どうも、修理屋です   作:にゃんさん

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ハガレンとは?


休業日

 

***

 

「お母さん、久しぶり!」

「蘭、元気だった?コナン君も久しぶりね」

「うん!」

 

 数か月ぶりに妃法律事務所に訪れたのはコナンと蘭だった。蘭は母である英理にポアロ特製ハムサンドを差入れとして渡した。一番喜んでいたのは英理の秘書である栗山緑である。

 

 そして始まるマシンガントーク。いつぞやの観覧車に放たれた弾丸の雨並みに恐ろしいのだ。コナンは思った。おっちゃん、さっさと素直になってくれ、と。しかし、他人事のように聞いていたその話は、ついにコナンにも降りかかってきた。例の彼はまだ帰ってこないのか、いっそのこと捜索願を出すべきなのではないのか。流石法廷のクイーン、言葉の一つ一つが重い。傍から見たら関係ないが、コナンにとっては他人事では無い。その前に彼は本人である。

 

「?コナン君どうかした?」

「い、いやあ、べつに?」

 

 不穏な会話もなんとかハムサンドの美味しさによってどこかへ行ってしまったようだ。安室さん、ありがとう。久しぶりに来た事務所を、コナンはハムサンドを頬張りながらきょろきょろと見渡した。間違い探しのように正解を導き出した彼は、英理に問う。

 

「あれ、おばさん。このパソコン新しいのに替えたの?」

「どれ?ああ、それね。この間修理してもらったのよ」

「修理?これって最新機種じゃない?」

「コナン君よく知ってるね。それね、修理を頼んだはずが最新機種に替えてくれたのよ」

 

 それは数週間前の事。いつものように捜査資料やら証拠やらを集める為、パソコンで作業していた緑が突然悲鳴を上げたのだ。英理が慌てて駆けよれば、彼女のデスク、正確には彼女の使用していたパソコンから黒い煙が上がっていた。誰も悪くない、ただ運が悪かっただけである。次の裁判まで1週間を切っていた平日の昼過ぎ、二人は呆然と立ち尽くした。

 

 ・ ・ ・

 

「お邪魔しま~す、修理屋『armstrong』で~す」

 

 ・ ・ ・

 

「....で、その修理屋さんが直してくれたの?」

「直ったというより、前より良くなった、かしら」

「あの時は、壊れた時と同じくらいびっくりしたよ~。私がお茶を用意していて、妃先生が少し席を外している間に直ってるだなんて」

「え!?凄い、なんだか魔法みたいですね...」

 

 その時のことを熱く語る緑は、もはやファンの域だ。しかし、英理もそれを否定することはなく、あの時は本当に助かったと心底安心したような顔をしている。

 

「ねえ、ホームぺージとかある?そのお店の」

「あるわよ、ちょっと待ってね」

 

 カタカタとその最新機種のパソコンに緑は打ち込んでいく。『armstrong』と。コナンは思った、なんだそのネーミングセンスは、と。しかし、彼の正体を知っているものは口を揃えて言うだろう。お前が言うな、と。

 だが、その壊滅的なセンスは店名だけで終わらない。いざホームページを開けば上半身裸体の筋肉質な男性がボディビルさながらなポージングをとっており、もはや何のホームページかも分からない。むしろボディビルダーの大会のホームページだと言われた方が納得する。そして、コナンは思っていたことを口にした。

 

「ね、ねえ、なんでこの業者に頼んだの?」

「それは勿論口コミの評判の高さよ!」

 

 そう話す緑は口コミの欄をクリックする。ズラリと並んだ口コミには、思った以上に様々な案件を取り扱っていたということが手に取るように分かる。もはや、修理であればなんでも屋の勢いだ。中には、「軽い態度で最初はどうなるかと思ったが、新品並みに修理をしてくれた」だとか、「見た目の割に仕事ぶりはなかなかだった」など気になる部分はあるが、修理の腕は確かだとそれを見れば分かる。ほとんどの口コミに共通しているのは、目安時間が他と比べて断然速いということ。恐らく二人はここに目を付けたのだろう。

 

「時間が無い中一瞬で、しかも爆発したパソコンが最新機種の性能に変わるだなんて魔法でしかないわよね!!!」

 

 あれ、緑さんってこんなにテンション高いっけ...

