拙い文章ですが読んでいただければ嬉しいです。
第一射 魔法科高校の絶叫生
「やっべぇ……寝坊しちまった……」
少年はスケートボードに駆りながら呟く。
今日は国立魔法大学付属第一高校、通称魔法科高校の入学式。
今日から魔法科高校の一年生である少年は第一高校のシンボルマークである八枚花弁の校章付きの緑と白の制服のに長い裾をなびかせて颯爽とボードを乗り回す。
しかし入学式の開始時刻まであと三十五分…最寄りの駅から八分程の場所だが、それを さらに短縮させるために彼はボードを駆る。
その理由は、
「達也絶対怒ってるよな。
と言うか深雪に抹殺される」
友人を待たせているようだ。
待ち合わせ場所は入学式の行われる講堂前。
どうせクラスが違うのはわかりきっているが性格柄と本人の雰囲気で人付き合いが苦手な(というよりも相手に警戒される)彼としては旧知の友と言うものはいないと困る。
少々青ざめた表情で新入生の父兄と思しき大人達の間を疾走しているとだんだんと目的地の門が見えてきた。
そして門の前でボードのテールを立てて止まる。
「おぉー
パンフで見たけどやっぱでけぇなぁー」
学内ではボードなどの乗り物の搭乗は禁止されていることを知っているため後ろに背負っているリュックサックにボードを差し込み目的の講堂へと走り出す。
周りを見ながらキョロキョロ見ながらほぉ~とかはぁ~とか良いながら走る少年。
「そこの君、止まりなさい!!」
そんな風に余所見をしていたためか少年は前から近づく黒髪の少女の存在に声をかけられるまで気付かなかった。
「ん?
ってうわぁあああ!!
車は急に止まれませんよぉおおお!!」
全速力で走っていた彼は目の前まで迫っていた少女にぶつからない為に斜め上へと飛び上がり魔法を発動、それと同時に魔法によって少女の頭上へと空高く飛んでいく。
その少年の着地点には今時ホームセンターで見かけるかどうかわからなくなってきた水色の大きなポリバケツ。
「あれ?
これってお約束のあれ的な?」
ゴミの清掃は大体がロボットが行ってくれるこのご時世でなぜそこにポリバケツが置いてあるのかはわからないが百八十cm近い巨体は講堂へと向かっていく人混みを飛び越えて青い大きなポリバケツに吸い込まれていった。
◇ ◇ ◇
「お、おい!!
大丈夫か?」
先ほど俺に声をかけてくれた少女の声がポリバケツの外から聞こえてくる。
足をじたばたさせてポリバケツを倒す。
若干の衝撃が体に走る。
あぁ……なんで横に避けなかったのだろうか……後悔先に立たずってやつだな。
「あのぉ……これ引っ張って貰っても良いですか?」
「あ、ああ」
少女の声は若干の動揺が隠しきれないまま俺の頭がはまったまんまのバケツを強引に引っ張ってくれた。
少女が少し引っ張ってくれるとキュポンと言う効果音がしそうな勢いでバケツは外れた。
そしてバケツからの脱出を手伝ってくれた少女の顔をやっとこさ認識する。
真っ黒なショートヘアー、鳶色の瞳、凛々しい顔立ち。
それは自分の幼なじみであり、この学校の風紀委員長である少女であった。
「姉上じゃあないですか。
元気だった?」
◇ ◇ ◇
姉上。
確かに目の前の黒髪の少年はあたし-渡辺摩利のことをそう呼んだ。
あたしには兄弟姉妹の類いは存在しない。
そんなあたしのことを姉上と呼んでくれる人間は世界でひとりだけ、目の前の黒い髪の男のみだ。
「お前、百合……
「おおーやっぱり覚えててくれた。
さっすが姉上、魔法科高校の風紀委員長様は
百合は頭を指でコンコンとノックしながらにっこりと笑う。
常にへらへらしている彼だが、そんな彼がにっこり笑うと不思議と安心感に包まれる。
この感覚は中学の時以来か……
「どしたの姉上?
