剪定時空カルデア〜魔界転生〜   作:サルオ

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5.推し目当てだっていいじゃない?

 

 

「先輩、もうすぐドクターに指定されたポイントに到着します。・・・しかし、見渡す限りの炎ですね。資料にあるフユキとはまったく違います・・・」

 

マシュが一生懸命に状況を説明してくれる。

 

だけど、それどころじゃないんじゃあ・・・。

 

暑い、いや熱い。

 

サウナなんて目じゃないぜぇ。このままでは蒸し豚どころかチャーシューになってしまう。

 

「資料では平均的な都市であり・・・」

 

ごめんね、マシュ。

 

全っ然!頭に入ってこない!

 

マシュの玉を転がすような素敵なウィスパーボイスは素晴らしい。

 

だけど熱いんじゃあ。どこかにオアシスでもないものか・・・。

 

 

 

 

 

「きゃあああああーーー!」

 

 

 

 

 

あー、女の子の悲鳴が聞こえるぅ。

 

世紀末的情景だし、こういう事もあるよなぁ。

 

まあ、R18的展開ではないかもね。どちらかというとR18Gのほうかもね。

 

「先輩!?現実逃避しないでください!」

 

「・・・はっ!急ごうマシュ!!」

 

「はい、先輩!」

 

と、口では言ったものの、正直熱さで体力限界なんです僕。

 

あー、めんどうくさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時期が、僕にもありました。

 

「なんなの?なんなのよコイツら!?なんだって私ばかりこんな目に遭わなくちゃいけないの!?」

 

銀髪吊り目の見目麗しい女性が悪漢に囲まれてました。

 

「先輩!?速っ!!?」

 

僕はマシュよりも速く、この灼熱地獄を駆け抜けた!

 

「もうイヤ、来て、助けてよレフ!いつだって貴方だけが助けてくれて・・・」

 

「レフ野郎はもう死んだ!もう居ない!」

 

女性の前に颯爽と登場!

 

同時に目の前の敵に体当たりだッ!

 

吹っ飛んでいく悪漢。

ダメージはさして無いだろうけども・・・

 

加速したデブの破壊力を舐めるなぁ!!

 

「・・・は?え?だ、誰!?」

 

「オルガマリー所長!?」

 

「え?マシュ!?一体何がどうなってんのよ!?」

 

ほう、マシュとそこの女性は知り合いなのか。

これは期待が持てそうですなぁ!

 

「失礼、レディ。自己紹介はまた後ほど。行くぞマシュ!!」

 

「はい、先輩!!」

 

呆然とする銀髪(重要)の女性を背にして、押し寄せる敵どもを薙ぎ倒しました。

 

マシュが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘、終了しました。お怪我はありませんか、所長」

 

ほうほう。彼女がカルデアの所長ねぇ・・・。

 

いいじゃな〜い!俄然やる気がむんむん湧いてきますねぇ〜!

 

「・・・・・・どういうこと???」

 

「それはですねレディ・・・」

 

「アンタみたいなブタに聞いてるんじゃないわよ!てか、アンタ誰よ!?」

 

「おっと、自己紹介が遅れまして失礼。私は上代(かみしろ)ユウと申します。以後お見知り置きを」

 

「先輩。きっと所長はわたしの状態を気にしてらっしゃるんだと思いますが・・・」

 

「そんなの見ればわかるわよ!デミ・サーヴァントでしょ!?それよりも、どうして今になって成功したかってことよ!」

 

おっと。そこを突いてきますか。

 

「マシュ。わかる??」

 

「一応、経緯は把握していますが、なぜ成功したかと聞かれるとちょっと・・・」

 

「いやいやいや!それもそうだけど、それよりも!アンタ一体どこのどいつなのよ!なんで普通にマシュと会話しているの!?」

 

「あ、わたくし、上代と申しまして・・・」

 

「それはもう良いって言ってんのよ、このブタ!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「なんで!!!??」

 

「あ、あの・・・、先輩も所長も少し落ち着いてください。わたしから経緯を説明しますので」

 

うーん、頼りになる後輩だ。

 

いやね?自分でもおかしいテンションだなって自覚はあるんですよ?

 

でも、目の前に吊り目で薄幸そうな銀髪美少女とか、僕の好みのどストライクのお方がいらっしゃればテンションもうなぎ登りというものでして!

