魔法科高校の劣等生-嘘吐きの百合-   作:ぼいら~ちん

18 / 25
あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
また投稿期間が開いてしまってすみません。
今後の活動とアンケートを活動報告に掲載致しましたので下記のURLをコピペ及び私のマイページからアクセスお願いします。
http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=60953&uid=27163#


第十八射 一発の弾丸

「用意はいいか?」

 

「もちろん、CADの調子も良好、起動式もばっちりだぜ」

 

小銃型のCADの上にちょこんと乗っかったスナイパーライフル用の八倍スコープを覗き込みながらレオの質問に答える。

俺とレオが対峙する真っ白な空間。

別に相手に集中しているからという比喩的な表現ではなく実際に俺達の周りは白いのだ。

ここは水無月家の地下にある魔法のテスト施設である。

周りは対象の色素を改変する魔法などのテストも行うことがあるらしいので真っ白、向かって左側には強化ガラス製の窓がついた計測室が存在する。

そして現在はレオと魔法ありの手合わせをするついでに明日の放課後の(未だに事実であることを信じきれていないが)真由美さんとのスピードシューティングで使用する術式「ヴァーユの神風」のテストをしようという訳である。

 

「叔父上、カウントダウンお願いします」

 

CADについたスコープを覗き込みながら俺は答える。

ルールは既に互いに確認済みで、勝利条件は『相手の背中を地面または壁に付けること』だ。

部屋の中に機械音声によるウントダウンが響き渡る。

 

『3---2---1---』

 

CADのストックにあたる部分を右の肩に密着させ狙撃大勢に入る。

レオも同様に拳を握り臨戦態勢に入る。

しかしまだ互いに魔法は発動させておらず、俺に至ってはトリガーに指すらかけていない。

 

『スタート』

 

「パンツァァアアア(Panzer)!!」

 

「そら!!」

 

開始の合図と同時に俺はスコープを覗き込みレオは魔法の発動に必要な言葉を大声で叫ぶ。

レオの頭に照準を合わせ引き金を引く。

引き金を引くのと同時に標的に向かって通常の小銃で言う銃口の部分から何かが飛んでいく。

それはレオの顔に真っ直ぐ向かっていった。

 

「ふん!!」

 

「マジでか?!」

 

顔に直撃する寸前、魔法によって服を硬化された腕により見えない何かはかき消された。

その直後、俺へと真っ直ぐに突っ込んできたレオの拳が俺の顔に向かって飛んできた。

すんでのところで両の腕を十字に構え、その腕の部分の布を硬化させガードする。

しかしそのパワーを受け止めきれず俺の体は後ろへと少し吹き飛ぶ。

 

「うおぉおおおお!!」

 

地に足をつけ前へと目線を戻すとそこには此方へと近づいてくるレオの姿。

突進しながら振りかぶった右の拳が俺の顔に迫る。

それが当たる直前にCADの先端部、実銃で言う銃口にあたる部分をレオの腕の真下に滑り込ませ、引き金を引いた。

 

「血気盛んなのは良いことだが、あんまししつこいと嫌われるぜ?」

 

「うおっ?!」

 

引き金を引いた瞬間、レオの右腕が見えない何かによって弾かれた。

 

「今度はこっちの番だ!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「がっ?!」

 

百合がそう高らかに宣言するとレオの腕が跳ね上がることによって露わになった体側面にCADの先端を向け続けざまに引き金を引く。

その一撃によって怯んだレオの体に向けて容赦のない掌底を見舞う。

 

「え……?

