ダンジョン大好きダンジョンマスターが理想のダンジョンを作るまで   作:一一生寝てたい一

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俺とダンジョン拡張と

「さて、今からダンジョン作りを始める」

「イエッサー!」

「・・・なにか違わないか?」

 

足を舐めるのを断られてから少しして、今俺と紫の女性(ダンジョンコア?)は向かい合って立っていた。女性いわく、この位置がやりやすい・・・らしい。ダンジョン作りをはじめるといっても、どうやって作るのか一切説明が無いせいで今からなにをやるのかもわからない。穴でも掘るんだろうか?

 

「改めて自己紹介させてもらう。今からお前の主人になる第662番コアだ」

「あ、これはどうも。斎藤 悠馬です」

「サイト―ユーマ・・・それは誰から与えられた名だ?」

「それは親からですけど」

「そうではなくて・・・いやいい。忘れてくれ」

 

よくわからない質問をされたと思ったが、どうやらなにか意図あっての事だったらしい。少し申し訳なく思うが、どういう意図かわからなかった以上仕方ないと思うの。

女性――第662番コア様が空中に手を伸ばし、なにやら操作する仕草をすると、俺と第662番コア様の横になにかの画面らしきものが現れた。

 

「見えるか?」

「ええと、横のこれの事ですよね?」

「そうだ。これを『メニュー』という」

「見たままなんすね」

「見たまま・・・?」

 

またなにか疑問を持たれてしまった。元々別の世界から来た以上多少の食い違いは仕方ないと思うが、それにしたって食い違いすぎではないだろうか。この辺は俺が追々学んでいく必要があるだろう。

 

「モンスターの召喚やダンジョンの改築・増築などは基本的にこのメニューを通してやっていく」

「ほへー・・・。この強化っていうのは?」

「それは私、ダンジョンコアやモンスターの強化ができる。腕力を強くしたり、魔法やスキルを覚えたりだ」

「ふんふん。これらに使うリソースもあるんで?」

「ある。さっきも話したが、『DP』、ダンジョンポイントと呼ばれるものだ。今私のダンジョンは地脈からの収入しかないが・・・」

「それ以外にはどんな入手方法があるんです?」

「それは分からない。このダンジョンが生まれておよそ5年間、ずっと隠れ続けてきたからな」

「へぇーよく隠れ続けられましたね。すぐ見つかりそうなもんですけど」

「最初のDPでダンジョンを隠して以来、拡張も何もやってきてないからな。実を言うとほぼ初期のダンジョンのままだ」

「・・・それは敵に攻め込まれるとマズくないですかい?」

「マズいというか、ほぼ間違いなくコアが破壊されるだろうな」

「早いとこ改装しましょうそうしましょう」

 

なんでこの人・・・人じゃないけど。こんなに危機感ないんだ。自分のダンジョンがいつ崩壊してもおかしくない状況のはずなんだけど。

第662番コア様・・・長いな、愛称としてロムニ様と呼んでおこう。ロムニ様がメニューのモンスターの欄をタッチすると、画面が切り替わった。それぞれの種別に分かれているのだろうか、スライム系やスケルトン系など系統ごとにまとめられている。

 

「これがモンスターのメニューだ。ここから召喚したい系統の欄をタッチして―――」

 

説明しながらスライム種と書かれた欄をタッチし、開いたカタログの中からゼリーという名前のモンスターをタッチして呼び出す。すると俺とロムニ様の間に小さな魔法陣が現れ、光だす。

光が収まるとそこには全長5cmほどのちっちゃなスライム・・・というかゼリーのようなプルプルとした生き物がいた。

 

「あら可愛い・・・これがモンスター?」

「最弱モンスターの『ゼリー』。かかるDPも最低値の1だな」

「へぇー・・・」

 

呼び出されたゼリーはひどくゆっくりとした動作でこちらに向かってくる。小さな体に見合った速度しか出せないらしく、ほんの1mほどの距離すらろくに移動できないらしい。

 

「あら可愛らしい・・・」

「カタログによれば食べれるらしい。ゼリーのような食感と味がするそうだ」

 

