魔法科高校の劣等生-嘘吐きの百合-   作:ぼいら~ちん

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第十二射 Fight For……

『全校生徒の皆さん!!』

 

「な、何これ?!」

 

「う、うるさい……」

 

「うぅ……」

 

「ったく…傍迷惑な野郎も居るもんだなぁ……」

 

放課後、全ての授業が終わり帰りはどこに寄ろうかとか他愛もない話をしていると突如スピーカーから放たれたハウリング寸前の大音量の男子生徒の声が帰り支度をしていた俺達四人に襲いかかった。

 

『……すみません。

全校生徒の皆さん!!』

 

「ふむふむ……

ボリュームミスったみたいですよこいつぁ!!

これは放送機材に触ったことのないトーシロウの犯行とみたぜ!!」

 

「そ、そんなくだらない事にツッコんでいる場合ではないですよ!!」

 

「放送室のジャックって言うと結構な事態…と言うよりもマスターキーを盗んだとしたら犯罪行為だよ。

それこそ風紀委員とか生徒会が出る幕だと思う」

 

「そ、そうですよ百合兄様!!

悠長な事を言っている場合ではありません!!」

 

少しでも場を和ませようと言った俺の言葉に深雪達女子トリオによるツッコミが入った。

「お前らこそツッコミ入れてる暇じゃないだろ」と心の中で思うがこれを口に出したら何かと理由を付けられてケーキ奢らされるハメになりそうな気がしてならないのでお口をミッ●ィーさんにしておく。

 

『僕達は学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!!

僕達は生徒会と部活連に対し、対等な立場に置ける交渉を要求します!!』

 

「学内差別ねぇ……確かに俺も無くなれば良いなとは思うけど強硬手段に出る程切羽詰まってないぜ?」

 

「百合兄様、私達は行きましょう!!」

 

「そうだな。

雫、ほのか、お前らは先に行っててくれ。

俺も達也も今日は非番だし、深雪もこんな騒ぎが起これば家に帰れるだろうしな。

場合によっちゃあ戦闘行為が起こる可能性も無きにしもあらずだ。

絶対に放送室には近づくなよ」

 

「わかりました。

行こう雫」

 

「うん。

二人とも怪我とかしないでね」

 

「りょーかい」

 

「はい」

 

俺達は荷物を教室に置いたまま廊下へと飛び出す。

放送室へと向かう道には野次馬と思しき生徒の群れが何個かあったがそれは魔法による跳躍で飛び越えたりしてスピードを落とさず走り続ける。

その最中、俺は胸ポケットから携帯端末を取り出してそこから姉上の番号を探し出し通話ボタンを押す。

 

とうおるるるるるるるるん

とうおるるるるるるるるん

とうおるるガチャッ

 

特徴的な呼び出し音の三回目がなり終える前に電話は繋がった。

 

『もしもし百合か?

何かあったのか?』

 

「さっきの放送の事について聞きたいことがあるのですが……いまどちらに?」

 

『放送室の前だ。

あたしの他に部活連会頭の十文字、あと市原、おまけに風紀委員と部活連の実行部隊付きで完全包囲だ』

 

「そうですか。

俺と深雪もいまそちらに向かっているのですが、中の様子はわかりますか?」

 

『残念なことに職員室からマスターキーごと盗まれてしまってな。

完全にお手上げ状態だ』

 

「わかりました。

中の人の数とか諸々の情報がわかるまで絶対に突入などは行わないでください。

敵さんの神経を逆撫でするような行為は以ての外ですからね」

 

『そんなことは重々承知だ。

お前も早く来い。

お前の力があると今は便利な状況だ』

 

「了解です」

 

プツリと電話回線が切れたのを確認すると俺はポケットに端末を入れる。

 

「どうだった百合?」

 

「おお、達也。

いつの間にいたんだな」

 

「今追い付いたところだ。

それより現在の状況だ」

 

端末をポケットに入れたところで横合いから突然現れた達也に声をかけられる。

 

「マスターキー盗まれて現場で立ち往生。

その上遠隔視系の能力持ちもなし。

完全に打つ手なしのお手上げ侍だな」

 

腕を肩口くらいまで上げて降参のジェスチャーを取って状況の説明を終える。

 

「これもブランシュの仕業でしょうか?」

 

「流石にそれはないだろうが用心するのに越したことはないと思う。

ま、その手の連中の仕業だと思うがな」

 

深雪達とそんな会話をしながら数分走ると放送室に辿り着く。

そこには学園の三巨頭と称される人物の内二人と生徒会会計の市原先輩が神妙な面持ちで立ち尽くしていた。

どうやらまだ状況に進展はないらしい。

 

「すみませーん。

今日非番で帰る気満々だったんで来るの遅れちゃいましたー」

 

「遅いぞ。

…まあいい、百合早速始めてくれ」

 

