諦め猫熊はかく語りき   作:幽 

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思い出せと言われても、何も語らぬお前達になんの縁を感じればいいのだろうか。

お久しぶりです。軽めの話しです。


何も語らぬものたちを理解することは出来ません

 

お前達は、私に何を望んでいるんだ?

 

それに、彼らは答えた。

 

鼻の長い青年は好青年のように笑った。

「首輪が欲しいの。とびっきりの、頑丈で、二度と手放さなくなるようなのがのお。」

美しい金の髪の女は気だるそうに肘を突く。

「美しいドレス、白くて、華のちりばめられたものなんて素敵なんて思いませんか?」

口も軽い男は首を陽気に振った。

「チャパパパパパパパパ、望みなら、口に出せばいい。それ以上のことなんてないだろう?」

寡黙そうな男はため息を吐いた。

「それを何よりも知るのはあなたでしょう?」

傾いた男は悲しそうに膝を突いた。

「何をと、あなたが言われるか!おお!そんなもの、ただ、もう一度だけの忠義を!」

荒々しい男は不機嫌そうに吐き捨てた。

「何も。ガキ共がわめくからここにいるんだ、くそったれ。」

柔らかな黒い、子猫は泣いた。

「ここにいて、ずっと、一緒に。」

 

そうして、真っ黒な髪をして、冷たい瞳をした男は己の首を締め上げる。

 

「嘘つき。」

 

 

 

 

 

「・・・・痛みますか?」

 

その言葉に、黄昏はちらりと目の前の男を見た。そこにいるのは、大柄の男だ。身長さというのが極端な世の中でも、大きい部類に入る男はブルーノと自分に名乗った。

それに黄昏は、チェスに興じている間は少しだけ意識の外に向けていた痛みを感じた。

 

「おかげで。」

「そりゃあ、申し訳がない。」

 

絶対に申し訳ないなんて思っていないことを理解して、黄昏はため息を吐いた。

 

 

 

殺されると、黄昏はすぐに覚悟を決めた。

それほどまでに、黄昏がメランに合わせられた男は、殺意と呼んでも差し支えのない怒りに満ちていた。

 

(逃げようとしたが、まあ、無理だったな。)

 

男は黄昏が逃げようとしたことをすぐに察した。そうして、黄昏と男の実力は驚くほど離れていて。黄昏はあっさりと捕獲され、そうして、首元に訪れた衝撃に視界は暗くなった。

眼を覚ました先には、見覚えのない船の一室だった。

 

そうして、黄昏が眼を覚ますと、数人の男女が彼女を出迎えた。

彼らは無言で、じっと、自分を見つめていた。

黄昏は、それに、何か、どう反応すればいいのかわからなかった。

危機感がないと言えばそうだが、黄昏自身がこの人数で立ち回れるような実力が無いことは理解していた。

黄昏はてっきり、自分が眼を覚ますのは拷問部屋のようなところで、拘束されて、革命軍のことを吐かされるのだと思っていた。

けれど、黄昏が眼を覚ましたのは柔らかなベッドの上で、そうして拘束もされていない。清潔な衣服を着せられた彼女は、人質だとかからほど遠い。

黄昏はじっと、彼らを見た。それに、のっそりとした仕草で、顔に傷のある長髪の男が黄昏に近づき、顔をのぞき込む。

 

「・・・おい、まじか?」

「本当のようだがな。」

「演技ではないのか!?革命軍じゃろうが!」

「理由がないでしょう?」

「本当に、忘れちまったんですかい?」

「チャパパパパパ、確かに、特別動揺もしてないからなあ。」

「・・・記憶が無いのは本当だろう?」

「根拠は・・・」

「そうでなければ、この人が、あんなことを言うはずがねえだろうが!」

 

肩に鳩を乗せた男がそう怒鳴れば、周りの人間達は、少しだけ納得したように頷いた。それに、黄昏はびくりと肩をふるわせた。それに顔に傷がある男は黄昏を庇うようにその肩を抱き寄せる。

 

