なるけど話のコンセプト的にね?独白を多くすると不審人物になっちゃうし
じゃあ仕方ないね!
青く澄んだ空気、チリチリとした緊張感と共にその中を泳ぐように走る。
不整地でも速さは一定。苔むす岩を横に。陥没に歩幅を広げた。
ぎちりと、右手にある重さを頼もしいと感じて強く握る。
視界の端から迫るそれに一瞬の判断。横殴りに振るわれた尾の一撃を転がって躱し、立ち上がりに胴体へと一閃すれば良い一撃と自賛して、飛び散る鱗片と血、頭上の影から即座に距離取ろうと背後に跳んだ。
目の前で降り下ろされた翼は空気だけを打って、癇癪を起こしたように両翼を掲げ直せば頭を持ち上げ突進しようと踏み出す脚が見える。
炎を吐くか?それとも?
身軽に構えてどちらもへ備える。寧ろ懐に飛び入って掠めるように前に抜けるが安全か?構えを崩し、迫る巨体に身を低くして自らも走る。見上げるくちばしからは赤い燐光が覗くも次には交差し翼を潜るように背後に抜けた。剣は振らない。勢いに持っていかれると知るからだ。そのまま姿勢を戻して振り反れば見当違いに炎塊を飛ばして反転しようとする竜の姿。
疲弊して見える。体のそこら中から流す血、反転に勢いを抑えきれずによろめく様からそう直感し、乱れる息を整え走り出す。
慎重に、大胆に。そうすれば勝利は目前だ。
*勝利*したぞ!テレッテーと脳内に響く幻聴を聞きながら大の字に倒れる。
体中が泥に塗れても気分は上々だ。
なんと言っても狩人達の登竜門、あのイヤンクックを狩猟したのだから。
隣に転がる片手剣はボロボロに刃零れして、纏う防具も所々で割れへこんでいる。
気が抜けて痛みを思い出したかじわじわと、体中から鈍く這い上がってくる。
痛みの質から重傷はないと判断し、先ほどまでの激戦を自己評価すれば優。時間はかかったが重傷に後遺症が残らないなら十二分の結果だった。
少しの反省項を考えながら体を休め、ついにがばりと起き上がる。
足を向ける先にあるイヤンクック。大きなくちばしからだらりと舌を伸ばし、無力に翼を投げ出す姿を見ればよくも勝利できたと今更の感情。僅かな黙祷の後、勝者の特権とお待ちかねの剥ぎ取りを開始する。
そのままには運べない。バラしてもそう。近くまで道を通したが大物を運べる幅ではないのだ。
時間があれば拠点と往復して全てを持ち帰りたいが血の匂いが強い。遠くない内に匂いに誘われて来る脅威を思えばうかうかとはしていられない。鱗に翼膜、背甲と特徴的な耳を削いでいく。肉は一人で食べる分だけ、くちばしは無理だなと早々に諦め、十分な量を得たと思えば足早にその場を後にする。がさりと草を掻き分ける音。ちらりと目を向ければ、待ってましたとばかりによだれを垂らすランポス達がごちそうへと走り寄っていく。来るとは思っていたが既に会場脇で待機していたのか。お行儀の良いことで、ただ飯は美味しい?胸中に呆れの混じった愚痴も滲むが彼らにしてみれば降って湧いた幸運だ。遠慮などあるまい。
森の狩猟者達の宴会は、参加者を増やしながらしばらく続いた。
夕陽が空を赤く染める。森も中層、その中腹は樹冠に天を塞がれ既に夜の気配が強い。
焚き火の横で威勢良く油を飛ばす串に刺さった竜肉を片手間に動かしながら、思案顔になるのは研ぎ石に当てようか悩む手元の剣のこと。
日も高い内にベースキャンプに到着して少しの休憩の後、さあ整備しようと鞘から抜き出した剣は先程よりも酷く傷んで見えた。大小の刃零れに擦った後が残る刀身、改めて鞘に抜き差しすれば心なしか擦るような感触がある。ちょっと歪んだ?結局汚れを落とすばかり済ませ、鎧の修繕に道具の入れ換え、獲得物の整理とあれこれをすれば日も傾いた。
ぬーんと一息。剣は諦めて串を取る。そもそも今日の狩猟は当初の予定になかった。いつも通りの開拓と採取を目的に森へ来たのだ。であるのに狩猟に挑んだのは環境の変化を嗅ぎとったから。
前回までの遠征でも近場にイヤンクックが生息していることは把握していて、しかしその個体は種の特徴に忠実だった。すなわち臆病。ならば避ければいいとみていたが今回、何かが暴れる音に近寄ると縄張りの主が代わっていた。前の個体は追い出したのだろう、赤みの濃いその一頭は縄張りを広げるためにか周囲の木々をくちばしで抉って蹴り倒そうと奮闘していた。
森で生きる知恵の一つ。森の中にあって大きく開けた場所の大体は大型生物の縄張りだ。なんとなれば原初の森は水の香りも深く密度が高い。そのまま住むには竜達にとって手狭に過ぎる。開けた場所に竜が住むのか、竜が住むから森が開けるのか。少なくとも今回は後者だった。
そして何が不味いといえばそれが自身の活動圏内だったことだ。広いこの森でわざわざ巣の乗っ取りを仕掛けている。臆病とは呼べず寧ろ好戦的だろう。そんな個体がいれば周囲一帯が不安定化する。激化せずとも新規生物の流入だって考えられた。自然界ではよくある代謝のひとつなのだろうが、巻き込まれては堪らない。
そんなこんなで一日を観察に費やし、用意を整え突貫したのだった。
結果は満足するものだったが総マラカイト製のメインが潰れた。サブもあるがそちらは未だに鋼鉄製。中層で振るうには不安が過る。防具だって修繕はしたが所詮応急処置。重用は出来ないし、したくない。
肉を咬み千切る。背中の肉はまずまずの味。アプトノスに比べて明らかに脂が少なく筋肉質。その点ランポスはダメだ。肉食のせいかエグミが強すぎる。牙に爪、そして皮と獲れる素材は多いが食用には適さなかった。
残る滞在日数をどうするか考える必要がある。中層の地図は空白ばかり。今回はその穴埋めが主目的だったがちらほらと牙獣の群れも見るようになった今、下手に挑めば命が危ない。好奇心と命を天秤に掛ければどちらに傾くかは明白で。ならばと選べるのは浅層での採取だけだった。
トロフィー を 獲得 しました![イヤンクックの初狩猟]new!