ソードアート・ディファレント   作:ルイ/Lui

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ソードアート・ディファレント 7 -Tragedy Story-

チャプター7 –お前は誰だ?–

 

第26章 –初代攻略メンバー–

 

???「──久しぶりだな、2人とも」

 

少しダンディな声...いや、聞き覚えのある太めの声が、店を開けると聞こえてくる人物がいた。

その名は『エギル』。

俺たちが会うのは第50層攻略戦ぶり...とアスナから聞いている。

 

──まだ記憶があやふやだった為、忘れたことをアスナに呟くと、呆れられながらもその事について教えてもらった

なんせ第48層《ミリアル》攻略戦の時に、《彼》は──。

 

その刹那、不意に胸に痛みが走り、様々な感情が流れ込む。

 

《彼》を殺した自分が『憎い』だとか

《彼》を殺した自分が『嫌い』だとか

《彼》を殺した自分が『怖い』だとか。

 

そんな負の感情が渦巻く中、俺とアスナを見ていたエギルが不思議そうにこちらを見ているので、一旦思考を停止、咳払いをし、俺はエギルに何故ここに居るのかを問うことにする。

──アスナがこちらを見て訝しんでいたのも、きっと、気の所為だろう。

 

キリト「...こんなところで何してるんだ?エギル」

 

質問をすると、エギルは間を持たずに質疑応答に答える

 

エギル「──ここは俺の店で、今は店主としてここで働いている」

 

キリト「──店?」

 

エギル「あぁ、そうだ」

 

そういえばドアの上に看板らしきものがあり、この店の名前と、《故買屋》の模様があった。

 

エギル「うちの店は安く仕入れて安く提供する──がモットーなんでね」

 

...周りの武器や防具の値段を見ると、確かに中高層や前線と比べて安い。

この武器に関しては、定価【56,300コル】に対して、エギルの店では【35,000コル】となっている。

その価格、凡そ【21,300コル】分浮いているのだ。

...なぜこんなにも安く仕入れられるのかはさておき。

 

俺はまたエギルに問う。

 

キリト「...エギル、攻略戦は、どうするんだ...?」

 

これは、俺が一番気にしていたことだ。攻略戦にとってエギルは数少ない斧使いプレイヤーで、第1層ボス《イルファング・ザ・コボルトロード》でも、咄嗟の判断で俺や《彼》を助けてくれた。それだけじゃない、たまにしか攻略戦に顔を見せないエギルは、衰えていない判断力と分析力で、俺達を次層攻略に導いてきた。

即ち、俺達攻略組メンバーにとって、エギルは大事な《仲間》であり、大事な攻略の《鍵》でもある。少なくとも俺を含む攻略組の少数は、前者だと思っているだろう。

アスナも同じことを考えていたようで、俺とエギルを見守っていた。

 

数秒の静寂の中、漸く動き出したエギルは、店の外に出て、扉の【OPEN】を【CLOSED】に変え、俺とアスナに『こっちへ来てくれ』とだけ言われ、着いていくことにした。

なぜそこまでする必要があるのか、なぜ今ので言わなかったのか。

色々と気になることはあるが、恐らくエギルにとって、大事な話であり、俺達以外には聞かれたくないのだろう。

 

そうして案内されたのは、客室のような、でも懐かしき和室のような。

部屋のスペースは7畳、1人で生活するのなら丁度いいレベル、それに店を営んでいるのなら、これでいいくらいだ。と言っても、店を営んだことも、一人暮らしをしたこともないので、何とも言えないし、あまり口を挟めない。

 

そうこうしてるうちにエギルはコップの容器にお茶のようなものを入れ、俺達に差し出す。

俺とアスナは有難く貰い、その飲み物を一口啜る。

 

キリト「(...暖かい)」

 

こんなに暖かい飲み物を飲むのはいつぶりだろうか。味はホットミルクのようなもの、どうやって作ったのだろうか。

まだ記憶が完全に戻っているわけでもないので、あまり記憶を詮索してもよく分からなくなるだけだ。

あるいはゲームではなく、現実世界での記憶かもしれないが。

 

また少し啜って俺は早速本題に入る。

先程聞いたことについてだ。

 

キリト「エギル、さっきの話だが──」

エギル「キリト、少し待ってくれないか」

キリト「え?なんで──」

エギル「お願いだ」

キリト「──分かったよ」

 

