「いや~着いた着いた。
朝は二重の意味でヒヤヒヤさせられたぜ」
「申し訳ありません」
「ま、気にすんな。
妹ってのはちょっと手が掛かる位がちょうどいいんだよ」
入学式の次の日。
俺と深雪は自分達の教室に初めて入った。
昨日入学式があったためが既に教室内には幾つかの小さなグループが出来ており、俺達は若干浮いていた。
「うーん……ま、席に座って本でも読んでるのがベターかな?」
「私は百合にい---」
「司波さん!!」
俺と深雪が教室の光景を見て他愛もない話しをしているとグループの一つの少年が深雪に声をかけてきた。
「行ってこい深雪、ご指名だぞ」
「でも百合兄様は?」
「俺の事は気にしないでいいよ。
それでこその高校生活ってやつだろ」
「そうですね。
行って参ります」
軽くお辞儀をして深雪は声をかけられた少年の方へと歩いていく。
「さてさて……トイレの場所でも確認しとくかな」
「きゃっ」
そう言って俺は廊下へと歩き出すと何かが体にぶつかった。
下を見ると俺と同じ一科生の制服を着た少女が尻餅をついていた。
「ご、ごめん!!
ダイジョブか?」
「だ、大丈夫です。
こちらこそぶつかってごめんなさい」
俺はその子に手を差しのべて彼女は手を取り立ちあがった。
そしてぺこりとお辞儀をするツインテールの女の子。
その隣で転んだ子に寄り添って少しおろおろしている黒髪の女の子。
にしても深雪といい美月といいエリカといい姉上に真由美さんといい女の子みんなが可愛いとか……ここは
中学の時は深雪がダントツで学校一の美少女だったけどこの学校だと深雪くらい可愛い子が結構ざらにいる。
魔法科高校……恐ろしい所……!!
「そういや自己紹介がまだだったな。
俺は1-Aの十六夜百合だ。
百合って呼んでくれ」
「光井ほのかです。
光る井戸って書いて光井です。
あ、クラスは百合くんと同じの1-Aです」
「……北山雫、同じくA組。
よろしく」
「よろしくなほのか、雫。
北山……って言うともしかして振動系魔法で有名な北山紅音さんの近親者?」
「近親者と言うよりも娘」
「おおっすげえな!!
振動系苦手でさ、今度教えてよ」
「……秘密」
「ちくせう」
そう言う雫の表情はほんの少しだがほころんでいた。
どうやら彼女は感情表現が少し苦手なようだ。
「でも十六夜くんも凄いじゃないですか!!
入試の実技試験の成績トップですよ?」
「確か真由美さんもそんなこと言ってたな……
そーゆー情報ってどっから仕入れてんの?」
「風の噂。
入試の得点に関する資料が生徒の間に出回っているって話もある」
「案外その手の管理って甘いのな。
ところでほのかはどんな魔法使うの?
光井だけに光の魔法?」
「はい。
私の家系は代々光波振動系魔法を得意としているんです」
「羨ましいよなぁ……俺の得意な魔法なんて飛んでる物体の軌道を変えるだけだぜ?」
「例えばなにを?」
「弾丸」
「「え?」」
キーンコーンカーンコーン
二人の真の抜けた声とともに予鈴がなった。
それと同時に廊下に居た生徒達は各々の教室へと戻って行く。
「もうこんな時間か?
そろそろ席に着こうぜ」
「え?!
だ、弾丸ってどういうことですか?!」
「ぶ、物騒……」
「その話はまた後でってことで。
ほれ二人とも、早くしないと先生来ちゃうぞ」
◇ ◇ ◇
「いや~終わった終わった。
あんまりにも退屈で死にそうだったぜ」
「そういうことを言わずに。
お兄様も待っていることですし早く行きましょう」
午前中の専門課程見学を終えて昼飯を食べようと食堂へ。
朝のうちに達也と昼飯を食べようと約束していたためここへとやってきた。
春休み中は毎日達也と会っていた深雪は半日ぶりに会えるということで今にもスキップしそうな程に機嫌がいい。
「ゆ、百合くん!!
