ダンジョン大好きダンジョンマスターが理想のダンジョンを作るまで 作:一一生寝てたい一
それからおよそ一カ月が経った。
その間侵入者はいなかったということもなく、最初にポーションを買って行った二人組が一週間ごとにやってきてはポーションを買い、薬草を摘んでいった。それ以外とくに目新しいことはなかった。
今の一日当たりの収入は、ロムニ様もポーションづくりに混ざったことでおおよそ6000DP(半日で約1000DP。これが3人で約6000DP)になった。それが一カ月でおおよそ180,000DP。冒険者たちに売った分と、あと余りと合わせて203,100DPほどの予算が出来ている。
そんなある日の事。またもやロムニ様に招集された俺たちは今後の方針について話し合っていた。
「さて、ここに約200,000DPある」
「大金ですね」
「大金ですわね」
「これをどうやって使っていくか、というのが今回の議題だ」
「貯めておく、という選択肢はないんですね」
「今は拡張を急いだほうがいいだろう」
「まあそれはそうですね」
こうして開催された第二回ダンジョン会議。どうやってこの大金を使っていくかという議題だが、とりあえず決まっているところから話していく。
「次はウィッチを召喚するんですよね?」
「そうだな。とくに何もなければそうする予定だ」
「でしたらとりあえず召喚はする、という方向でいいのではないでしょうか?ユーマさんはなにかあります?」
「いや、とくにないですね」
「私もない。ならとりあえず召喚はするとして、どれくらいの奴を召喚するかだ」
「えーと、メニューによると・・・」
『見習いウィッチ』―――50,000DP
見習いのウィッチ。魔道の道を志し始めてまだ数年程度の若輩の魔女。それゆえ使える魔法も多くなく、中級以上となるとさらに少ない。彼女たちが先輩に勝るものはその若さと、未熟者ゆえの向上心のみである。
『ウィッチ』―――120,000DP
魔道の道を志し、数十年程度が経過したウィッチ。おおよそもっとも数の多い位であり、ほとんどのウィッチがこの位で停滞したまま一生を終える。ここからさらに各属性に特化したウィッチに進化する者もいる。
「この二つが今の予算で召喚できるウィッチになりますかね?」
「そうだな。ここからさらに一段上げるとなると、次は400,000DPとかになるからな」
「流石に高いですわね・・・それでどっちにしますの?」
「ふむ・・・」
「そうですね・・・」
どちらにするか、というと・・・。
「ウィッチですかね」
「ウィッチだな」
「意見が一致しましたわね」
「予算もありますもんね」
「わざわざ安い方にする理由もないだろう」
ここで生きてくるのは前世の知識である。すなわち高価な買い物で銭を惜しむなという経験則だ。ロムニ様は単純にDPがあるのに惜しむ必要もないという考えのようだけども。
「よし。ウィッチを召喚することは確定だな。次にオプションはどうするかだが」
「どんなのがあるんですかね?」
「ふむ、魔法習得数の増加、能力強化と・・・あと『従者』というのがあるな」
「『従者』?」
「どうにも生まれた時点で従者・・・という名の弟子を一体引き連れてくるようだ。30,000DPで追加できるな」
「それって見習いウィッチくらいのが一体追加で増えるってことですかね?いいじゃないですか!普通に召喚するよりお得ですし」
「そうだな、ならこれも追加して・・・他はとりあえずいらないか。魔法は後からメニューの『強化』で増やせるしな」
「これで残りが・・・53,100DPですね。どうしましょう?」
「それでしたら、私に提案がありますわ」
「ランさん?」
ウィッチに関してだいたい決まったところでランさんから提案が入った。ランさんはそのままロムニ様に頼んでダンジョンの全体図をメニューで表示してもらっている(ランさんはまだメニューを開く権利を付与されていない。ランさん自身が自分はまだ貢献していないのにもらいたくないと言って拒否している)。
そのまま開かれた全体図を全員で見ながらランさんの提案を聞く。
「私たちのダンジョンは最初の広間から三方向に分かれていますよね?」
「そうだな」
「この三方向の道それぞれにモンスターを置いて、通るニンゲンからお金を取る、というのはどうでしょう?」
「なるほど。通行料を取る関所を設置するわけですね」
「セキショ、というのはよくわかりませんけど、まぁそうですわ?」
「ふむ・・・」
「どうでしょうロムニ様?」
ランさんの提案を受け、なにやら顎に手を当て考え始めるロムニ様。俺の見る限り問題はなさそうに思える。
「そうだな。とりあえず問題はなさそうだ。詳しい内容を聞こう」
