「ごめんあこ。俺はリサが好きだから付き合えない」
その言葉はあこの心を沈ませるのには十分だった。好きな人にフラれるのはあこにとっても初めてであり、初恋は儚く散った。
「……悔しいなぁ……でも、前向かないといけないよね……」
そうして落ち込んでいたあこをどうにかしようとした男がいた。それが、
「……どうしたあこちゃん元気ねぇ……って眼真っ赤だぞ!?」
「……フラれちゃった」
「……え?」
「好きな人に……フラれちゃったの」
男はそれを聞いて
「そうか……」
そう言って、あこの前に近づく。そして
「……あこちゃん、飯行こう。奢るよ」
「……いいの?」
「悲しいときはとりあえず美味いもん食っとけ。腹を満たしたら次を考えよう。戦の時もそうだ。どれだけ悩んでも腹は減る。今いい時間だし、連絡は俺が取っておくよ」
そう言ってこの男、白金輪廻はその翌日、あこを連れて食事に連れて行った。何度か燐子と一緒に食事をしたりしていたけど、こうして輪廻と二人で食事を取るのは、初恋の相手、羽丘の雷狼竜といたのもあり、久しぶりであった。
「悔しくて時々リサ姉をリサ/姉にしたくなる」
それはあこからしたら冗談だが、半分本気でもあった。そんな話をしても輪廻はしっかりと話を聞いてくれたし、慰めてくれた。
「……まぁ、フラれた時の気持ちは、俺も分かるよ」
「え? 輪廻さんも好きな人いたの?」
「まぁな」
あこのこの言葉も、実は輪廻を傷つけていたというのは知らなかった。
そして、しばらくの間輪廻に慰められ続けたあこは……輪廻に恋を、していた。
あこのためにご飯を奢ったり、時には自分の料理も食べさせたり、姉である燐子と一緒に出かけたり、そういった経緯であこは輪廻に心惹かれていった。本来ならば嬉しい恋である。
ただ、あこの中では告白をするかなど無かった。先程恋をしたと言ったが、あこにとっては恋を
「……輪廻さん……でも、あこはもう……竜兄にキスしちゃったんだよね……」
あこが輪廻にそれを言えない理由。それは初めてのキスを初恋の人に付き合っていないのにあげてしまったから。
初恋の人を自分のものにするために、あこは自分のファーストキスをあげた。
あこはフラれたからそこに違和感が出てしまった。何よりフラれて落ち込んでるのを慰めてくれただけの男に惚れてしまった自分のチョロさを嫌っていたのだ。
勿論、後悔があるかと言われたら無いと答えたい。だって好きな人のために努力して、フラれた。だからあこ自身それが罪悪感なのかと聞かれたら答えはNOだと言いたい。
それでも、他者から見たら完全にチョロいん。なんならころころ男を変える悪女なのでは無いかというあこの考えもあった。
だからこそ、輪廻には言えなかった。
♪♪♪
「だから……この想いは言わない……そう考えてたのに……輪廻さんが悪いんだよ。うん。それしかない。あこに、こんな悪女に優しくするから」
「とんでもねぇ冤罪だなそりゃ」
「……そうだね。あこは、最低だよ」
「まぁ、俺にとってはあこちゃんのキスとかどうでもいいけどな」
「……どういうこと?」
輪廻の突然の発言に疑問を投げるあこ、正直複雑だった。
「愛とか恋とかさ、キスやエロい事が全部じゃねぇだろ。少なくとも俺はあこちゃんと食事したり、こうして演奏してるだけで今は幸せだ。例えいつかそういうことをしたとしても、俺はあこちゃんが初めてでも初めてじゃなくても俺は気にしない」
『俺は』を強調して自分は問題ないって言った輪廻だが、最終的に決めるのはあこである。
「あこちゃん、最終的に決めるのはあこちゃんだから俺は何も言わないけどさ。それでも、一つ言うとすれば」
「誰を愛していたって誰とキスしてたって構わない。最後は俺を好きになってくれれば、それでいいさ」
「っ……ありがとう、輪廻さん」
そう言った輪廻に対してあこは涙を流しながら
「もう少し、気持ちを整理したい……だから、1日だけ待ってて」
「おう」
そう約束したのだった。
♪♪♪
「すみません、
「雷狼は俺だ……お前は……確か」
「白金輪廻と言います。貴方に相談があるんです」
「分かった。飯でも食って話し合おうか」
「何の事か聞かないんですね」
「あこの事だろう。俺には正直どうすることもできないが、助けにはなりたいと思っている」
「……よろしくお願いします」
その翌日、羽丘学園三年の雷狼竜に白金輪廻が殴り込みをしたというデマが流れたのは何故だろうか。もしかしたらもと女子校からすればあり得ない、二年の男子が三年の男子に教室まで会いに行ったせいかもしれない。