魔法科高校の劣等生-嘘吐きの百合-   作:ぼいら~ちん

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第八射 激動の予感

「なんかヤバい予感がする」

 

放課後、委員会本部へ続く廊下を達也と歩きながらげんなりとした表情で俺は呟く。

それを訝しげな表情で俺のことを見ている達也。

 

「何がだ?」

 

「そりゃあ勿論、今日から始まる新入生勧誘だよ。

だってあの姉上が忙しいだのなんだの言ってたんだろ?」

 

「それでも高校の部活動への勧誘だぞ?

流石にそこまで凄いことは起きないと思うが…」

 

「そうかなぁ…?」

 

達也にそう言われると何かそんな気がしなくもない…

でもここは魔法科高校。

そんな常識は覆されることを前提に行動しておいた方が良いかもしれない。

そうこう言っているうちに目的の委員会本部に辿り着く。

 

「失礼します」

 

「失礼しまーす」

 

俺と達也が入った時には既に九つある席のうち五つが埋まっており、ちょうど良いタイミングだったなと少し肩の力が抜ける。

 

「なぜお前達がここにいる?!」

 

そう思ったのも束の間、椅子に座っていたうちの一人が仰々しい声を上げる。

よく見たら数日前に達也に喧嘩売った森崎だった。

 

「開口一番酷い言われ様だな。

いくら何でも非常識だろう」

 

「なにぃ?!」

 

「やかましいぞ新入り」

 

大声を上げた森崎の口を姉上のドスのきいた一喝が閉じさせた。

 

「この集まりは風紀委員会の業務会議だ。

ここに集まる者は風紀委員に属するものであることは道理。

その程度のことは弁えたまえ」

 

「は、はい!!」

 

「まあいい。

座れ」

 

姉上に促されるままに森崎は席に着いた。

その顔は恐怖や緊張という少なくともプラスの感情ではないものがベタベタと張り付いており、なんかぱっと見「お化け屋敷行ってきました」とでも言うような表情をしている。

そうこうしているうちに残りの二つの席も埋まりそれを確認した姉上は立ち上がった。

 

「全員集まったな?

そのままで聞いてくれ。

今年もあの馬鹿騒ぎの一週間がやってきた」

 

前口上としては上出来な言葉を淡々と並べる姉上は完全に四年前とは全く別人だった。

ここまでのカリスマ性とあの強さは三巨頭と呼ばれるに相応しいものだなぁと改めて思う。

 

「さて、今年は幸い人員の補充が間に合った。

三人とも、立ってくれ」

 

「はい」

 

「はい!!」

 

「うっす」

 

三種三様の返事をし姉上に促されるがままに立ち上がる。

達也は相変わらずのポーカーフェイス、森崎は緊張しまくりでかっちこち…見ていて面白い物がある。

 

「今年入った一―Aの十六夜百合と同じA組の森崎駿、そして一―Eの司波達也だ。

十六夜の場合は入学式の日に決まったからもうパトロールはやってもらっているが、二人には今日から任務に就いてもらう」

 

「役に立つんですかこいつら?」

 

そう発言したのは教職員採用枠で委員会に入った二年生だった。

その言葉は俺達三人に向けられているものだと思ったがそいつの目は完全に達也の左胸の何も描かれていない胸ポケットに向けられていた。

 

「心配するな。

司波は昨日、正式な模擬戦で生徒会の服部を、十六夜に至ってはあたしを倒したんだ。

森崎のCADの操作技術はなかなかのものだし三人とも腕は確かだ」

 

姉上の発言に他のメンバーがざわめく。

言われてしまった後に思ってもしょうがないけど…こういうのって普通言わないもんなんじゃないの?

 

「とりあえず、だ。

今日から一週間、みんなにはオフなしで働いて貰うことになる。

毎年のことですまないが、今年も一人でも検挙数が減らせるように頑張ってくれ。

司波と森崎以外は見回りに行ってくれ」

 

「「「はい!!」」」

 

姉上がそう言うと達也達以外の風紀委員は本部を出て行った。

途中達也に声をかけた先輩もいた。

羨ましいぜ…俺まだ姉上しか風紀委員の知り合い居ないんだぜ?

