魔法科高校の劣等生-嘘吐きの百合-   作:ぼいら~ちん

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第十三射 ばとるいんいちこー

「それより外出るって言ったってどうすんだよ?

お前はどうであれ俺達はCAD持ってないんだぞ?」

 

「お前なら魔法なしでも余裕だろ?」

 

「そんなこと言われてもなぁ……」

 

実習棟の廊下を走りながら俺とレオは言葉を交わす。

出口に辿り着くとそこから見えたのは五人のブランシュの工作員と思しき男達。

ドアの影から更に詳細な情報を得るために様子を観察する……その最中、横にいるレオから肩を指でツンツンとつつかれた。

 

「お前、やっぱりエリカと一緒に事務室に行ってくれ」

 

「……大丈夫かよ?

一人であの量は流石にキツいだろ」

 

「なんとかなるって。

それに、エリカだっていくら剣術の大家の娘と言えどCADがなければただの女の子だぜ?

それを守ってやるのがナイトの勤めだと思うけど?」

 

「な、ナイトォ?!」

 

俺の合図を待っているのエリカの方に視線を向けると「どうかした?」とでも言うように小首を傾げてこちらを見ている。

 

「……まあそれも一理あるな。

ここは任せるぞ」

 

「了解だ!!」

 

その言葉を待っていたかのようにレオはドアの影から飛び出し、その人集りへと向かっていった。

 

「俺達も行くぞ。

エリカ、ついて来い」

 

「うん!!」

 

事務室のある方向に向かって走って行く。

選んだ道は俺が密かに見つけていた木陰を通る事務室への近道。

しかしその道の先には数人の工作員。

きっと事務室にある貴重品類を盗みに来たのだろう。

 

「突っ切ってぶちのめす!!」

 

自己加速術式で自らの速度をあげ、一番手前に居た男の顔面に膝蹴りを見舞う。

そして奥襟を掴みそこを支点に背後に回り込みその背中を踏み台に高く飛び上がる。

 

「大人しく……寝てろぉおおおお!!」

 

俺の体が宙を舞う。

そして数回に及ぶ炸裂音と共に弾丸の雨が男達に降り注ぐ。

たかがゴム弾と言えど至近距離で当たれば相当なダメージになるはずだ。

聞くところによるとプロボクサーのストレート並の威力だと言うが実際に食らったことがないのでわからないのだが。

姉上とやった時になぜ怪我がなかったのかって?

しっかり当たる直前に弾丸自体を柔らかくしたんだよあんときは。

吸い込まれるように頭に当たった弾丸の影響で男達は糸の切れた操り人形のように地に伏した。

それを飛び越えた俺は空になったマガジンを抜き、太股の外側に固定していた変えのマガジンをした。

マガジンと言ってもこれはCADなので敵に投げつけたりしちゃあいけない。

 

「エリカ、怪我とかしてないか?」

 

「アンタが全部やっちゃうから怪我なんてしようがないっての。

寧ろアンタの方こそ大丈夫なの?」

 

「この程度の奴らにやられるかってんだ」

 

事務室へ向かう扉を開け再び廊下を走る俺達。

しかし事務室への一本道には敵は誰一人居らず聞こえてくるのは外からの覇気の籠った声のみである。

 

「大丈夫ですか?!

……ってあれ?」

 

事務室の窓口に大急ぎで辿り着くとその奥には縛りあげられた侵入者と何事もなく仕事をしている事務員の姿が見える。

どうやら心配は杞憂で終わったようだがそれ以前に俺はただただ唖然とすることしかできなかった。

 

「魔法科高校って事務員の人たちまで凄いんだね…」

 

「これはもうあっぱれの一言しか言いようがないな」

 

魔法科高校のレベルの高さを改めて痛感した瞬間だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「レオー、ホウキ取ってきた……

って援軍がもう着いてたか」

 

実習棟に戻るとそこには援軍として駆けつけてくれたのだろう達也と深雪がそこに居た。

その周りには無数の男、どうやらレオが綺麗に片づけてくれたようだ。

しかし焼夷剤が残っているのかまだ実習棟壁面の火は消えておらず、レオの背後で教員が消火活動にあたっていた。

 

「気にすんな。

十分間に合ったって。

百合もちゃんと俺が言ったとおりにしてくれたみたいだな」

 

「まったく心配はしてなかったんだけど…

お前ら殺しても死ななそうだし」

 

「おい!!

殺しても死なないってどういうことだ!!」

 

「そうよ!!