 

「ちょ、アンタ!なんでそんな鼻息荒いのよ!?」

 

「大丈夫です所長。先輩は少し熱さで頭をやられてるだけですので」

 

あぁ〜、美少女たちから受けるさりげないディスり、最高なんじゃあ〜。

 

・・・いや、流石に落ち着けよ、僕。

 

 

 

 

 

「以上です。わたしたちはレイシフトに巻き込まれ、ここ冬木に転移してしまいました」

 

「あー、そういうことだったのかぁ・・・」

 

「なんでアンタまで納得してるのよ!?マシュから話を聞いたんじゃないの!!?」

 

「僕、過去は振り向かないタイプなんで」

 

「いやちょっとホントに勘弁して。生理的にコイツ無理」

 

大丈夫。そんなセリフは言われ慣れている。

そんな言葉では僕の心は傷つかない。

 

ヒビは入ったけどね・・・。

 

「他にも転移したマスター適合者はいません・・・。所長がこちらで合流できた唯一の人間です」

 

マシュが残念そうに俯いている。

 

そうだよな。僕がイレギュラーなだけで、マシュは普通に知り合いとかいるもんな。

 

その人たちは、どうなったんだろう・・・。

 

いや、あの管制室の風景。あの状況で生き残っている人間なんて、いるのだろうか?

 

「・・・でも、希望ができました!所長がいらっしゃるのなら、他にも転移が成功している適性者も・・・」

 

「いないわよ。それはここまでで確認しているわ」

 

マシュの希望的観測を、所長がぶった斬る。

 

「・・・・・・認めたくないけど、どうして私とソイツが冬木にシフトしたのかわかったわ」

 

「え・・・所長は生き残った理由に説明がつくのですか?」

 

「消去法・・・いえ、共通項ね。私もあなたもそこのブタも、コフィンに入っていなかったわ。生身のままのレイシフトは成功率は激減するけどゼロにはならない。だけど、コフィンにはブレーカーがあるの。シフトの成功率が95%を下回れば電源が落ちるのよ」

 

そうか。そんなシステムがあったのか。

 

まあ、僕も概要はよく分かっていないけれど、そりゃあそうだよな。

 

危険な行為とわかっていて、その成功率を上げて安全性を高めるのは基本中の基本。逆に危険度が増せば、セーフティが働くのは当然なわけだし。

 

感心する僕をよそに、所長は言葉を続けた。

 

「だから、彼らはレイシフトそのものを行なっていない。ここにいるのは、私たちだけよ・・・」

 

「なるほど、さすが所長です!」

 

「ブタに褒められても何も嬉しくないわね」

 

・・・この、なんとも言えない僕と所長の上下関係。

チョロいけど強がってる所長を、生暖かい目で見守る僕。

所長には悪いと思うけど、いいなぁ。

この人とは末永くお付き合いしたい。

 

なんか知らんが、僕的には波長がとっても合う。

所長からしてみれば迷惑極まりないとは思うけど。

 

所長が髪をバサっとかきあげる。

 

すげぇサマになってるな。

 

「フン、まあいいでしょう。状況は理解しました。そこのブタ。緊急事態という事で、あなたとキリエライトの契約を認めます」

 

「すいませんが所長。認めるも何も僕は契約解除の仕方とかもわかりませんし・・・」

 

「そんなもの分かってるわよ!いい!?ここからは私の指示に従ってもらいます。まずはベースキャンプの作成ね」

 

所長がジト目でこっちを睨んでくる。

 

ゾクゾクした。

 

「先輩は所長に対しては無敵なのでは??」

 

「その自覚は、あるよ」

 

「そこ!話の腰を折らない!・・・いい?こういうときは霊脈ターミナル、魔力が収束する場所を探すのよ。そこならカルデアと連絡が取れるから。それで、この街の場合は・・・」

 

「このポイントです所長。レイポイントは所長の足元だと報告します」

 

マシュが冷静に指摘する。

 

それを聞いた所長の表情といったら・・・。

 

困惑と羞恥と、それを取り繕うのに必死な感じで。

 

「最高ですね、オルガマリー所長」

 

「うぇ!?いきなり何よ、アンタ!」

 

「既にポイントを特定し、我々よりも早くに拠点を確保する。僕たちには到底真似できません」

 

「え!?・・・そ、そりゃあね。当然でしょう?私はこう見えても凄腕の魔術師で通っているんだから」

 

「いや、すげーっす。まじぱねぇっす。所長、女王様とお呼びしても・・・?」

 

「・・・まぁ、これからのアンタの態度次第ね」

 

いいんだ。チョロい。

 

「さて、マシュ。貴方の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒にして召喚サークルを設置するから」

 

「あ、ソレ盾だったんですね」

 

「アンタ、そんな事もわからなかったの?」

 

「いや、マジで勉強になります。所長のおかげです」

 

「そうね。これからも精進しなさい!」

 

なんか鼻息荒くしてるし。

 

・・・やべぇな、チョロすぎるだろ。大丈夫かこの所長?