何やら考え事をしているエギルに遮られ、俺は言われるがままに待つことにした。

そしてずっと無言だったアスナも緊張して来たのか、固唾を飲んでいる。

...いや、この世界に唾液というものが存在するのかすら分からないが。

数分が経ち、エギルは決心したように口を開いた。

 

エギル「俺はこの店を...《故買屋》を営んでいる」

エギル「勿論、攻略戦には参加する予定だ」

エギル「だが──いや、やめておこう。」

 

しかし、エギルは急に話を切り上げ、話そうとしなかった。

それこそ驚いたものの、俺とアスナは決して聞こうとしなかった...いや、聞かなかった。

嫌な予感がしたから──。

 

キリト「...そうか、とりあえず参加するなら特に問題はないよ」

アスナ「そうだね...私も問題はないかな」

エギル「理解して貰えて良かった──そうだ」

キリト/アスナ「?」

 

エギルが突然立ち上がり、部屋の奥から何かを持ってきたと思えば、オブジェクト化したアイテムだった。

 

キリト「...これは?」

エギル「現在うちで取り扱っているアイテムだ、本来なら金を取るが、今回は久しぶりに会えたということで、その記念にひとつやろうかと思ってな」

アスナ「良いんですか?」

エギル「あぁ」

 

...何とも太っ腹なやつだ。

しかしひとつか、これは悩みどころでもあるな

5個程あるのだが、そのうちの2つがバフ系のアクセサリー、残りの3つが様々な効果が期待できる能力向上アクセサリー系だった。

どちらとも攻略に必須なものなので、本当に迷ってしまう。

俺がどれにしようか迷っている中、アスナはすぐに選んでしまった。

アスナが選んだのはどうやらバフ系アクセサリーらしい

それならばと思い、俺は能力向上アクセサリー系の中から選ぶことにした。

このアクセサリーには、それぞれひとつずつ効果がある。

 

まず1つ、この【真珠の指輪】には《レベルアップボーナス》という効果が付いている。

《レベルアップボーナス》は、RPGにおいて重要なもので、これをあげなければクリア出来るものも出来なくなる。言わば強さである。

 

次に【赤石の首飾り】、このアクセサリーには《攻撃力アップボーナス》が付いている。

《攻撃力アップボーナス》は、レベルアップだけでは勝てないこともあり、敵を倒すことにおいては重要である。

 

次に【黒石の腕輪】、このアクセサリーには《防御力アップボーナス》が付いている。

《防御力アップボーナス》は、このゲームにおいて最も需要ともいえる効果だ。

HPがゼロになった瞬間【GAMEOVER=死】となるこのゲームでは、絶対に離せない装備。

特にタンクや片手剣盾使いなど、前線で戦うプレイヤーにとって需要である。

 

俺はこの中でどれを貰うべきか、時間はまだあるが、恐らくそろそろ攻略会議の予定が立たれると思われる。

それらを考慮するとなると、俺が選ぶのはこれとなる...だろう。

 

エギル「──《赤石の首飾り》を選んだか」

 

キリト「あぁ」

 

そう、俺が選んだのは《攻撃力アップボーナス》が期待出来る《赤石の首飾り》。

ステータスに+3追加されるだけでそこまで恩恵は無いのだが、それはあくまでレベルを鬼上げをしていて、尚且つ《SP》を振り分けていなかったらの場合だ。

盾を使わない俺にとって、攻撃力は重要である。

だからといって、防御力も無視出来ない、しかし防具も取り入れるとなると、今持っているコルじゃ普通レベルの装備を買うことになるし、鎧を買うとなると動きずらく、更に視界も悪くなる。出来れば軽装の方が良いのだ。

それらを踏まえるなら《黒石の腕輪》の方がいい。

でも俺はあえてそれを選ばなかった、何故かは数分前の俺に聞いてくれ...。

 

エギル「さて、これからどうするんだ?」

キリト「...とりあえず、俺達はまたレベルを上げに行こうかと思ってる」

 

アスナにアイコンタクトをし、話を合わせてもらう

...記憶にない過去の俺を信じて、合わせてもらえるを祈る...しかない。

 

アスナ「そうです、この近くのフィールドに出てレベルアップをしてこようかと」

 