「おい、ルッチ、殺気を振りまくな!」

「ジャブラ、てめえこそ、軽くその人に触れてんじゃねえよ。」

「てめえが、殺気振りまくからだ狼牙!!」

 

びりびりとした怒鳴り声を聞きながら、黄昏は喉がどんどんと渇いていくような感覚がした。

冷や汗のような何かが流れていく。

動揺していた。

それらが、何を望んでいるのか。

 

黄昏が考える。

自分が、今、どんな立場にあるのか。

 

(拷問をされた様子もない。このやりとりは、演技?いいや、にしても脈絡がなさ過ぎる。私に出来ることは、情報だろうが。いいや、革命軍の本部がばれている時点で、私から引き出せるような重要な情報は無いはずだ。)

 

ぐるぐると考えを巡らせて、黄昏は目の前で怒り狂う男を見た。そこで、男は黄昏が自分を見ていることに気づいたのか、視線を合わせる。そうして、不躾な仕草で黄昏に顔を近づけた。

 

「・・・何も覚えていないんですか?」

 

黄昏はそれに、目の前のそれがやけに幼い表情をしていることに気づいた。

子どものような、そんな顔で自分のことをじっと見つめている。

それに奇妙な違和感を覚えながら、黄昏は慎重に言葉を選ぶ。間違えれば、恐ろしいことになるのは察せられた。

 

「・・・・少なくとも、あなた方に関しては覚えはないです。」

 

その言葉に、目の前にいた、男の緑の瞳の瞳孔が見開かれた。

そうして、手が自分に迫った。

 

「あ゛っ・・・・・」

 

ぎちりと、大きな手が、鋭い爪が見えた。見れば、男の体はヒョウ柄の毛に覆われている。

 

(悪魔、の実・・・・)

 

ぎちぎち締め上げられるそれに、ぐるるるるるるるるるるるると、喉の奥から漏れ出るような声が聞こえる。

 

「いつも、いつも、あなたはそうだ!そうやって、届きそうになれば、そうやって!」

「ルッチ!長官が死ぬぞ!」

 

ジャブラのその言葉に男、ルッチは手を離した。獣人のまま、ぐるぐると変わること無く威嚇音を漏らしている。

黄昏はぜーぜーと息を吐き、ベッドに横たわる。黄昏は掠れる視界の中で、相手側を見るが彼らは平然と話をしている。

 

「お前な・・・」

「死んだらどうするんじゃ!」

「この人にたどり着くまでどれだけ苦労したのかわかってるだろう?」

 

不機嫌そうなルッチというそれはばしりと尻尾を床にたたき付ける。

 

(どうする?)

 

黄昏は考える。言動からして、どうやら目の前の存在は自分が記憶を失う前の知り合いのようだ。

何かしらの因縁によって自分をわざわざ捜し当てたようだが。

 

(当たり前か。元々の知識からして、政府の人間であることは察していた。)

 

ならば、それらの望みは何だ?

自分に何を望んでいるのだ?

だらりと生理的な涙とよだれが伝っていく。そこで、自分のことを見つめていた獣、おそらく豹の悪魔の実の能力者の男が呟いた。

 

「・・・・なら、このままか?」

 

それに、ジャブラと呼ばれた男が少しだけだまり、そうして、はあとため息を吐いた。

 

「まあ、一囓りぐれえはいいだろう。」「

(一囓り?)

 

何を言っているんだろうと思っていると、男はベッドに投げ出された黄昏に覆い被さった。

なにを、と黄昏が思うと同時に左肩に激痛が走った。

 

「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

黄昏はじたばたと抵抗をしようとするが、まるで幼子のように押さえつけられる。鋭い刃が肉を貫き、そうして、黄昏の柔い骨をへし折っていった。

 

「あーあ、骨が砕けたぞ?」

「ああ、ちょーかんよ、哀れな、ことだあ・・・」

「いいのか?」

「四肢の一つは潰しとかねえと、あの人のことだから止められねえだろう。」

 

何かが聞こえるが、痛みに全てが潰される。激痛だ、まるで、火に炙られたかのように熱く、そうして痛い。

ようやく男は黄昏の肩から口を離した。

 

「あ、は、あああ・・・・」

 

黄昏は息も絶え絶えに、噛まれた方の肩を見た。触るには、あまりにも激痛が走り、上手く動かない。

ちらりと見た男は、黄昏に馬乗りになり、口元に吐いた血を舐め取っていた。

ぜえぜえと息を吐く中で、それはにたりと、にたにたと、心底嬉しそうに笑う。

わからない、何が望みで、何を企んでいるのか。

 

怯えさせたい?