思わずしゃがんで抱え込む。最弱モンスターとは言うが、そもそも戦闘なんぞ出来るんだろうか。実は愛玩用モンスターだったりするんじゃなかろうか。抱え込まれたゼリーは攻撃のつもりなのか、頭(?)の部分を伸ばして俺の頬にくっつけてくる。・・・ひんやりしてる。

 

「はははこやつめははは」

「・・・ふむ」

 

ゼリーのひんやりもちもちした触感がなんとも心地よく、そのまま触り続けてしまう。これは寝るときの枕とかにもちょうどいいかもしれない。ひんやりもちもち低反発ゼリー・・・。今に一家に一台の時代が来るだゲフッ

 

「いったっ!?なんか今のもちもちすっごいいたぁ!?」

「モンスターの強化の欄から攻撃力を上げてみた。そうか痛いか」

「なんでそんな余計なことを!?」

「・・・なんか、ゼリーがお前になついたのが気に入らなかった」

「そんな理由であっちょゼリーさん止めっ痛い!」

 

思わずゼリーをぶん投げる。ぶん投げられたゼリーはそのままスポンとロムニ様の腕の中に納まった。

 

「本当だな。やわらかいし、もちもちしている」

 

腕の中に突然入っていたゼリーに顔をうずめ、そんな感想を漏らすロムニ様。

 

「あれ?前に呼んだことあったりとかしないんですか?」

「今までモンスターを呼んだことはない。ガチャで出てきたお前を除けば、これが初めてのモンスター召喚だ」

 

そうだったのか。初めての召喚が俺なんかでよかったのかこのダンジョンコア様。・・・もしかしてそれで名前を付けたがったのだろうか?だとしたら可愛らしい理由のような気がするが。

 

「よし。お前は今からゼリー子だ」

 

もしかしたらこのダンジョンコア様相当可愛らしいかもしれない。

 

「名前も決まったことだ、このゼリー子を活躍させるためにもダンジョン作りを続けよう。まずはダンジョンの方向性について決める」

「ダンジョンの方向性というと?」

「私が調べてみた限り、モンスターの召喚にかかるDPというのはそのダンジョンの周囲の環境にかなり影響されるらしい。同等の戦力のモンスターでも倍近い差がついていることもある」

「なるほど・・・。それでこのダンジョンは何が安いんで?」

「まずドライアドや食人花といった植物系モンスター。これは周りに森が広がっているからだな。次にスケルトン系のモンスター。こっちは近くの村の墓地に影響されてのことだろう」

「ふむふむ・・・」

 

植物系のモンスターとスケルトン系のモンスター。一見してこの二つの系統にはあまりシナジー、つまり相乗効果のようなものは期待できないように思える。あまりモンスター同士の協力には期待できないだろうな。

 

「まずこの二つの系統から適当に召喚する」

「なるほど?」

「その次に適当に罠を配置したダンジョンにモンスターたちを配置する」

「それで?」

「以上だ」

「なるほど」

 

・・・このダンジョンコア様ポンコツなのでは?

 

「・・・それ罠の中に炎系は?」

「当然含めない。骨も植物も火に弱いからな」

「その二つの系統を同時に召喚するメリットは?」

「いくつかの種族がいた方がより多くの局面に対応できる」

「そもそもこのダンジョンは何に攻められるんです?」

「それはニンゲン・・・のはずだ。生まれた時の知識にはそうあった」

「人間達がモンスターに火を放つ可能性は?詰みません?」

「・・・」

「・・・考えてなかったんですね?」

 

答えられなかったからか、プイと横を向いてしまう。どこか神秘的な見た目と合わさって、そんなあざとい姿も愛らしさがあるが、やはり考えていなかったらしい。

 

「そもそも、なんで人間達はダンジョンに攻め込んでくるんす?何かメリットが?」

「・・・分からない」

「ならまずそこからですかねぇ・・・。例えばダンジョンにあるお宝目的とかならお宝を置かなければ入ってくる人間の数も減らせそうですし・・・」

 

近くに村があるということだったし、そこに話を聞きに行くのもいいかもしれない。それならまず確認するべきは―――

 

