***
パシン!!
「ヒッ...」
綺麗な顔の男の子、エミリオさんの顔面に蘭ちゃんの平手打ちが炸裂。あーあ、痛そう。もう赤くなってる。そういえば、園子ちゃんが落ちそうになっていたのではなく、蘭ちゃんとエミリオさんが落ちる寸前だったのだと近付いてようやく分かった。足場さえあればなんとかなるだろうと思ったが、予想以上に大活躍じゃん私。
上から見て、園子ちゃん、蘭ちゃん、エミリオさんの順番で並んでいた。関係者以外は入れないその場所。そして、蘭ちゃんの激怒。馬鹿な私でもエミリオさんが自殺未遂しようとしたことくらい分かった。
「あなたは、自分だけじゃなくて、周りの人も危険な目に合わせたんです」
「......」
真剣なその声は、胸にじんと沁み込むようだった。日が落ちた暗い公園のベンチ。俯く彼は、もう迷わないというような目で話す。
「僕達を助けてくれませんか」
***
ハンバーガー片手にエミリオさんの話を思い出していた。
日本公演のライブの裏では、闇取引が行われる。ライブのプロモーターであるルチアーノという人物は密輸業者とマフィアの顔を持つ男だった。ライブ当日、何らかの形で取引が行われるということをエミリオさんは知ってしまったみたいだ。
途中から合流したコナン君は、「あの脅迫状、エミリオさんが作ったんでしょ?」と話す。きっと私はきょとんとした顔をしていただろう。だが、コナン君の推理は全て辻褄が合っていた。「取引は絶対にさせない」と宣言する声は小学生とは思えないくらい頼もしかった。
「はぁ、物騒だなあ」
どうにかライブを中止させようと自分に対しての脅迫状まで出したのだろう。それを必死に阻止しようとしていたプロモーターも話を聞いた後なら笑える。それにしても、ライブ会場で取引とは。なぜ、人の集まる場所を選んだのだろうか。んー、馬鹿な私には分からない。
こんなことになるなら快斗君の京都旅行についていくか、少年探偵団と和気あいあいするかのどちらかにすれば良かった。園子ちゃんと蘭ちゃんはそのままエミリオさんとホテルに戻り、コナン君は真っ黒い見た目の怪しいおじさんについていった。コナン君、その人大丈夫そ?なんか、パパって聞こえたんだけど、ま?全ッ然似てないね?
コナン君も本気を出し、警察関係者や探偵さんが頑張っているのだ。事情を知ってしまったが、もう一般人が首を突っ込むことではないだろう。公園に停めていたバイクに跨り、ヘルメットを被った。園子ちゃんに奢ってもらったハンバーガーを食べ終えゴミをポケットに押し込んだ時、背中に嫌な汗が流れた。
「......ない」
銀時計が、無い。
いつも入っている筈のズボンの右ポケットは、ハンバーガーのゴミ屑だけだった。
***
何日かして、ノアは阿笠博士の研究所に再び訪れた。自宅でやることが多すぎて二日間くらいは家から出ない生活を送っていた。ふと、無くした時計に気付き、気分転換もかねてやって来たのだ。快斗君は全然帰ってこないからバイクはパクってる。
「お邪魔しまーす」と声を掛け、ガチャリと玄関のドアを押した。
「こんっのバカ!勝手に行くなってあれほど言っただろ!!」
「まったくじゃ!」
「は~か~せ~?」
「すみません...」
怒鳴り上げる幼い声が耳に入りタイミング悪かったかなと再びドアを戻すと、がっちり引き戻され終いには博士に首根っこを掴まれた。涙目になりながら助けてくれと訴えかける博士。うげぇ、絶対めんどいやつじゃん。
案の定入ってみれば、3人の子供達がちょこんと正座をし、その目の前には小さな探偵さんが怖い顔をして怒鳴っていた。そんなに怒る?小学生同士の喧嘩でここまで修羅場になることある?冷蔵庫のプリン食べられたとか、クリア寸前のゲームデータ消されたとか?まあ、確かに怒るわな。
「博士、私には無理です。今時の子供怖すぎますわ」
「ノア君、そこをなんとか...」
「お前等!睡眠薬じゃなかったら、もうこの世にいねえぞ!」
え、めっちゃシリアス。マジでこの子たち何したん?
