ダンジョン大好きダンジョンマスターが理想のダンジョンを作るまで 作:一一生寝てたい一
「帰ったか」
「ほんとに全部ぶちまけましたね・・・」
「これって大丈夫なんですか~?(;’∀’)」
「おそらくはな」
マスタールームでメニューを通して見ていた面々で話す。ランさんが事情を話し(内容がだいぶ物騒だったが)とりあえず納得したのか帰っていった侵入者たちを見ながら、とりあえず穏便に収まったことを喜ぶ。これで諍いになって殺そうものなら、今度こそ危険なダンジョンとして認識されかれない状況だった・・・と思う。あのランさんの物言いなら襲ってきたから殺した以上の認識にはならないはず。結果だけ見れば必要以上に軽んじられることも、危険視されることもないベターな結果に終わったように思える。
ランさんをマスタールームに回収して集合。軽く仕切り直してロムニ様が話始める。
「さて、これで今回の一件は終了した。それで今後の事なんだが・・・ん?」
メニューを開き、それを見ながら話そうとしたロムニ様が何かに気づく。なんだろう、このパターンさっき見た気がする。
「・・・もしかしてまた侵入者ですか」
「そんな~(*^^*)さっきの今ですよ?」
「いや、その通りだ。侵入者が入ってきた」
「・・・そんな~( ;∀;)
「フラグでしたか・・・」
「? 旗がどうしましたの?」
「あ、いやなんでもないです」
この世界、フラグって旗って通訳されるんだ・・・。とそれはどうでもいい。
「ええっと今度は誰が来たんです?さっきの二人組が戻ってきたとか?」
「いや、見ない顔だ。まずはDPの確認を・・・!?」
ピタリと、メニューを見ていたロムニ様が動きを止める。その瞳はいつもより開かれており、普段の彼女を知っている者ならそれが驚愕しているからだということが一目で分かる。
すぐさま真剣な表情に変わり、なにかしら考え込み始めた。それを見ながら邪魔しないようひそひそと俺たちもしゃべり始める。
(なんだろう・・・どうしたんでしょうロムニ様?)
(あの方がああいう風に表情を変える姿なんて初めて見ましたわ~)
(よっぽどのことがあったんですかねー?(;・∀・))
しばらく皆で様子を見ていると、数十秒ほどして首を一度横に振ったロムニ様がこちらを見た。
「お前たちの知恵を借りたい」
「ええ。それは大丈夫ですけど・・・」
「まずなにがあったか話してもらえない事には~」
「知恵の貸しようがありませんー( ;∀;)」
「・・・」
「なぜそこで黙られるんです?」
これはほんとによっぽどのことがあったのだろうか?ロムニ様がここまで悩まれるのは珍しい。
また少しして、見せた方が早いかと呟いたロムニ様はこちらにメニューを見せてきた。そこに表示されていたのは。
「ええっと・・・DP・・・1000!?」
「これは・・・なかなかですわ~?」
「先程までの方たちが25DPでしたよね(;’∀’)」
「40倍ですね。40人分です」
「すさまじい戦力だ。これに対してどうやって対処するか。各々考えてほしい」
「考えてほしいつっても、もうすぐそこまで来てるんですよね?」
「そうだな」
「・・・もうスケルトンぶつけるしかなくないです・・・?」
「・・・いざとなれば、私も含め皆でぶつかるぞ。ランとエアリーは待機しておくように」
「わかりましたわ~」
「承知しました!(^^)!」
「わ、わかりました」
「―――!!」
「ゼリー子もやる気だな。いいぞ」
ゼリー子も初めての出番にやる気満々である。いやまだ直接戦うとは決まってないんだけど。
「なんにせよ、最初はスケルトンをぶつけて様子見ですね。もしかしたらダミーコア破壊するだけで満足するかもしれませんし」
「そうだな」
今からじたばたしても、新しいモンスターを召喚して戦力を整えるくらいしかできることもない。それも後々のことを考えれば最後の手段だ。
最初の広間にもスケルトンは設置しなおしてある。侵入者が入ってくると同時に、入口の両脇に伏せていたスケルトンが起き上がり襲い掛かる。が。
『邪魔』
―――鎧袖一触。なんの気なしに振るわれた剣の一撃であっけなく打ち砕かれるスケルトンたち。メニューの端っこで僅かにDPが増えたのを見るに、確実に倒されている(DPを使って出たモンスターは死んだときにDPが少し還元される)。
「・・・これは、スケルトンでは止まりそうにありませんね」
「・・・」
カチャと、ロムニ様が傍に置いてあった大剣を握りしめる音がやけに大きく響く。
その後も、侵入者は入口から見て右の広間、左の広間を順に攻略していく。そのたびにスケルトンをぶつけるが、なんの成果も得られずスケルトンの数だけがただ減らされていく。
『うーん・・・?ほんとに薬草以外のお宝はなさそうだなぁ』
そんな中、侵入者のつぶやきが聞こえた時、俺の脳内に一つの考えが閃いた。もしこの侵入者がお宝目当てで入ってきただけなら、あるいはこの方法で帰せるかもしれない。
「・・・やむを得ないか。全員、戦闘準備を。私は戦力の召喚を―――」
「ロムニ様」
「なんだユーマ?今は話している場合では」
「俺に一つ考えがあります」
「・・・なんだ?」