流石に不安になってきたんだけど。

 

「だ、そうですが、構いませんか先輩?」

 

「ん。しょうがないよ。それで状況が好転するならやらなきゃね」

 

「わかりました」

 

マシュが盾を地面に置く。

 

途端に、周囲の風景が一変した。

 

「うおお!?」

 

なんじゃあ、こりゃあ!!

 

なんか周りが青い幾何学模様っていうの?光のサークルに覆われて、ここだけ冬木って街と別空間に変異したんですが!?

 

『シーキュー!シーキュー!もしもーし!?よし、通信が戻ったぞ!』

 

そして唐突に繋がるドクターとの通信。

 

ちょっと所長とドクターの間ですったもんだがあったけど、まあ結果オーライということで・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・報告は以上です。現在、カルデアはその機能の8割を失っています。残されたスタッフでは出来る事に限りがあります。なので、こちらの判断で人員はレイシフトの修復、カルデアス、シバの現状維持に割いてます』

 

ドクターがカルデアの現状を所長に報告し終えた。

 

「結構よ。私がそちらにいても同じ方針をとったでしょう」

 

所長から及第点を頂いて、ドクターがほっと一息ついていた。

 

「ロマニ・アーキマン。納得はいかないけど、私が戻るまでカルデアは任せます。私たちはこちらでこの街・・・、特異点Fの調査を続けます」

 

『うぇ!?所長、そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか!?チキンのくせに!?』

 

あ、やっぱりみんなからの評価はそんな感じなのね。

 

「今すぐ戻りたいに決まってるでしょう!?でもレイシフトの修理が終わるまでは時間がかかるんだし・・・」

 

所長がドクターに噛みつきながら、ため息を漏らす。

 

「この街にいるのは低級な怪物だけだとわかったし、デミ・サーヴァント化したマシュがいれば安全よ。与えられた状況で最善を尽くすのが、アニムスフィアの誇りです」

 

ん?なんか聞き慣れない単語が。

 

「・・・ねぇマシュ?アニムスフィアってなに?」

 

「あ、先輩はご存知ないんですね。アニムスフィアというのは所長のご実家の名前でして、カルデアを作り上げた魔術世界の名家なんです」

 

「あー、なるほど」

 

アインツベルンではなかったわけだ。どおりでドクターが怪訝な顔をしたわけだ。

 

「これより、マシュ・キリエライト、およびそこのブタを探索員として特異点Fの調査を開始します。・・・とはいえ現場スタッフが未熟なので、このミッションは異常事態の原因、その発見に留めます。解析・排除はカルデア復帰後、第二陣を送り込んでからの話になります。・・・アンタもそれで良いわね?」

 

「所長に逆らうハズないじゃないですか」

 

「・・・そこで即答もどうなのよ?」

 

『了解しました。健闘を祈ります、所長。緊急事態になったらすぐ連絡を』

 

「ふん!SOSを送ったところで誰も助けてくれないくせに・・・」

 

ん?

 

「所長、今のはどういう・・・」

 

「なんでもありません!ロマニ、通信を切ります。そちらはそちらの仕事をこなしなさい!」

 

そう言うと、所長は一方的に通信を切ってしまった。

 

なんか、地雷を踏んだ?

 

少なくとも、所長の本音が垣間見えたような・・・。

 

「・・・所長、よろしいのですか?ここで救援を待つ、という案もありますが」

 

マシュが恐る恐るといった感じで所長に伺いを立てる。

 

「そういうわけにもいかないのよ。カルデアに戻った後、次のチーム選抜にどれだけの時間とお金がかかるか・・・。最悪、今回の不始末を盾にしてカルデアは魔術協会に取り上げられるかもしれない。そんな事になったら破滅よ。手ぶらでは帰れない。私には連中を黙らせるだけの成果が必要なのよ」

 

所長の目は真剣そのもので。

 

有無を言わせない迫力を持っていた。

 

「悪いけど、付き合ってもらうわよ。マシュ・・・」

 

「あれ?僕は??」

 

「アンタは戻ったらキッチリ処分してあげるわ」

 

「・・・・・・冗談ですよね???」

 

「本気も本気よ。アンタみたいな訳わかんないのがカルデアにいるなんて、それこそ協会に良いネタを与えるだけ。絶対に抹消してやるから覚悟してなさい」

 

・・・これは、僕は協力しない方が良いのでは??