という空気の読めない発言を私は口にしていたらしい。
「ノア姉ちゃん、ルパン三世って知ってる?」
「へ?誰それ」
「えー!お姉さん知らないの!?」
「常識だぞ!」
「ちゃんとニュース見た方いいですよ!」
「...お姉さん帰っていいかな」
あれだけ怒鳴られていたにもかかわらず、子供達はルパン三世について熱く語り始めた。なんでも、世界的な大泥棒で今日本に来ているらしい。見分けがつかないほどの変装と頭の回転の速さで楽しむようにお宝を盗むそうだ。...あれ、何か引っかかる様な、まあいいか。
そんな犯罪者のアジトを突き止め、子供たちは博士不在で乗り込んだみたいだ。凄くね?でもそれは、コナン君が怒って当然だなあ。
「外出禁止だからな!?いいか、絶対だぞ!!」
「「「...ハイ」」」
早く私も用事済ませて帰ろっと。
座っていたソファの周りなどを調べていると、コナン君が気になったのか話しかけてきた。
「ノア姉ちゃん、どうしたの?」
「いやあ、ちょっと大事なものを無くしちゃってね」
「何を無くしたの?」
「銀時計なんだけど」
ソファの下や隙間を調べながら気の抜けた返事をすれば、コナン君は「それ一緒に居たおじさんが拾ってたかも」と話す。まじか。もしかして、ベルツリータワーで落としたのかな。
「まあ、別に無きゃ無くてもいいんだけどね」
「ボク今日そのおじさんに会うから一緒に行かない?」
「その心は?」
「えっと、ついでにバイク乗せて貰えないかなあ、なんちゃって」
あはは~と笑いかける少年は先ほどまで怒鳴っていた子供と本当に同一人物かい?まあ、発信機やら盗聴器やらペタペタくっつけるよりバイク乗せてって遠慮がちに笑う今の君の方がよっぽど好印象だよ。その調子でお願いね。
「で?どこに行くんだい?少年」
「エミリオさんのライブ会場まで!」
「......」
「ノア姉ちゃん!はやく!」
この間コナン君が一緒に帰ったおじさんこそが、エミリオさんを守る噂のSPだったようだ。
結局自分から足を突っ込むのね、私は。
ライブ、今日じゃん。
***
会場に着けば、園子ちゃんが全身グッズまみれになっていたり、警察官にも負けない佇まいで蘭ちゃんが怖い顔をしていたりと突っ込みどころ満載だった。ああ、会場で取引があるんだっけ?コナン君を送り届けたものの、肝心のSPはクビになったらしい。なんでやねん。
途方に暮れて会場の音漏れを駐車場でぼんやり聞いていれば、一台の車が通り過ぎた。外車?中の人間はよく見えなかったけど、ふくよかな男が乗っていたような気がする。
「ノア姉ちゃん!!」
「...鬼ごっこにしては、分が悪いんじゃない?」
車vsスケートボード。負け戦じゃないか。スケボから降りたコナン君の頭にそのままヘルメットを被せバイクを走らせた。何が起こっているのかもどこに向かうのかもよく分かっていないが、今はコナン君に手を貸さないといけないんだってなぜか思ってしまった。
着いた先は海の見える廃工場のような場所だった。もうすっかり日も落ちて、視界が良くない。用事を済ませてくるからとコナン君は去って行った。
「ごめんノア姉ちゃん。大事な銀時計、泥棒の手に渡ったかもしれない。ボクが必ず取り返すから」
バイクを走らせている時に、小さい身体からそんな声が聞こえた。別に大したものじゃないって言ったんだけどなあ。羨ましいよ、その正義感。
園子ちゃんを助けようとしていた時、君も助けようとしていたんでしょ?ダン!ダン!と銃声が聞こえていたし、帰りにもう少しで穴が開きそうな跡も見つけた。博士の発明品らしいサスペンダーが柱に固定されていて、まさかここから飛び降りようとしたの?って思うまで遅くはなかった。コナン君なら躊躇わずに飛んでいく気がしたからだ。
「大人に任せとけばいいのになあ...」
って人のこと言えないか。
近くにあった自販機で一番甘そうなカフェラテのボタンを押し、ゴクリと喉を鳴らした。うん、苦い。
ホッと一息ついてすぐだった。
ダダダダダダッッ!!!!