エギル「そうか、無理しない程度にやってこいよ」

 

アスナ「はい」

 

キリト「それじゃ、エギル、また攻略戦で会おうぜ」

アスナ「お邪魔しました」

 

エギル「あぁ、またな」

 

エギル「...さて、店を開けるか...いや、今日は休みにしよう」

 

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_________

 

キリト「まさかエギルが最前線の第50層で店を営んでいるなんてな...」

 

アスナ「驚いたね」

 

キリト「...あ、そうだ、アスナ」

 

アスナ「?」

 

俺が問いかけるとアスナは疑問をこちらに向ける。

 

キリト「俺を追いかけて来たんなら、何か理由があったんじゃないのか?」

 

アスナ「...んー、ごめん、忘れちゃった」ニコッ

 

...その笑顔に、不意にドキッとしてしまったが、俺は自分の頭を手でかき、誤魔化すように話す、

 

キリト「...あー、なんだ、珍しいな」

 

アスナ「そう?」

 

キリト「あぁ」

 

アスナ「ふーん...ま、いいわ、行きましょ」

 

キリト「──おう!」

 

俺とアスナは、エギルの店を出て、レベルアップの為にフィールドへと向かっていた、アスナの顔が少し紅かったのは恐らく気の所為だろう。

──しかし、そこに居たのは思いもよらぬ者がいたのだった...。

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第27章 –見知らぬプレイヤー–

 

ここは第50層主街区《アルゲード》から少し離れたフィールド。

俺たちは近くにあった洞窟に来ていて、そこでアンデッド系モンスターと戦っていた。

 

キリト「──アスナ!スイッチ!」カキン

 

アスナ「了解!──はぁぁぁぁ!!!」キュィィィン

 

俺はモンスターの攻撃を《パリィ》で受け流し、アスナと交代する。

 

(《パリィ》とは...ソードスキル同士を、あるいは剣を流し、弾き返すシステム外スキル

これをされた相手は隙だらけで、この間にソードスキルを打たれると大ダメージを受ける。

また、ソードスキルを打ったあと、《スイッチ》に繋げることも可能。)

 

アスナのソードスキル《リニアー》は的確で、モンスターの弱点をいとも簡単に突いた。

しかしモンスターのHPはまだ残っていたのだ。

それ故にモンスターはアスナに攻撃をしようとする。

 

キリト「──任せろ!」キュィィィン

キリト「うおぁぁぁぁ!!!」カキンッ!

 

アスナに振り下ろされた攻撃が、俺の単発斜め斬りソードスキル、《スラント》による《パリィ》によって弾き返される。

アスナはソードスキルの硬直でまだ動けない

俺もソードスキルで《パリィ》をした為、《スキル硬直》が起きている。

 

(《スキル硬直》とは──この世界《ソードアート・オンライン》に存在する《ソードスキル》の使用後に硬直が起きる現象。

体を動かすことが出来ないため、防御姿勢を取ることも、避けることも出来ない。その為に編み出されたのが システム外スキル《スイッチ》

である。)

 

本来ならば、絶望的な瞬間だ。しかし俺たちには秘策──この状況を打破出来る方法がある、それは──

 

キリト「──そこのあんた!スイッチ!」

 

「りょ──了解!」キュィィィン

 

"もう1人"の仲間だ。

 

プレイヤーは剣を背中に添えるように構え、ソードスキルを使用する。あれは確か──

 

「 ──とりゃあ!!」シュンッ!

 

──彼が使ったソードスキルは上段突進技単発斬りソードスキル、《ソニック・リープ》。

《片手直剣》ソードスキルの一種で、飛んでいる敵に対して使える技。

しかし、下段突進型単発斬りソードスキル、《レイジスパイク》より射程が短いので少し近付かなければならない。

彼の攻撃によってモンスターのHPはゼロになり、青いパーティクルとなって消えていった。そして目の前に「Congratulations」と表示される。

 

キリト「──ナイス、2人とも」ニッ

 

アスナ/???「──そっちこそ(あ、ありがとうございます...!)!」

 

なぜ俺たちのパーティにこのプレイヤーがいるのか...それは数分前に遡る。

 

_________________

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________

 

キリト「──ほ、本当にこっちで合ってるのか?」

 

アスナ「大丈夫よ、私覚えてるし」

 