「この世界の人間って服装とかはどうなってるんで?」

「少し待て。それならお宝の欄にあったはずだ」

「へぇー・・・あの」

「なんだ?」

「そのメニューって俺が使えるようには出来ないんです?そっちのほうがお互い楽でしょう」

「・・・それもそうだな」

 

そう言ってロムニ様がなにやらメニューを操作する。そのままなにか調べるようにしばらくメニューを操作してから、顔を上げた。

 

「これでいいはずだ。開いてみろ」

「えーと・・・どうやって開くんです?」

「『メニュー』と頭の中で唱えるんだ。少なくとも私はそれで開ける」

 

『メニュー』と頭の中で唱える。すると目の前にメニューが現れた。

 

「おおー・・・、魔法だ」

 

期せずして発動した初めての魔法に思わず興奮する。そのままメニューを上下動かしてみたり、メニューに載っている欄をタッチしたりして色々見て回る。

 

「ふーむ・・・。あ、元の世界のご飯がある」

「む?なんていう名前だ?」

「えーと、オムライスですね」

「おむらいす・・・?こっちにはない」

「え?」

 

少し失礼して横から覗いてみると、確かにロムニ様の欄には無かった。これはつまり、メニューは使用主の知識かなにかしらかがメニューの商品の種類に関わってくるということだ。

となると、モンスターの雇用なんかはロムニ様にやってもらうべきかもしれない。服なんかも、外に出るならロムニ様の出したものを着ていくのがいいだろう。

 

「ロムニ様、俺これからこの世界の服着て村まで情報収集に行こうと思うんですけど、どうですかね?」

「・・・駄目だ。それは許可できない」

「駄目ですか」

「・・・ロムニ様?」

「あっ」

 

しまった。思わず愛称を口に出してしまっていたらしい。直前まで心の中で愛称で呼んでいたからだろう。とはいえいい機会だ。このまま認知してもらえないだろうか。

 

「その、662って、俺のいた世界だとロムニって読めるんですよ。第662番コア様って長いですから、愛称としてどうかなーって・・・」

「・・・ロムニ・・・」

「どうですかね・・・?」

「・・・」

 

やはり駄目だろうか。そりゃそうか、たいして仲良くもないやつから勝手に付けられた愛称なんて嫌に決まってる。

 

「気に入った」

「あなたには己の意思というものが無いんですか?」

「突然どうした?」

 

気に入られてしまった。いや別に駄目ってわけではないんだけど。

 

「そうだ。それで、村の情報収集は?」

「許可できない。お前を一人で行動させるのはいささか不安が残る」

「ああー・・・」

 

俺、この世界の常識疎いもんなぁ・・・。心配してくれているんだろうか。優しい上司だ。

 

「ただ、村の情報を集めるだけなら方法が無いわけではない」

「直接赴く以外でです?」

「当然そうだ」

 

話しながらロムニ様は再びメニューを開き、ダンジョンと書かれた欄を開く。

 

「ダンジョンには『領域』というものがある。この領域の中しかダンジョンは『ダンジョン』として認識されず、いじくれない」

 

そう言いながら片手間にメニューを操作するロムニ様。

 

「この『ダンジョンとしての領域』をメニューからDPを使用して延ばすことによって、ダンジョンコアは領域に指定されたその中と周りの映像を見聞きすることが出来るようになる」

「ふむふむ」

「つまり、その村まで領域を延ばし、村を領域に指定することによって、村の中の情報を仕入れることが出来る。少しDPはかかるが」

「どれくらいかかるんです?」

「今調べてみたが、村まで延ばすだけでおよそ100,000DPほどかかるな」

「それ本末転倒では?」

 

ダンジョンを守る情報を仕入れるためにダンジョンを守れるだけのDPを残さず使うのでは本末転倒甚だしい。少し博打的な判断になるが、仕方ない。

 