あの時の銃声より何倍も多い音の数に、驚いて飲みかけの缶を落としてしまった。地面に落ちた缶から、カランコロンと音がしている筈なのに一切聞こえない。耳を塞ぎたくなるくらいの轟音だ。
借り物のバイクを放置して、全速力で音の鳴る方へ向かう。銃撃戦か?コナン君、巻き込まれたりしてないよね?本当に頼むよ、まじで。連れてきちゃったの私なんだからね?
海と陸の境目が分からない暗い岸壁で足早にコナン君が向かった場所を目指す。そもそも、取り返してくると言った時点で危ないことだって気付けよ自分。ああ、どうしよう。蘭ちゃんにボコボコにされる未来しか見えない。
鳴り響いていた銃声は途端に止み、一気に静寂に包まれた。
その代わりに遠くから聞こえるいつもの音。この町に来てから何度聞いただろうか。警察ももうすぐ到着するだろうが、コナン君の無事を確認しなければ私に明日は無い。
薄暗いその場所でオレンジ色の明かりが灯る廃れた倉庫。無事を祈りながら近づけば、目的の彼は手を頭の後ろに組んで周りの大人とのほほんとしていた。とりあえず、私の無事も確定した。良かった、色んな意味で。
よく分からないマフィアもどきと、取引先と思われる外国人グループはこの数分でお縄についていた。あれ?ライブ会場は?コナン君は警察よりも先に気付いていたってこと?まじか。彼に人並み外れた正義感が合ってよかった。大きくなっても犯罪に手を染めないことを祈っとくね。
一安心したはいいが、コナン君の右腕が赤黒く変色しているのに気付く。止血だけでもしてあげないと。自販機でミネラルウォーターを買って、バイクに置いたままになっている筈の鞄を取りに行かねばと来た道を戻ろうとした時だった。
「おい、嬢ちゃん」
「...へ?おぉっと!危ない」
振り向いてすぐに見慣れた銀時計がひょいっと飛んできた。咄嗟の出来事にノアの手は追いつかず、時計は硬いコンクリートの床に落下した。ガシャンと落ちる音とともに聞こえたのは「お、悪ィなあ」となんとも反省の色がない声色だった。
「ちょっと~、時計を投げるとはどういうつもりですかね~。時計に罪はないですよ?」
「ははっ、この距離だから取れると思ったんだがな、噂通りだ」
「あ、分かった。あなたがクビになったSPさんですね」
「その覚え方は酷いなァ」と咥え煙草をしながら目の前の男は呟く。ジャケットが少したるんでいる?ポケットに何か重い物でも入っているのかい?只者でないその雰囲気に足が竦む。「何をそんなに怯えているんだ?」と男は口元を緩ませる。黒いハットを深くまで被り込む彼の真意は読めない。
「お前さんの時計お飾りなのか?拾ったついでに使ってやろうと思ったんだがな。蓋が閉じていたぞ」
「綺麗な心の持ち主にしか開かない造りになってましてねえ」
「へえ、自分は心が綺麗だって言いたいのかい?」
「......」
いつもの調子で言い返すノアも上手く躱せない。全て見透かされているような、気持ち悪い感覚だった。急いでバイクの元へと戻りたいところだが通してくれそうにない。後退る私に黒い男は「なあ...」と言葉を続ける。
「俺がなんでその時計はお前のだって気付いたと思う?」