「その前にロムニ様、これは戦えば高確率で負ける戦い。そうですよね?」
「・・・まぁ、そうだな」
今の発言を聞いてなおさら覚悟が決まる。この作戦は必ず成功するわけではないないが、これ以上の探索に侵入者が乗り気でない今ならおそらく成功する。
「説明しますね。―――」
俺の考えた作戦を皆に話す。ここまで作戦と言っといてなんだけど、別に作戦と言えるほどのものでもない。ただの思い付きに近いが、それでもこの場の皆の命をかけるよりかはマシなはずだ。
「―――というわけです。どうです?」
「・・・まぁ、確かに、うまくいけば帰せそうだが・・・」
「それってうまくいくんです~?」
「不安が・・・(;’∀’)」
「だがまぁ・・・それ以外に方法も無いか・・・」
お、どうやらロムニ様は乗り気のようだ。消極的ではあるけど。
「ですよね。ではさっそく」
「待った。その前にだ」
「はい?」
ロムニ様に向けて背を向けようとした俺をロムニ様が止める。だてなんだろうか?」
そう思って振り返った俺の前にちゃりんと貨幣らしき音を立てて落ちた袋が一つ。この世界のものらしき服が一式。
「着替えろ。それと餞別だ」
「あ、ありがとうございます」
そうか。この作戦には現代の服は向いていない。怪しまれないためにも服は着替えておくべきだろう。流石ロムニ様賢い。
「着替え終わりました。では改めてお願いします」
「ああ。わかった。失敗した時にも安心しろ。こちらでどうにかする」
さて、改めて俺はロムニ様に背を向ける。これからの作戦にはどうしても今からやる行為が必要になる。
ロムニ様が大剣を持ち上げる。そしてそのままロムニ様に背を―――。
「『緑の楽園』?」
「はい。最近この近辺で発見されたダンジョンです。危険度も低く、この村の発展に役立つのでないかと思われています」
「へぇー・・・」
僕の名前はワタル・ニシミ。勇者の一人だ。といっても、僕自身はただ異世界から召喚された一般人なんだけど。
最近莫大な借金が出来たから、その返済のためにあちこちを回っている。そこでこのティターヤ村で今夜を過ごそうかというところで最近できたというダンジョンについての話を耳にした。で、今詳しい話を聞いていたというところ。
「(まだ休むには早い時間だし、見に行ってみてもいいかもなー。僕の脚ならそこまで時間もかからないし)って思われてます?」
そんなことを考えていたら一言一句同じことを横から言われた。
「止める権利はありませんので引き留めはいたしませんが、くれぐれも破壊することがないようお願いします」
「ははは・・・。わかりました」
この人はここ、ティターヤ村の冒険者ギルドの受付嬢、名前はケケさんという。少し変わった名前だけど、能力はとても優秀な人で、人柄を読むのを特に得意としてる。少し話せばその人の考えが手に取るようにわかるらしい。
「場所は東門から出てずっとまっすぐの森の中です」
「あの、その説明だと森の中で迷うこと確実なんですけど」
「地図、買われます?」
「・・・一個お願いします」
しかも商売上手と来た。情報を適度に小出しにするうえ、嘘をつくことはないからたちが悪い。
銀貨三枚(これくらいはお遊びで出せる)と引き換えにどうぞと渡されたダンジョンまでの地図とダンジョンの地図を片手に村を出る。地図によれば片道8時間ほどだろうか?僕の脚なら軽く三十分ほどだろう。
「よいしょ」
全力を出しても問題ないくらいの位置で軽いジョギングから始め、徐々に加速していきすぐ最高速に到達する。あっという間に木々が後ろへと流れていき、気づけばダンジョンの入口に到達していた。
「大したモンスターは出てこないな・・・」
ダンジョンの地図によればこの三つの広間でほぼすべて攻略したはずだけど、宝箱の一つもなく、出てくるのはスケルトンのみ。わざとダンジョン内部の情報については聞かなかったんだけど、これは少し拍子抜けと言うかなんというか。
(コアまで見たら帰るか)
そう心に決め、入口広間に戻ろうとしたところで、通路から誰かが入ってきたことに気づく。
スケルトンだろうかと目を細めてよく見ると、ちゃんと顔に肉がついていることから生身の男であることに気づく。こんな時間に同業者とは珍しい。少し話してみようか。
「こんばんは。こんな時間にどうされ・・・!」
そこでふと、男が背中に大きな傷を負っていること、そしてその後ろからスケルトンが迫っていることに気づく。
反射的に体が動き、男を背中にかばうようにしながら後ろから迫るスケルトンを一撃で倒す。
(彼の様子は・・・?)
急いで男の容態を確認すると、息も絶え絶えな状態であることがわかる。自分には回復魔法が使えない。ゆえにここでできることはない。
「うぅ・・・」
「! 大丈夫ですか!」
男がうめき声を上げたことで意識が思考から現実に引き戻される。今はとにかく治療ができるところまで運ぶことが優先だ。
「すぐに村まで運びます!意識をしっかり保ってください!」
「ぐ、うぅ・・・」
返事も出来ないほどに意識が怪しいらしい。ダンジョンの探索はもう十分だし、速いとこ戻ろう。
男を背中に担ぎ、僕は『緑の楽園』を後にした。
なんか皆IQ上がってる・・・?