魔法科高校の劣等生-嘘吐きの百合-   作:ぼいら~ちん

7 / 25
第七射 銃は剣より強し?

「さあ、始めましょう姉上」

 

「まあそう焦るな。

真由美、ルールの説明を頼む」

 

はやる気持ちを抑えられずトントンと跳ねる百合。

そんな落ち着きのない百合を渡辺先輩は制止する。

久々と思われる渡部先輩との戦いに感情が抑えられずにやけている百合に対して渡辺先輩はいつも以上に凛々しい面持ちでそれを見据える。

全く真逆の面持ちの二人の間で七草会長はルールの説明を開始する。

 

「ルールは大体同じ。

先程との相違点は武器による攻撃を許可します。

それでも、相手を骨折させるなどの大怪我をさせた場合には力ずくでも試合を止めますが。

もう一つは先に相手に武器による攻撃を三回当てる、もしくは相手の頭部に攻撃を一度当てた方が勝者となります」

 

この特別ルールは百合にとってはありがたいものだろう。

百合の術式「ベツレヘムの星」は言ってしまえば一撃必殺と言うべき攻撃性は持ち合わせていない。

しかし相手に三回当てると言うものなら学内でも最高ランクの実力を持つ先輩にも勝機はある。

 

「お互い準備は良いですね?」

 

「勿論だ」

 

「当然です!!」

 

「司波くんはどちらが勝つと思いますか?」

 

二人が気合い十分なのに対してただの一観覧者でしかない俺-司波達也-は特にこれといった感情は持ち合わせていない。

そんな中、隣にいる市原先輩がおもむろに問いを投げかけてくる。

 

「どちらとも言えませんね。

渡部先輩は対人戦闘のスペシャリストと聞きますが俺はまだどんな戦い方をするのかは見ていませんし、百合も相手の得意とする間合いによって戦い方は変わってくると思いますし…」

 

「へ?

十六夜くんって中距離射撃型の戦法が得意じゃないんですか?

使用しているCADも拳銃の武装一体型みたいですし」

 

俺の返答に素っ頓狂な声をあげたのは中条先輩だった。

確かに百合の魔法とCADを見ればそう思うのは当然だとは思うが…

 

「いえ。

あいつの第一印象としては中条先輩の言う通りの戦い方を好むように見えますが…」

 

「始め!!」

 

俺の言葉の間にちょうど七草会長の開始の合図が重なる。

それと同時に百合は渡辺先輩へと走り出す。

 

「あいつの能力は近距離でこそ真価を発揮します」

 

走り出した百合に向けて想子の弾丸を飛ばす渡部先輩。

 

「甘いですよ姉上!!」

 

それを地面との隙間へのスライディングにより回避し想子の弾丸を自らの弾丸で打ち消した。

 

「凄い…あれを避けるなんて…」

 

「百合兄様の凄いところはここからですよ、中条先輩」

 

得意気に深雪が発言する。

その百合が放った弾丸は渡辺先輩のいる方向へと進行方向を変え、百合本人は体勢を直し渡部先輩への攻撃のためにその手に持つCADを振りかぶる。

 

「甘いのはそちらだ!!」

 

弾丸を後ろへと飛び退くことによって避け、その手に持った竹刀によって百合の攻撃を防いだ。

 

「流石は姉上…一筋縄ではいかないか」

 

「お前も腕を上げたな。

せやぁっ!!」

 

「おわあっ?!」

 

言わば鍔迫り合いのような状態から渡辺先輩は百合の体を押し飛ばす。

突然飛ばされたことに一瞬動揺したものの百合はちゃんと体勢を立て直した。

 

「やっぱり姉上は強いや…

本気でやんなきゃ失礼ってもんだよな!!」

 

百合はブレザーを脱ぎ捨てる。

そのブレザーを脱いだ姿のシャツは何の変哲もないのだがズボンのベルトには特殊な器具によって拳銃のマガジンが左右二つずつ計4つが固定されていた。

しかもその器具はズボンの一部と繋がっており、移動時に揺れたりして行動を阻害しないようにしっかりと計算されている。

…入学式の前日に部屋に籠もってたのはこれの所為か。

 

「本来のスピードをお見せしよう!!」

 

拳銃を逆手に持ち替えた百合は瞬間的にその場から消える。

 

「な?!」

 

市原先輩が驚いたのも束の間、百合は渡辺先輩の背後の虚空から出現し、体を回転させながら遠心力で増幅されたパワーを余すことなく振り下ろす。

しかしそれは渡辺先輩の竹刀によって阻まれる。

あわよくば竹刀ごとと思っていただろうが収束系の術式をかけていたのかその竹刀には傷一つつかなかった。

 

「流石は摩利の弟分ね。

自己加速術式のスピードも制度も申し分ないわ」

 

「十六夜くんの出身ってあの剣術の名門として有名なあの十六夜家ですよね?

なのになぜ拳銃を?」

 

「あいつはとある漫画の大ファンでしてね。

それの影響か拳銃というものに並々ならぬ憧れを抱いていたらしいです。

それでもあいつの近接戦闘の基本は十六夜流のものです」

 

百合の拳銃での攻撃はガードされているもののその都度銃本来の用途である射撃を用いて防御自体をなかったものにしている。

しかし渡辺先輩もあらゆる手段で射線をずらすことにより回避している。

二人の攻防は流石としか言いようがない。

 

「十六夜流は自己加速術式と独特の型から生み出される変幻自在な攻撃が特徴の流派です。

故に真っ向勝負よりも暗殺や急襲に長けているとも言えましょう」

 

「でも百合くんは不意打ちじみたことはしてないし急襲なんて上着脱いでからの一回だけじゃない」

 

「まあ見ていてください。

本領発揮はこれからでしょう」

 

