諦め猫熊はかく語りき   作:幽 

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お久しぶりです。
これは上かな?次で終わらせたい。

感想、評価いただける嬉しいです。


それでは、贄の子どもたち。優しい夢はもう終わる

 

夢を見ている。

自分にとっては理解できない物事が、瞬きのように過ぎていく。されるがままの自分にとってはそれは夢のようで。

 

わかっていたのだ。夢は、いつか覚めるのだと。

 

 

「どこに向かっているんですか?」

 

黄昏の言葉に、ロブ・ルッチという男は珍しく嬉しそうな顔をした。

それも当然なのだろうかと、黄昏はぼんやりと考えた。 

 

黄昏が船に軟禁されてからなかなかの時間が経った。そこまで大型ではないらしい船は、島に立ち寄ることはあれど黄昏は基本的に部屋から出られない。

一応は、日光を浴びせるためか、出航した後なら甲板に出ることはこの頃赦されている。

さすがの黄昏も、海に飛び込んで泳ぎ切る自身は無い。

 

そんな中、滅多に己から喋らない黄昏が甲板にて地平線を見つめながらそう言えば、ルッチは上機嫌に笑うの道理なのかも知れない。

彼は、船縁に立ち、手すりに掴まる黄昏の背後から覆い被さるように抱きしめる。

 

「あなたにとっては、きっとなじみ深い場所ですよ。」

 

機嫌のよさも隠しもせずに、男は黄昏の頭に甘えるように鼻をこすりつけた。それは、男が女に甘えるというよりも猫が飼い主に甘える仕草に似ていた。

黄昏は何か、それにイラッとしてルッチを見る。そうして、乱雑にその顔を押しのける。

 

その雑な仕草に、ルッチは何か楽しそうな顔をして、ゆるゆると笑い、ぐいっと無理矢理黄昏の首元に顔をすり寄せる。

 

「ルッチ、止めてくれませんか!?」

「何故だ?」

「・・・・近いですので。」

 

さすがに、異性にこの距離感はそろそろ落ち着かない。ベッドに入ってくるときは、子どものような態度で気にならないが今はどう考えても下心を感じるためひどく気まずい。

それにルッチは笑いながら猫のように黄昏にすり寄った。

 

黄昏は大きくため息を吐き、思いっきり叫んだ。

 

「メラーン!」

「はあーい!」

 

声と共に、剛速球と言える速度でルッチに体当たりしてきた少女によって破られたその時間から黄昏はなんとか逃げ出した。

 

 

ここは墓場だ。

そう、なんとなく、黄昏は着いた島を見た時感じた。

 

珍しく、いいや、浚われて初めて大地の上に降ろされた黄昏が見た島は、なんというか、とても、静かな場所だった。

そうして、そこからは逃げられないようにするためか、ルッチに抱えられて島を進んだ。

 

「過保護じゃ、過保護。」

「きも・・・」

「ちゃぱぱぱぱ、言えた義理か?」

「ルッチ、私も!」

 

騒がしい声の中、自分を腰に回った腕の暑さに黄昏は顔をしかめた。そんな中、メランがルッチの背中によじ登り腕に抱えられた自分の顔をのぞき込む。

 

「あのね、もうすぐだよ!みんなね、主のこと、待ってるから!」

 

何を、と黄昏に聞く体力は残されていなかった。

 

島は、どうもすでに人は住んでいないようだった。家の規模を見ても、おそらく元々人自体さほど住んでいなかったのだろう。

うち捨てられたにしては、手入れがされており、定期的に人が訪れていることが何と無しにわかる。

ルッチたちは、そんな村に当たる場所を通り過ぎ、そうして、島の奥にある教会にやってきた。

 

神など、何よりも似合わなさそうな面子に意外な心地で眺めていると、ルッチたちはためらいも無く教会の扉を開けた。

 

「長官!」

「ああ、長官だ!」

「ご無事で!」

「よくぞ、よくぞ!!」

 

