チャプター7.5 –蒼き剣士–
ここは何処だろう
目が覚めると、よく分からない、不思議な世界にいた。
不思議な世界といっても、周りは何もない真っ白な空間。何度も辺りを見渡しても、本当に何も無い
僕はなんでここにいるのか、本当によく分からない。どういう経緯でこうなったのかも。
頭を回転させても何も思い出せない──
『──あっ』
なぜか一瞬だけ記憶が脳裏に過る
忘れないように掴まえて、"それ"を僕のモノにする。
これは...なんだろう?誰かがいて、何かの──なんだ、この...怪物は...。
『うぐっ...!』
すると突然頭痛が起こり、立っていられない程痛んでいく。何なんだ、ここは。
そしてまた突然、痛みが消え、また目の前に記憶が飛んでいた。
『──また取ったら、痛むのかな』
僕は、恐れている。
普通そうだよね。自ら痛みを求めていくことはしないんだよ。でも、なぜか取らなきゃいけない気がしたんだ。
これも誰かの影響なのかな──
『...誰の影響?』
おかしい。
僕は今誰とも会ってないはず。それなのに何故か"誰か"の記憶が流れ込んでくる。
黒い髪に、黒い格好、黒い剣。まるで《暗黒騎士》だ。この人は、さっきの怪物と一緒にいた誰かに似ている気がする。
でも、瞳だけが見えない。黒い何かに覆われていて何も見えない。あと眼だけ見えたなら、この人が誰なのかがわかるのかもしれないのに。
『──取らなきゃ』
目の前に写る記憶。
それさえ取れれば、何か分かるかもしれない。だからこそ僕は手を伸ばし、また触れて僕のモノにしていく。
次に映ったのは緑が広がる世界。緑地だ。
そこに、先程見えた人物がいる。
どうやらこの時はまだ黒い剣を持っていないみたい。それでも、黒い格好と、黒髪。武器は...
『──アニール・ブレード+6...?』
知らないはずの武器。でも何故かわかる。この場所も、わかる。でも、肝心の名前が思い出せない。この人は誰だ?僕の目の前にいる人は誰なんだ?
──そして、また目の前に記憶が現れる。取るとまた記憶が甦る。
映ったのは、空中、いや天板。
『...落ちてる?!』
なぜか僕は落ちていた。このままでは死んでしまう。どうにか足掻こうにも動かない。どうやらこの時の僕は気絶しているようだ。
『...不味い...っ!』
目をギュッと閉じ、覚悟を決めた瞬間──
『(──痛くない?)』
痛みを感じず、恐る恐る眼を開く。
すると──
「──大丈夫か?!」
と声をかけられ、抱き上げながら安否確認をしている少年がいた。僕より幼くて、けれど、どこか懐かしくて。
──あと、もうひと踏ん張りで思い出させそうな気がする。
『...?』
しかし、いつになってもさっきの記憶のような物は現れない。あと、もうひと踏ん張りで思い出せるのに。何とももどかしい。
けれど、やはり現れない。もう、諦めてしまおうかと考えた時──
『!?』
急に景色が、真っ白な空間が、どこか見たことがある情景に変わっていく。
ここは──
『ルーリッド村...?』
──ここは僕が昔住んでいた村【ルーリッド】。
そして後ろにある大きな木は──
『──ギガスシダー...』
──あぁ、そうだ。思い出した。僕はここから全てが始まったんだ。
僕は、ここで急な頭痛に襲われて、気付いたらあの少年に助けられていた。ここは、僕の物語が始まる前の世界。そして、僕がいた元の世界。
『...今の僕なら、扱えるかな』
僕が向かったのは、森の中にある小さな小屋。ここに、あるものがある。それが──
『...あった』
『ベルクーリと北の白い竜』という、ルーリッド村のおとぎ話に出てきた、不思議な武器
本の中にはこう記されていた
【《青薔薇の剣》】
何日もかけて、この小屋に運び込んできた武器。あの頃の僕は、どうやっても引きずらなければ運べなかった。でも、今の僕なら──
『──少し重いけど...いける...っ!』
..."軽い"とまでは行かないけれど、何とか持てるくらいには扱える...振るえるかどうかは分からないけど。
でも、この武器なら。あいつを助けられる。待ってて。今から行くから。
例え世界が違くても、必ず向かうから。だから...
『死なないでよね、僕の──親友。僕の──英雄...!』
剣を両手に持ち、呼吸を整えてある構えを行う
手に持った剣を頭の上に止めて、右足を2歩分横に広げ、そして集中していく。
すると、剣が赤く光り出し、僕は教えてもらった技名を唱える。
『──アインクラッド流。奥義...!』
『《アバランシュ》!』
ズギャァン!と何も無い空間が派手な音と共に裂けていく。
──ここは、僕の深層世界。奥深く眠る、精神世界。僕が何故ここにいるのかまでは分からないけど、他に分かることがひとつある。
"相棒"が、ピンチってことがね。
だからこそ僕は向かう。あいつの心も、あの世界も。共に救ってやる。それが、"親友"だろ?──
『──キリト...!』
チャプター 7.5 End