ダンジョン大好きダンジョンマスターが理想のダンジョンを作るまで 作:一一生寝てたい一
ダンジョンが完成した日、食事を取らないまま何時間もぶっ通しで作業していたことに気づくと同時にお腹がなる。ちらりとロムニ様の方を見ると不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「なんだ今の音は?」
「俺の腹の音です・・・」
「腹?ニンゲンは腹から音がするのか?」
「・・・え?」
衝撃的だった。ダンジョンコアはなんと腹が減らないというのだ。いや、それよりも衝撃的だったのは、ロムニ様が今の今までご飯を食べたことがないというのだ。
生まれてからおおよそ三年ほどが経過しているらしい。その間一切何も食べていない。これは食事幸福度の観点からまったくもってよろしくない。実によろしくない。
これは由々しき事態である(三度のご飯大好き)。
「ロムニ様、ご飯DPで出してもいいです?」
「それは出さなくてはいけないものなのか?」
「食わねば死にます。ゼリー子も、ゴブリン達も」
「それは大変だな」
「実際モンスターはどうか知りませんが、自分は食わないと死にます」
「わかった。モンスターたちの分も含めて出していい」
「ありがとうございます」
メニュー欄から一通りのご飯を見る。
「オムライスにクリームシチュー、変わり種でポルシチなんかもあるのか。まぁオムライスでいいか」
自慢ではないが、俺の舌は子供の味でも楽しめる。とくに量があるといい。なのでここはオムライス(大)を出すことにする。お値段8DP、そこそこする。
「もう少しコスパいいのを探さないとダメですかね」
「これは一日に一個でいいのか?」
「できれば一日に三回欲しいですね。すると24DP」
「結構するな。なんとか安くしたいが」
「セットメニューとかなら安く済みそうです。そっちでなにか探してみますかね」
オムライス大をゴブリン2匹に出す。ゼリーは5匹で1皿で大丈夫だろう。これで32DP。人数が増えればもっとするだろう。食費は結構気を遣うべき対象かもしれない。
机なんぞないので床に座っていただくことにする。
「んじゃいただきます・・・結構おいしいな」
一口食べるたびに卵の甘さと米の絡んだ旨味が口の中に溢れる。そこにケチャップの酸味が交じり合い、店に出しても恥ずかしくない味に仕上がっている。
とろとろの卵の食感に舌鼓を打っていると、横から視線を感じた。
「・・・」
「・・・」
ロムニ様がこちらを見ていた。いや正確には俺の手元のオムライスを見ていた。
「・・・食べます?」
「いいのか?」
「ええ、足りなきゃまた出せばいいですし」
「なら頂こう」
言うや否や俺のスプーン(オムライスと一緒に出てきた)を奪って一口食べるロムニ様。そんなに食べたかったのか。もぐもぐと咀嚼していたが、しばらくするとぴたりと動きを止める。
(もしかしてこっちの世界の生物には毒だった?)
人間でも住んでいる場所によっては消化できるものが違うこともあると聞いたことがある。とくになにも考えずに渡してしまったが、これで体を壊されたらどうなるだろう。俺が一から十まで信用されているということはないだろうから、よくて追放。悪ければこの場で処刑とかだろうか。
冷汗が頬をつたるのを感じるが、拭くのも忘れて次になにが起きるかを待つ。それ次第で俺の命運が決まるのだ。
少しして、やっとロムニ様が言葉を発す。
「もっと出せ」
「へ?」
「このおむらいすというやつをもっと出せ。DPを使ってかまわない」
「あ、はい」
言い終わるとすぐに食事を再開するロムニ様。よっぽどお気に召したのかかなりのハイペースで口に運んでいる。それでももともとの品の良さが出ているのか、決してがっついていたりといったようには見えないからすごい。
言われた通り追加でオムライスを出してそっと近くに置いておく。このオムライス、大と言うだけあって一皿で2.5人前くらいはあるように見えるのだが、それがあっという間にロムニ様の口の中に消えていく。一皿目を完食し終えるとそのまま二皿目にかかるロムニ様。もしや食欲魔神なのだろうか。
「美味しいなこの料理」
「そんなにお気に召しました?」
「気に入った」
「それはよかった」
「もっと出せ」
「まだ食べるんですか!?」
二皿分計5人前を食してまだ足りないときた。いったいあの細い体のどこに入るんだ・・・?
