ダンジョン大好きダンジョンマスターが理想のダンジョンを作るまで 作:一一生寝てたい一
二組目の冒険者が帰るのを見送り、一息つく。
「ふいー・・・。なんとかダミーダンジョンコアは破壊されずに済みましたね」
「そうだな。しかし」
「ダミーダンジョンコアの存在自体は冒険者たちも知っていたことですか?」
「そうだ。やはりダミーダンジョンコアだけでは危険だな」
「場所を念入りに隠しましょう。それと戦力の強化ですね」
「・・・」
「どうしました?」
「お前と話していると頭の中を読まれている気がする」
「ええ・・・。そんなことを言われましても」
大分理不尽な物言いを受けてしまった。そんなことを言われても、お互いに思考の方向性が似ているのか、どうにもロムニ様の言いたいことは先にわかってしまうのだ。それは仕方ないことなのだ。
「戦力はどうするんです?新しいモンスターを呼びます?」
「そのつもりだ。呼ぶモンスターなんだが、既に決めてある」
「へえ?」
どうやらロムニ様、既に方向性を決めていたらしい。
「さっきのを見ていた限り、やはりスケルトンでは戦力が足りない。必要なのは個で高い戦闘力を持つモンスターだ」
「ってことはボスです?」
「そうだな。スケルトンの指揮もできればできるくらいの奴を呼びたい」
「指揮は俺か、ロムニ様がやればよいのでは?」
「お前にやらせるには今一つ信用できない。私は最悪前線に出る」
「なるほど・・・。でも今そんなにDPありましたっけ?まだ換金していないポーションを換金しても約44500DPくらいしかないですよね?」
「そこなのだが、これを見てくれ」
そう言ってロムニ様はメニューを開いてこっちに見せてくる。そこに載っていたのは、
「アルラウネ・・・。たしか植物系モンスターの一種ですよね?」
「そうだ。ニンゲンと同等の知能があり、自分で考え行動する。加えて魔法も使え、召喚した後の成長も期待できる」
「それはわかりますけど、DP結構かかりませんでしたっけ?80000DPほど」
「私もそう思っていた。ところがさっき見たら、50000DPまで減っていた」
「へ?なんでです?」
「おそらくダンジョンが緑よりだからだろうと思う。つまりモンスター召喚にかかるDPはダンジョンの内容にも影響を受けるらしい」
「なるほど。ってことはあと三日かけて残りの6000DPを稼いで」
「アルラウネを召喚する。これが私の戦力強化案だ」
「アルラウネが植物系だから燃やされた時があいかわらず不安ですが、いいんじゃないですか。それでいきましょうよ・・・ところで」
「ん?」
「やっぱりこれからポーション作るのも俺の役目なんです?」
「それはそうだが」
「あ、はい」
あれきついからできれば交代でやりたいんだけどなぁ・・・。
それから三日経って、相変わらず俺はポーション作っては倒れてを繰り返していた・・・わけではなかった。
「なんか、魔力容量みたいなのが増えたんですかね?ポーション作っても倒れなくなりました」
「みたいだな。魔力は使いこむことで増えるのか」
「こりゃいい。活動時間が延びた。なんか他にすること・・・ないですね」
「ないな。ダンジョンを見ておくくらいか」
「あ、そういや魔法のスクロールがあった」
「そういえば渡していたな」
そうだそうだ。他のことに気を取られて忘れていたが、そういえば魔法のスクロールを回収していたんだった。アルラウネを無事出し終えたらそっちの確認をするとしよう。
「さて、今日はアルラウネを出すんですよね?」
「そうだ。お前が作ったポーションを換金して召喚する」
「どうしましょ、なにかそれっぽい雰囲気とか出した方がいいですかね?」
「DPもないのにか?」
「・・・そういやそうでしたね」
そう、ポーションを換金しても約52500DP。そこからアルラウネ分を引けば残るのはわずか2500DPぽっちなのだ。もはやほとんどなにもできないに等しい。
「なに、アルラウネを出したらそいつにもDP稼ぎを手伝ってもらう。容器さえ出せばポーション稼ぎの効率は倍になる」
「ああ、そうか。なにも精製に半日かかるからってそれまでぼんやり待つ必要もありませんもんね」
「今まではお前の回復待ちの時間に使っていたのだがな。人数が増えるなら待つ必要もない」
「そうですね。自分の負担は減らないんでなんとも言えませんけど」
「さて、さっそく召喚に移ろう。換金はもう済んでいる」
「手が早いですね。じゃ早速行きましょうか」
「・・・すこし興奮していないか?」
「そういうロムニ様こそ」
実をいうとすこしではなくかなり興奮していた。なにせボスだ。ダンジョンと言えばボスは決して抜けない要素であり、ある種ダンジョンの格を決めると言ってもいい。そんなのだからこそ酷くそそる。若干妥協しているのが残念だが、まぁそこは仕方ないので目をつぶる。
「さて行くぞ・・・来い、アルラウネ!」
ロムニ様がメニューをタッチすると同時に、その眼前に、スケルトンよりも大きめの魔法陣が広がる。
「おおー・・・陣も大きめですね」
「そうだな。これは期待できそうだ」
一度広がった陣が輝きを増していくと同時に、だんだんとその中に一つの姿が浮き上がっていく。巨大な花びらから人間の上半身が伸びているそのシルエットは、一目で人外の者ということがわかる。すこししてはっきりとした姿を取ったそのモンスターは閉じた瞳をぱちりと開き、まっすぐにロムニ様を見つめる。
「アルラウネ、召喚に応じて参りました」
「モ、モンスターだ・・・」
