ダンジョン大好きダンジョンマスターが理想のダンジョンを作るまで 作:一一生寝てたい一
「ラン、ただいま戻りましたわ~」
「悠馬、戻りました」
ダンジョンに入ってすぐ、俺たちはマスタールームに回収された。おそらくロムニ様も休まずいつ戻ってきてもいいよう待ってくれていたのだろう。ありがたいことだ。
俺たちが戻ってきたのを確認したロムニ様が声をかけてくる。
「ラン、ご苦労だった。ユーマ、よく戻って来てくれた」
「いえいえ~。それほどでも~」
「ここじゃないとダンジョン作りなんてできませんから。戻ってきますよ」
俺たちの言葉を聞いたロムニ様が満足げに頷く。物事が思い通りにいくと気持ちいいもんね。わかるよ。
「ユーマ、昨晩はすまない。私の力不足だ」
「いえ、元々進んで協力していた身ですから」
「傷はどうだ?命に関わるほど深くは斬らなかったつもりだが」
「えーと……。実際に見てみた方が早いですかね?」
その場で上を脱いで背中を見せてみる。こちらからは確認できないがロムニ様からは状態を確認できるはずだ。
わずかに動く気配と共に、背中に誰かの指が触れ、そのまま背中を伝うようにして上から下まで触診していく。おそらくロムニ様が触って確かめているんだろう。
「ふむ……。それなりに深い傷だったにも関わらず、ほとんど痕が残っていないな。ただの治療ではこうはいかないはず。魔法でも使ったか?」
「俺に治療を施してくれたのは、前にこのダンジョンに来たこともあるシンピという冒険者でした」
「シンピ……。長杖と弓を持っていた冒険者か。その時も魔法を使っていたな。魔法使いなのか?」
「その辺も含めて、俺が村で見聞きしてきたことを共有しましょうか」
「そうしよう、と言いたいところなんだが」
「ロムニ様~!もう駄目です~!(+o+)」
そこまで話したところで奥からエアリーさんが姿を見せる……そういえば戻って来てから姿を見ていなかったけど、なにかしていたんだろうか?分身しているらしく、姿も小さくなっている。
「そうか。もう抑えられないか」
「あのモンスターさんやんちゃが過ぎますよ~!変わってくださいー!(+o+)」
「あのモンスター?例のヴァンパイアですか?」
「聞いていたか。そうだ、お前がいなくなった後召喚したモンスターなんだが、これがなかなかな……」
「俺の存在が問題になっていると聞いてますけど、他のモンスターでは駄目だったんですか?」
「召喚した理由は二つ。一つはここまでとは思っていなかったこと。もう一つは支払うDPに対して最も性能が良かったのがヴァンパイアだったことだ」
「コスパがよかったかぁ……」
「コスパ?」
「コストパフォーマンスの略で、要は対価に対する成果の大きさの事です……」
「いい言葉だな、今度から使わせてもらおう。さて、お前のヴァンパイアに対する姿勢なんだが―――」
「ロムニ様!やはりニンゲンが仲間にいるのは我慢なりません!」
と、ロムニ様が続きを口にしようとしたところで横合いから誰かが声を上げて飛び込んできた。もしやこの方が―――
「ニンゲンなどいつ裏切るとも知れない軟弱者です!今すぐ首を落としましょう!なんなら私が直々に処刑いたします!」
「来たか……」
「ロムニ様、この方が?」
「そうだ。先程までの話に出ていたヴァンパイアだ」
「この方が……」
「……?」
現れたのは豪奢なドレスに長い銀髪を後ろに流した、赤い眼をした美少女……美女?外見があまりにも整いすぎている点を除けば西洋系の女性と紹介されてもわからないかもしれない。
それはそれとして
「ヴァンパイアキタ――(゚∀゚)――!!」
「!?」
「なんだ?」
「わあ!?ユーマさんがなにかおかしいことになってます!?(;’∀’)」
「あら~?なにが琴線に触れたのかしら~?」
この世界に来てからアルラウネやフェアリー、色んなモンスターを見てきた。しかしモンスターと言えばコレ!というモンスターはなかなか見ること叶わず、実は結構歯がゆい思いをしてきていたのだ。そこにきてこのヴァンパイアである。俺のテンションは青天井を突破し、宇宙にまで飛び出さんばかりに上がっている!
