた。
「・・・あいつらもいい年だろ。それで、もし、結婚でもして、あれだ。子ども出来たら、抱かせてくれねえかなって。」
さすがにそんなことを考えていた自分に思うことがあったのか、スパンダムは告解のようにそう言った。
それにジャブラとカクは呆れた顔をした。
「あんた、さすがにそれはキモいぞ。」
「わかってるから、反省してんだよ!ああ、もう、お前らも部屋に帰れ!」
スパンダムはやけになったように叫ぶため、二人はさっさとその場を去った。
「長官、ルッチとカリファの機嫌は取っとくんじゃぞ!?」
「わかってる!」
「それで、結局どうなったんだ?」
「ああ、それなら、長官が二人が結婚するまでは結婚せんという取ったの聞いて機嫌直し取ったぞ。」
「・・・それでいいのか、あいつら。」
スパンダムから見たCP9
ルッチ 甘ったれの次男
ジャブラ 熟年夫婦の夫
カク ちゃっかりものの末っ子
ブルーノ 頼れる安定した長男
カリファ しかっりものの長女
フクロウ 世渡り上手の三男
クマドリ どこかで一歩引いている、身内と言うより忠臣
メラン 己のエゴで手に入れた、可哀想な赤ん坊