「ありがとうございます」
少しして、ロムニ様も俺と同じ結論に達したらしい。ランさんの提案に乗ることにしたようだ。
「して、どのモンスターに任せるんだ?予算は50,000DPしかないぞ?」
「それなんですけど、前にロムニ様にモンスターの欄を見せていただいたときに、気になるモンスターがいましたの」
「ふむ?気になるモンスター?」
「はい、フェアリーというモンスターなのですけど」
ふむ。フェアリーフェアリー・・・あったこれか。
『フェアリー』―――50,000DP
妖精の基本種。体は小さく力は弱いが、多様な魔法を操る。『分化』の能力を有しており、最大で50匹までにわかれることが出来るが、別れた分だけ知能などのステータスなどが下がる。
「ふむ。確かにこれならうまくいけば一匹で三方向の道を見張れるか」
「どうでしょう?」
「ロムニ様、俺はこれ悪くない案だと思います」
話を聞く限りこれは良い案のように俺には思えたので後ろから同意の念を飛ばしておく。理由としてはモンスター一匹で済む分安く済ませられるということと、話を聞く限り、フェアリーは火弱点ではないように思えたからだ(忘れがちだけど、このダンジョンが火に弱いのは直っていない)。ロムニ様はまた少し考えていたようだが、一度頷くと話し始める。
「わかった。その案で行こう」
「ありがとうございます。私はメニューを触れないので召喚はお願いしても?」
「その件なんだが、このフェアリーは扱い的にはランの部下になると思うのだが、自分で召喚しなくていいのか?」
「はい。メニューは私が受け取るにふさわしい貢献をしたときにお願いしますわ」
「わかった」
「さて、ではさっそく召喚を・・・?」
「ロムニ様、どうしました?」
「侵入者だ。今までの奴とは違うな」
「あら。でしたら一旦対応に行ってきますね」
「任せた。しかしこいつら・・・」
ロムニ様が召喚に移ろうとした所、どうやら侵入者が来たようだ。釣られてロムニ様の画面をのぞき込むと、そこには三人組の男たちがいたのだが・・・。
「なんか、嫌な感じですねこいつら。馬鹿っぽいというか」
「そうだな。自分たちは強いと信じて疑わない愚か者の様相だ」
どうにもこの男たちからは嫌な気配を感じた。今までダンジョンに侵入してきた侵入者たちは皆ダンジョンに対する、一種の畏怖のような念を感じていたように思える。しかし男たちにはそれがないように見えたのだ。
「ランさん、大丈夫ですかね」
「前確認した通り、あいつも十分な実力がある。平気だろう」
スケルトンたちもいるしなというロムニ様の声を聞きながらまぁそれはそうかと納得する。なんにしても今はとりあえず事の推移を見守ろう。
私(わたくし)ランはこのダンジョン、662番コアであるロムニ様のダンジョンに仕えるアルラウネです。私に任せられたお仕事はまだあまり多くないですが、ダンジョンが拡大するにつれて任せられるお仕事も増えるでしょう。そうして私が真にダンジョンに貢献できる存在になった時、確かな幹部の証として、『メニュー』を扱う権利を私は授かるのです。
「そう考えれば、このお仕事も名誉なものですわ~」
今やっているお仕事は今からやってくるニンゲンの侵入者さんたちに商談を持ち掛け、ポーションを渡す代わりに銀貨を頂くというもの。
最初これを聞いたとき、ニンゲン相手に何を馬鹿な事を。殺してすべて奪い取ってしまえばいいのに・・・とは思いませんでした。むしろ私の主たるロムニ様の思慮深さに尊敬の念を抱きましたわ。確かに、ただ殺してすべて奪い取ってしまうのは簡単な事。しかしそんなことを続ければその内私たちでは勝てないような敵が来るのは必然。別に私たちは今はまだ世界最強のダンジョンという訳でも何でもないのですから。そこであえて殺さず商談でじんわりと向こうの資金を搾取するこの作戦。正直言って感銘を受けましたわ。
一つ気になる事があるとすればユーマさんというニンゲンさんの存在。一カ月と少し一緒に過ごす中で彼が裏切りを計画するような人間ではないことは分かっているけれども、それでも不安になって一度「なぜダンジョン作りに協力するのか」と聞きましたの。そのとき彼は少し恥ずかしそうにしながら「自分の思う『ダンジョン』を作り上げるため」と話してくれました。その意味はまだよくわかってなくて、それだけが今の唯一気になる事柄ですわ。
「・・・あら」
物思いにふけっていると、いつの間にかニンゲンさんが入口の階段を降りきって最初の広間に入ってきたところでした。さぁお仕事の時間ですわ。
「こんにちは。ニンゲンさん。ひとついい話がありますの」