「ラジャー」

 

俺は姉上に促されるがままに放送室の扉の前に手を添え目を閉じる。

ここからが正念場ってやつだが…何時も通りにやれば問題ないよな。

 

「十六夜君、何をしているんですか?」

 

「そういえば見たことがなかったか…

こいつの一族は剣術の大家であることは前に話したな?」

 

「ええ、確か大元は忍者の家計だと伺いましたが…」

 

「今アイツがやっているのはその忍者の技術だ。

人間が知覚できない程微弱な想子(サイオン)の波を壁越しに流すことによってその中にある物体の配置を確認している。

単純に言ってしまえば想子の波で超音波検査をしているようなものだ」

 

俺のやっている事に疑問を覚えた市原先輩が投げかけた質問はこの術の性質を知っている姉上が答えてくれた。

十六夜家の人間は代々このような想子のコントロールに長けており、俺以上の能力を持つ者だと想子で作った針金でピッキングしたりとか色んな事が出来るらしい。

分類上この技術は古式魔法に分類され一般的には仙術と呼ばれるらしいが十六夜流では特に呼び方は決まっていない。

 

「解析終わりました。

中には男四人と女一人、全員がCADを携行してますが拳銃や刃物、爆弾などの危険物は持っていないと思います」

 

「すまないな十六夜。

しかしそれがわかったところでどうこうなるという訳でもないんだが……」

 

「会頭はどのような考えをお持ちなのですか?」

 

十文字会頭が俺に感謝の言葉を述べるのと同時に達也が質問を投げかける。

 

「俺としては交渉に応じようと思っている。

まあ、そう言ったところで相手が外に出て来るかはまた別の問題だが」

 

「やはり扉を壊してでも早急な解決を試みた方が……」

 

「それは駄目ですよ姉上」

 

姉上が強攻策に出ようとする意見を俺は至って冷静に遮った。

 

「相手が武器を持っていない以上そこまで早急かつ強引なな解決を試みる必要もありませんし、寧ろその様な強攻策に出ればアイツらの同士が黙っちゃあいませんよ。

ところで警備会社の対応は?」

 

「放送室の扉のロックを解除するように要請はしたが拒否された」

 

「仕方がないですね……目には目を、歯には歯をと言うことでこちらも犯罪行為に手を染めてみましょう」

 

そう言って俺がポケットから取り出したのは小型の液晶画面。

床にそれを置き電源を入れると液晶の下部から光のキーボードが投射された。

 

「……警備システムにハッキングをかけると言うことですか?」

 

「はい。

そっちの方がドア叩き壊すよりも安上がりですので」

 

ケーブルを放送室の鍵の認証パネルに繋ぐ。

それに伴い俺は警備システムへのハッキングを開始する。

数分もしない内に放送室の扉からガチャリと音が響く。

それと同時に中がざわめき出す。

 

30km/h(時速三十キロ)でアンタらの体は背後に吹っ飛ぶ」

 

俺の呟きと共に中から聞こえてくる鈍い音と苦痛に悶える声、それらを確認すると俺は放送室へと入っていった。

 

「あなたは……十六夜くん?」

 

「やっぱし壬生先輩でしたか。

どこかで見たことのある霊子の光が見えるなぁと思ってたところだったんですよ」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

あれから数日。

放送室をジャックした上にマスターキーを盗んだ有志同盟の五人は結局お咎めなし。

何故ならあの後に真由美さんが登場して拘束していた奴らを漏れなく開放、その上有志同盟と生徒会の公開討論会を行うこととなった。

それが認められて以降有志同盟の活動は活発化し、学内に赤と青のラインで縁取られた白いリストバンドを付けた人間が結構増えた。

で、その公開討論会ってのが今日な訳だが俺はそんなものに出席する暇もなくあることに付き合わされていた。

 

「ねえ百合ぃ~なんかもっと早くするコツってないの~?」

 

「コツって言われてもなぁ……エリカの場合は気合いの問題だと思うんだけど」

 

「おーい百合ー!!

俺にも教えてくれー!!」

 

「あいあいちょっと待ってくれ~」

 

エリカとレオの実技の練習だ。

最初は放課後にエリカに誘われてコイツの面倒だけを見る予定だったのだがいざ来てみたら既にレオが練習していたのだ。

壮絶を極めた勝負(もといじゃんけん)の結果俺が一対二形式で教えることになった。

今日のお題は基礎単一系魔法の高速コンパイル及び発動、目標時間は一〇〇〇ms(ミリ秒)以内。

達也に先日コツを教えて貰ったらしくそれの定着とスピードの向上が今回の目的らしい。

 

「そろそろ休憩取るかぁ。

流石に三十分もぶっ通しじゃあそろそろヤバいだろ?」

 

「ん?

別にそんな事はないぞ。

寧ろまだまだ余裕だな」

 

「んなっ?!