今百合くんは何をしたんですか?」

 

「CADの先端部から見えない弾丸……正確には圧縮された空気の弾丸を発射したんだよ。

僕が組み立てた『ヴァーユの神風』はそういうものだからね」

 

美月の質問に圭吾さんは優しい声色で、優しい微笑みを浮かべながら答えた。

 

「この魔法はCADの指定された一部分に圧縮された空気の砲台を形成してそこから直径五.七×二十ミリ、射程五十メートルの弾丸を発射すると言うものだ」

 

「でもそれだけではあんな事は出来ません。

銃口から発射される風の球の射角は銃口に対して垂直方向以外にも飛ばすことができるのではないでしょうか?」

 

「おぉ。

鋭いねぇ達也くん。

百合くんから凄いと聞いているだけあるよ」

 

達也くんの質問ににやりと口角を上げながら圭吾さんは笑う。

 

「今の百合くんは確実に西城くんの肋骨に向けて銃口を向けていた。

しかし西城くんの腕は弾かれた。

それはなぜか……その理由は百合くんが起動式の射角の設定を自分でしたからだ。

これが百合くんの考えたアイデアでありこの魔法の最大の特徴だよ」

 

そういった後、圭吾さんによる説明が始まった。

要約するとこの魔法は指定された一部分に縦軸、横軸の角度を調整可能な圧縮空気の砲台を作るものだという。

縦軸の角度をX、横軸の角度をYと置くと普段の状態はX=0、Y=0の状態で起動式のその部分の数を変えることで角度を変更でき、今の場合だと弾を真上に撃ったのでX=9°、Y=0ということになる。

角度は-120~120まで変更が可能で今のような通常では撃てない角度までカバー出来るのが強みである。

 

「凄いですね百合くん……」

 

「ま、昔から新しいことを考えるのが好きな子だったからね。

……っと、そろそろ終わるかな?」

 

「ぐぁっ!!」

 

圭吾さんが呟くと同時にレオの体が宙を舞っており、数秒もしないうちに地面にどさりと落ちた。

 

「うん、安定して魔法を発動できていたしCADも特に問題はなさそうだ。

二人とも戻っておいで」

 

圭吾さんがマイクに向かってそう言うと百合はレオに対して手を伸ばしレオはその手を握る。

二人のその面持ちはとてもすがすがしいもので、長い間抱えていた疑問が解決されたのを物語っていた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ほれエリカ、麦茶だ」

 

「ん、ありがと」

 

しばらく経って再び水無月邸のリビング。

俺とエリカは二人並んで、エリカは浴衣姿、そして俺は制服姿で庭に面した窓に座っていた。

なぜコイツがここに居るのかと言うと親の許可を貰い、今日はここに泊るという。

家に帰るのが面倒なんだそうだ。

すぐ近くに家があるのにそれはどうかと思うんだが……

 

「やっぱ真夏は外の風に当たりながらの麦茶に限るなぁ」

 

「そう?

あたしはやっアイスが良いな~

だってあっちの方が冷たいし」

 

「俺は頭がキーンとなるから苦手なんだよなぁ……

特にあっつい日に食べんのが……」

 

足をぶらぶらと揺らしながらちびちびと麦茶を飲むエリカ。

俺は自分の横に置いておいた木製のお盆の上にコップを置いて腕を組む。

 

「あれが良いんじゃないのあれが!!

あの感覚……「夏が来た!!」って感じにならない?」

 

「う~ん……俺はやっぱ香ばしい麦茶が喉を潤した瞬間が一番夏を感じるね」

 

「あんたやっぱ感性が前時代的ね~」

 

「あんだと?」

 

「別に悪いって言ってないじゃない!!」

 

「まあまあ。

エリカちゃんも百合くんも落ち着いて。

唯でさえ暑いのにそんなにヒートアップしてしまったらもっと暑くなってしまいますよ」

 

「「あっ、はい」」

 

ちょうどお風呂からあがってきた様子の美月が俺達を宥め、異口同音に頷く。

そしてお盆に乗っていた四つある麦茶入りのコップの内の一つを手に取りちびちびと飲み始める。

何故彼女がここにいるのかというとエリカと同じくここに泊まるためである。

別に家に帰るのが面倒という訳ではなく家が遠いため親に許可を貰い泊まることにしたという。

因みに達也と深雪も泊まるそうだ。

珍しく賑やかなのに叔父上は喜んでいたが申し訳ないという気持ちも無いわけではない。

 