顔真っ赤だけど体調悪いの?」
「だ、大丈夫だ!!
……おっほん!!
百合、人混みの中で全力疾走するのは危ないぞ。
この高校は敷地面積の割に生徒数は少ないがこのような行事の時にはご父兄の方々で一気に人数が膨れ上がる。
それにあたしの事を気遣ってくれたといえ魔法使用には細かな制限がある、気をつけるように」
「申し訳ありません、委員長殿」
本当に申し訳ないと思っているのかわからないがお辞儀をしてくる百合。
「所でさ、あのポリバケツ何であんな所にあったんだ?」
「……さあ?
私とてそれは知らん。
ところでお前は今までどこに居たんだ?
葬式が終わった途端に姿を暗まして……」
その後に紡ごうとしていた「心配していたんだぞ」の言葉が続かない。
心配だったというのは事実である。
でも、彼の境遇を察すれば彼のとった行動もある意味わかる気がする。
私も家族が
「うーん……何て言えばいいかなぁ?
ま、その話も追々しましょう。
なんせ俺はこの学校の生徒になったんだ、聞く機会は幾らでもあるでしょう」
「それはそうだが……」
適当にはぐらかした百合は何かを思い出したようにはっとして踵を返す。
「あ!!
ごめん姉上、今友達待たせてるんだ。
話はまた後でにしましょうぜ!!」
「あっ……待て!!
まだ話は……」
百合は先程よりもスピードを落として講堂へと向かっていった。
まあ、あいつも新入生だから忙しいのも仕方がないか。
そう思ったあたしは再び宛もなく歩き始めた。
◇ ◇ ◇
「うーん……やっぱり先に行っちゃってたか……」
入学式の開始まであと二十分強、俺-十六夜百合は講堂の階段を登りながら一人ごちる。
階段を上がると同級生と思しき人達が座っていた。
席は全部で八列あり、四列目と五列目には四人くらいが並んである居ても大丈夫そうなくらいの広さの通路がある。
基本的に座席は指定されているわけでもなく、誰がどこに座っても良い。
良いはずなのだ。
「……見事に一科と二科で綺麗に分かれてんなぁ」
前半分の人間の着ている制服の左胸と両肩には第一高校のシンボルである八枚花弁がついているが後ろ半分の生徒にはそれがない。
八枚花弁のある方は一科生、ない方は二科生と呼ばれている。
カリキュラム的に殆ど違いを持たないが魔法実技の指導を二科生は受けられない。
ちなみに俺は一科生、にしてもなんかなぁ……
「どうしても差別とかそう言うのって嫌いなんだよなぁ」
アパルトヘイト然り、性別での差別然り、人間は自分とは違う人種を見つけるとどうしても差別をしたがる。
同じ学校の仲間なのにギスギスすんのってやだよなぁ。
「お、達也みっけ」
一番後ろの比較的に人がまばらな席に座る黒髪の少年を見つけ俺はそちらへと歩き出す。
俺は差別とか気にしないし、腕を捲くればエンブレムは見えなくなるが、それをやっちゃうと正直マズい。
ま、いっか。
「よう達也、ごめんな遅れちまって。
ちょっとしたトラブルに巻き込まれちまってさ」
「構わないさ。
お前がこうして遅れるのは折り込み済みだ。
どうせ急ぎ過ぎて先輩の注意でも喰らっていたんだろ?」
「おぉう……見事な観察力。
図星ですよっと」
「厄介事に巻き込まれた割には随分機嫌が良いな。
何か良いことでもあったのか?」
「それがさ、達也達と暮らし始める前の友達に会ってさ」
「そう言うことか。
良かったな」
その少年-達也こと司波達也の隣の席に座る。
達也は中一の頃に身寄りの無い俺を家に居候させてくれた命の恩人的な奴だ。
本人は「親が居ない家が少し賑やかになった、深雪の友達も増えたからありがたい」と述べているが感謝するのはこちらの方だ。
無愛想で意地悪でシスコンな上に人が悪いけどそれも彼の愛すべき欠点。
その程度のことで避ける必要もないしいくら何でも出来る完璧超人でもそれくらいの欠点がある方が人間味があって俺は好きだ。
そんなことを思っている時だ。
「あの、隣空いてますか?」
達也の隣にどっかと座った時、後ろから声をかけられた。
振り向くと今時珍しい眼鏡美少女、年不相応の幼い顔立ちを持つものの体つき(主に縦幅)は完全に高校生のものだ。
ふむふむ……これが「ろりきょにゅー」というものですか。
「ああ。
どうぞ」
「見ろよ達也!!
