無職さんのデンドロ履歴書   作:リリアーナを照れさせ隊

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見習い鍛治入門

 □■決闘都市ギデオン

 

 あなたは街の鍛冶屋を訪れた。

 預けていたバーベナの成長を確認するためだ。

 

 ついでに武器と防具を新調してもいい。

 素材はログインボーナスで貯まっている。

 リリファンの落とし物と合わせて、新規のアセンブリを組むことができるだろう。

 

 あなたが店先で見たものは、お仕事をサボって客にちやほやされるバーベナだった。

 

「また来るよバーベナちゃん!」

 

「はぁ〜い。待ってますよぅ」

 

 どうやら待機列を作っているらしい。

 あなたは列の最後尾に並ぶ。

 

「次のバベちんファンの人〜」

 

 やがて、あなたの番が回ってきた。

 

 こんにちは。ファンです。

 ところで看板娘、仕事はどうした。

 

「げぇ!?」

 

 あなたはバーベナを簀巻きにした。

 逃げ出したところで逃がさんわ。

 

 暴れる彼を店内に蹴り入れる。

 ギデオンに複数ある鍛冶屋のうち、この店は雑多でこぢんまりとした内装が特徴だ。

 床を転がるバーベナは陳列棚や散らばる武器に頭を打っているが、デンドロには回復魔法があるので、この程度の軽傷は怪我とみなさない。

 

 この論理は天地で広く普及しており、武芸者の鍛錬は片腕がもげるまで止まらない。

 断面が綺麗だと治りも早いので、即回復できるレベルの部位欠損はむしろ賞賛の的になる。

 たまに行き過ぎて死人が出るのはお約束だ。

 

 脳内の汚染が進行したあなたは、ティアンの店主(スキンヘッドの大男)に頭を下げた。

 承認欲求肥えしたこの男が申し訳ない。

 

「誤解だっての! 店主さん助けて!」

 

「あ、ああ。バーベナさんは真面目に働いているよ。自発的に客引きまでしてくれて助かっている」

 

「ほーれ見ろぉ」

 

 バーベナを《看破》したところ、メインジョブの【鍛治師】はレベル50に到達している。

 彼とて遊んでいたわけではないらしい。

 店の手伝いは鍛治ギルドを通したジョブクエストなので、経験値はしっかり稼いでいると。

 

 しかし、あなたは首を横に振った。

 たしかにレベル上げは重要だが。

 スキルの方はいかがなものだろうか。

 

「ギクッ。……いやだなぁ。仕事したんだから、鍛えられたに決まってんじゃーん」

 

 ならば武具の製作と手入れは完璧だろう。

 店主に断って、あなたは炉に火を入れた。

 ここに練習用の【レシピ】がある。

 バーベナにはこれ通りに剣を打ってもらう。

 

「き、今日は調子悪いからまた明日」

 

 あなたは愛刀の鯉口を切った。

 

「やりますやるよやればいいんだろぉ!」

 

 バーベナはおっかなびっくり槌を持つ。

 

「あっつぅ……おっも……」

 

 鉱石を炉にくべて熱して金床に乗せる。

 溶けた金属に槌を打ち付ける。

 レシピを使ったアイテム生産は全て自動化される。

 システムアシストで体が勝手に動くのだ。

 故に素人でもそれっぽい作業工程を通して、まともな作品を仕上げることができる。

 

「フゥ……フゥー……」

 

 もちろん必要ステータスと各種スキルが要求値に達していることが前提である。

 高難易度のレシピは要求値も高い。

 鍛治はSTRとDEXに《金属武器鍛造》ないし《金属防具鍛造》のスキルが基本となる。

 

 今回あなたが差し出した【レシピ】は上級職クラスの技量が必要になるので、バーベナはどう足掻いても失敗作の金属塊しか生産できないのだが。

 真面目にスキル上げをしていたら内容を見た時点で無理難題だと気付くはず。

 よってバーベナは容姿にかまけた接客しかやっていないという推測が導き出せる。QED。

 

 あなたは世を儚んでクリスタルに祈った。

 ついでに火箸でバーベナの臀部を突いた*1

 

「オ”ッふぉ……」

 

 膝をついた姿のなんと情けないこと。

 お灸を据える必要がありそうだ。

 

「もうしてんじゃん……俺のプリティーなお尻に根性焼きするなんて! この鬼畜、悪魔、獣ぉ!」

 