こんなやつと一緒にしないでよ!!」

 

「百合、悪ふざけもそれくらいにしておけ」

 

「悪い悪い」

 

悪ふざけが過ぎたらしく達也に注意されてしまった。

こんな状況では不謹慎としか言えない俺の行動だが真面目腐った雰囲気というかそういうのが嫌いな性分だということは達也もわかっているのでその一言で終わりにしてくれた。

きっと他の先生とかだったら緊張感がないだの色々言われてさぞかし面倒なことになるだろう。

 

「おいエリカ、さっさと俺のCAD寄越せ」

 

「わかってるって。

ほーれ」

 

「うわ?!

投げんなよ!!」

 

レオの口調が気に食わなかったのかレオがエリカに抗議の声をあげる。

しかしCADと言うものは案外丈夫なのでちょっとやそっとの衝撃では壊れない。

確かにCADは精密機械だが結構タフな状況下(それこそ戦場など)での使用も想定されているためである。

そんなことは魔法師の卵と言えど常識の範疇なのでエリカはあえてそれを無視する。

 

「ところで達也、こいつはいったい何だ?

やっぱしブランシュの野郎どもが攻めて来たってことだよな?」

 

「ああ。

生徒でなければ(・・・・・・・)手加減は無用だ」

 

俺の聞きたい言葉に付けたして戦いたくてうずうずしているエリカ向けの言葉を発する達也。

その表情に揺らぎはない。

 

「アハッ、高校ってもっと退屈なとこだと思ってたけど案外楽しいことあんじゃない」

 

「エリカ、何事にも限度ってものがあるぞ」

 

「そ、そんなことはわかってるっての!!

いいじゃない!!

ここまでの道中に遭った敵はみんなアンタがやっちゃったんだからあたしがはりきっても!!」

 

「おー怖え~

好戦的な女だなぁ」

 

「黙らっしゃい」

 

レオの先ほどの無視されたことに対しての報復とでも言わんばかりに放った言葉にエリカはカチンと来たらしく特殊警棒を持った右手を振り上げる。

しかし流石にそんなものでぶっ叩けば危ないことに気付いたらしくその中ほどまで上げた手をぴたりと止めゆっくりとおろした。

 

「ほらお前らぼさっとしてないでさっさと行くぞ。

どうせ狙いは実験棟か図書館だ」

 

「待ってください百合兄様。

何故そう思っていらっしゃるのですか?」

 

俺が武器を携えたままみんなを呼んだところで深雪からの質問が飛んでくる。

 

「まあ、実技棟と事務室の状況を見たからかな?

実技棟には旧式のCADが保管されているが所詮はその程度、破壊工作が目的と言えど壁を壊したくらいじゃあ一月そこらで意味がなくなる。

そんな安っぽいことするためのテロなんて意味ないぜ?」

 

「その点なら百合と同感だ。

なんせ一対多数の状況でろくに魔法も練れないやつしかいなかったからな。

こんな奴らが主力部隊なんてちゃんちゃらおかしいぜ」

 

「レオがこう言うんだしこっちは陽動と考えていい。

事務室も先生方に既に全員取り押さえられていた。

そっちに主力が行くとしたら物取りが狙いだが、本来の目的から反れてしまう。

あと考えられるのは……?」

 

「すぐには再調達できない文献や試料、または重要な装置の保管してある実験棟や図書館が本命というわけか。

流石は警察一家の息子、その手の推理は得意分野と言うことか」

 

「ま、飽くまでも推測の域だがな」

 

「敵の狙いは図書館よ」

 

突如背後から声をかけられる。

こんな会話をしながらも警戒を解いてなかった俺は背後に拳銃を向けた。

その銃口の先には突然のことに驚いた表情をする先生と思しき女性だった。

踵の低い靴に細身のパンツスーツ、その下には光沢のあるセーター。

見た目よりもどちらかと言うと行動性を重視したその服装は防弾防刃性に優れている金属繊維を用いていると思われるセーターを着ることで戦闘向けに近い服装となっていた。

 

「あ、小野先生」

 

「す、すみません!!

いきなり後ろから声を掛けられたもんでびっくりしちゃいまして」

 

「いいのよ、誰にだって間違いはあるもの。

私は小野遥。

E組のカウンセラーを務めています」

 

「A組の十六夜百合です。

よろしくお願いします」

 

その小野先生と呼ばれた女性に自らの無礼を詫びる。

そんな俺を笑顔で返してくれた。

自己紹介を終えると再び真面目な表情に戻ると言葉を紡ぎ始める。

 

「敵の主力は既に館内に侵入しています。

壬生さんもそちらに居るわ」

 

なんでそんなことを知っているのかと疑問に思ったのだが今はそんなことを聞いている暇ではないと思った俺は図書館の方へと足を向けるが他の四人は動かない。

達也に至っては真正面から先生を見つめて動かない。

 