俺史上最高峰の眼鏡美少女登場だぞ!!」
俺史上最高峰というのは俺自身あまり眼鏡を掛けた人を見たことがないからで……
最近は視力矯正治療が一般的に普及してきて近視や遠視という病気は過去のものになってしまった。
余程重い先天的に視力異常がない限りは視力を矯正する必要はないし、それでも矯正が必要な場合は人体に無害な年単位での連続使用が可能なコンタクトレンズを使う人の方が多くの割合を占める。
それでも眼鏡を掛けている人ってのはファッションかもしくは別の理由か……
「ん?
ああ、そうだな」
「え……美少女なんて……」
「淡白な反応だなぁ~
ごめんな、こいつ昔っからこんなんでさ。
俺は十六夜百合、こっちは友達の司波達也」
「柴田美月です。
よろしくお願いします」
俺は美月の顔をまじまじと見ているとそのきれいな金色をした瞳に目が向かっていった。
「……きれいな瞳」
「うっ……それは……その……」
彼女の持つ雰囲気と眼鏡をかけている時点で大体の察しはついていた。
俺と一緒…というのは彼女も俺と一緒の病気、「見え過ぎ病」ともいう「霊子放射光過敏症」というものだ。
この病気は所謂「感覚が鋭敏過ぎる」体質のことを指し、超常現象(この内に魔法も含まれる)において観測される
霊子放射光という物は見た者の情動に影響を及ぼすが故に霊子は情動を形成する粒子だと言われている。
つまり霊子放射光過敏症の人は精神の均衡を崩しやすい傾向にあるのだ。
それを予防するためには霊子感受性をコントロールできるようにすること、しかしそれができない人の為に代替手段も存在し、その内の一つが美月が身につけているもの-「オーラ・カット・コーティング・レンズ」と呼ばれる霊子放射光を遮断するように加工されているレンズを用いた眼鏡をかけることだ。
しかし美月のように常に霊子放射光を遮断し続けていけないほどの感受性の強さを有する人ってのはなかなか珍しい。
「あ、ダイジョブ、俺も一緒だから」
「え……そうなんですか?」
「そう。
同じ苦労を共有できる人ってことでよろしく頼むよ美月ちゃん」
空前絶後の眼鏡美少女、美月の肩を軽く叩くと俺は自分の席に着く。
俺の場合は霊子感受性のコントロールが(自分で言うのもなんだが)上手いため医師に処方されたレンズは無用の長物と化している。
そんな話をしているうちに美月の友人は達也の隣を二つ開けて席についていた。
その友人たちの中にどこか馴染みのある横顔が見えた。
髪は赤に近い明るい栗色のショートヘアー、4年前から会っていない幼なじみは成長し大人らしさを感じるものの雰囲気は昔と変わらず社交的な所も変わらない。
彼女の姿を見て一目で誰だかわかったのは言うまでもない。
「ようエリカ。
4年ぶりか?久し振り」
「ん?
あ!!」
馴染みのある少女に声をかける。
少女は友達との会話を遮られて若干嫌そうな顔をしたもののすぐに顔色が驚きの色へと変貌する。
「出たな百合・ゲラー!!」
「誰が奇術師だボケェ!!」
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
更新は遅いと思いますが最終話までお付き合いいただければ幸いです。
次回もお楽しみに!!