 

「十六夜」

 

「はい。

えっと…確か二年の沢木先輩でしたっけ?」

 

「自己紹介もしてないのに名前覚えられてるなんて感心だね。

二―Dの沢木碧だ」

 

「よろしくお願いします」

 

握手を求めてくる沢木先輩の手を握る。

これから巡回があるからすぐに手を話してくれるかと思ったがなかなか放してくれないむしろその手を握る力は段々と強くなってくる。

握るというよりも握り締めるという感覚に近いだろう。

 

「自分のことは沢木と苗字で呼んでくれ。

呉々も下の名前で呼んでくれ給えよ?」

 

「ま、先輩の事を下の名前で呼ぶ習慣もありませんし。

沢木先輩と呼ばせていただきます」

 

俺は偽りの笑顔を貼り付けた顔でそう言うと左の手で深雪と達也から貰った黒い汎用型CADを弄って魔法を発動。

その途端握り締められていた手がするりと抜けた。

 

「おお?

俺の握力は百キロ近くあるのに…何をしたんだ?」

 

「魔法を使って俺の手から摩擦を奪ったんです。

俺には達也みたいにビックリドッキリ体術を持ち合わせていないんで」

 

驚きと共に発せられたその言葉は純粋な疑問から出てきた言葉のようだ。

この魔法に特に名前は付けていないが俺が勝手に作った魔法だ。

分類は…知らん。

 

「流石は入試で実技一位を取っただけはあるな。

その力、存分に学校の風紀を正すために振るってくれたまえ」

 

「もとよりそのつもりですよ」

 

立ち去って行く沢木先輩に手を振りながら俺は逆方向へと歩いていく。

 

「あ、百合くん」

 

「ん?

おお、美月か」

 

取り敢えず外に出るために歩いていると美月から声をかけられた。

見た所エリカもレオも居らず今は一人のようだ。

 

「その腕章…風紀委員のお仕事中でしたか。

ごめんなさい、邪魔しちゃいましたね」

 

「そんなことねえよ。

別に俺の仕事つってもその辺ぶらぶらしてるだけだから。

それよりさ、エリカとレオは一緒じゃないのか?」

 

「エリカちゃんなら達也くんと一緒に回るから教室で待ち合わせているそうですよ。

西城くんはもう入る部活は決まってるって言って先に帰ってしまったの。

私も部活はもう決めているんだけど折角だから見ていこうと思って」

 

「そっか…エリカは達也とか…」

 

やっぱりあいつもイケメンだからなぁ…

やっぱりエリカもそういう男に惹かれるのも当然か…

 

「妬いてるですか?」

 

「ん?!

そ、そんな訳ないだろ!!

大体、あんな適当暴力女誰が好きになるってんだ!!」

 

「ふふっ。

そういうことにしておきますよ」

 

俺が大声を上げて必死に抗議するのとは対照的に美月は面白そうに笑っている。

 

「そういやさ」

 

「どうかしましたか?」

 

生徒用玄関への道を歩きながら俺は呟く。

 

「お前ってほんとに優しい子だよな」

 

「な、何ですか急に?!」

 

今度は美月が顔を真っ赤にして抗議する。

そんなに恥ずかしいこと言ったかなぁ?

 

「いやさ、俺ってこういう性格じゃん?

大抵初対面の奴からは気味悪がられて近寄って来ねえんだよ。

考えてみろよ、常にヘラヘラしてる180近い大男が美月やエリカみたいな美少女に話しかけてみろ?

確実に警察のお世話になるぜ?」

 

「それは…そうかもしれませんね…あはは…」

 

俺の突拍子のない未来予想図に流石の美月も苦笑い。

俺そんな変なこと言ったかなぁ?

 

「それが美月にはなかったんだよ。

だから偏見とかしないいい性格してんなぁって思ってさ」

 

「わ、私そんなこと思ってませんよ?!

ただ…百合くんは大丈夫そうな気がするんです」

 

美月は大声での否定とは対照的に二言目は少し弱々しかった。

どちらかというと何かを隠したいとでも言うような…そんな声色だった。

 

「最初は百合くんのこと怖そうな人だなって思いましたよ?

