無職さんのデンドロ履歴書   作:リリアーナを照れさせ隊

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柳の剣聖

 ■他者に導かれた才能について

 

 “――■■に向いていると思うよ”

 

 両親は幼い息子に道を示した。

 

 まだ小学校に上がる前。分別もつかない頃だ。

 剣道の体験入門に彼は連れられた。

 両親が勤める警察署は道場が備え付けてあり、地域の子供向けに、剣道教室を開催していた。

 

 両親のささやかな親心であった。

 家で何もすることがないと退屈だろう。

 歳の近い友人ができたらいい。

 なにより自分達の子なら上手くなると。

 

 彼らは子供の人生が豊かになる事を望んだ。

 未来の選択肢を増やしてほしいと願った。

 幸せになる方法はひとつとは限らない。人それぞれに道があり、両親のそれと違うかもしれない。

 もし剣道が合わないなら他の事をすればいい。両親は子供の意思を尊重すると決めていた。

 

 ただひとつ、誤算だったのは。

 

 彼らの息子は()()だった。

 一を聞いて十どころか百を知る。

 礼儀作法に基礎の形、手にした竹刀の振り方。ものの数分で師範は教える内容がなくなった。

 これでは体験にならぬと破顔した師範は冗談混じりに試合形式の互角稽古を提案した。

 

 彼は借り物の防具を身につけて、

 

 同学年に勝ち、

 

 小学生に勝ち、

 

 中学生に勝ち、

 

 高校生を、大学生を、警察官を、有段者を、師範を、居合わせた悉くを一刀のもとに切り伏せた。

 最後に面を外した彼は周囲の慄く視線を気に留めず、ただただ両親の賛辞を一身に浴びていた。

 

 “――剣道を続けなさい。それが■■のためだ”

 

 二人が言うならきっとそれが自分の最適なのだろう、と彼は幼心に感じて頷いた。

 特別やりたい事はなかったし、他に向いていると胸を張れる事は思いつかない。

 だから両親の言い付けに従った。

 両親は己の幸福を願っていると知っていて。

 剣道を続けるだけで彼らは喜ぶと分かったから。

 

 それから二十年余。彼は剣の道に邁進した。

 ただの一度の敗北もなく、ただ一人も彼に能わず。

 たかだか三〜六年ばかり剣をかじった学生剣士が到底敵うはずもなく。神域と謳われる八段位すら同様に。

 泰平の世において剣道は斬り合いを目的としていない。考えてみれば当然だ、もはや刀同士での殺し合いなど時代錯誤にも程がある。

 

 時折群を抜いて歯応えのある相手との遭遇もあったが、古武術の継承者など数少ない例外だ。

 幾度と大会を制して“リアル柳生”と世間が彼をもてはやし出したのと同時期……彼は停滞を感じた。

 

 相手がいない。互角の勝負にならない。

 もう、あるいは竹刀を手にした最初から。

 彼は剣道ができなくなっていた。

 

 否、もとより彼に()()()()()などなく。

 あるのは()()()()だった。

 

 己を顧みた彼は単純な事実を悟った。

 悲観の必要はない。彼は確かに結果を出した。

 両親を責める理由はない。むしろ感謝を抱いた。

 歪ながら自分の才能を伸ばしてくれたのだから。

 ただ頭の片隅に疑問が生じた。

 もしもあの日、剣を手に取らなかったら。

 自分には他の未来があったのだろうか、と。

 

 仮に凶器の使用が禁止されていなければアンリミテッドパンクラチオンに参加したかもしれない。

 もし停滞を感じる時期があと僅かに早ければ、存命の人間国宝(“燭台切”)に挑戦したかもしれない。

 古武術の道場を巡る道場破りだって。

 あり得たかもしれない“可能性”と、対等な相手を探し求めて彷徨う……しかし、そんな求道者は生まれない。

 

 ――<Infinite Dendrogram>は新世界とあなただけの可能性(オンリーワン)を提供いたします

 

 幸か不幸か。

 またしても青年は運命に導かれた。

 

 

 ◆

 

 

 最初のチュートリアルで確認した事は、ゲーム内における戦闘の重要度だった。

 彼の認識は二十世紀の家族向けコンピューターで止まっていた。しかも宇宙のインベーダーである。『汝の問いは無意味だ』と案内役は一蹴したが。

 非戦闘職、生産や商売といったシステムが充実している事を聞き出した彼は安堵してアバターを作成する。

 

 別世界に生きるもう一人の自分、『柳葉』。

 自分の苗字をそのまま流用して。

 

 他の説明を聞かず、直感と雰囲気で初期国家を選択した柳葉は<Infinite Dendrogram>に降り立つ。

 

