魔法科高校の劣等生-嘘吐きの百合-   作:ぼいら~ちん

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第六射 FIGHT IT OUT!!

「達也くーん!!」

 

第一高校から最寄りの駅までは一本道である。

俺はいつも通り同居させてもらっている二人と同じ電車に乗り、駅に着くと待ち合わせていたかのように美月達が登場する。

昨日と違うのはほのかと雫も混ざって結構な大所帯な訳だが更に面子が増えるようである。

達也の名前を呼んでいるからきっとE組の子なんだろうなって振り向くと…

 

「待ってよ百合く―ん!!」

 

意外!それは会長!!

なんと達也の名前を呼んでいた人はこの学校の生徒会長「七草真由美」だった!!

 

「あるえ~達也く~ん?

生徒会長とは一昨日が初対面なのでは?」

 

「入学式のときが初対面…だったはず」

 

「なんかそうは見えねえよな」

 

「付き合いたての彼氏彼女みたいに見える」

 

「つ、付き合い…たて?!」

 

雫がぼそりと言った言葉に顔を真っ赤にして過剰な反応を見せるエリカ。

 

「何焦ってんだエリカ?」

 

「な、なんでもないわよバカ百合!!」

 

「いきなり馬鹿って言うことはねえだろ…

俺だって傷付くんだぜ?」

 

「ご、ごめん」

 

…なんだこの可愛い生き物?

昨日の意味深な台詞の所為で無駄にエリカのことを意識してしまう!!

しかもこのタイミングで上目づかいとか反則だろてめえ!!

 

「オハヨ~達也くん、百合くん。

深雪さんもおはようございます」

 

なんだか俺と達也の扱いが雑な気もする…

 

「おはようございます」

 

「お一人ですか?」

 

「うん。

朝は特に待ち合わせとかしないんだよ」

 

達也が若干嫌そうなオーラを出すがそんなことお構いなしの会長はスマイルだ。

 

「こんな朝っぱらに追っかけて来たってことは何か大事な用事でもあるんですか?」

 

「うーん…大事って程の事ではないんだけど…

深雪さんに一度生徒会のことについてお話ししておこうと思ってね」

 

姉上から聞いた話によるとこの学校では毎年新入生総代を務めた人-所謂入試主席を修めた一年生に生徒会役員になってもらうらしい。

主な目的は後継者の育成で別に強制と言うわけではないのだが今までに例外はほとんどいないそうだ。

ちなみに真由美さんも入試は首席で入学してきたとか。

凄いよね。

 

「そこで、生徒会室でお昼を一緒に食べようと思うの。

何だったら皆さんも一緒にどうかしら?

生徒会の活動を生徒に知って貰うのも役員の務めですし。

それに百合くんも風紀委員会に入ったのはいいけど生徒会の面々とは顔を合わしてはいないでしょう?

何かと風紀委員会と生徒会って絡みが多いから、どうかな?」

 

これも姉上から聞いた話なのだが部活の新入部員勧誘の時やそれこそ学園がアブないやつらに占拠された時なんかは主に生徒会と風紀委員が連携して対応に当たるそうだ。

なぜ姉上が新入部員勧誘を例に挙げたのかは知らないがきっと魔法科高校ってだけあって危険(主に魔法弾のドッジボールを止めるとか)が伴うのであろう。

 

「それはちょっと遠慮しますが…行くとしたら弁当持ってくんですか?」

 

「生徒会室にダイニングサーバーがあるから大丈夫よ」

 

「そんなものまであるんですか?!

流石名門校、他の学校がしないようなことを平然とやってのける!!」

 

「そこに痺れる憧れるぅ!!」

 

「「いえーい!!」」

 

「あんたら仲良いわね」

 

俺の発言にノッてくれたレオとハイタッチ。

いやぁ…いいねえ…こういうの。

高校生らしい馬鹿さ加減が最高だね。

 

「あたし達も遠慮しておきます」

 

「深雪さんは?」

 

「私は…」

 

深雪は達也の方をちらちら見ながら戸惑っているような表情を見せる。

きっと達也も行くなら行く的な考えが頭の中にあるのだろう。

 

「行って来た方がいいと思うぜ?