朝の弾丸ってどういう意味ですか?!」
「だからそのままの意味で拳銃から放たれる弾のことだって」
「ま、まさか百合くん拳銃持ってるの?!
物騒……」
「だから入ってんのは訓練用のゴム弾だし鉛弾は持ってないっての!!」
朝の一軒の所為かほのかと雫も一緒である。
まあ確かにただの高校生が突然魔法で弾丸をどうとか言えば驚くのも仕方ないと思うけど……
「お兄様!!」
「よう達也。
お、レオに美月にエリカも一緒か」
「おっす」
「こんにちは十六夜くん」
「出たな百合・ゲラー!!」
「だからその呼び方やめろっての!!」
小学校の頃に呼ばれていた謎のあだ名で俺のことを呼ぶエリカに抗議の声をあげる。
「しっかしそのあだ名付けたの誰だよ……恥ずかしいったらありゃしねえ」
「ん?
これ考えたのあたし」
「お前かよ!!」
「あ、深雪、ここ空いてるよ」
「俺のこと無視かよ!!」
「あ、ごっめーん百合~
アンタの席無いから」
「ひでぇ!!」
再び抗議の声をあげる俺。
そしてレオと達也が何か話している。
どうやら深雪のことを紹介しているようだ。
それに気付いた深雪はレオの方へと体を向け軽くお辞儀をする。
「はじめまして。
司波---」
「司波さん」
深雪の自己紹介を遮って横から誰かが声をかけてくる。
そちらを見ると俺や深雪と同じ左胸に8枚花弁のマークを付けた集団がいた。
その先頭の今朝深雪を呼んでいた茶髪の男(確か森崎とかいう名前だったような気がする)が声を掛けてきたようだ。
「もっと広いとこ行こうよ」
「邪魔しちゃ悪いって」
「でも、私はこちらで食べますので……」
「え……?
司波さん、
「はあ?」
ウィード-雑草を意味するその単語は一科生をブルームと呼称することによって対比する一種の差別用語として扱われている。
学校側としてはこう呼ぶことを禁止しているが二科生ことをそう呼んでいる一科生は結構ざらにいるようだ。
俺の横ではほのかと雫が俯いている。
どうやら自分の友達の友達に対してどういう対応を取ればいいのかがわからないようだ。
「ほのか、雫。
あーいうやつらと一緒になってあんなこと言うのはダメだからな。
たとえどんなに力を持っているとしてもその力をひけらかして自分よりも能力の低い人間を蔑んではいけない」
「そう……だよね」
「うん……」
二人とも俺の思いが届いたのか一科生の集団に敵意のこもった視線を向ける。
そんな中集団の一人がとんでもないことを口にした。
「一科と二科のけじめは付けた方がいいよ」
「なんだと?」
「あ……あの……」
その言葉にレオが怒気の籠った声を発し席を立つ。
……このままじゃマズいな。
「ノンノンノンノンノンノン。
一回落ち着けってレオンハルトくん?」
「おい百合!!