薄く、ぼんやりとした暗がりの中。

そこには、ルッチ達とそう変わらない年頃の男女が数名、待っていた。

 

 

 

全てが、自分のあずかり知らぬところで回っているのだけは分かった。

教会で待っていた数人の彼らは黄昏が記憶をなくし、自分たちが誰か分からないことに確実に落胆していた。

けれど、すぐに嬉しそうに彼らは笑う。

 

「いいえ、いいえ。」

「生きてさえ、生きて、いて、くだされば。」

「記憶が無くても、きっと、あなたはあなたのままだから。」

 

彼らは、見た目とは打って変わって、とても幼い顔で黄昏にそう願うように笑うのだ。子どものような仕草で黄昏に手を伸ばす。

それはある意味で、大人がするにはあまりにも年不相応の仕草であった。けれど、黄昏は、なにか強烈な申し訳なさを感じた。

何か、町中で見かけた迷子をそのまま見送ってしまったかのような、落ち着かなさと申し訳なさ。

 

けれど、それに声をかけることは無かった。彼女には、かける声が存在しなかったのだ。

 

「髪が。乱れていますね。」

「・・・・そうですか。」

 

黄昏がいるのは、教会の近くに建てられた神父の住居だった。そこで、彼女は風呂に入れられ、そうして側にはメランと、そうして盲しいた女が一人。

それは、ブリントといい、自分の世話をしていたと聞いた。

けれど、女は見えないはずなのに、まるで見えているようにスムーズに動いている。それに黄昏は女が見聞色の使い手なのだろうと理解した。

 

(隙を突いて逃げ出すのは無理だな。)

 

そんなことを考えながら、黄昏は風呂に入れられた後、髪を乾かされている。

 

「・・・女性だと、知っていれば、もう少しお世話のしようがあったのですが。」

 

女が恨みがましいというような、そんな声で自分の髪をタオルで優しく拭ってくる。それに黄昏は覚えていないことをなんともないのだが。

何と無しに、その声に、癇癪を起すときのルッチと似たような何かを感じた。

 

(・・・おそらく、私は政府のどこかしらの高官だったんだろう。)

 

何せ、彼らは自分を長官と呼び、それと同時に革命軍の本拠地にまでやってこれる彼らの出身は政府以外に可能性はないだろう。

そうであるとしても、高官と、部下らしき彼らからの感情が少々難があるように感じるが。

 

(それはそれか・・・・)

 

どうして、と。彼らは自分によく問いかける。

自分はおそらく、彼らから逃げたのだろう。どんな理由かは分からないが。

 

(・・・・やらかしの責でもなすりつけたか?)

「立場的に、女よりも男の方が楽だろう。」

「それは、そうですけど。ですが、その程度、信用してくださってもよかったかと。」

「君に負担をかけたくなかったんだろう。ルッチにも告げていなかったようだしな。」

 

それにブリントは少しだけ不満そうに口元を突き出していた。

 

「君がよくよくしてくれることが分かっていると、これ以上頼りたくなったんだろう。」

「・・・今後、長官のお世話は私がしますので。どんな些細なことでも言いつけてくださいね。」

 

機嫌が持ち直したことを理解して、黄昏はほっと息を吐いた。

 

ルッチたち以外に集まった彼らの話を盗み聞いていると、どうも彼らはある程度融通が利いたり、時間を縫ってなんとかこの場に集まってきているようだった。

その目的は分からない。耳を側だ立ている最中に、疲れたろうと強制的にブリントに部屋に連れて行かれ、風呂に入れられたのだ。

島に着いたのは午後ですぐに日が暮れてしまっている。一応は完治したとは言え、肩の粉砕骨折で熱を出したこともあり、すぐに休ませたかったのだろう。

 

「・・・そんなに、お体も丈夫では無かったので。」

 

そんな、自分の知らない自分について語る彼らに黄昏は困惑しつつ、その感情を押し殺す。それを表に出してもろくな事にならないと思いながら、それと同時に、困惑を押し出せば目の前の女はひどく悲しむのが分かるからだろうか。

 