「なんででしょうね~。コナン君が教えてくれたとかですかねえ」
「とぼけやがって」
鼻で笑うその男とのやり取りに夢中で、背後から近付いていたもう一人の人物に気付く余裕も無かった。温度の無い硬い塊が頭の後ろでカチャリと音を出す。自然に両手を上に挙げれば、可笑しそうな笑い声が聞こえた。
「あんまりビビんねえんだな」
「それはそれは、物騒なこの町のお陰ですなあ」
冷静さを保っているがいつもより脈が速い感覚がある。絶体絶命ってやつじゃん。待って待って、私何かした?右手には銀時計ただ一つ。手ぶらな私が叶うはずもない。正直、手汗で落としそうだ。
「ぶはっ!何も取って食おうってんじゃないのよ、ただお願いがあるだけさ」
「え~、お命頂戴ってやつですか?」
「だから違うって言ってるでしょ」
(...説得力の欠片も無い)
「簡単なことよ仕事の依頼さ。『修理屋』なんだろ?」
はあ、と深いため息をつけば、銃を向けるその男はニヤリと笑っている気がした。
***
「あれ、なんかデジャブ?」
ベッコンベッコンのボロッボロな外車を見て、今まで修理をした可哀想な車を思い出した。ちょっと今回は比べ物にならないくらい穴だらけなんだけどね。その悲惨さに真顔で眺めていれば、横から赤いジャケットを着た男が「ああ、俺のアルファロメオちゃん....」とボディに抱き着く。なんとも痛々しい。
はあ、また車か。私は車屋か?ディーラーなのか?いや、修理屋だ。
「お嬢ちゃん頼むぜ!急いで直してほしいんだ!」
「は、ははは、、こうなったら特急料金たっぷり頂きますからね!!」
渡された工具箱から道具を取り出し、ガッコンガッコン修理に励む。
あ、そうだ。お客さんの名前聞いてなかったや。
「すみません、お名前聞いてませんでしたね~」
「あ?俺か?俺の名はルパ~ン三世、よろしくな修理屋ちゃん」
「......」
快斗君、すまん。
貸してはいけない奴に手を貸してもうた。
*
*
*
思った以上に原型が分からないなあこの車。スマホを取り出し、ネット検索にかける。あら、こんなに素敵な車なのね。ネットの画像と目の前にある廃車を交互に見比べ、とても同じとは思えない見た目に呆れてしまう。
地味にパーツをちまちまと作る私を見て、ルパンさんは不貞腐れたような顔をする。
「あの、何か?」
「なんか思ってたのと違うんだよな」
「へ?」
それ以上は何も言わない。ただ、私の作業をじっと観察している。何をそんなに期待しているのだろうか。この国では見ることのできないクラシックな見た目の鉄の塊が、着々と画像通りの見た目へと変わっていく。急いでるようだが、すまないねえ。やれる範囲だけでも手作業でやりたいのだ。
「なあ、そのどこにでもある工具一つでどうやってここまで直せるんだ?」
「え~、企業秘密でございます」
ポケットに隠し持っていた銃を堂々と取り出しメンテナンスを始める男からの疑問に、さらっと流してやった。ルパンさんの仲間ってことで良いのかな?あの綺麗な円を作った男は間違いなくコイツだ。あと、もしかしたらテレビショッピングもびっくりな刀の人も仲間かな?