「気持ちはわかるが今は静かに。私がダンジョンコアのロムニだ」
「お初にお目にかかりますロムニ・・・様?」
「うむ」
「おおー・・・」
初めて見る、スケルトンの時にはなかった人の意思を持ったモンスターの登場にテンションはもはや青天井である。
じーんとした感動が足の先から頭の上まで貫く。
「ええと・・・」
「ん?どうした?」
「その、ロムニ様はコア番号はお持ちではないのですか?」
「ああ、662番だ。それをロムニ、と呼ぶらしい」
「はぁ・・・なるほど。その名付け主の方は・・・」
「そっちでさっきから体を震えさせている男だ」
「そう、その方なのですけど」
「どうかしたか?」
「ニンゲン・・・ですよね?」
「ああ」
「その、よいのですか?」
「私がガチャで召喚したモンスターだ。問題ない」
「ああ、そうでした・・・か?え、いやでもニンゲンですよね?」
「ニンゲンだとまずいのか?」
「だって、その、裏切ったりは・・・?」
「今のところ、そんな気配はない。それにさっきも言った通りガチャで呼んだ。そこまで危険性はないと判断している」
「はぁ・・・。ダンジョンコア様がそうおっしゃるのであれば、わかりました」
俺があまりの感動に身を震えさせている間、お二方の間でなにか会話があったらしい。ロムニ様から離れてアルラウネさんがこっちに来る。
「ええと、その、ニンゲン・・・さん?」
「喋った!!!」
「ええ?その・・・」
「あ、すいません。つい興奮してしまって。お初にお目にかかります、斎藤悠馬と申します」
「サイト―ユーマさん、初めまして」
「悠馬でお願いします。いつもそっちで呼ばれていたので」
「えぇ・・・ユーマさん、同じモンスター同士?改めてよろしくお願いしますね」
モンスターだ。喋るモンスターだ。再三になるがもはや俺のテンションは青天井を貫いて大気圏外にまで達している。いやロムニ様もそうなのだが、ロムニ様は見た目は人外じみた美貌を除いて人のそれだからなぁ。
パンパンと手を鳴らしロムニ様が注目を集める。
「さて、アルラウネ。お前には個として、このダンジョンにおいて大きな戦力になってくれるものと期待している」
その声を聞いたアルラウネが、おしとやかな微笑みを浮かべてお辞儀する。
「ありがとうございます、ロムニ様。必ずやそのご期待に添えて見せます」
「いい・・・!これが俺の求めていたダンジョンだよ・・・!」
「そこの男は放っておけ。さしあたり、お前に名前を与える」
「名前・・・!ネームドにしていただけるのですか!?」
「ああ。お前にはそれほどの期待がかかっていると思え」
「ええ!必ずやご期待に添えて見せます!」
「いい光景だ・・・」
「さて、お前に与える名前なんだが、ユーマ・・・そういえば初めて名前を知ったな」
「ニンゲンで済んでましたもんね。それでなんです?」
ロムニ様とアルラウネの話に耳を傾けていたら突然こちらに話が回ってきた。はてなんだろうか?
「名づけに関して、お前の意見を聞きたい。私の時もそうだが、お前の名づけはユニークだ」
「へ?そりゃいいですけど・・・いいんですか?」
「せっかくだ。面白い名前をつけてやってくれ」
「はぁ・・・アルラウネさんはそれでいいんですか?」
「ロムニ様の発案ですから。謹んでお受けするだけですわ~」
「なら・・・そうですね・・・」
思いもよらぬ役割がこっちに回ってきた。まさか名付け主になれとは。俺の記憶ではロムニ様、自分で名前をつけることにこだわっていた気がするんだけどなぁ。
あれか。ゼリー子でまさか満足したのか。
しかしどうしようか。せっかくなら面白い名前を、と言われたのでただ短縮した名前を付けようものなら冷ややかな目を向けられるのは間違いない。なら、そうだなぁ。アナグラムとかどうだろうか。そうなると、ええと・・・。とりあえず紙とペンを出すか。
「アルラウネはつづりがこうで・・・」
「それはなんだ?」
「俺の世界でのアルラウネの書き方です。これを組み替えて、いや作れる組み合わせがほとんどないな・・・」
「決まったのか?」
「ちょっと待ってください・・・」
困った。アルラウネというつづりからはほとんど組み替えて作れる文字が無い。となると一部抜いて・・・。
「ランとかどうでしょう?一応花の蘭ともかけてるつもりなんですけど・・・」
「ふむ。アルラウネはどうだ?」
「いいと思いますわ。響きが綺麗で気に入りました」
「そうか。ではお前は今からランだ。そう名乗るように」
「拝命いたします」
そう言って丁寧な所作でお辞儀するランさん。どうやら名前は気に入ってもらえたらしい。考えた価値があったというものだ。
「さて、ラン。名前も決まったとところでお前に仕事を与える」
「初仕事ですね。なんでしょうか」
「そこの男と協力してマナポーションの生成に当たれ。それを換金して我がダンジョンの金策とする」
「いきなり世知辛いのが来ましたわ。了解いたしました。これよりポーションの生成に当たります」
「頼んだ。それともうひとつ」
「?」
「今ある我がダンジョンのボスをお前に任せたいと思っている。ついては侵入者が来た時の対処や監視を任せることがある。そのことを了承しておいてくれ」
「・・・!重ねて承知いたしました。ボスとして、確かな戦果を約束いたしますわ」
「任せたぞ。さて、役割も決まったことだ。すぐにとりかかってくれ」
「わかりました」
「了解です」
こうして新たな戦力のランさんを仲間に加え、俺たちのダンジョン作りは続くのだった。
投稿。あと二話分しか書き溜めが無くて困ってます。