 

 そう熱く語る緑の横で、英理が冷静に呟く。

 

「でもあの子、スマホを片手に入ってきたのに、帰りに連絡先を聞こうとしたら「持ってない」って言ったのよね」

 

 流石に修理時間が短すぎたのが英理は不信感を抱いた。後で多額の請求を訴えられるかもしれない、また壊れた時の為に保証してもらわないといけない、とにかく連絡先だけでもと話したらしい。しかし、修理に来た業者は「あ、忘れたんでメモでもいいですか?」と、紙切れを渡したそうだ。深く考えることではないが、なぜ忘れたと嘘をついたのだろうか。

 

「まあ、直ったし今のところ問題も無いようだから結果オーライね」

「それにしても可愛い子でしたよね!最初は、学生のバイトさんかと思いました」

「へえ、どんな方だったんですか?」

 

 綺麗な金髪ボブの瞳の色が青い女の子だよ!

 

 

 

***

 

 

 

『毎度~、修理屋『armstrong』で~す。本日は定休日となってま~す。ということで、私の一押しの修理業者を紹介いたしますね~、まず車は〇〇....』ブチッ。

 

「はぁ....」

 

「どうした?ゼロ」

「...ヒロ」

「いや、例の彼女を協力者に、と思っているんだが」

「ああ、そういえばこの前言っていたよな。腕のいい修理屋に会ったって」

「あれ以来連絡がつかなくてな、何日か店を休んでいるらしい」

 

 律儀にアホみたいな留守電を毎日聞いている降谷のことを当然店主は知らない。一度最後まで聞いてみようと思ったらしいが、種類ごとに細かくオススメを紹介しているのか如何せん話が長い。オーブントースター専門の修理業者まで聞いて切った。なんだ、オーブントースター専門って。

 留守電の内容をふつふつと思い浮かべながら、降谷は幼馴染である諸伏に向き直した。

 

「そんなことより、お前今日休みだろ」

「少し顔を出しただけさ」

「そうか。たまにはゆっくり休んだらどうだ?」

「ゼロにだけは言われたくないけど、そうさせてもらおうかな」

 

 お言葉に甘えて久しぶりの休日を満喫しようと、諸伏はとある場所へ向かった。

 そこは日本でも東都でも大きくない、小さな図書館だった。

 

 少し古びたブロック塀の建物。童話、児童書、雑誌等の本はほとんどない、そういう図書館である。新聞コーナーを抜け、奥の専門書の並びへと進めばだんだんと人の数も少なくなる。とあるスペースを自分の住処のように陣取り、邪魔者が入らないように分厚い本を壁のごとく積み上げる人物。それこそが諸伏の会いたかった人物だ。

 

「やあ、久しぶり。やっぱりここにいたんだね」

「......」

「ノ~ア~ちゃん!」

「わああおお!!!びっくりしたあ......誰だっけ?」

「諸伏だってば、いい加減覚えてよー」

「ごめんごめん、興味ある事ならすぐ覚えるんだけどさあ~」

「毎回思うけど言葉を選びなさいって、まったく」

 

 黒縁の眼鏡を掛けて、真新しいノートブックにズラズラと書き綴る彼女こそが、諸伏の会いたかった人物である。

 

「いつもながら、暑苦しい格好だねえ。日本の気候を舐めているのかい?」

「そうかい?君の生まれた場所は、そうでもないのかな?」

「そうやって私の事を聞き出そうとしても無駄だよーん」

「バレたか」

 