「世界一の大泥棒、ねえ...」
「お?修理屋ちゃん俺様の事知ってんの?」
「まあ、風の噂で聞きましたよん」
泥棒やら怪盗やらユニークなクライアントしかいないのか。
ガチャガチャと音を立てながら、おもむろに口を開いた。
「ルパンさんの盗む目的ってなんですか?」
身近な怪盗さんは言っていた。父親を殺した奴への敵討ちをするのだと。そのため奴らより早くパンドラを盗まなければいけないのだと。賛否両論はあるが、彼なりに強い思いで犯罪に手を染めている。止めても無駄だなあってすぐに確信したくらいだ。なら、世界的大泥棒と謳われている彼の目的はなんだろうか。純粋に疑問が浮かんだ。
「俺はなあ、盗むまでの過程を楽しみたいのよ。退屈な人生なんてつまらないだろ?」
「はあ~、一般人には分からない世界ですなあ」
「ははっ、
気になる言い方だが、流しておこう。
何事も知らないフリが一番だ。
「でもそれを聞いて一つだけ分かったことがありますねえ」
「お?なんだい?」
「この間の怪盗キッドの騒ぎ、ルパンさんですね?」
気持ち悪い笑い方をする彼を無視して、修理の仕上げに入る。
「なんでそう思ったんだい?修理屋ちゃん」
「本物ではないと確信したのは、キッドが拳銃を発砲したことですね。彼は拳銃を使わなくても対応出来たんじゃないかなあって思いました。そもそも使わないですしね。ルパンさんだと確信したのは、あなたが盗むまでの過程を楽しみたいと言った発言ですかね。キッドはワイヤーでターザンみたいな使い方と掛け声はしませんねえ。気障なので」
最後に嫌味を含んで言い放てば、ルパンさんは顔に手を当ててゲラゲラと笑いだした。どうやら、私の考えは当たっていたらしい。運転席の足元にモノクルが落ちていたことは内緒にしよう。そもそも変装のプロと聞いた時点でそんな気はしていた。的を得た発言のせいで「あの小生意気な餓鬼と知り合いなの?」と聞かれてしまったが、知らないフリをして「友達が大ファンなんですよねえ」と誤魔化す。いや、嘘は言っていない。あの面食いちゃんは相当なキッド推しだ。
てか今更だけどそんな世界的な大泥棒がこんな目立つ車乗ってちゃ駄目でしょ?
工具箱に物を仕舞いつつ、ルパンさんにさりげなく声を掛ける。
そろそろ仕上げの準備だ。
「ルパンさ~ん。そこの倉庫の裏から物音しませんでした~?しましたよね~?ちょっと見てきてくれません?」
「お前さん心臓に毛でも生えてるんじゃねえか?この俺様を足に使うたァ良い度胸してるぜ」
ぶつぶつ言いながらも彼は倉庫の裏の確認をしてくれるようだ。目深に帽子を被る、確か名前は次元さんだったかな?彼も帽子をアイマスク代わりに睡眠をとっている。今がチャンスかな。
スマホで見たこの車の構造を思い出しながら、パンッ!っと勢いよく手を合わせた。
毎度お馴染みのことだが、手作業ではやれることが限られるのだ。
これくらいのズルは許してほしい。
真っ白な光に包まれたその塊も、終わる頃にはピカピカと効果音が聞こえるような新車に生まれ変わっていた。心の中で、特急料金♬特急料金♬とセンスのない歌が流れる。
念のため車体の中身を隅々まで確認し、不備が無いことを確かめた。我ながら良い出来だ。天才かな?