と自信満々に話すアスナ。

正直なことをいえば、不安でしかない。

そもそもアスナは第50層攻略戦後、この層の有効化(アクティベート)する為にここ、《アルゲード》に着いて来なかったはずだ。

それなのになぜこんなに迷いがないのか。俺でさえマップを使わなければ確信が持てない程なのにだ...なんだか複雑な気分になるぞ。

あれこれ考えていると、同じ風景だった視界が光に包まれ目が眩んだ。目を光から手で守りながら、少しづつ目を開けると、そこにはフィールドが見えていた。

 

キリト「...マジかよ」

 

アスナ「ね?言った通りでしょ?」

 

キリト「あ...あぁ」

 

これにはアスナの記憶力に敬服せざるおえない。しかしなぜこんなに覚えているのか、その理由も聞きたいが、今はそれどころじゃなさそうだ。

 

キリト「...」

 

アスナ「どうしたの?」

 

俺がカーソルを合わせる為に目を細めていると、アスナが問うてくる

そこでアスナにも伝えることにした。

 

キリト「──あそこのプレイヤー...なんだか変じゃないか?」

 

アスナ「え?」

 

俺が指を指すとアスナもその方向へ目を細め、凝視する。するとアスナは次第に目を見開いていく。

 

アスナ「...ぁ」ダッ

 

声にもならない声でアスナは走り出していた

 

キリト「っ!」

 

急に走り出したアスナには驚いたが、今はそれどころではない、急に走り出す程、あのプレイヤーは危険ということになる──あくまで感覚だが。

あのプレイヤーの位置までは凡そ150m。

ここからじゃ見えにくいが、HPバーは恐らく残り4割、戦っているのは...あれはアンデッド系モンスターか。

となると...あと6分以内に間に合わなければ、あのプレイヤーは"死ぬ"。

もちろんあのプレイヤーのレベルや装備によるだろうが、これはここの適正レベルで、尚且つ適正装備で来ていた場合の憶測だ。

アスナがいる場所はここから凡そ25m。大体1分程経っていた。俺も向かわなければならないが、《俊敏》の《SP》をそこまで振っていなかったのが仇となっている。

しかし、だからと言って見殺しにするのは最善じゃない。そして俺も、走り出していた。

 

–––––––––––

 

アスナ「(お願い...!間に合って...!!)」

 

あのプレイヤーの位置は、あと80m。HPは残り3割。このまま走り続ければ、何れあのプレイヤーのHPが尽きてしまう。

私は《俊敏》の《スキル》もあげてはいるけれど、まだ少し足りなかったようで、このままじゃ間に合わない。少しでも声が届けば、まだ延ばせる。少しでも可能性が出てくる。でも──!

 

アスナ「(ここからじゃ...届かない...!)」

 

この世界では、あまり遠すぎると声は届かない。これは《ノイズキャンセリング》を応用したものだとキリト君は言っていた。

せめて15m...これだけの距離ならば声は届く。

しかし今私がいるのは...残り50m。35m足りない...。少しでも伸ばせれば...。

 

キリト「アスナ!」

 

すると後ろからキリト君の声が聞こえ、顔だけ後ろに向く。

 

キリト「ソードスキルだ!突進系のソードスキルを使え!」

 

そうか。

それならば少しでも距離を稼げるかもしれない。

《細剣スキル》の突進系ソードスキルは2つあり、その1つは《フラッシング・ペネトレイター》と呼ばれる最上位ソードスキル。

その内、私が使えるのは上段突進技ソードスキル《シューティングスター》。

 

本来ならソードスキルはバトルの時に使うもの。でも構えれば使えるらしい。

しかし、ソードスキルを走りながら発動させるのは至難の業。

走ることによってブレてしまい、型を合わせることができないからだ。

...キリト君は辛うじて出来ないことはないらしいんだけど。

 

少しでも希望があるのなら、試してみる価値はある。しかしソードスキルは、使用すれば《スキル硬直》が生まれてしまう。

だが、空中に放てば少しでも硬直を短く出来る。幸いこの辺はデコボコしており、少しでも滞空時間を稼ぐことが出来る...はず。

 

アスナ「...やってみなきゃわからないよね」カチャ

 

私は愛武器...《ランベント・ライト》を抜刀し、ソードスキル《シューティングスター》の型を構える。私はこれまで、この技術を練習してきたけれど、今まで1回も成功したことがなかった。だからこそ、これは"賭け"。

今はただ祈るしかない。キリト君も必死に走って来ている。何かあれば彼がどうにかしてくれるはず...第25層で会った時から、彼は私をずっと助けてくれていた...なぜか本人は記憶喪失のように忘れているみたいだけど。

だから、恩を返したい。少しでも返したい。このまま返せないでこのゲームを終わらせたくない...だから...だから...!せめて...!!キリト君が気付いたあのプレイヤーを...!!