 罵詈雑言もどこ吹く風。

 あなたは悪鬼畜生下衆外道と呼ばれようと気にせず、短期特別レッスンの用意を整える。

 たった一日で君も見習い鍛治師。

 バーベナ育成計画は止まらない。本人が泣いて喚いて逃げ出しても、お仕事がキャンセルされない限り、あなたは心を修羅にする。バーベナの強くなりたいという気持ちに一切の嘘偽りはないのだから。

 

 あなたは依頼主を尊重する有能な<マスター>だ。

 

「でもなんで【鍛治師】なの? 俺、手っ取り早く強くなりたいって言ったよね。生産職のレベル上げても意味ないと思うんですけどぉー」

 

 まずは重要な基本スキルの鍛錬だ。

 とんてんかんと自動生産の最中。

 バーベナは口を尖らせて不満を漏らす。

 

 だが、甘い。甘過ぎる。

 バーベナはやはり甘ちゃんである。

 デンドロにおける戦闘職・生産職の区別なぞ、店主の毛髪のようにあってないようなもの。

 極まった生産職は戦闘職を凌駕するのだ。

 それこそ皇国の白衣が筆頭に挙がる。

 

「じゃあ俺は鍛治で強くなれるんだね?」

 

 否。バーベナに【鍛治師】は必要ない。

 

「ちょっと待てぇい」

 

 あなたは飛んできた金槌を受け止めた。

 バーベナに投げ返した。

 

「おま、ふざけんなよぅ!? 必要ないなら数日の努力はなんだったのさあ!」

 

 あなたはただ事実を述べている。

 誠実なコミュニケーションを心がけるあなたの落ち度はゼロと断言して差し支えないだろう。

 なぜなら今の会話をあなたのフレンドは百割理解してのける。一般人にツーカーで意思疎通しろと無茶振りするほどあなたは暴君でも傲慢でもないが、バーベナは彼らの同類だから理解できるはずだ。

 

 つまり。

 バーベナに【鍛治師】は不要だ。

 必要となるのは鍛治師系統の派生ジョブ。

 その就職条件を達成するのに【鍛治師】のレベル上げとスキル鍛錬が必須となる。

 

「む。なるほど……最初からそう言いなよ」

 

 分かったら手を動かすがいい。

 あなたはバーベナが打った【スティールソード】をインゴットに戻す作業に取り掛かる。

 素材は再利用してなんぼでござるな。

 

 熟練度の差であなたは待ち時間が生じるので、暇なタイミングは手持ちの武器の整理を行う。

 

 美女の毛髪で作った打粉を愛刀にかけ。

 他の妖刀や武器も併せて手入れをする。

 

「……何それ?」

 

 バーベナは一部の武器に注目している。

 よろしい、紹介しよう。

 それは以前あなたが手掛けた生産武器だ。

 渾身の出来であると自負している。

 

 たとえば、そう。

 この【冷蔵プラチナカジキトゥナス】とか。

 

「マグロじゃん!? ふにゃふにゃだし!」

 

 やはりバーベナは所詮バーベナか。

 冷やしたマグロはれっきとした武器である。

 カテゴリは両手剣に分類されるぞ。

 氷属性の付与が非常に面倒な代物だった……なお冷凍ではないため強度と鮮度はお察しである。

 

「プラチナカジキトゥナスだと!? たしかメタル系の魔物だけを食べて育つ最高級食材だったはず」

 

「聞いた感じ生物濃縮が怖いんですけど」

 

 店主は苦労を分かってくれるか。

 さすがの目利きにあなたは感動で震える。

 気分をよくしたあなたは自作武器自慢大会を開催しようとして、はたと思い止まった。

 

 店主とてギデオンに居を構える鍛冶屋だ。

 決闘参加者が持つ名刀魔剣、プレイヤーメイドの奇作は見慣れているのではないだろうか。

 現実の創作物を元に<マスター>が生み出した武器……ライトなセイバーや銃剣ガンスラッシュ、魔法少女のステッキなどはありふれていると考えた方がいい。

 

 選ぶのは至高の一振り。

 直近で鍛造した光の聖剣だ。

 

「ば、ばかな……【グローリアα】!?」

 

「え? たしかフィガロって人の特典武具……あんた盗んだの?」

 

 失敬な。特典武具は譲渡不可アイテムだ。

 あなたが持つは【グローリアa(アルプァ)】。

 超級武具をオマージュしたネタ武器である。

 闇堕ちverの【グローリアa(アルブァ)】もあるよ。

 

 白と黒の二刀流で、あなたは性能を実演する。

 投げた沢庵に左右八回ずつの斬撃。

 薄皮で繋がった沢庵をひとかじりした。

 フハハハハ! よい浸かり具合ではないか!