そう言いながらニンゲンさん達の前に姿を現すと、驚いた表情をしていました。まぁこうやって話かけてくるモンスターなんてものすごく珍しいでしょうし、当然の反応というやつですわね。
このニンゲンさんたちは今まで一回も見た事がないので、私が召喚される前に侵入してきたことがなければ初めてのはず。となると最初は商談の内容の説明から入りましょうか。
「ここにポーションがありますの。マナポーションですわ。安全性と質は保証いたします」
そう言って一本のマナポーションをバスケットから取り出します。それを目の前で振って見せたり、実際に一本飲んで見せたりして安全性の証明をします。
それをまじまじと見つめるニンゲンさんたち。どこかまだ警戒するような色が見えますわね。
「この通り。なんの危険性もありませんわ。どうでしょう?一本二本と言わず、何本も買っていただけると嬉しいのですけれど~」
警戒を解くため、わざとおどけるように言って見せます。そこまでしてやっと信用してくれたのでしょうか、周囲をキョロキョロと見回してから話しかけてきました。
「なぁ、ほんとにあんた一体だけなのか?」
「ええ、その通りですわよ」
これは半ば嘘です。私が危険にさらされるようなことがあった時、スケルトンウォリアーたちがロムニ様たちによって送り込まれ、私と一緒にニンゲンさんたちを撃退する手はずになってますわ。
「そうか・・・」
その返事を聞いたニンゲンさんたちは、何事か身内で相談し始めました。ここからでは相談の内容は聞こえないので、大人しく待つことにしますわ。
それから一分ほどして、相談事が終わったらしいニンゲンさんたちはこちらを振り返りました。
「算段は終わりました?それで買っていただけますの?」
「ええ、・・・全部ください」
「あら、するとええと・・・全部で銀貨32枚になりますわ~」
「なるほど。しかし俺たちにはそれだけの金がありません」
「あら?」
あらあら。なにやら不穏な空気になってきましたわ。
ここに来る前に確認した限りではこの人たちのDPは一人当たり10DP程度。なんなら三人がかりでも私一人でひねりつぶせる強さですわね。
それでも念には念をと、いつ攻撃が飛んできても避けれるように少し重心をずらしておきます。
「それでは商品は差し上げられませんわ?これは正当な金額を払ったお客さんにのみ差し上げてますの」
「ええ、ですから―――」
そう言って丁寧な口調のままゆっくりと少しずつ近づいてきてますわね。本人としては相手に警戒させないようにしているつもりかもしれませんけど、もろばれというやつですわ。
ですがわざと距離は離さず、こちらが相手の殺意気づいていることにに気づかれないよう微笑み返しますわ。そうして私の目の前まで到達した男は背後に隠していた斧を振り上げて、
「―――ただでいただぶべらっ!」
そのまま振り下ろそうとした手を私に受け止められ、そのまま右ストレートを顔面に叩き込まれ、貴重な台詞を言いきれることも出来ずその場に崩れ落ちました。
「なっ―――」
「てめぇ!」
残った二人の男が動揺したり怒ったりしているのを無視して、私は目の前で倒れ伏している男の身体を持ち上げ、確実な止めを刺します。
「―――詠唱省略、『アーススパイク』」
直後、私の背後から持ち上がった何本もの土の杭が、男の身体を貫きました。体中から血の雨を吹き曝しながら、数度男の身体がビクンビクンと痙攣し、そのまま動かなくなりました。
私はわざと男の遺体をお仲間さんたちの前に投げてやりました。
「恐ろしいお方でしたわ。突然襲ってくるのですもの」
「こ、いつぅ!殺してやる!」
そう言って残ったお二人のうちの片割れが襲ってきました。けれど、私の元に到達する前に、横から三つの影が私と男たちの間に割って入りました。
「こいつら・・・スケルトンウォリアーか!」
「てめえ!一人って話じゃなかったのかよ!」
「あら?先にだまし討ちを試みたのはそちらですわ?」
「このっ―――」
この期に及んで聞くに堪えない文句をぶちまけようとしていた男が、あっという間に接近したスケルトンウォリアーによって首をはねられ殺されましたわ。残った一人はそれを見て逃げようとしましたが、それを許さず追いついたスケルトンウォリアーによって刺殺されましたわね。
「商談不成立ですわ・・・。ロムニ様に怒られないでしょうか」
知能がない分値段の割にスケルトンは強いです。
次回はまた少し間が開くと思います。それと、度々頂いている感想なのですが、すべて有難く目を通させていただいています。ただ、返信していく中で罵倒メッセなんかもらってた日には心折れるので、返信の方は申し訳ないが控えさせていただいております・・・。