結局そのまま4皿計10人分をぺろりと平らげた。すさまじい食欲と言わずを得ない。
「満足しましたか・・・?」
「ああ。また明日頼む」
「明日も食べるんですか!?」
この量を毎日となるとほんとにヤバイ。食費がヤバイ。ロムニ様だけで32DPも使うことになる。なんとかして安くて量のある料理を見つけなければ。
「なんかないかなんかないか・・・お」
「ん?」
「パンの詰め合わせなら安く済みますね。これなら6個で15DPです」
「ぱん?・・・それはなんだ?」
「うそ?もしかしてパンもないんですかこの世界?」
「少なくとも私は聞いたことがないな。いや食事に興味がないだけでもあったが」
「水も今のうちに出しときます。これは樽で5DPですね」
「それも必要なのか?」
「ええ。ゴブリン達も必要だと思いますよ」
「・・・ふむ。これから食事に関することはお前に任せる。かかったDPに関しては記録を残しておくように」
「へ?やれって言われればまぁやりますけど・・・」
突然なにか言い出したぞこのダンジョンコア様。食事の管理って結構大事だと思うんだけどな?まぁ組織のトップがやる事かと言われたら違うけど。
とくに断る理由もないし、これで信用が稼げるならまあ別にいいだろ。
さて、時間は少し進み夜。俺は深刻な問題に対面していた。
(トイレが・・・ない!)
そう、なんとこの空間トイレがないのである。見渡してみた限り白い空間のここには、トイレもなければドアもなく、どうやって外に出るのかまるで分からなかった。
食べれば出さなければならないのが人間であるので、この状況はものすごくつらい。本能寺の変で燃え盛る中出ること叶わず散った信長もきっとこんな気持ちだったのだろう。
「困った・・・」
「さっきからどうしたんだ?」
「あ、ロムニ様。あのですね、ここってお手洗いどちらにあります?」
「お手洗い?・・・ああそうか、ニンゲンは必要だったか」
「いりますいります。ゼリーたちとかゴブリンもいるんじゃないですかね?」
「あいつらが出す分はこっちで回収するから大丈夫だ」
「・・・え?」
「どうした?」
「いや出す分を回収って・・・こっちでやりましょうか?上の者のやることじゃないでしょう」
「出たものをコアの機能で回収するだけだぞ?」
「あ、あー・・・そっか、それでいいのか。そしたら俺もそれでいいのでは?」
「・・・確かにそうだな?」
このダンジョンコア様、やはりポンコツなのではないだろうか。いや、初めての事態にそこまで上手く立ち回れるかと言われたら俺も自身はないんだけど。
その後仕切りを作ったりなんなりをしながら、最初の一日は過ぎていった。寝床と仕切りづくりにまた少しDPを使った。
初めての侵入者が現れたのは三日後だった。
「・・・なんとか黒字で済みましたね」
「スケルトンが一体でもやられていたら赤字だったな」
今しがた笑いあいながら立ち去って行った冒険者たちを見送って呟く。
ダンジョンが完成して飯の話が終わって、それから初めての侵入者が来るまでおよそ三日かかった。その間ロムニ様と一緒に見張っていたわけだが、とくに何も起きず。
「さっきの冒険者たちが滞在していた間DPがもらえましたね」
「一人当たりのDPもマップに出ていたな。あいつらはそれぞれ25DPだった」
「うーん?DPの増加量は7しか増えてません。これ一日当たり25DPなのでは?」
「かもしれないが・・・算術もできるのだな」
「そりゃできますよ?」
冒険者たちがこのダンジョンに滞在した時間はおよそ3時間。一日が24時間なのはメニューに出ている時間から把握済み。ざっと計算して約7DPだと思うんだけど・・・なにか間違えたか?