にこにこと、温和に、けれどその目から流れ出す苦しみが理解できるから何も言えなくなってしまう。

 

「今日は、私が側におりますので。」

「わかりました。」

 

他人行儀に答えれば、その女はやはり物悲しげな顔をする。けれど、それ以上のことも出来ずに黄昏は黙り込んだ。

 

CP9の彼らは、黄昏が気楽に、というか気軽な態度を取り、自分たちから離れたり、外部の情報を探ろうとしない限りはある程度要求を聞いてくれる。

故に、黄昏は彼らの感触の良好な、親しげかつ少々雑な態度を取るようにしている。

けれど、まだ会ったばかりのそれにその態度が受けるかは分からない。

だから、黄昏は沈黙を取ることを選んだ。

 

 

「で、どうするんだ?」

 

メランは適当なソファの上で、ルッチの膝の上に足を投げ出してくつろぐ。ジャブラが不機嫌そうな顔をしているのが見えた。

そこは同胞達の眠る墓を弔うためにある教会の一室だ。

そこにCP9の人間だけで無く、スパンダムを慕うグアンハオの同胞たちが数名集まってきていた。

グアンハオの子どもたち、特に、スパンダムに世話をされた子どもたちは独自のネットワークを持っている。

もちろん、滅多に動きはしないため、政府側も把握は出来ていないものだ。

それは基本的にスパンダムの危機でしか動かないのだ。以前、スパンダムの暗殺騒ぎの時はなかなかの活躍をしたのだが。

 

「・・・・思い出されませんでしたね。」

 

グアンハオの同胞であり、今回、駆けつけることの出来たCPの男が口を開いた。

そこは、スパンダムが足繁く通い詰めた、贄の子どもたちの墓のある島だった。そこにスパンダムを連れてきたのは、偏に彼女にとって何よりも心を傾けたものだったからだ。

もしや、記憶を取り戻すのではと言う淡い希望を持っていたが。

そう、上手くは行かないものらしい。

 

「長官の、その、容態は?」

 

そう口にしたのは、エニエスロビーにて死亡報告のされている給仕の男だ。今回、スパンダムの行方がわからなくなっていることを知った同胞達がすぐに動ける要員として割り振られた男だった。

 

「・・・・医者曰く、肉体的には健康、ではあるようだけれど。ただ、落下による衝撃のせいで記憶を失っているそうよ。」

「そう、ですか。」

 

気落ちしている男を尻目に、ジャブラが口を開いた。

 

「長官が記憶を失ってる今、スパンダインに接触して戻るか?」

「あの状態のあの人を、俺たちの手元に置いておくと思うか?」

「今度こそ、連れて行かれて。そのまま元長官の手元に置かれるのでは?」

(・・・・主、立場的に面倒だからなあ。)

 

メランの主はとてもえらい人だ。えらいというのは、えらい分多く取り分を貰えるけれど、ヘマをすればそれ相応の責任というものがあるものだ。

獣の群れでもよくある話だ。

 

メラン達がスパンダムを連れて政府の元までつれて帰らないのはそれが原因なのだと、少女はちゃんと理解していた。

 

(・・・クザンのおいちゃんがなんとかしてくれてるかもしれないけど。全部、は無理だし。スパンダインのじいちゃんは、主だけ持っていっちゃうかもしれないしなあ。)

 

だから、ルッチ達はこうやって彷徨っているのだ。

革命軍の基地の情報を持っていくことも考えたが、それらをきちんと吟味して自分たちが古巣に戻れるか分からない。

 

・・・・なんて、違うことを、メランはちゃんと知っている。

 

 

スパンダムは、ずっと、あまり幸せでは無かったらしい。

メランはそれがピンとこない。

メランの中の主は、仕事の多さで疲れていたけれど、自分を膝の上に乗せて頭を撫でてくれているとき。

主はとても、幸せそうだったことを覚えている。

けれど、ルッチたちは違うのだという。

 

「・・・あの人は、嘘つきだからな。」

 

ルッチはそう言う。それは、あの時の静かな笑みが嘘だったと言うことなのだろうか?