「ここは、人間達はダンジョン内のお宝を手に入れるためにダンジョンを攻略している。と考えてダンジョンを作るのがいいと思うんですけどどうです?」

「お宝を減らして入ってくる人間の数を減らす方向で行くとして、それが無難か」

「あ、それなんですけど、わざとお宝を置いとくのもありというか、そっちの方がいいかもしれません」

「何故だ?」

「人間達はこの世界でいくつものダンジョンを攻略しているわけで、お宝がないとわかればすぐにでも壊しに来るんじゃないかと思いまして。お宝があればとりあえずお宝を見つけきるまで。つまり価値があると判断される限りは残されるんじゃないかと」

「・・・なるほど。ただ、それだとニンゲンを殺せないのはどうする?」

「人間を殺すにしたって、それ相応の戦力がなきゃ無理でしょう。人間側の戦力が分からない以上、生き残るのを優先するべきかと」

「それもそうだな・・・」

 

そんな訳で、とりあえずお宝か、それに準じる価値あるものをダンジョン内に配備する方向性で決まった。あとはそれ以外の部分を詰めていこう。次に決めるべきは使うモンスターの種類か。

軽く見て回ったけど、やはり強いモンスター賢いモンスターは高い。基本10万DPから始まる。後々提案したいこともあるしここは―――。

 

「ロムニ様、俺的にはスケルトン系のモンスターとかいいと思うんですけど、どうです?」

「スケルトン系?」

「今一通りモンスター見てたんですけど、植物系ってほとんどが火に弱そうなモンスターばかりなんですよ。罠系も含めて。で、スケルトン系の欄見てたんですけど―――」

 

言いながらメニューを拡大し、先程までこっちが見ていた画面をロムニ様に見せる。

 

「レイス系、いわゆる幽霊もスケルトン系に含まれてるんですよね。というか、一部のモンスターが複数の種族に合致するようで。んで幽霊っていったら基本物理無効とかじゃないですか。当然火も効かないでしょうし、これなら苦手分野にも対処できるんじゃないかと思いまして」

「なるほど。火に関しての懸念を考えてか。いいんじゃないか」

「随分あっさり認めるんですね?」

「私も初めてだからな。柔軟に意見を取り入れてるだけだ」

「なるほど?」

 

そういうことらしい。初めてならむしろ手を出さないでほしいんじゃなかろうかとも思ったが、ロムニ様は失敗する方を懸念しているようだ。まぁ失敗したらそのまま死ぬだろうしな。

・・・そうなったら俺はどうなるんだろう?今は考えるだけ無駄だと思うけど。

 

「スケルトン系・レイス系を主体に置くのは私も賛成だ。他に何か案はあるか?」

「あっと、えーっと・・・指揮系統を任せるために一体、ボス的な奴を出してみたいんですけど」

「ボス?」

「そうです。これからダンジョンを拡張していくにしたって、俺たちが四六時中ダンジョンの様子を見てるわけにはいかないでしょう?なら、最初から細かい指揮系統を任せる相手もいた方がやりやすいんじゃないかなって思いまして」

「ふむ・・・。そうなると、出すのは私たちと同等に知能のあるモンスターということになるか」

「なにか問題でもあるんですか?」

「知能のあるモンスターというのは高い。安いレイスでも最低7万DPもする。一体でも出してしまえば他に回せるDPはかなり減る」

「なるほど・・・」

 

ロムニ様の意見にも一理ある。正直言うと、『ダンジョンボス』という響きがすごくよかったために提案した部分もあるので、ここは大人しく引き下がることにする。しかしそうなってくると、最初に考えるべきはどこにリソースを使うかということになるかもしれない。

そうなってくると、火に関する懸念も一回忘れるべきかもなぁ。

 

「ロムニ様はどこにリソースを使うべきだと考えてます?」

「私はモンスター重点で使うべきだと考えている」

「ふむ。つまりモンスターによる守り重視ですね」

「そうだ。残りは予備に備えておきたい」

 

ロムニ様はダンジョンそのものの広さより、モンスターで守る方向性で行きたいらしい。俺としてはメインはダンジョンの広さと罠で行きたい。モンスターは言ってしまえば消耗品だ。一度使ってしまえばなくなってしまう。それではじり貧になる可能性も十分に考えられる。その点罠なら一度使っても物によっては再使用できる。この点はかなり大きい。問題はどうやってロムニ様を説得するかだが、現時点では無理だろうなぁ。

 

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