「しかしこれだと稼ぎが悪すぎますね・・・」
「そうだな。二人が3時間滞在して7DPではな」
意見が一致した。これだとあまりにも稼ぎが悪すぎるのだ。なんせ二人組の冒険者が3時間滞在してわずか7DP。滞在費だけで稼ぐのはあまりにも効率が悪い。しかも今回はモンスターを倒されずに済んだが、倒されればそのままそのモンスターの分も失うかもしれないのだ。ちなみに地脈分は食費でほぼ±0だった。
「殺したらもっと手に入る、とかあるかもしれませんね」
「ほかに稼いでいるダンジョンがある以上、なにかしら確実にプラスにする方法があるのは間違いないはずだ」
ほかにもダンジョンってあるのか。そういや自分で662番コアって言ってたもんなロムニ様。どうやって知ったのか知らないが、稼いでいるダンジョンがあるなら何かしら手段があるんだろう。
そろって頭を悩ませていると、ふとさっきの冒険者たちの会話が脳裏に浮かんでくる。
「そういや、うちの薬草は加工するとマナポーションになるって言ってましたねあの冒険者たち」
「そういえば言っていたな」
「ほら、メニューにお宝回収って項目あるじゃないですか。今まで気にしてなかったんですけど、薬草をポーションにして回収したらDPにならないかと思いまして」
「・・・やってみる価値はあるな」
ロムニ様からも許可が下りた。となれば善は急げだ。
メニューのお宝からポーション作成初級の本を探し出してDPで出す。お値段1,000DP。
これによると追加でポーション作成用の台もいるらしいのでそれも合わせて出す。これが30,000DP。計31,000DP。残り39,000DP。
ポーション台は樽のような入れ物が上についていて、その下に大きなガラス瓶のようなものが、さらにL字型にガラス瓶から管が伸びている。説明によれば上の樽に薬草を、ガラス瓶に水を入れたのち、管から魔力を加えることによってマナポーションやヒーリングポーションが完成する。
完成したポーションや材料を入れるための入れ物に樽を出す。これは一個で10DP。使いまわせるかは分からないのでとりあえず三個出しておく。こういった細かいのは計算に入れないことにする。水は樽入りのを出す。
とりあえずこれで一通りの道具はそろった。そのままそそくさと準備を済ませる。
「さて、準備は終わったわけだが」
「えーと?本によるとまず材料の薬草を集める必要がありますね」
「問題ない。この間にゴブリン達を使って樽に集めさせてきた」
「了解。そしたら次はポーション台の、上の入れ物に薬草を入れて横のレバーを回す」
「わかった・・・いいぞ」
「これで薬草等々は潰されて、いつでも成分を抽出できる状態のはずです」
「次は?」
「下のガラス瓶の中に水を入れます。この樽をいったん外してそこから入れるそうです」
「ゴブリン達にやらせよう。あいつらにも仕事を与えなければな」
「水はどこから出します?」
「樽入りの水が10DPで出せる。それでいいだろう」
「了解です。そしたら次は・・・ガラス瓶に管から魔力を入れる?なんだこれ?」
「ん?ニンゲンには魔力がないのか?」
「え?あるんです?」
「あるはずだが・・・そういえばお前、『浄化』は使っているのか?」
「『浄化』?なんですそれ?」
「誰もが使える生活魔法の一つだが・・・その様子だと使っていないのか。どうりで臭いわけだ」
「え?俺臭いです?」
「うむ。かなり匂う」
「そんなに?・・・その『浄化』の使い方教えてくださいません?」
「いいぞ。お前のにおいはもともと気になっていた」
自分の臭いって気づかないもんだなぁ・・・。
それから少しして、俺の身体と服は清潔になっていた。
「ものっすごいシャワシャワする」
「そうだな。それが『浄化』だからな」
「これも魔法なんですよね?」
「そうだがメニューもそうだぞ」
「あれはこう・・・なんか違う気がしますので」
「そうか?」
『浄化』はかけた相手を清潔にする魔法だ。埃や土埃なんかを取り除いてくれる。これさえあれば風呂いらずというわけだ。俺は自らのイメージと魔力(なんか体の内側から炉ぼってきたエネルギー?)を使ってこの魔法を発動した。つまり俺の中にも魔力があるということがわかった。こうなってくると管に魔力を通すのは俺でもできるはずなのだが。
「ロムニ様はやられないんです?」