 

「切れてないじゃん」

 

 とまあこのように【グローリア・アルプァ】はなまくらの誹りを免れない産廃である。

 外見の再現にリソースを費やしたので、刀身が白く発光するスキルと、固定ダメージ1を与えるスキルしか付与することができなかった。あなたの刀鍛治としての技量が敗北した瞬間だった。

 

 もし天地の品評会に出品したら、審査員の目を汚した駄作として真っ二つに叩き折られ、唾を吐きかけられて踏み躙られること間違いなしだ。

 そして製作者のあなたは無礼打ちとなる。

 流石に修羅の国もそこまでしないと信じたいが、実際にありそうなのでなんとも言えない。

 

「ねえねえ。それ、いらないならちょーだい?」

 

 バーベナは猫撫で声を放った。

 瞳の奥に打算と皮算用が透けて見える。

 どうやらろくでもないことを考えたらしい。

 

 あなたは二振りのパチモンを譲り渡した。

 フィガロごっこ以外の使い道がないので処分を考えていたところだ。悪事に使うことはできまい。

 

「やったぁ〜! ふふ、これで一儲けできるぞぅ」

 

 まさか超級武具と偽って売り出すとか。

 そんな間抜けな真似はしないだろう。

 

 

 ◇◆

 

 

【体は剣で】生産武器総合スレPart46【心は硝子】

 

913:名無しの生産職

俺はこいつを紹介するぜ!

https://xxxx/XXXX.jpg

 

914:名無しの生産職

うおでっか

 

915:名無しの生産職

巨人武器?

 

916:名無しの生産職

SFだあね

 

917:名無しの生産職

必殺スキルで作った浪漫大砲だ

残りHPが少ないほど威力が上がるよ

 

918:名無しの生産職

ほう……この俺を唸らせるとは中々よ

褒めて遣わす、褒美は好きにもってゆけ

 

919:名無しの生産職

ハハー!

 

920:名無しの生産職

何これ

 

921:名無しの生産職

新人かな

 

922:名無しの生産職

誰か説明したげて

 

923:名無しの生産職

生産スレに降臨するレアキャラ俺様

アイテムコレクターを名乗る

作品を認められたら金一封←イマココ

 

924:名無しの生産職

理解、いつものおふざけね

 

925:名無しの生産職

いや本当にくれるぞ

デンドロ内の資産に限るが

 

926:名無しの生産職

貧乏生産職ワイ

金一封で借金返済

 

927:名無しの生産職

紹介すると金一封

希望者は買取までしてくれる

 

928:名無しの生産職

>>927

マ?

 

929:名無しの生産職

特典武具への怨嗟に満ちたスレに差し込む光

 

930:名無しの生産職

あなたが神か?

 

931:名無しの生産職

戯言を申すな、だが許す

親しみを込めて俺様と呼ぶがよい

 

932:名無しの生産職

お、俺様ー!

 

933:名無しの生産職

コテハンつけてくれー!

 

934:名無しの俺様

フンよかろう

 

935:名無しの生産職

俺様に是非ご覧いただきたい品が

https://xxxx/XXXX.jpg

 

936:名無しの生産職

ミュウ◯ーじゃん!

すご!(武器じゃないけど)

 

937:名無しの生産職

さては皇国の白衣か?

 

938:名無しの生産職

>>937

違います

でもそう思われても仕方ないですよね

 

939:名無しの生産職

ずっとこの作品が大好きで

デンドロで再現したモンスターですが

結局【大教授】に劣るパチモンでしかない

 

940:名無しの俺様

くだらん、実にくだらん

 

941:名無しの生産職

俺様……?

 

942:名無しの俺様

貴様と【大教授】に何の関係がある?

俺は貴様の情熱をしかと見た

誇れ、ソレは貴様の唯一無二だ

 

943:名無しの生産職

お、おれさまぁ……!