 あからさまに嫌な顔をしながらも彼女の視線は再び分厚い本に移る。『三次元CAD』?今度は何に興味を持ったのだろうか。いつものように、なぜこの本を読んでいるのか聞いてみた。

 

「この前珍しい車を見る機会があってね、何百キロもスピードを出せるスポーツカーとADASを掛け合わせられないかなあと考えた結果、まずは基礎から読み直そうと思って」

 

 車内前方に装備されたステレオカメラで前方を監視し、障害物 を三次元的に認識することで、自動ブレーキ、アダプティブ・クルーズ・コントロール等を制御する「運転支援システム」、ADAS。

 

 一昔前の高級車とADASを掛け合わせたいという夢のような、けれどスポーツカー好きからしたらとんでもない発想を喋り出した彼女。きっと自分の幼馴染が聞けば苦い顔をするに違いない。

 だからと言って三次元というものから理解する必要があるのか?いや、やめよう、そんなこと今更彼女に聞いたところで「本を読む理由なんて、読みたい以外ありますか?」って真顔で答えられてしまいそうだ。

 

 彼女と出会って約二年。たまにこうして図書館に顔を出しては彼女の真剣な顔を見る時間が癒しでもあった。当の本人は、そんなに前から出会っていることを覚えてすらいないらしい。実際、衝撃的な出会いだったんだけどなあ、と諸伏は不満に思う。

 

「....今何時?」

「今?16時を過ぎたよ」

「ゲ、まじか。気付かなかった~」

「?スマホ忘れたの?」

「いやあ、この前壊しちゃってさあ」

「はやく新しいの買いなさいよ」

「それな~、仕事もあるしなあ」

 

 本に目を通し、右手ではペンを走らせ諸伏と会話を続ける彼女。なかなか器用な真似をする。少しずつ本の山も崩れていく中、見慣れない新聞が目に入った。

 

「?珍しいなあ、新聞読むの」

「あー、そうね」

「『アメストリス国』?ヨーロッパの大国か?」

「あれ、米国の新聞かと思ったら間違えて持ってきちゃったなあ」

「ふーん」

 

 上の空の彼女に思うこともあったが、その新聞の見出しに目を見張る。

 

 

 

『イシュヴァール殲滅戦、未だに爪痕が残る.....』

 

 

 

「...さあて、帰りますかね」

 

 その話題を口にしようとした瞬間、彼女は今まで読んでいた本をテキパキと片付け始めた。一瞬固まったが、何分閉館時間も間近に迫っていた為仕方がない。しょうがないからと新聞記事をもとの場所に返そうと動くが、係の人に止められた。

 

「あれ、そちらの新聞は取り扱っていない筈なのですが....」

「え、そうなんですか?でもさっきノアが借りたやつだって....」

 

 なぜ、嘘をついた?

 やれやれと、再びノアの元へ戻る。新聞の経緯を聞こうかと手を挙げながら呼びつけたが、何か嫌な予感がした。ノアがいつにも増して黒い笑みを浮かべていたからだ。彼女の悪知恵は犯罪者も警官も泣くほど恐ろしい。

 

「お嬢さん、またこんなに借りるのかい?持って帰れないでしょ?」

「大丈夫ですよ~。ここに立派な足が居るじゃあありませんか~」

「はい?」

「ねえ、もろふしさん?」

 

 こういう時だけ名前で呼びやがって。

 泣く泣く彼女の言いなりになりながらも阿保みたいに重いその本達を眺め立ち尽くした。

 右手にはクシャクシャになったアメストリスの新聞。

 

 次の日、諸伏の腕は筋肉痛で使い物にならなかったとか。

 

 




ほとんどの人が生き返ってます。
夜な夜な人体錬成しました。
おかげで私の体はほぼありません。
文字を打つ手だけは残しましたので、続きを楽しみにして頂けると幸いです。

ノアちゃん↓
【挿絵表示】

*なっこ式*女子メーカー様より作成しました。
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