屈服とは所詮、拷問で一番に望まれることだ。

ルッチは黄昏の肩から流れる血を舐め取った。肩にかすかに感じる感触にぞわぞわと背筋が震える。

 

「おお、長官が泣いとる!」

 

そこでその中で一番に年若い青年が嬉しそうに黄昏の顔をのぞき込んでいる。それに紅一点の女がくすくすと笑った。

 

「本当ね。子どもみたいで可愛いわね。」

 

柔らかな声でそう言って、女は黄昏に顔を寄せた。そうして、黄昏の頬に生暖かい感触があった。

涙を舐め取られたとわかる瞬間に、女は蠱惑的に微笑んだ。そうして、黄昏の髪の毛を穏やかに梳る。

 

「まあ、いいじゃない。記憶が無くても、いつか思い出すかも知れないし。思い出さなくても、ずっと一緒なんだから。」

 

その言葉に他の人間達がベッドに横たわる黄昏を見下ろした。その仕草は、まるで、獲物をどう分けるかと話し合う獣のようだった。

 

 

 

「・・・・つまんなーい!」

 

ぼんやりと考え事をしていた黄昏の思考に、突然少女の声が滑り込んでくる。

その声の方に視線を向けると、そこには膨れっ面のメランがいた。それは、座っている黄昏の膝をぐいぐいと引っ張る。

 

「ねえ、チェスじゃなくて、ほかのがいーい!」

「・・・なら、なにがいいんだ?」

 

男、ブルーノのそれに、メランは部屋の隅にある、彼女のおもちゃ箱に向かう。そうして、それをがちゃがちゃと探る。

 

「ブルーノ、トランプ知らない?」

「・・・・それなら、昨日、ジャブラが持ってたぞ。」

「あー!また、賭けで勝手に使ったんだ!」

 

取ってくると、元気に走っていた少女の後ろ姿を見つめて、黄昏は、彼ら曰くスパンダムは己の肩をさすった。

 

それに冒頭に繋がるわけだ。

 

黄昏の肩は、見事に砕かれていた。

骨の治療は、黄昏が気を失った数日のうちに終っていた。それから、黄昏の生活と言えば、驚くほど穏やかだった。

一日中、船の一室に閉じ込められ、常に側にはメランがいた。黄昏はひたすら少女と遊んでいた。

そうして、メランと、一日おきに交代で自分を攫った彼らがついてくる。

 

 

私は、お前達にとってなんであったのか?

それに対して、彼らは曖昧に笑うだけだ。

 

そうして、答えは皆、同じだ。

思い出せば、それですむ。

彼らは、自分との関係を、頑なに教えない。

ただ、物悲しげに、楽しげに、憎々しげに、答えるのだ。

早く、思い出せばいい。

その声に混ざる、憎悪に、自分は何をしたのだろうと考える。

 

(長官、それを考えるに。)

 

彼らの身のこなしから考えて、それ相応の戦闘訓練はされている。それと同時に、どうやら革命軍についての知識もある。

総合して、政府側の人間であるのは予想できれば、自分は、強いて言うのなら裏切り者なのだろう。

記憶を無くしたといえど、敵に組み付していた自分は憎悪の対象で有り、上官への憎悪が隠しきれていない。

 

(今は、護送中、か?)