達也もな」

 

「でも俺は副会長と揉め事なんて御免ですよ」

 

俺の提案に反論を仄めかす台詞を口にしたのは達也だ。

そう言えば入学式の日に真由美さんの連れっぽい人が達也を睨んでたような気がする。

あれ副会長だったのか。

 

「あ、大丈夫。

はんぞーくんはお昼はいつも部室だから。

せめて深雪さんだけでも来てくれたら嬉しいんだけど…」

 

落ち込んだような表情をする真由美さんに狼狽し始める深雪。

俺はこちらを向いた深雪に向かって行ってやれと眼で合図を送る。

達也にも同じように視線を送ると仕方がないなとため息をつくが了承してくれたようだ。

 

「わかりました。

深雪と二人でお邪魔させていただくことにします」

 

「ホント?!

…じゃなかった…じゃあ、詳しい話はお昼に。

お待ちしていますね」

 

年相応といった反応を見せるのは無意識かはたまたこれも計算の内なのか…

スキップでもしそうなテンションの真由美さんはぺこりとお辞儀をすると軽快な足取りで立ち去った。

 

「怨むぞ百合」

 

「あはは…俺が死んでからで頼む」

 

その日からしばらくの間、達也にCADの調整を断られ自分でやらなければいけなくなったのは言うまでもない。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「しっつれいしま~す」

 

「失礼します」

 

放課後、俺は姉上に生徒会室に呼び出されたと思ったら達也と深雪に会った。

本人曰く「風紀委員になれだと」だそうだ。

俺は姉上に振り回されるのにはもう慣れっこだが変なところで真面目なこいつはかなり苦労しそうな気がする。

入室するや否や達也に向かって敵意のある視線が飛んでくる。

その視線の主は入学式の日に達也を睨みつけたはんぞーくんことこの学校の生徒会の副会長である服部刑部少丞範蔵(はっとりぎょうぶしょうじょうはんぞう)先輩だった。

名前が長いので俺もはんぞー先輩と呼ぶことにしよう、うん。

 

「副会長の服部刑部です。

よろしくお願いします司波深雪さん」

 

礼儀正しくお辞儀した深雪は壁際の端末へと小柄な女の子に誘導された。

彼から放たれる想子の光は同じクラスの人間とは比べ物にならないくらい綺麗だ。

相当な手練れと見て間違いはないだろう。

 

「来たな百合・ゲラー!!」

 

「だから姉上!!

その呼び方はやめてくれと何度も言ったじゃないですか!!」

 

「いや~エリカのネーミングセンスもなかなか悪くないと思ってな」

 

「本当に恥ずかしいんですからやめてください!!」

 

けらけらと笑いながら姉上は立ち上がる。

 

「冗談だ。

早速行こうか、本部」

 

「また外出るんですか?」

 

「いや、中で繋がっているんだ」

 

「言われてみれば…生徒会室の真下でしたね」

 

「不思議な構造ですね」

 

「あたしもそう思うよ」

 

「待って下さい」

 

姉上が歩き始めたところで誰かの声によって姉上は動きを止めた。

その声の主ははんぞー先輩。

その瞳には何かに対する抗議の色が見える。

 

「なんですか?

まさか達也の風紀委員の任命に反対とか言うんですか」

 

「その通りです」

 

「司波達也くんを指名したのは七草会長だ。

お前が何を言おうが指名の効力に変わりはない」

 

「…会長、私はこの司波達也の風紀委員任命に反対します。

魔法力の乏しい二科生に校則違反者の取り締まりなど勤まるわけがありません」

 

「待って下さい!!」

 

壁際から深雪の怒声が飛んでくる。

 

「僭越ですが副会長、兄の実技の成績は確かに芳しくはありませんがそれを補うことのできる力を兄は持ち合わせています!!