 

アスナ「──絶対に助けてみせる!!」キュィィィン

 

私の思いに応えたのか、愛武器《ランベント・ライト》が黄緑色に光る。

そして空中へ軌道修正をし、ソードスキルを発動させた。

 

アスナ「はぁぁぁぁ!!!!」シュンッ!

 

空中に飛び出た私は、ソードスキルの勢いによって更に加速させ、予定よりも少し遠くの場所に着地した。

これによってあのプレイヤーの位置は残り20m。そしてHPが残り2割。

あと5m、これだけあれば、少しでも届くはず...!!

 

–––––––––

 

必死に追いついて行く中、何やらあのプレイヤーの挙動が変わったことに気付く。

豹変したのか...?と考えたが、よく聞くと何かが聞こえてくる。

声の主は、現在も尚走り続けているアスナのようだ。どうやら呼びかけが成功したらしい。

 

キリト「それじゃ...行きますか!」

 

止めかけていた足をフル回転させ、アスナとあのプレイヤーのところへ向かう。

(フル回転させたところで速度は変わらないが)あのプレイヤーと残り25mとなった時点でアスナはというと、応戦していた。

どうやら俺が来るまで時間を稼いでいるらしい。それならば、急がなくてはならない。

 

俺は背に伸し掛る剣を抜刀し、走りながら剣を肩に構え、ソードスキル《バーチカル》を発動させる。

あまり安定していない《システム外スキル》だが、さっきアスナが使えたように俺も使えるかもしれない。

 

キリト「(...ここだ!)」キュィィィン...ピンッ!

 

キリト「うぉぁぁぁぁ!!!」シュンッ!

 

_______

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...という感じで、戦闘が起こり、このプレイヤーと出会ったのである。

 

キリト「...よし、少し...聞いてもいいか?」

 

「は、はい...なんでしょうか?」

 

話しかけると、少し緊張しているのか、プレイヤーは背を正した。

 

キリト「あ、いや...なんでひとりでいるのかなーって」

 

俺が話し始めるとプレイヤーは少し目を見開いて聞いていた

 

キリト「だって、この世界では1度でも死んだら本当に死ぬ世界だし...」

 

キリト「俺だって最初はソロプレイヤーだったけど、この層になってから、アスナ...あぁ、俺の隣にいるプレイヤーのことだよ」

 

アスナ「」ニコッ

 

キリト「...まぁアスナと組み始めたんだ」

 

...本当は第48層《ミリアル》まで"彼"といたんだがな。

 

キリト「だからさ、あんたさえ良ければ...俺たちとパーティ組まないか?」

 

...正直に言おう、これは俺にとって衝撃的発言だ。

いくら最初がソロプレイヤーだったといって、自ら誘うなどしなかったのに。

成長したんもんだなぁ...俺。

 

「──ル」

 

キリト「え?」

 

「──メイル」

 

メイル「──僕の名前は、メイル」

 

キリト「──あぁ!宜しくな!メイル!」

 

俺とアスナ、そして新たな仲間《メイル》が仲間となったのだった。

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第28章 –2つのウワサ–

 

俺たちの新たな仲間《メイル》がパーティに入ってから数日が経ち、最前線より少し離れた層で《メイル》の《レベリング》を行っていた。

この層は...そう、確か──第48層《ミリアル》だ。

この層は緑豊かな場所で、周りを見れば植物や昆虫などのモンスターが生息している。

 

さて、なぜこの層に来た理由なのだが...ただ単に《メイル》のレベルが低くて、この第48層までの適正レベルだったからだ。

それでもよく頑張ったと思うし、装備も大体第49層クラスだったか、或いはかなり強化されていたか。

システムによって、《PT》を組むとHPとレベルが表示されるのだが、このレベルクラスで第50層《アルゲード》まで来ていたのは驚きだった。

 