メランにはわからない。

けれど、違うのだと駄々をこねようとしないのは、静かに微笑む主にもの悲しい何かがあるのを、少女は嗅ぎ取っていたのもある。

 

だから、皆、帰ろうと言えない。

記憶の無いあの人。

自分たちへの愛を忘れたあの人。

己の罪を忘れた、あの人。

 

皆が思っている。

例え、記憶がなくなっても、あの人は自分たちにほだされて、前とそう変わらない日々を送れるようになるだろうと。

それは、根拠などない。ただ、あの人があの人であるのなら、きっとそうなると確信しているのだ。

今と、昔が違うのが悲しい。

あの人はメランが甘えれば、昔と同じように手を差し出して歩み寄れば当たり前のように受入れてくれることを知っている。

けれど、それでも、昔と同じ穏やかな甘さがないことだって分かっているのだ。

 

このまま、その罪を忘れて心穏やかに生きられるなら、それもいいのではないかと。

 

こんな風に笑うのかと、メランは少しだけ考えてしまう。

メランの中のスパンダムは、いつも厳しい顔で仕事をしているのか、それとも自分に微笑みかけてくるか。

そうして、誰も寄せ付けず、とても厳しい顔で何かを考えて込んでいるのか。

 

今の、スパンダムという名前さえ覚えていない主は、自分のことを覚えていてくれないし、彼女がどうして自分を拾ったのか、名前を付けたのか、出会った時の約束も全て忘れてしまっているけれど。

でも、スパンダムはとても、無防備で、やわくて、そうしてのびのびしている。

 

分かりやすい警戒心と、けれど、疲労で面倒になると自分たちをおざなりに扱う様はスパンダムの知らない部分を見ているようで嬉しい。

特に、昔なら赦してくれなかったようなスキンシップも困惑気味にでも受入れてくれる。

おかげで、特に同性のせいで独特の距離の近さを出し始めたカリファにルッチが癇癪を起したことがあった。

 

それも、スパンダムが気恥ずかしげにさすがにと断った顔に、己を意識していると機嫌を上向かせたルッチの機嫌でなんとか切り抜けられたが。

 

このまま、どうか、そのまま。

夢を見ていてくれるのなら。

自分たちで与えられなかったもの、スパンダムがずっと願っていた人生。

 

他者を欺く偽りだらけの人生、罪なきものたちの返り血と死肉を踏みつけた人生、弱いものが踏みつけられていくことから目をそらした人生を。

全て、忘れて、CP9の長官として散々に身につけた鎧と、自分たちさえ欺く理性なんてものを放り捨てられるなら。

 

その願望を。

 

メランは知っている。メランは覚えている。麦わらの言葉を。ルッチのことが心配で潜んでいた彼女は麦わらの言葉を、メラン達の逃避を、真っ正面から叩きつけたから。

メランは、麦わらが嫌いだ。

主の心をとっていく奴、主とメランのおうちを壊した男。

でも、あの時、スパンダムの何かを。メランの理解できない何かを、麦わらは理解していたのだ。

ルッチの様子から、それを察してしまったから。

メランは、スパンダムが今までを忘れてしまったことを、最初は確かに怒っていたけれど。

今の、無防備で感情的なスパンダムのことを見ていると、なんだか、間違っていないようだと思ってしまう。

 

メランに、スパンダムの罪悪感は理解できない。

この世界では、平民だろうと、貴族だろうと、時として何かをあっさりを殺すのならば。スパンダムに罪があるのか、メランには分からない。

殺されるような弱い奴らが悪いだろうに。

 

(でも、主、前よりちょっと、気楽そう。)

 

なら、どうか、そのまま夢を見ていてほしいと。

そう、思ってしまっているのだ。

 