お前マジかよ……俺はそんなにやってたら普通にぶっ倒れるぜ?」

 

ケロッとしているレオを尻目に俺は腰を折り、げんなりした表情で俺を見やる。

そしてそのまま後ろに体重を預け地面に腰を下ろした。

 

「仕方ないじゃない。

アンタのそれは血筋の問題なんだから」

 

「血筋、というと遺伝的な問題か?」

 

「そ。

俺の母上の生まれた「水無月家」ってのは想子保有量の少ない遺伝子を持ってる一族らしくてな、その形質が俺に遺伝した。

それで水無月家は想子消費を極力抑える術式を独自に開発して対応してるってわけ。

俺のライアー・リリーに使っている起動式にもちゃんと応用してる」

 

最近は技術の進歩で想子保有量の大小は気にならないが同じ魔法を何百、何千と使う俺としては一般的な魔法士の三分の一程の量しかないのは実戦では大きなハンディキャップと言える。

 

「そんなハンデ背負いながらも色々出来るって凄いな。

やっぱり十六夜流の名は伊達じゃないってわけか」

 

「俺は世界で一人しか居ない十六夜流の免許皆伝者だぜ?

あんま嘗めて貰っちゃあ困るな」

 

売り言葉に買い言葉とレオの世辞の意味など全く含まれていない純粋な賞賛の言葉についつい嬉しくなって胸を張る。

 

「でも…前々から気になってたんだけど、あたし達が今使ってる授業用のCADみたいな普通の起動式で魔法を発動する場合はどうすんの?」

 

「うーんと……

確か、「想子粒子変換法」っていう空気中に浮いてるエイドスをイデアから体内に取り込んで、想子粒子に分解して自らの保有してる想子に上乗せする呼吸法があるんだと」

 

「なんかアンタが好きなジョジョ……だっけ?

あれの最初の方に出てくる「波紋なんちゃら」ってのに似てるわね」

 

「「波紋呼吸法」な。

呼吸の動作自体が魔法的な意味を持っていて……簡単に言っちゃえば呼吸そのものが起動式の役割をしてるんだ。

色々ゴチャゴチャ言って訳わかんないと思うけど、要するに特殊な呼吸法で使える想子量が増えるって思っててくれればそれで良いよ。

俺もやり方とか詳しいメカニズムはわかんねぇしな」

 

俺はケラケラと笑いながら説明を付け足す。

しかし話を聞いていた二人は頭に疑問符を沢山浮かべながら(実際には見えないけど)首を傾げている。

その表情は「わかりません」と無言で訴えかけてくるのがビシバシ伝わってくる。

こんな何かを必死に考え込んでるエリカの表情も悪くないかなと不謹慎な事を考えていると……

 

ドカーン

 

「えっ?!

ちょっ?!」

 

「うわぁ?!」

 

「え?!

ちょっとエリカさん?!」

 

轟音と共に実習棟が大きく揺れた。

その揺れに耐えきれなかったエリカは俺の胸に飛び込んでくる。

揺れとエリカの体、両方の影響で倒れそうになるがここで倒れてはカッコ悪いと言うことで必死に踏みとどまった。

 

「大丈夫かエリカ、レオ?」

 

「うん、なんとか……」

 

「俺は特に問題なしだ」

 

エリカの体を起こしながら二人の安全を確認する。

取り敢えず二人に怪我は無いようだ。

しかしこの揺れ方は尋常じゃない。

それこそ何か爆弾でも外壁にぶつかったんじゃないかってくらいの衝撃が……

 

「外出るぞ。

と言うよりエリカは事務室行ってレオと自分のCAD取ってこい」

 

「え?

それってどういうこと?」

 

エリカが疑問と期待に溢れた視線を俺に向けてくる。

はぁ……コイツの好戦的な性格は矯正しないとそのうち大変なことになるぞ……

 

「結論から言えばば敵対勢力の攻撃だろうな。

無論、見かけたら奴を片っ端から叩きのめして構わない。

多分さっきの衝撃もどうせ焼夷弾でもぶちまけたんだろうな」

 

「へぇ~結構危ないねそれ」

 

「無論生徒以外ならボコボコにして構わない。

その代わり絶対に怪我とかすんなよ。

死ぬとか以ての外だからな」

 

「わかってるって」

 

「了解しました、十六夜師範殿」

 

二人とも俺の心配をよそに笑顔で言葉を返してくる。

それにつられて俺の顔も綻ぶ。

どうやら心配も杞憂で終わりそうだ。

 

「じゃあ……」

 

俺はあぐらの状態から地面に向かって力をかけそれを加速魔法で力を増幅、飛び上がったのと同時に足をほどき着地する。

 

「行こうか」




最後まで読んでいただきありがとうございます!!
次回もお楽しみに!!
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