こいつらの肩持つってのかよ!!」
「ちがうちがぁう。
こんなところで喧嘩なんてしたら他のやつらの飯が不味くなっちまう。
な、お前らもこれくらいにして今回は深雪の好きにさせてやってくれ」
「お前、
「俺はただ単に風紀委員としての任務を遂行しようってだけだ」
「任務?」
「おう。
俺は十六夜百合。
森崎、お前のクラスメイトであり実技試験トップの成績を修めた張本人だ」
「ジャッジメントですの」って言いたいけど言ったら達也達に軽蔑の眼で見られるのも仕方がないような気もするので言わなかった。
でも一回くらいは言ってみたいなぁあれ…
「チッ……
行こうみんな、こんなやつらに構っていると馬鹿がうつりそうだ」
「なんだと?!」
「落ち着けってレオ。
じゃあな一科生共、アホ同士仲良くやってくれ」
小さく舌打ちをした森崎達は踵を返しどこかへ行ってしまった。
俺はレオを宥めながら軽い悪口を言い放ちヘラヘラと笑いながら手を振る。
今回はどうやら俺達の勝ち(?)のようである。
「ありがとうございます百合兄様」
「気にするな。
さ、みんなで飯食おうぜ!!」
「で、百合。
そこの女の子二人は?」
「ああ、今朝友達になったほのかと雫だ」
「光井ほのかです」
「北山雫」
「二人ともこっちへどうぞ。
私は柴田美月です」
「あたしは千葉エリカ。
よろしくね二人とも」
「俺は西城レオンハルト。
レオって呼んでくれ」
「俺は司波達也。
名字の通り深雪の兄だ」
「よろしくお願いします!!」
「よろしく」
軽いお辞儀をして二人とも席に着く。
「ところで俺の席は?」
「すまない。
空いてない」
「あれホントだったの?!」
◇ ◇ ◇
「お兄様……」
「謝ったりするなよ深雪」
その日の放課後、校門で待ち合わせていた深雪が俺達と合流したことによって揉め事が起こった。
深雪についてきていた女の子の一人が難癖をつけてきて口喧嘩に発展。
最初はA組の男子は周囲の目が気になっていたのかあまり口を出さないでいたが今の状況はそんなものはどうでもよくなってしまうほどにエスカレートしていた。
二手に別れた生徒達の奥側がA組の、しかも昼間食堂で絡んできた奴ら。
そして手前側にはレオ、エリカ、ほのか、雫、そして美月だ。
「こちら側にほのか達が混ざってるのは驚きました」
「百合の友達って百合に似た様な人間が多いな」
「それに、美月があそこまではっきりと意見を述べるような子だったとは思いませんでした」
「それについては同感だな」
俺と深雪はそこから一歩引いた所で見守っている。
「僕達は司波さんに用があるんだ!!」
「そうよ!!
司波さんには悪いけど少し時間を借りるだけなんだから!!!」
「だからって深雪さんがお兄さんと一緒に帰ると言っているのですから二人の仲を引き裂く権利は無いはずです!!」
何か決定的なものがずれているような気がする……
この歯がゆさはなんだろうか?
「み、美月?!
何を勘違いしているんでしょうね?」
「なぜ深雪が焦るんだ?」
「焦ってなんていませんよ?」
「そして何故に疑問系?」
深雪が何故焦るのかはさておき、そんな間にも状況は悪化していく。
「これはA組の問題だ!!
ウィードがブルームに口出しするな!!」
「ふざけないで下さい……!!
ウィードとかブルームって入学したての私達の実力に大きな差はないはずです!!」
怒気を露わにして大きな声を出したのはほのかだった。
「何で自分が少し強い力を持っているからって人を見下すんですか?!」
「ほのかの言うとおり。
例えあなた達が美月達よりも魔法力が勝っていようとも人間性では完敗だよ」
「……今の一言はマズいな」
場に張り詰めた空気が流れ始める。
その中で最初に口を開いたのは先頭に立っていた茶髪の男だった。
「だったら見せてやるよ……
その勝っている部分って奴をな!!」
そう言った茶髪の男は腰から拳銃型の特化型CADを引き抜く。
そして銃身を囲むように二つの輪が現れる。
魔法を放とうと照準を合わせ、引き金に指をかける。
それを止めようとレオは雄叫びをあげながら突進するも相手の方が早い。
「お兄様!!」
俺は万が一に備えて魔法を発動させようと右の手を伸ばす。
しかし銃身に構築された魔法式は何の意味も成さなかった。
「うぐう?!」
なぜならその手に持っていた拳銃型のCADは横合いから現れた一科生によって蹴り飛ばされたからであった。
「
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに!!