 

944:名無しの生産職

褒美を授ける、これからも励め

版権物は良識を逸脱せぬよう心がけよ

 

945:名無しの生産職

これは俺様

 

946:名無しの生産職

惚れてまうわ

 

947:名無しの生産職

俺様、これ特製の媚薬なんだけど

https://xxxx/XXXX.jpg

 

948:名無しの生産職

アングラに行け

 

949:名無しの生産職

レジェンダリアに帰れ

 

950:名無しの生産職

ここは生産武器のスレだぞ

色々紹介されてたが

 

951:名無しの生産職

ち、違うんだ! これは世のため人のため

畜産系・従魔師系に革命をもたらす代物で

 

952:名無しの生産職

うるせえHENTAI

 

953:名無しの生産職

犯罪者は皆そう言うんだよぉ!

 

954:名無しの俺様

静まれ

 

955:名無しの生産職

お、俺様?

 

956:名無しの生産職

しかしこのような低俗な品など

 

957:名無しの俺様

それを見定めるのは貴様らではない

この俺よ

 

958:名無しの生産職

だけどなあ

 

959:名無しの生産職

俺様の寛大な御心に感謝を

説明ですが、この媚薬を浴びると産卵します

 

960:名無しの生産職

アウト

 

961:名無しの生産職

通報しますた

 

962:名無しの生産職

ステイだ! まだ俺様のお言葉がない!

 

963:名無しの俺様

……つまり単為生殖を可能とする、と?

 

964:名無しの生産職

!?

 

965:名無しの生産職

 

966:名無しの生産職

どういう事だってばね

 

967:名無しの生産職

>>963

その通りです俺様

絶滅危惧種、子を産まない家畜

そういったモンスターを繁殖させることができます

 

968:名無しの生産職

やばくね

 

969:名無しの生産職

食料問題とか解決するんじゃ

 

970:名無しの生産職

クローンってことか?

 

971:名無しの生産職

>>970

あくまで別個体です

ただ親個体の特性が遺伝するから似たようなものかな

 

972:名無しの俺様

グハハハハハハハ!

 

973:名無しの生産職

俺様が快笑なされた!

 

974:名無しの生産職

つまり……

 

975:名無しの俺様

愉快愉快! これだからスレの民はやめられぬ!

褒美は貴様のものだ、持っていけ!

 

976:名無しの生産職

ありがとうございます

この資金で量産体制を整えたいと思います

 

977:名無しの生産職

ええ話やな

 

978:名無しの生産職

ええ話か……?(媚薬だぞ)

 

979:名無しの生産職

じゃーこういうのはどう?

https://xxxx/XXXX.jpg

 

980:名無しの生産職

【グローリアα】じゃねーか

 

981:名無しの生産職

生産武器スレだって言ってるだろ!

 

982:名無しの生産職

よく見ろ名前が違う

 

983:名無しの生産職

【グローリア・アルプァ】ぁ……?

 

984:名無しの生産職

パチモンじゃねーか!?

 

985:名無しの生産職

特典武具の贋作は数あれど

ここまでのクオリティは過去にあったろうか

 

986:名無しの生産職

どう? どう? これ金一封あるでしょ〜

 

987:名無しの俺様

……

 

988:名無しの生産職

俺様?

 

989:名無しの俺様

この俺を謀るとは舐められたものよ

貴様が手掛けた剣ではあるまい

 

990:名無しの生産職

ゲェッ!? なぜそれを!?

 

991:名無しの俺様

俺の審美眼を侮った事が貴様の敗因だ

 

992:名無しの生産職

よくわからんがすげー

 

993:名無しの生産職

他人様の作品を自分のと主張するのはよくない

 

994:名無しの生産職

チッ……反省しまぁーす

 

995:名無しの俺様

待て贋作の民

貴様は王国所属か?

 

996:名無しの生産職

うぇ? はぁ、まあ

 

997:名無しの俺様

ふ……そうか

 

998:名無しの俺様

グハハハハハハ!

変わらず壮健のようだな職の民!

 

999:名無しの無職

(´・ω・`)

 

1000:名無しの生産職

>>999

なんだ今の

 

1001:1001

このスレッドは1000を超えました。

新しいスレッドを立ててください。

*1
※よい子は絶対に真似してはいけません




・《金属武器鍛造》
・《金属防具鍛造》
鍛治師系統のスキル(捏造)。
それぞれ金属素材を使用した武器・防具の作成を可能とする。

・生産武器総合スレ
管理人「薬とかモンスターとか……ここは生産武器スレだって言ってんだろうがよぉ……」

・俺様/???
生産系・特典武具系のスレに稀にポップする。
自分は生産職ではない。
非常に太っ腹なことで有名。
品評は趣味と実益を兼ねている。
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