何も無かったぞと言いたげな顔をしたルパンさんは、ピカピカになったアルファロメオを見て周りに花が浮かぶほどの笑みで車体に抱き着いた。いや、今まで車の修理頼んだ人みんなに言いたいが、そんなに車愛が強いならもう少し大事に扱ってはくれないのだろうか。
そういえば、降谷さんの車の修理の時本人確認で免許証見せてもらったけどあの人ゴールド免許だったんだよね。絶対おかしいよね?金色の蛍光ペンでも用意して無理矢理塗りつぶしてるんじゃないかと思って必死に擦ったけど全然取れなかった。あの人絶対ヤバい人だと思うんだよねえ。
「修理屋ちゃん、マジでありがとうな!」
「へ?あ~いえいえ~、じゃあこの振込先までお願いしますね~。私はこれで」
キラキラ光るアルファロメオが名残惜しい。私も飛びついて隅々まで観察したいところだが、犯罪者に手を貸したこの現状でそんな浅はかな行動は出来ない。さっさと帰ってしまおう。てか、コナン君大丈夫かなあ。急ぎ足でその場を離れようとしたが、ルパンさんに肩を掴まれ顔の目の前に何かを向けられた。
「え、あ、ちょっと」
「ハイ、チーズ☆」
パシャリと電子音が小さく鳴る。見たことない構造のカメラだ。「びっくりした?」なんて彼は素で笑ってる。あなたみたいな人がそういう行動を取るのは心臓に悪すぎるよ。思わず手を挙げてしまったもの。ぼうっとしている私を他所に彼等は新車並みのその車に乗っていた。ブオオンと独特なエンジン音を上げるその車にホッとした。
「修理屋ちゃんまたな!」
「はは、次があれば良いですねえ泥棒さん」
「縁起悪ィなあ、じゃあな!あばよ!」
呆気なく彼等は去った。恐らくパトカーの音が近くなってきたからだろう。不思議な人たちだったなあ。戻ってきた銀時計をふと見つめる。傷が目立つせいで、真ん中の紋章はもう分からない。
『退屈な人生なんてつまらないだろう?俺はなあ、俺に期待したいんだよ』
自分に期待出来る人間なんてなかなかいない。
自分を信じてるからこそあんなに格好良く言い放つのだろう。
「...私も頑張りますかね」
ゆっくり歩いてバイクに向かえば、バイクに跨ったままコナン君がすやすやと寝ていた。初めて見たあどけない表情に自然と自分の顔も緩む。そっと頭を撫でてやれば「...蘭姉ちゃん」と呟いた。
((「お姉ちゃん!今日はシチューだって、ばっちゃんが言ってた!」))
何年も聞いていない甲高い声は、あの子供の頃のままだ。大きくなっただろうか。
本ばかり読んでいた私を無理やり連れ回そうとあの子は必死だったなあ。
そういえば、仲良くしていた小生意気な幼馴染とはどうなったのだろうか。
「...あ、やべ寝ちまってた。ノア姉ちゃん?」
「お?起きたかい?帰るぞ少年」
「そんなことより、大丈夫!?服汚れてるけど何かあった!?」
「なんにもないよ~。さっさと帰るぞ~蘭ちゃんが怖いから」
会話を遮るように、顔を見られないようにコナン君の頭にヘルメットを被せた。彼の右腕は不格好だが白い布で覆われていた。安心してバイクを走らせる。
「帰りにバーガーショップ寄ってもいい~?」
「嫌って言っても寄るんでしょ?」
「バレちった?大丈夫、臨時収入が入ったからお姉さんが奢ってあげよう!」
「ねえ、本当に何も無かったの?」
今日初めて口に入れるであろう。ハンバーガーが恋しい。
呆れるコナン君を無視して、この間園子ちゃんから聞いたバーガーショップを目指した。
「コナン君、あんまり無茶は良くないぞ」
「...ごめんなさい」
「素直でよろしい」
*
*
*
来日した時よりも調子がいい愛車に顔がにやけてしまう。途中で五ェ門を拾ってやれば彼もさすがに驚いたのか珍しく目を見開いていた。
小型カメラに映る彼女の顔に目をやれば酷く名残惜しく感じる。
「ははっ、次も会うには捕まんねえようにしねえとな」
次元が語るその言葉。一人の少年は「今度会ったら捕まえる」と、一人の少女は「次があれば良いね」と話す。何とも生意気な少年少女だ。
カメラの画像を電子音とともに操作する。ピ、ピ、と音が鳴り、ノアの顔が映った画像の左端には『お気に入り』と文字が浮かぶ。
「修理屋『armstrong』のノアちゃんか...」
ピロロロンとお気に入りリストに登録された効果音が車内に響く。
次は器用に登録名をタップする。
「不二子ちゃんの情報網は恐ろしいねえ、いつものことだけど」
ルパンはその名前を入力し、じっと画面を見つめた。
『
「また会おうぜ、修理屋の子犬ちゃん」
やっぱりルパコナ大好き。
私事ですが明日からハガモバリリースとのことでゲームに集中しようかと思います。
ゆるゆると書いていきますのでお付き合いくださいませ。
ヒューズ中佐当てるぞ!!!