 

 

 

 

 

さて。

 

 

 

 

 

さてさてさてさて。

 

 

 

 

 

この状況で、とっても不謹慎だと我ながら思うんだけど、僕は一つ、大変に楽しみにしていた事がある。

 

いま、僕たちのいる空間。所長やマシュ曰く、召喚サークルなるものらしい。

 

この世界が僕の生きてきた世界と同じなのか、はたまたゲームの世界に僕だけ転生してきたのかはわからない。

 

だがしかし、もしここがfgoの世界であるならば、僕は一点だけ、事前に予習していたことがある。

 

そう。いわゆる、リセマラだ。

 

スマホのアプリゲームでよくある単語。ようするに、ガチャだ。

 

WEBで調べた限り、fgoの世界には2種類のガチャが存在するらしい。チュートリアルガチャと、ピックアップガチャだ。

 

チュートリアルガチャは、まあ簡単に言えば最低限の強さを持った仲間を手に入れるガチャ。ピックアップガチャは、外れる確率がめっちゃ高いが、代わりに手に入る仲間の強さは折り紙付きというガチャ。

 

いま、僕がやろうとしている英霊召喚、つまりガチャは、普通に考えればチュートリアルガチャであろう。

 

しかし、この状況。今からやるのは本当にチュートリアルガチャでしかないのか?

 

そこは僕にもわからない。

 

だが、だがもし、これから行う召喚がチュートリアルでもピックアップでもない闇鍋ガチャであるならば、もしかしたら引き当てる事ができるかもしれない。

 

僕が予習の上に見つけ出した、推しのサーヴァントを・・・!!

 

ここまでの流れで分かるかもしれないが、僕は基本的に銀髪キャラが大好きだ。大好物といっても過言では無い。

 

Fateの世界では、正直言って、絵柄で個人的に惹かれるキャラは少なかったといえる。

 

だが、僕は見つけてしまった。見た目的にも設定的にも、僕の好みどストライクなサーヴァントを!

 

その名も『宮本武蔵』!

 

まあ、Fateの世界観的に言って、過去の偉人たちが実は女性でしたってのはよくある話らしく、僕は『歴史上、男として伝わってるなら男キャラでいんじゃね?』って感覚の人間だ。だから、見た目が気に入った宮本武蔵なるサーヴァントの情報を(ネタバレしない程度に)最初に調べてみたのだが、これが僕のツボをしっかり抑えていたキャラだったのだ。

 

この宮本武蔵は、歴史上の人物ではなく、似たような生まれの別次元の宮本武蔵なのだと!

 

設定厨と言われても仕方ないが、僕はこの設定が大変気に入った。同姓同名の別人、それどころか別次元の人間。かつ、女性。生まれ持った能力は実在した人物と同じなのに、設定上は別人。

 

いやぁ、上手いこと抑えてきますなぁ。

 

尾前に教えてもらったアプリではあったが、もし始めるならばこのキャラを引けるまではリセマラしようと心に誓ったぐらい、このキャラ設定にハマってしまった。

 

だから、いま、この場でかの宮本武蔵を引き当てる事ができたのなら、僕のモチベはMAXになるだろう。それこそ何度だって世界を救ってやろうってくらい、ね。

 

面倒な召喚儀式や詠唱は省略。当たるも八卦当たらぬも八卦、とにかく賽は投げられた!

 

果たして結果は・・・

 

 

 

 

 

「新免武蔵守藤原玄信……!? ごめん、やり直し! サーヴァント・セイバー、新免武蔵ここに推参! おもしろおかしく過ごさせてね、マスター!」

 

 

 

 

 

キターーーーーーーーー!!!!!

 

よっしゃ、これはもう勝ち確ですね。

 

マシュも素晴らしいが武蔵ちゃんも素晴らしい!

 

「こちらこそよろしくね!武蔵ちゃん!!」

 

あぁ、いますっげぇキモい顔してるんだろうな僕。武蔵ちゃん、若干引いてるし。

 

でもいいんだ。信頼なんて、これから築いていけばいいんだから。

 

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