でも、百合くんから発せられる霊子の光を見ているうちにそう言う気持ちがすっと消えていくんですよ」

 

本当に不思議な話ですよねと付け足してあははと笑う美月。

 

「そう言ってくれて光栄だよ。

俺も昔からこの目には色々悩まされてさ、霊子感受性のコントロールが出来るようになったのもここ二、三年の話だし」

 

「凄いじゃないですか!!

私なんて未だにこれがないと気持ち悪くなっちゃうんですよ?」

 

「オーラがどうとか言える時点でその目の制御には結構時間いると思うぞ?」

 

そうですかとしゅんとする美月。

実を言うと元々何かのコントロールと言う作業が得意だった俺は達也に出会ってからこの目の制御の練習を初めて二月程でそれを終えた。

美月程感覚が鋭敏ではなかったと言うのもあると思うがこれを今美月に言うと泣いちゃいそうなのでやめておこう。

 

「それでさ、俺さ行きたいとこあんだよね。

折角だし一緒に行かない?」

 

「どこに行くんですか?」

 

「闘技場。

やっぱり剣術の名家の人間としては剣術部の演目を見ときたいと思ってな。

下手すりゃ物凄い移動系魔法の撃ち合いが見れるし、あれカッコいいんだよなぁ」

 

「いいですよ。

少し運動部も見たいとは思っていましたし」

 

「よし、しゅつぱーつ!!」

 

美月の了承も取れたので俺は生徒用玄関へと向かった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「おーっ、いいねぇ」

 

「凄い熱気ですね…」

 

俺と美月は第二小体育館、通称「闘技場」へと足を運んだ。

そこでは既に剣道部の模擬試合が行われている。

俺と美月は壁にそって作られたいわば二階席みたいなところからその試合を見ていた。

 

「へ~魔法科高校にも剣道部ってあるもんなんだな」

 

「剣道部ってどの学校にもあるものではないんですか?」

 

美月が不思議そうに首を傾げる。

まあ、文化部に入るって言う美月が知らなくても仕方はないと思うけど。

 

「姉上…じゃなかった。

風紀委員長の渡辺先輩とかエリカがやる魔法を織り交ぜた剣を使った戦い方を剣術っていって魔法を使わない剣道とは明確に違う競技として扱われているんだ」

 

「そうなんですか。

私そういうことにあまり関わらなかったので知りませんでした」

 

「あっ!!

おーい、百合ー!!」

 

美月が納得したような顔をするとどこかから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

そちらを見ると達也とエリカがいた。

どうやら俺達と同じく剣術部の演目を見に来たようだ。

エリカも俺と同じく剣術家の血が通った人間だ、やはり血は争えないってことなんだろう。

 

「やっぱり千葉家のお嬢様にはこんな殺陣みたいな模擬試合はお気に召さなかったか」

 

「へ?」

 

「顔見りゃわかるさ。

お前今心底つまんないって思ってんだろ?」

 

エリカは俺の発言に頬をぷくーっと膨らませて怒ってますよと言っているかのような顔をする。

 

「…なんでわかんのよ?」

 

「俺も見てて若干そう思ってるからな。

ま、俺らの見てて面白いレベルってのはそれこそ真剣勝負ってやつだからな」

 

「剣の扱いの下手くそなアンタがそれを言うか?」

 

「う、うっせえ!!

だから拳銃で剣術の真似事してるんだよ!!

文句あっか?!」

 

「百合って剣術の名門と名高い十六夜家の息子なのに剣の扱いが下手なのか?」

 

「うるせえ!!

悪かったな!!」

 

エリカの言うとおり俺は剣術の家に生まれながらそこまで剣の腕は上手くない。

剣道の段位ならギリギリ初段が取れるかどうかくらいだろう。

 

「剣術部の番までまだ一時間以上もあるじゃない、桐原君!!

どうしてそれを待てないのっ?!」

 

下の板の間から女の子の声が聞こえてくる。

なんか当たりそうだなぁ…俺の嫌な予感…




最後まで読んでいただきありがとうございます!!
次回もお楽しみに!!
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