ソードアート・ディファレント   作:ルイ/Lui

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ソードアート・ディファレント 外伝

–邂逅–

 

人生とは思いがけないもので、その連続にいつも俺は驚かされる。

何故かと聞かれれば、それもまた説明しづらい程に。だからなのか、俺はまたこの場所へと来ていた。

「......久しぶりだな、ここ」

それは、あの惨劇の物語が始まった原初であり、また軌跡。そう、第1層にある《はじまりの街》だ。

ここで、俺は彼らと出逢った。いや、出会わされた、というのが正しいのかもしれない。だって、あの日は夕暮れに包まれた、暗い暗い日なのだから。

「さて、と......こんなとこで突っ立ってちゃダメだな」

そう思った俺は、今いる場所よりも北東へと進んでいく。目指す場所は、とある家。いや、家...よりも、刑務所 が正しいな。

「......待ってろよ」

そう深く呟いた声は、フワリと吹かれる風に飛ばされていくのだった。

 

ーーーーーーーーー

 

第1層《はじまりの街》よりも北東に離れた場所にあるゲート《壊乱街道(カオスエラー)》。俺はここに用があった。それは、ある人物に会う為にだ。

「......久しぶりに来たが、いつ見ても禍々しいな」

そのゲートは、その名に相応しい程の雰囲気を醸し出しており、常人、或いは一般は通らないような気配を感じる。それはそうで、この先には《刑務所》があるからだ。

SAO内にある《刑務所》──即ち、《黒鉄宮》。俺はここにいるはずの、元SAL(スターオールライト)メンバー《カラル》へと会いに来ていた。

彼は、最前線が中層以降になってからの大事な戦力メンバーで、攻略組のレイドパーティにも参加する程の精鋭だった。しかし、とある事件がキッカケで、システムが犯罪者扱いされてしまい、投獄されたらしい。俺にはどうやっても冤罪という証言ができない為、釈放はできない。しかし、面会ならできる、との事らしいので、俺はここに来ていた。本来なら、SALの代表、或いはリーダーが来るべきなのだろうが、誰ひとりとして行かなかったので、俺が代わりに来た──という所存だ。

本来なら俺が行く必要は居ないのだが、そうなってしまっては、仲間外れと一緒だと思ったから......なのかもしれないな。

「......当たり前だが、よく見られるな」

それはそうなのだが、やはり見られてしまう。気にはなるが、牢獄外には手出し出来ないようになってるはずなので、邪魔をされることもない。

「──よし、ここだな」

怪しげな視線を潜り抜け、着いた先はとある個室。そこには《面会室A》と書かれており、その下にはドアがある。そこに入ると、対立する場所にだけガラスが張っており、相手の顔がよく見えていた。

「......貴方は?」

「第52層、攻略戦にて参加した《キリト》だ。レイドパーティの時も挨拶したはずだが...覚えてるか?」

そう話しかけられたので、俺はそう返すと、彼は「...そうですか」と、素っ気ない言葉を返した。

「──さて、ひとつ聞きたいことがあるんだが」

「...なんです?」

「何故、君は投獄された?」

俺がそう問うと、彼は硬直し、やがて震えながら答える。

「......そんなの、私が聞きたいくらいですよ...なんで私は投獄されたんですか......何もしていないのに、何もやっていないのに...こんなの...こんなの理不尽ですよ...!」

彼なりの反論だったのだろう。しかし、システムがそう判断した以上、俺にも、彼にも何もできない。そう、決まっている。

「......そう、だよな」

俺は、そう答えるしかなかった。決まっているからこそ、理不尽なことがある。それは、どんなに反論したって、どんなに主張したって、越えられない壁と、抗えない流れがあるからだ。分かりきってはいるが、完全に理解はしていない。そのせいで、俺は直ぐに返すことが出来なかった。

「......聞きたいことはそれだけですか?」

「......あぁ」

「......そうですか、なら──帰ってください」

彼はそう吐き捨てると、この個室から出ていこうとする。俺は彼を引き止めると同時に、こう問う。

「君は......もし、もし叶うなら、何がやりたい?」

「......叶うなら...?」

彼はそう呟くと、半分諦めかけていた瞳で振り返り、こう返した。

「──私の分まで、その力を奮って下さい......《黒の剣士》さん」

話した彼は、個室へと出ていってしまい、ただ1人、俺は個室に残された。

俺に残るのは、ただの虚しさのみ。でも、期待されているんだ、という嬉しさが、微妙に絡み合っていた。それは、少しづつ困惑へと繋げていき、やがて俺を突き動かした。

「あぁ──君の意思に応えよう」

そう呟き、俺はこの場所を後にし、密かに目覚めていたスキルを選択する。そして、いつもの場所で、いつものパターンを続けていく──。




お久しぶりです。
続きが終わりそうもないので、少しだけオリジナルのストーリーを書きました。実の所、書き方が少し変わっていまして、今までよりも読みにくい...かもしれないです。ご容赦ください。
今は全く別の方の小説に力を入れていまして、続きを書けてないんですよね。すみません。
何れ書いて行きますので、気長にお待ち頂ければなぁ...と()
それでは、また次回...。

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