 

彼らは黄昏が外の様子を知りたがることを非常に嫌った。

 

「新聞が欲しい?」

 

それを言ったのは、メンバーの中で一番に冷静そうに感じた、ジャブラという男だった。

丁度、メランが席を外していた折のことだ。

メンバーは大抵、黄昏ににこやかに話しかける。メランと一緒に遊戯に興じたり、中には黄昏に触れてくる者もいた。

フクロウとう青年やクマドリという男は、ある意味でフラットだ。何というか、どこまでも普通で、黄昏に対して普通に接する。

特に、フクロウは口が軽いため、船の状況について探ることが出来た。

少なくとも、今の船には自分と、己を攫ったメンバーしかいないようだ。

 

「チャパパパ、いくらでも探っても構わないんだけどなあ?逃げ出そうとか考えないでくれよな?」

俺、長官の足がなくなるの、見たくないから。

 

そんなことをさらっと言ってくる。

 

クマドリというそれは、話し方は独特であるが、一番に理性が見えた。けれど、フクロウとそれは変わらない。

「長官、頼みます。お頼み申しますから。」

側にいてくだせえ、もう、あなたを守れねえ、不名誉など耐えられませんのです。

そう、物悲しげに言った瞳の昏さにぞっとした。

 

それに反して、若い方の、カクとカリファというそれは黄昏に触れたがった。

カクはよく黄昏に甘えるようにじゃれついてきた。何か、部屋の中を歩き回るのも彼らを刺激するようで殆ど定位置になっているソファにいれば、それは幼子のように黄昏の腰に手を回してすり寄ってくる。

 

そうして、たわいもない話をしてくる。読んだ本だとか、その日の食事のことだとか。黄昏はそれへの反応の正解もわからず、なんとも言えない顔をしてしまう。

それにカクは楽しそうな顔をする。

 

「本当に忘れ取るんじゃのう!」

「・・・・そう、だな。」

 

はじめに禁じられた敬語のために、そう返せば、カクは淡く笑う。

 

「ええよ、それで。ずっと、ここにおるんじゃしの。」

 

そう言った甘い冷たさに、殺意を感じた。

 

カリファというそれについては一番に反応に困るのだ。肩の骨折という厄介な物事のために、女は黄昏の周りの世話を喜々として行っているわけだが。

何故か、一緒に風呂に入りたがる。

柔い肌に密着されたときの気まずさと言ったら無い。

 

「いいんですよ、役得のようなものですから。」

 

そうして、ルッチというそれ。

それは、何よりも、扱いに困った。

それは、滅多に口を開くことはなかった。ただ、ソファに座った黄昏を持ち上げて、己の膝の上に載せて、顔を埋めてくる。

生暖かい息に、肩に噛みつかれたときの熱と痛みを思い出し、喉にせり上がってくる感覚がある。

少しでも身じろぎをすれば、冷たい声で黄昏の耳元で囁くのだ。

 

「今度は、どこに行くんですか?」

 

どうやって?この状態で?

 

そう思って黙り込むと、それは心底恨めしそうな顔をする。

 

「許しませんよ。けして、今度は、肩だけではすみませんからね?」

 

そんなことを囁いてくるのだ。

そのくせ、それは誰よりも黄昏に丁寧に、そうして、熱っぽく触れてくる。

当たり前のように、毎晩、メランと伴ってベッドに潜り込んでくるのだ。

眠りは浅いが、神経が高ぶって仕方が無い。時折、寝間着に手が滑り込むが、それさえも、熱っぽさより、なお、黄昏の実態を確かめるような感覚だ。

まるで、子猫が母の乳房でも探すかのような、つたなさがある。

黄昏は時折、ルッチというそれが自分を好ましく思っているのかと思うときがある。

けれど、それ以上に、その瞳から零れる、どろどろとした怒りを感じる度に思い起こす。

 

その男にあるのは、愛ではなくて、もっと、茹だるような何かであると。

 

ジャブラというそれに黄昏が頼み事をしたのは偏に、それが誰よりも黄昏という個人への感情が薄いように感じたためだ。

事実、それは、部屋にいてもメランに構うことはあれど、黄昏に近づくようなことはなかった。

新聞、という要求にそれは呆れたような顔をした。

 