「なにをだ?」
「管に魔力通す奴です。別に俺じゃなくてロムニ様がやれるならそれでもいいのでは?」
「魔力をやみくもに消費したくない」
「なる・・・ほど?」
そういうことらしい。これは俺がまだ信用されきれてないんだろう。まぁ三日一緒に過ごしたって言ってもそれだけだしなぁ。
「まぁそういうことなら俺やりますね」
「頼んだ。魔力を体から管に通すだけだ」
「あい」
ポーション台の横、所定の位置につく。管の入口についた蓋を外し入口に手を当てる。そのまま『浄化』を使った時のように体の中から力をひねり出すイメージで・・・。
「ふん!ふぬぬ・・・!」
「・・・」
「おぁ・・・!おぉ・・・!」
「・・・・・・」
「・・・なんかあまり出ないんですが」
「ふむ?魔力量が少ないのか?」
どうにもうまくいかない。まだ俺が魔力の扱いという奴に慣れてないからか?少しずつ入ってはいるが、この様子だと一時間くらいかけないと十分な魔力は溜まらないだろう。
「やっぱりロムニ様がやられては?」
「さっきも言ったがそれは出来ない」
「むーん・・・」
「時間はかかるが、お前がやってくれ。やるうちに魔力量も増え効率もよくなるはずだ」
「そうなんすか・・・」
これ、やはり体の中のエネルギーを使っているんだろうな。わずかに倦怠感のようなものをさっきから感じる。これをあと一時間もやったらぶっ倒れるんじゃなかろうか。
それから一時間が経ちまして。
「おぁーうぁー」
「よしよし。魔力はしっかり溜まったな」
「こっちは無視です!?」
「ああ。ご苦労だったな」
「塩対応・・・!」
俺は地面に横たわっていた。もちろん好きで転がっているわけではない。ポーション台に必要な魔力が溜まると同時にぶっ倒れたのだ。現在ごろごろ転がっている俺を傍目にロムニ様は魔力(青い霧のように見える)の溜まったガラス瓶を見て満足そうにしている。
「これで次に移れるな」
「次は樽の中の薬草類をガラス瓶に移すそうです。樽の下の蓋を外せばいいみたいですね」
「これか」
どばーっと潰されて細かくなった薬草類が魔力と水の入ったガラス瓶の中に突っ込まれる。
「これであとはしばらくほっとけばいいみたいです」
「なにが起きるのだろうな?しばらく見ておくか」
「面白そうですし俺も見ますかね」
二人仲良くガラス瓶を見ておく。少しすると水に薬草の成分が吸い込まれて水の色が変わり始めた。透明無色から徐々に青色へと。するとそこで不可思議なことが起き始めた。
「これは・・・」
「魔力が水に吸い込まれている?」
「みたいですね。なるほどこれでマナポーションになるのか」
そのまましばらく見ているがゆっくりと魔力が吸い込まれていくだけだ。これ以上の突然の変化はないらしい。
「後は放置ですかね?」
「みたいだな・・・この調子だと半日ほどかかるか」
「その間どうしますか」
「ダンジョンの見張りをやっておこう。誰かくるかもしれん」
さらに半日が経って、別口に買っていたろ過装置(1000DP)を通してようやくマナポーションが完成した。完成したのだが・・・。
「・・・」
「一回分でおよそ1000DP・・・」
「元を取ろうと思ったらこれを半月はやらないとか」
「まぁでも元手はほぼゼロですし、効率はいいのでは?」
「ダンジョンコアがダンジョン以外で稼ぐのはどうなんだ?」
「いまさらそれ言われるんです?・・・別にいいのでは?」
「気にするだけ損ではあるか・・・」
一回分(水入りの樽一つとほぼ同量だった)をそのまま換金したところ中身だけ消えておよそ1000DPが入った。半日でこれなら元を取るまでにおよそ半月ほどかかる計算だ。
「まぁいい。材料の薬草はゴブリン達に取らせてくる。水は必要になったら随時出せ」
「それはこれを続けるってことです?」
「出してしまった以上はな。せめて元手を取るまでは続ける」
「まぁ元手は取りたいですよね」
その気持ちはすごくよくわかる。ところで、
「俺が全部やるんです?これ」
「お前は召喚された身なんだ。それくらいはやれ。飯代もただじゃないんだ」
「まぁやりますけど・・・」
そういうことらしい。まぁただ飯食うのは気分悪いし別にいいんだけど、人使い荒くないか?
話単位にしたら予想外の速度で書き溜めがなくなっていく・・・。これは結構早い段階で書き溜めがなくなるやも