実践で兄が負けるはずがありません!!」

 

「それについては俺も同感です。

こいつの体術、展開中の魔法を読み取りことのできる目、それらがあれば例え手練れの一科生でも引けを取ることはないと思います。

要するに魔法力の強い奴=強いって考え方はおかしいと思います」

 

事実俺は純粋な体術だけの勝負、それに魔法を織り交ぜても一度しか勝ったことがない。

それはとある術式のお陰なのだが危険度が高いためその時以来使ってはいない。

 

「確か君は…十六夜くんだったかな?

魔法士は事象をあるがままに、冷静に、理論的に認識できなければならない。

君は司波さん達と同居していると聞いたが、魔法士を目指すならば身贔屓なんてものに目を曇らせてはいけない。

司波さん、君も同じだ」

 

俺を諭すような優しい口調。

その言葉に俺は苛立ちを覚えると同時に一科生からしたら普通に良い先輩なんだなと思った。

しかしそんな一科生贔屓を深雪が許すことはなく深雪の怒りの炎は更に燃え上がる。

まさに火に油を注ぐといった具合に。

 

「お言葉ですが、私の目は曇ってなどいません!!

お兄様の本当の力を以てすれば---」

 

「深雪」

 

しかしそんな深雪の怒声は悪口を言われた達也本人によって遮られた。

 

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

「なに?」

 

確かに達也の提案は正しいと言っても良い。

相手の実力がわからないなら手合わせするのが手っ取り早い。

 

「思い上がるなよ、補欠の分際で!!」

 

「そんな事はありません。

俺はただ妹と友達の目が曇っていないことを証明したいだけです」

 

「まさかはんぞー先輩断っちゃうんですか?

相手は一年生、しかもあなたが言うには実力の劣る二科生の生徒との模擬戦を?

まさか…まさかとは思いますが、負けるのが怖いんですか?」

 

この手の傲慢な奴をステージに引きずり出すにはおだてるか煽るかのどっちかが効果的何だよね~

 

「いいだろう、やってやる!!」

 

ほーら乗ってきた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「うん。

何つーかやっぱお前は凄い」

 

学校の中でも指折りの実力者であるはんぞー先輩をものの数秒で倒した達也。

正直凄いとしか言いようがない。

 

「褒めたところで朝の一件を許すわけないからな」

 

「ですよね」

 

達也は俺に背を向けて作業をしながら俺の声に応える。

そんな達の後ろには「手伝いたいです」と目で語る深雪と「もっと見たかったです」という視線を送り続けるあーちゃんこと中条あずさ先輩だ。

彼女は自他共に認めるCADマニアらしく、達也のCAD「シルバー・ホーン」に興味津津のようだ。

達也のCADはフォア・リーブス・テクノロジー(FLT)という会社の謎多き専属エンジニア「トーラス・シルバー」がフルカスタマイズした特化型CADで、市販品であるにも拘らずプレミア付きで取引されているくらい評価の高いモデルである。

その特徴は「ループ・キャスト」と呼ばれる同一の魔法を可能な限り発動し続けるというシステムで、このシステムの発表により魔法界の技術を目覚ましく発展させた。

 

「にしてもさあ…達也だけ目立って俺の実力がまだ知って貰ってないってのもなんかなぁ…そうだ!!

姉上、俺と模擬戦しませんか?

武器ありで」

 

「うむ。

あたしもお前がこの四年間でどれだけ成長したか確かめてみたくなった」

 

「百合くん?!

摩利も…もう借りてる時間が終わっちゃうからまた後日ね」

 

まあまあと俺達を宥めるように間に立った真由美さん。

しかし俺も姉上も一回火がついたら燃え尽きるまで止まらないタイプである。

 

「だったら時間を延ばせばいいじゃないか」

 

「で、でも百合くん?

摩利ってこの学校でも三本の指に入る実力者よ?」

 

「じゃあ、俺が姉上に勝てれば俺もそのトップスリーに入れるわけだ。

さあ姉上、やりましょう」

 

俺は袖口から飛び出たCADの銃口を姉上に向ける。

 

「望むところだ」

 

姉上もどこからか取り出した剣道の竹刀の先端を俺に向ける。

 

「はあ…もう好きにやって頂戴」

 

私はもう知りませんよといった表情で真由美さんはため息をついた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに!!
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