「・・・・あんたは、どうしてそうなんだろうな。」

 

掠れた、疲れ切った声で、それはそう言った。

つかつかと黄昏に近寄り、そうして、無言で彼女の前で屈み込んだ。そうして、黄昏の膝の上に頭を乗せた。

 

「・・・記憶を無くしてなお、諦めもしねえ。どうしようもないって、わかってるくせによ。それでも、あんたは、どうして。」

なあ、そんなに、あの場所が、あの男が恋しいのかよ。

膝に立てられた爪が、じくりと、痛みをおこした。

 

 

それらの目的はなんなのか。

乗艦で会ったのは確かなようで、実際の所、彼らは自分を憎んでいるような、そんなうっすらとした冷たさを瞳に含んでいる。

思い出せと、自分は、いったい何を望まれているのか?

黄昏は、ブルーノの言葉にかすかに頷いた。

ブルーノは、メンバーでも誰よりも無口で、久方ぶりに声を聞いた心地になった。

 

「・・・・あんた、ここから逃げ出すこと、諦めてないんでしょ?」

 

読んでいた本を閉じたそれに、答える言葉などなく黄昏は黙り込む。

その様子に、ブルーノは軽く息を吐いた。

 

「今のところ、ルッチ達はあんたがいるってことで落ち着いてはいる。だが、あんまりそれを隠さずにいるんなら、こっちだって考えることが出てくるんですよ。」

「・・・拷問でもされる、とでも?」

 

黄昏の返したそれに、ブルーノはじっと彼女の顔を見つめ、そうして手を伸ばす。黄昏は暴力を想像して頭を庇うが、ブルーノは予想に反して腹に手を添えた。

黄昏は意味がわからずに、ブルーノを見つめる。

ブルーノは静かな目で黄昏の腹を見つめた。

 

「・・・俺たちが望んでいるのは、楔なんですよ。あんたがどこにも行かず、ずっと、俺たちと共にあるって証明がね。拷問は、人の心を折る最短じゃあるが。あんたには何一つ欠けて欲しくもないでね。」

 

黄昏はその言葉の意味を、ようやく理解した。撫でられた、下っ腹。その薄い肉の下にあるのがなんなのか。

黄昏は、自分のような枯れ木の、しかも若くはないだろう自分にそんな意味を示され、固まる。

 

「・・・・残念ながら、月のものがない私には、何をしても無意味だぞ?」

「排卵程度ならどうとでもなりますよ。ただ、まあ、出産だって十分にリスクのあることだ。拷問よりかはましだとしても。ただ、あんたは脆いですからねえ。できれば、このまま身の程を知って大人しくしていただければと思ってるんですよ。」

 

ブルーノはまるで、静まった水面のような瞳で、淡々とそう言った。

 

「子ども、悪くはないんですよ。あんたは捨てられんでしょう?一時的なリスクだけを考えれば、持続性は段違いだ。」

「私のような枯れ木でもいいとは、男というのはすごいな。」

 

皮肉交じりのそれに、ブルーノはふんと珍しく笑う。

 

「俺にお鉢が回ってくる可能性は低いでしょう。するとすれば、ルッチか、カク。次にジャブラで。その次が俺ですかね。まあ、その時はその時でかまいませんよ。」

あんたがいなくなる可能性を潰せるなら、いくらでも、どんなことでも。

黄昏は、それに、ぞわりと寒気がした。

ブルーノは、それこそ、柔らかに、穏やかに、上機嫌に微笑んだ。

けれど、その瞳は、殺意さえ感じるほどに冷ややかであった。

それ故に、黄昏は思わずといった調子で口を開いた。

 

「お前たちは、私に何を望んでいるんだ?」

 

その言葉にブルーノは口を開き、そうして、ふっとそれを閉じた。

 

「あんたが教えたことでしょう?」

思い出せば、それですむ。

それに黄昏は無茶なことを、と歯がみした。

何も語らぬものたちを理解するなど無理な話なのだ。

 

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