「お美しい銀髪ですね」
「あ、ありがとう?」
「嗅いでも?」
「駄目に決まっているだろう!?」
「ユ、ユーマさんが壊れましたー!?( ;∀;)」
「あらあら~。なんて情熱的な言葉なんでしょうか~!」
「……」
「……ロムニ様?」
「私の髪も相当だと思うんだが」
「あらあら~!?」
異世界に来てからなによりも待ち望んでいたこれ以上なくわかりやすい『異世界のシンボル』と呼べる者の登場に俺のテンションはどこまでも高まっていく。それに歯止めをかけたのは他でもないヴァンパイア本人であった。
「いい加減にしろ!」
「ぐふぅ!?」
興奮のあまり意図せず近づいていた俺の顔に張り手を一発浴びせ無理矢理に落ち着かせる彼女。思いもよらぬ一撃に思わずよろめく俺。はて、俺は何を?
思わぬ反応に恐怖していたのか、肩で息をしながら彼女はしゃべりだす。
「見、見ましたかロムニ様!これがこいつの本性!ニンゲンでありながらモンスターに欲情する軽薄な輩です!」
「いや欲情していたわけではないと思うのだが」
「ニンゲンなぞ処刑されて当然!今すぐこの首落としましょう!」
「またそれか……」
正気に戻った俺は今までの流れを反芻して考える。このままだとどうにもヴァンパイアの協力が得られないのは間違いないだろう。それは困る。俺のせいでなにか負担はかけるべきじゃない。
「あのーヴァンパイアさん」
「なんだニンゲン。話しかけるな」
「いやそういう訳にはいきませんよ。これからは一緒にやっていくわけですから」
「誰がお前なんかと!ロムニ様もどう思います?」
「いや、私は一緒にやっていってもらう予定だが」
「ロムニ様まで!このニンゲンにそんなに肩入れする理由があるのですか!?」
「少なくともお前よりかは役に立っているからな」
「うぐっ……!」
どうやらヴァンパイアさん、自分がまだ役に立っていない自覚はあったらしい。痛いところを突かれたと数歩下がる。それから標的を俺に変えたのか、こちらを睨んでなにやら問い詰め始める。
「ニンゲン。お前どうやってこのダンジョンに来た?」
「ロムニ様に召喚されてきました。一体目だったみたいですよ」
「どうして召喚されたんだ?なにか目的があっての事だろう?」
「いや、俺の場合元が死んでて強制でしたし、なんなら召喚されてすぐ殺されそうになりましたし」
「元が……死んでて……?」
「あ、やっぱり特例なんですね。死んでて気づいたら召喚されてたってパターンは」
「私も初めて聞いたな。そうだったのか」
「ええ、実はそうだったんです」
こんな事を言われては流石に引き下がるしかなかったのだろう。ヴァンパイアさんが黙り込む。そこにロムニ様が話しかける。
「ヴァンパイア。なんにしても、これから先は一緒にやっていってもらう。これはダンジョンコアとしての命令だ」
「うっ……。わかりました……」
「ロムニ様には素直なんですね」
「お前が帰ってくる前に大分躾けたからな」
「躾け……なにしたんです」
「なに、少しな」
そう言っていつも持ち歩いている大剣を持ち上げるロムニ様。まさかそういうことなの?
「物理で躾けたんですがロムニ様!?」
「それが一番手っ取り早かったからな」
「ニ、ニンゲン……あまり聞いてくれるな」
なにをやったのかわからないがヴァンパイアさんの様子から見るに相当なものだったらしい。これはヴァンパイアさんに同情してしまう。ゆっくりヴァンパイアさんに近づいて声をかける。
「なんというか……。大変だったみたいですね?」
「ああ……大変だったというかなんというか……」
「そこまで厳しくしたつもりはなかったのだが」
「「「あれでですか!?」」」
おっと、俺以外の御三方の声がハモった。そんなに厳しかったのか。
「お疲れ様です」
「ああ、ありがとう……。ニンゲン、お前意外といい奴だな……」
「めちゃくちゃ消耗してますわ~?」
「そりゃあれだけしごかれたらそうなりますよね(;・∀・)」
「そんなに厳しかったか……」
話がまとまったと見たのか、ロムニ様が一度咳をして皆の注目を集める。
「よし、ユーマとランも戻ってきたところで、改めて第二層の情報を見ていくとしよう」
というわけで二話目です。原作では吸血鬼表記がこっちではヴァンパイア呼ばわりなのは理由考えてます。