──当の本人は、俺たちが助けたあと、怒られると思ったらしい。

過去にも同じようなことをして怒られたからだそうだ。

──そう、忘れてはいけない...このゲームは──《デスゲーム》だ。

本来であれば、俺たちも怒る理由がある、単身で突っ込むのは、ほぼ自殺行為。

 

──すると、ある記憶がフラッシュバックする。

 

──ここは確か第25層の...いや、名称は覚えていない。

確か俺は、クエストか何かでたまたまこの層に来ていた。そこで...そうだ、現在のパートナー《アスナ》と出会ったんだ。

この時のアスナは、《フロスト・ナイト》と呼ばれる敵と戦っていた。彼女の装備は、まるで良いとはいえず、まるで死にに来ているような形相だった。

当時の武器は、今も変わらず《レイピア》。今のアスナは、武器を大切にしているが、この時のアスナは、とてもじゃないが、大切に扱っておらず、武器が壊れたら次の新品へ、また壊れたら次の新品へ──という感じだった。

そこで俺が話かけると、アスナは素っ気なさそうに返す。そんなやり取りを続ける内に、彼女は安全地帯で眠ってしまった、これを見るに、恐らくずっとこの場所で敵を倒し続けていたのだろう。流石にオーバーワークすぎる。

仕方ないので、俺はアスナが起きるまで、敵が来ないか見張ることにした。勿論、ここは安全地帯。敵が来ることはまず無い。

だが、この時から少し耳にしていたことがある、それが───

 

『──リト君!』

『──キリト君!!』

 

「っ!?」

 

俺は記憶から引き戻される、どうやらずっと考え込んでいたらしい。

 

キリト「え、ど、どうした?」

 

アスナ「どうした?じゃないわよ!なにボーッとしてるの!まだまだメイル君の《レベリング》を手伝うんでしょ?さっさと行くよ!」

 

キリト「あ、あぁ、悪い」

 

流れに促されるまま、俺はアスナに着いていく。

──確かに、今はそれを考えている必要はないな。

俺は急いで次の戦闘へと移って行く──

 

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メイルのレベリングが一息ついたころ、俺たちは一旦第50層《アルゲード》へ戻り、エギルが営む《故買屋》へと来ていた。

本来なら、ここはショップであり、顔馴染みではあるが、何か買うべきなのだろう。

しかし、顔馴染みであるからこそ、ここで寛ぐことも出来る...はず!

──と、思い、DMで頼み込んだところ、呆れ返った返信が帰ってきた。

 

エギル【お前なぁ...ウチは店であって宿屋じゃないんだぞ...】

 

負けじと俺も返信を返す。

 

キリト【いやぁ...そこを何とか...!】

 

さて、どんな返信が来るかと待っていると...

 

エギル【あ、そうだキリト、お前に伝えたいこともある、丁度いい。そのメイルとやらと一緒に来い】

 

と、了承を得たので、俺とアスナ、メイルの3人で店に向かうことにしたのだった。

 

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さて、ここは《故買屋》の裏部屋。

所謂生活スペースである...と言っても、ここは客室らしいが。

俺たちはここで、この店の主──ボッタクリ商人であり、大事な攻略メンバーの1人...《エギル》を待っていた。

この客室には、うんともすんとも言えない程、何も無い。本当に客室だ──菓子ぐらいはあってもいいと思うんだがな。

まぁ...それは置いといて、どうやらエギルがこちらに向かってきている...気がする。ただの予感だ。しかし、本当に何もないのかと周りを調べていると──

 

アスナ「──さっきから何してるのよ、キリト君」

 

キリト「え、あー...いやー何かないかなーと...」

 

苦し紛れの言い訳にアスナは呆れ返った返答が返ってくる。

 

アスナ「ここはあくまで客室なんでしょ?何かあるとは思えないんだけど」

 

まぁだよな...でも何かあるはずと、俺は諦め無かったのである。で、そこに──

 

「失礼するぞ──って、何やってんだ、キリト」

 

キリト「げっ、エギル...」

 

エギル「ゲッとはなんだ、ゲッとは」

 

キリト「いやー...ははは」

 

エギル「...まぁいい、早速本題に入るから座れ」

 