「後ほど、説明をしていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「却下します。

……と言いたいところだけどそうも言ってはいられないわね。

その代わりに一つお願いを聞いてもらってもいいかしら?」

 

「何でしょう?」

 

若干嫌そうな顔をしていた小野先生だったが考え込むような様子はなくすぐに口を開いた。

 

「カウンセラー小野遥としてお願いします。

どうか壬生さんに機会を与えてほしいの。

彼女は剣道選手としての評価と二科生としての評価のギャップに悩んでいたわ。

今回もきっと彼らにその隙間に付け込まれてしまった。

だから…」

 

「甘いですね」

 

小野先生のお願いは達也にばっさりと切り捨てられてしまった。

 

「行くぞ」

 

「おい達也!!」

 

達也がこんな性格なのはそこそこ長い付き合いの俺にはこうなるだろうということはわかりきっていたので何も言わない。

しかし付き合いの浅いレオから抗議の声が上がる。

 

「良いかレオ。

余計な情けで怪我をするのは自分だけじゃない」

 

そう言って達也は走り出してしまった。

他の三人も図書館に向かう中で俺は小野先生の方へと体の向きを直した。

 

「すみません。

昔っからアイツあんな性格でして。

でも根は良いやつなんで嫌いにならないで欲しいんですけど…」

 

「わかっているわ。

彼と面談はした感じからどうせこんな事を言われると思っていたわ」

 

「ならよかった。

それじゃあ俺はこれで。

あ、壬生先輩の事は任せといてください」

 

「よろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げる小野先生に背を向け俺は自己加速術式を起動して急いで図書館へと向かう。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「遅いぞ百合」

 

「悪い悪い……ってひっでぇことになってんなぁこりゃあ」

 

達也達と合流した頃には目的の図書館は間近に迫っていた。

近くの広場では侵入者と生徒の連合軍と裏切っていない生徒達の小競り合いが起こっていた。

状況を簡単に言えば数的不利で応戦側の生徒の方が分が悪かった。

それを見た途端にレオは列から外れ、小競り合いの現場へと向かっていった。

 

パンツァァアアア(Panzer)!!」

 

雄叫びを上げると同時に左腕に装着されているプロテクター型のCADに魔法式が投射される。

 

「今時音声認証とはまたレアなものを…」

 

「しっかし逐次展開なんてまたふっるいものを使ってなぁ……

よし、俺はレオの援護に回るぜ。

達也、あと任せた」

 

「わかった」

 

俺はその場に立ち止まり自分のこめかみに銃口をあてがう。

 

「クェーサー!!」

 

図書館の建物に向かって金色の尾をたなびかせながら弾丸が飛んでいき着弾と同時にこめかみにあてた拳銃の引き金を引く。

それと同時に足元に真っ黒な渦が現れ俺の体は吸い込まれた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「え?!

百合が居なくなっちゃったよ!!」

 

「心配しなくていい。

図書館の壁を見てみろ」

 

百合が真っ黒ななにかに吸い込まれたのを見て思わず声をあげてしまう。

それに達也くんが反応する。

達也くんに促されるがままに目的地である図書館に目をやる。

 

「え?!

百合が飛んでる!!

っていうか落ちてる?!」

 

壁の上から下に向かって百合が動いているのが目に入る。

その手に握られている二艇の拳銃型CADの両脇には金色の線の形作られた長方形が浮かんでいた。

 

「あれが百合の切り札とも言える魔法「黎明のクェーサー」だ」

 

「うおぉおおおお!!」

 

百合が雄叫びをあげることによってやっと下に居た侵入者数名が百合の存在に気がついた。

着地と同時に百合は黄金の尾をたなびかせた弾丸を放つ。

それにあたった人間はおはじきのように弾き飛ばされた。

 

「すっごぉ…」

 

「メカニズムは俺もよく知らないんだが、なんでも特殊な回転を弾丸に加えることによって威力を爆発的に向上させたらしい。

不思議なことにその回転を加えられた弾丸は莫大なエネルギーを有し、空間をも歪めるそうだ」

 

よく見ると百合が落ちて来たところの上の方の壁には最初に百合が吸い込まれた半径三十cmほどの黒い渦があった。

あたしの視界に入った直後に消えてしまったが、きっと百合はあそこから出て来たのだろう。

 

「四年で成長したのは体だけじゃなかったってことか」

 

彼が図書館の入口のあたりの敵をばったばったと薙ぎ倒す姿をみて思わず笑みがこぼれる。

昔から…いや、今でもガキっぽい百合の成長を見れてあたしは少し嬉しかった。




最後まで読んでいただきありがとうございます!!
次回もお楽しみに!!
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