「そういえばさ、少し昔の話らしいんだけどうちの学校の生徒が行方不明になったらしいよ。

なんでも幽霊に浚われたとか!!」

 

「……なんだよその唐突過ぎる話題転換……」

 

てか人が居なくなってるってのに随分とノリが軽いなお前はよぉ……

 

「まあ聞いてって。

同じクラスの子から聞いたんだけどさ、当時一つ上の学年のAさんって女の子がある日横浜に行ったそうです」

 

「なんで横浜なんかにわざわざ……」

 

「あれですよ、雰囲気作りみたいな感じのあれじゃないですか?」

 

「そうそう!!

雰囲気作り的なあれよ!!」

 

随分とふんわりとした返答が返ってきたなぁおい。

 

「で、話の続きなんだけどさ。

そのAさんが家に帰る直前に一つ年下の妹のMさんに今から帰るって連絡を入れたんだって。

それ以来Aさんを見た人はいないらしい」

 

「なんだ、それだけか?」

 

「ううん。

その話には続きがあってね、それから数週間後、Mさんの所に一通のメールが来たらしいのよ」

 

「あ、そこだけなら聞いたことがあります!!

『キャビネット降りた先で友達の手伝いをしなければならないので暫くは会えません。

またね』ですよね?」

 

「ふーん。

だから幽霊に浚われたって話になったのか」

 

「なによ?

あんまりビビらないのね」

 

「まあな。

なにせ最近お前から聞かされ続けてる夏の怪談シリーズで慣れたからな」

 

「つまんないの」

 

ぶーぶーと文句を言うエリカを尻目に俺は空を仰ぎ見ながらお盆の上の麦茶を手に取り飲み始める。

 

「っ!!

エリカ!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ちょっと危ないじゃ……な……」

 

百合が突如あたしの名を叫び横に突き飛ばす。

庭の芝生の上に百合はあたしに覆い被さる形で着地する。

そして百合の腹が当たっているあたしの太股部分になにかぬるぬるとした感覚を覚える。

それを触り月明かりをそこに当てるとそれは赤黒く光っていた。

それを確認した後に聞こえたドーンという音……銃声だ。

 

「あんた!!

これ……」

 

「おう……大丈夫そうで何よりだ。

怪我、してないか?」

 

「大丈夫も何もあんた……撃たれてんじゃないの!!」

 

「ああ、みたいだな……

しかも銃声が聞こえてきたのはマズルフラッシュ見えてから大体3秒弱……千メートル級の長距離射撃ってところだな……

不幸中の幸いは骨に当たんないで肉をぶち抜いてくれた所か……」

 

「ゆ、百合くん!!

大丈夫ですか?!」

 

「百合!!

大丈夫か!!」

 

異常を感知した美月と達也くんが百合の下に走ってくる。

そして達也くんが肩を貸そうとするのを断り百合は自らの足で立ち上がった。

 

「……っと、傷は塞がったな。

達也、エリカ達を頼む。

俺は今撃って来やがった奴を追う」

 

「ダメよその怪我じゃ!!」

 

「そうですよ!!

撃たれたんですよ!?

今は安静にして警察が来るのを待つのが……」

 

「二人とも、手を貸してくれ」

 

百合に突然そう言われあたしと美月は差し出された手を取る。

 

「そこから何かを奪う(The thief )」

 

「え?」

 

「は?」

 

百合の手とあたし達の手が触れると同時にぐらりと視界が揺らぐ。

そのまま重力に従ってあたし達の体は地面に崩れ落ちる。

 

「悪いな。

今俺はお前達の平衡感覚を奪った。

暫くは立てないだろうから大人しく待っててくれ」

 

「あんた……その体で……何が……!!」

 

「達也、コイツらと深雪、叔父上達も頼むぞ」

 

「了解だ」

 

あたしの声なんて聞こえないような振りをして百合は庭の壁を飛び越えて闇の中へと消えていった。




最後まで読んでいただきありがとうございます!!
次回もお楽しみに!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。