防戦一方の状況から攻勢に転じるために渡辺先輩も自己加速術式を用いて百合の背後へと回り込む。

百合はそれを待っていたかの様にニヤリと笑う。

 

「あっしばっらいっ!!」

 

「くっ!!」

 

百合は渡辺先輩の攻撃を受け流すと同時にしゃがみ込み足を払う。

体勢を崩した渡辺先輩の眼前には無数の弾丸が迫っていた。

 

「あの弾…まさか…摩利がいなしていたもの?!」

 

「はい。

百合と渡辺先輩の攻防に見入っていて気付かなかったと思いますがあいつの本命は最初からこれだったのでしょう。

あいつに射撃能力で勝る人はなかなかいないと思います」

 

体を捻って弾を避けようとするも左肩に一発、脇腹に一発弾を受ける。

しかしその動作と同時に振り下ろしていた竹刀は百合の肩をしっかりと捉えていた。

肉斬骨断の思いだった百合はその一撃をもろに受けた。

体勢を立て直すために左手をついた渡辺先輩はその手を支店に回転し怯んだ百合にもう一度攻撃を食らわせる。

 

「今まで避けていた弾丸の方が本命だったとはな。

些か驚いたぞ?」

 

立ち上がった渡辺先輩は竹刀を中段に構え言葉を紡ぐ。

 

「俺はブラフやはったりが得意でしてねぇ。

術式自体の威力が低いもんでこういう戦い方しか出来ないんですよぉ」

 

対する百合はいつも通りヘラヘラと笑いながらいつもよりもテンション二割増くらいの勢いで応える。

 

「さて…

そろそろ終わりにしましょうか?」

 

「ああ、そうだな」

 

百合は再び走り出す。

渡辺先輩はそれに動じることはなく百合を待ち構える。

百合の右手が渡辺先輩の顔へと近づき渡辺先輩の振り下ろした竹刀が百合の肩目掛けて飛んでいく。

 

「おぉおおおおおお!!」

 

「やぁああああああ!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「うっしゃぁああ!!

これで俺の三十六勝二十八敗ですね、姉上!!」

 

「流石のあたしもそこまでは覚えてなかったよ…

それにしても悔しいな…腕を上げたな、百合」

 

床にあぐらをかいている姉上が俺を見上げながら答える。

最後は俺と姉上の相打ちのように見えたのだが俺に竹刀が当たる前に姉上の後頭部に俺の放った銃弾が当たっていたのだ。

そして本校の三巨頭とも唄われる姉上に言わば大金星を上げた俺は拳銃を顔の前に構える。

 

「「銃は剣より強し」

ンッン~名言だなこれは」

 

「それがやりたかっただけだったのか…」

 

呆れ半分の達也の声が聞こえてくる。

いいじゃん、カッコいいじゃんホル・ホース。

 

「い、十六夜くん!!

そ、そのCADって…!!」

 

「へ?」

 

「拳銃型武装CADの最高傑作と唄われるあの「ノーブル・リリー」ですよね?!」

 

「え、ええ」

 

「うわぁ~!!

本物を見れるなんて感激です!!」

 

中条先輩が俺の手に持っているCADに目を輝かせている。

…そんなに有名なモデルなのかこれ?

 

「ねえあーちゃん、百合くんのCADってそんなに凄いの?」

 

「よくぞ聞いてくれました!!

十六夜くんが使うノーブル・リリーはCAD開発の神と唄われる「水無月啓吾(みなづきけいご)」の遺作にして最高傑作、さらに世界初の自動式拳銃とCADの一体型に成功した作品でとある夫婦の結婚祝いに二つで一対たなるように開発された二挺での運用を前提としたCADなのです!!

一流のCADエンジニアが一目見ただけでわかるその技術の高さと洗練されたフォルム、そしてこれまた世界初のイメージインターフェースによる起動式選択機構は魔法界の技術を大きく進歩させたと言われています!!

なんでそれを十六夜くんが?!」

 

「水無月啓吾は俺の叔父なんです。

それで結婚祝いに貰ったのが家の父上と母上。

二人が四年前に亡くなってからは俺が使っていますし、調整も俺がやっています」

 

「あ…ご両親の遺品だったのですか…申し訳ありません」

 

「いえいえ。

先輩みたいなこのCADの価値がわかる人に触って貰えるのもきっと叔父上も喜んで下さるでしょう」

 

「触ってもいいんですか?!」

 

「ええ、勿論」

 

そう言って右手に持った拳銃型CADを中条先輩に手渡す。

その形、色合い、全ての要素をその目に焼き付けるように中条先輩は俺のCAD「ノーブル・リリー」を見やる。

そんなこんなで賑やかな雰囲気で今日という一日も終わろうとしていた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「お疲れ様、百合」

 

「おうエリカ。

待たせて悪かったな、ちょっと色々あってな」

 

「ま、今日はあたしもちょっと用事あったからちょうど良かったんだけどね」

 

今日は非番だったので模擬戦の後にすぐに待ち合わせ場所である昇降口へと急いで向かうとエリカが待っていてくれた。

昨日の夜、「しばらく一緒に帰らない?」とメールが来たのである。

俺としては断る理由はなく、寧ろ願ったり叶ったりと言うものでもあるのでありがたいお誘いだった。

 

「何時間もごめんな。

お礼になんか奢ってやるよ」

 

「マジ?!

あたしね、学校の近くに美味しいケーキ屋見つけてさ!!

百合も一緒に行こうって思っててさ」

 

「おーし行こう行こう。

俺もちょうど甘い物が食べたいところだったんだ」

 

そう言って俺とエリカは並んで校門へと歩き始める。

なんだかカップルみたいだよなこれ…本当にそうなったら俺は嬉しいんだけど…流石に高望みし過ぎかなぁ…




最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。