「このまま逃避行を続けるわけにもいかないわ。」

「どこか、落ち着ける場所を探すか。」

「適当な島を見つけたとして、潜伏も難しいぞ。わしらのような日陰者の政府側の人間に見つかれば一発でアウトじゃろ。」

「善くも悪くも、顔が割れてるからなあ。」

「海賊を狩っていくか?」

「実入りがあるかはっきりしないなあ。」

「そうね、確実なものじゃないと。」

 

それを聞きながらメランはのそのそとルッチの膝の上に乗り上げ、そうしてげしげしとその腕を軽く蹴る。

大人の話は、子どもには退屈なのだ。

ふあああと欠伸をすると、ルッチがちらりとメランを見下ろす。

 

「メラン。」

「んー、なに?もう、主とブリントのとこ戻ってもいい?」

「まあ、お前はそろそろ寝る時間か。その前に、聞くぞ。政府側の人間から隠れるなら、お前はどこに行く?」

「知り合いの人にばれないようにするって事?」

「そうだ。」

 

その言葉に、メランはふと、思い出す。

 

・・・仕事を全て投げ出したい。

主、どうしたの?

フクロウが、やらかした。はあ、根回しがなあ・・・・・

じゃあ、お仕事辞めてどっかいく!?

それでいける立場じゃないが。そうだな。ルッチ達も追って来れないような場所じゃないと逃げられないなあ。

じゃあ、無理かあ。

・・・・いや、あるか。あそこは、確か政府の管轄じゃ無かったはず。

 

「空島は?」

 

それにルッチの顔が変わった。

 

「・・・・そうか、あそこなら。」

「確かに、あちらは市民にも隠されておって、海軍も彷徨いとらん!」

「でも、行き方は?」

「それは・・・・」

 

そのまま大人たちは白熱するように話し始める。メランはそれに欠伸を深くし、そのまま己の主の寝床に潜り込むためルッチの膝の上から降りた。

 

 

 

「・・・・何か、気になることでも?」

「いいや。」

 

黄昏はじっと見つめていた墓から目を離し、背後のジャブラを見た。

 

黄昏と、そうして彼女を浚った彼らは珍しくその島に滞在していた。監視付きとは言え、地面の上を歩き回れるのは素直にありがたい。

CP9の彼らや合流した数名の男女は、黄昏が記憶を思い出すことを期待しているようだがその兆候はない。

思い出さなくてはいけないのだろう。

少なくとも、黄昏にとって今の現状を打破するためには必要なことだ。

 

黄昏はじっと、目の前の男を見た。

それは、彼らの中で、誰よりも黄昏のことを遠巻きにし、一番に彼女のことを尊重してくれている。

珍しく、ルッチではなくジャブラが監視についていることが不思議で、まじまじと彼を見た。

 

「・・・ここには、私の身内でも眠っているのか?」

「何故?」

「ここにいると、前よりも、私に何かを期待しているような顔をするから。」

 

それにジャブラはにやりと笑った。

 

「・・・ああ、覚えてないか?ここには、俺たちの父親と母親が眠ってるんだ。」

 

黄昏は反応に困り、ジャブラを見返した。

 

「言えなかった、きょうだいのこと忘れるなんて、そんな、薄情な奴だった何てよお!思わなくてよお!」

「・・・・嘘丸わかりだぞ。」

「けっ、面白くねえな。騙されもしねえなんて。」

 

ジャブラは不満そうにそういうものだから、黄昏は、困ったような顔をして素直に感想を口にした。

 

「お前は顔に出やすいからな。まあ、おかげで。」

一番信頼できるよ。

 

軽口のようにそう言った。ジャブラならあっさりと、なんの感慨もなく流してしまうと思っていたから。

けれど、ジャブラの顔に、黄昏はどんな反応をすればいいか分からなくなった。

 

それは、珍しく、何か古傷が痛むような顔をしていて。

 

「・・・・あんたは、なんでそう、変わりゃしねえんだろうなあ。」

 

黄昏はそれに何かを返すことが出来ない。

皆が、時折、悼むような顔をする。遠い昔の、痛みを負うような顔をして。

けれど、黄昏はやっぱり、それに答えてやれることもなく、黙り込むことしか出来ないのだ。

 

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