キリト「お、おう」

 

──怪訝そうな顔をしていたが、どうやらお咎めなしらしい。

それは有難いが、エギルは客室にある椅子に座ると表情がスっと変わる。どうやら今回は真面目らしい。そこで俺も椅子に座り気持ちを入れ変える。

 

エギル「キリト、実は伝えたいことが"2つ"ある」

エギル「ひとつは、お前にとって良いニュースだ、もうひとつは、お前達にとって悪いニュース。さて、どっちから聞く?」

 

──どっちから聞こうと順番的には関係がない。

ならばと思い、俺はアスナとメイルに、アイコンタクトを取る。すると2人はほぼ同時に頷く。恐らく了承を得たはずだ。そして俺は迷わずにこっちを選ぶ。

 

キリト「──じゃあ、悪いニュースから」

 

エギル「...奴らが、動き出した」

 

キリト「...奴らって?」

 

エギル「──殺人ギルド《ラフィン・コフィン》のことだ」

 

俺とアスナは、戦慄とした空気に包まれ、緊迫とした状況に置かれる。

──殺人ギルド《ラフィン・コフィン(以下 ラフコフ)》──通称《笑う棺桶》。

この《デスゲーム》で、最も恐ろしいギルドであり、殺人を躊躇なく犯す犯罪者ギルド。

前まで音沙汰さえ無かった《ラフコフ》だが、なぜ今となって動き出したのか。

それは恐らく、SAO攻略が半分を切ったからだろう。現在攻略されているのは第53層、俺たちはたまたま前線から外れていたのだが...まさか既に行動していたとは。

 

エギル「...だが、これはあくまで噂程度と受け取ってほしい」

キリト「...まだ確定していないからか」

エギル「そうだ」

 

まだ確定していない...それはつまり、まだそいつらが殺ったという確証はない。

決めつけるには早すぎる、ということだ。

 

キリト「──それで、良いニュースというのは?」

 

さっきから少し気になっているその『良いニュース』。

俺が問うと、エギルは頷き

そして、口を開いた

 

エギル「良いニュースと言うのは──」

エギル「キリト、お前の元相棒...《ユージオ》は──"生きている"」

______________________________________

 

おまけ –ある日のこと–

 

ある日のこと、俺は第50層主街区《アルゲード》へと来ていた。

と言っても、クエストで来ていたのだが。

その内容は、少し珍しいお使いクエストなるもので、フィールドに存在するモンスター《グラッシー・ライノ》からドロップするという《ライノの角》が必要なんだとか。

そこまでレアドロップではないので、何体か倒すと手に入るだろう。

しかし、なぜこのアイテムを要求して来たのかはわからない。まぁ、お使いクエストだし、そこまで気にする必要は無いんだが。

 

キリト「えーっと...お、あいつだな」

 

俺は背中に佇む黒き剣...《エリュシデータ》を抜刀し、上段突進技ソードスキル《ソニック・リープ》を構え、《グラッシー・ライノ》にカーソルを合わせ、突っ込んで行く。

すると、見事クリーンヒットし、《グラッシー・ライノ》のHPは全て消え、蒼いパーティクルとなって消えて行く。そして目の前に『Congratulations』と表示されるが、ドロップ品に《ライノの角》は無い。

やはり1発では落ちないか...。

仕方ないので、俺は次のモンスターへと向かっていく──

 

––––––––––

 

キリト「よし...やっと出たな」

 

幾度目の戦闘を得て、漸くドロップした《ライノの角》。

 

キリト「まさかドロップするのに一時間半もかかるとは...」

 

こんなにドロップしないものだったか?

...しかし、流石に疲れた、少し休んでから報告しに行こう...と思い、芝生が広がるフィールドに寝転がる。

今日は今年で3番目に気象が良い、本来なら昼寝日和決定である。

...が、今回はやめておく。

──そういえば、と思い、ひとつ気になることがあった。

俺は起き上がり、慣れた手つきでメニューウィンドウを操作する。

行き着いたのは《獲得スキル一覧》と表示されたボタン。

そのボタンを押し、俺はスキルを探し出す。

 

キリト「──あった」

 

そのスキル名は──《二刀流》

 

おまけ –ある日のこと– END




次回 チャプター8《上》–信じる、ということ–
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