 天地のスタート地点、刀都を物珍しげに散策しているところを人攫いに捕まり、あっという間に海の上。

 商人志望者を募る怪しい詐欺に引っかかった間抜けの末路は奴隷だった。人攫いを生業とする海賊一味が、まさか<マスター>と知らず柳葉を誘拐したのだ。

 サービス開始初期特有の不幸な事故であった。

 

「駄目だ。こいつは売れないよ」

 

 船の甲板で、女海賊が配下を怒鳴りつける。

 頭を下げる海賊はまだ年若い子供だ。柳葉を騙して攫ってきた張本人で、海賊一味の中では下から数えた方が早い序列の人間だった。

 

「で、ですがお頭。<マスター>は不死身で、こいつはまだ孵化してないみたいですが<エンブリオ>だって使えるんですよ」

 

「バカだねお前は! 殺しても死なない奴が奴隷に甘んじる訳がないだろうがッ! 逃がすにしても顔を見られちまってる……どう落とし前つけるつもりだい?」

 

「すみません……」

 

 女海賊は不機嫌を露わにする。

 捕まった人々にとっては恐怖の象徴だった。

 いつ感情の矛先が自分に向かうか。奴隷としてどのような扱いを受けるか、彼女の匙加減で決まるのだ。

 

 だから、彼らは隣で興味深そうにしている柳葉が気狂いとしか思えなかった。

 お前も俺達も縄で縛られてるんだぞ?

 

「本当に使えないね。まさか誰のお情けで船に乗せてやってるのか忘れちゃいないだろう」

 

「へへっ、めっそうもございません」

 

「ヘラヘラと……気に食わないね。一遍死ぬかい?」

 

 女海賊は湾刀を振り翳した。

 脅しだ。配下の躾だ。海賊船の日常である。

 だが決して冗談ではないと配下は知っている。

 まだ利用価値があっても、女海賊を舐めてかかる者は全員が湾刀の錆に……あるいは鮫の餌になった。

 

「待て。そいつは殺すな」

 

 ゆえに、女海賊に反論する声が上がるのは誰にとっても予想外の出来事だったのだ。

 

「そいつが死ぬと俺が困る。商人のいろはを教えてもらう約束だからだ」

 

「寝言は大概にしな、<マスター>の坊や。何をどう吹き込まれたかは知らないが口八丁の出鱈目だよ。お前はこの無能の愚図に騙されたのさ」

 

「何……? そうなのか」

 

「ハッ! まだ気付いてなかったのかい? とんだお笑い草だよコイツは! 愚図が間抜けを連れてきやがったよ、見せ物小屋なら高く買い取ってくれるかもねぇ!」

 

 下卑た笑いがこだまする。

 蛙じみた女海賊のそれに、追従する男共。

 善良な虜囚は縮こまって震えるばかりだ。

 

「そんなことより、訂正しろ」

 

「……ああん?」

 

「そいつは無能でも愚図でもないぞ。街では大人の商人相手に一歩も引かずやり取りをしていた。計算も早いし口が回る。俺を攫う時の手口なんてまさに鮮やかだったな……うん。やはりどう考えても無能とは思えない。お前の目は節穴か?」

 

「ふ……ッ!?」

 

「俺にない可能性の持ち主だ。死ぬのは惜しい。というか繰り返しになるが非常に困る。だから殺すな」

 

「舐っめんじゃないよ……クソガキャァァァァァ!」

 

 女海賊の湾刀が走る先は配下。

 衝動的な行動は柳葉への当てつけで、かつ、船内の規律を維持するための示威行為だった。

 暴力と恐怖で人間は支配できる。少し口が上手いだけの配下一人は安い犠牲である。

 配下の次は柳葉を殺害する。その後は縄張りを変えて、新たにカルディナ向けの奴隷輸出を続けるのだ。

 

 当然ながら柳葉は()()()を覚える。

 このままでは眼前で可能性が潰える。

 しかし手がない。拘束された柳葉に何ができる。

 甲板に手頃な得物がない。海賊とは距離がある。

 周囲にあるものといえば無限に広がる海原だけ……

 

『――私を呼んで』

 

 ……否、否、否。

 柳葉にはある。手段が残されている。

 ただ剣を振るう以外の可能性が手の中に。

 

「来い」

 

 光が集まり、形に変わる。

 青い衣を纏う少女が顕現する。

 

「俺の可能性」

 

『《秋水》――』

 

 謳う言意は澄み切った水。

 転じて、曇りのない研ぎ澄まされた刀。

 

 海水は一振りの刃に転じて、縄を断ち、

 

『――《応刀(アンサラー)》』

 

 敵を討つ。

 

「というわけで初めましてだねマスター君! 私はTYPE:メイデンwithアームズ【蒼海乙女 マナナーン・マクリール】。どこまでも広がる大海原のように、自在に姿形を変える水のように、君の無限の可能性を映し出すパートナーだよ!」

 

「そうか。よろしくナーン」

 

「よりによってその部分!? やりなおし!」

 

 

 ◆

 

 

 それから一年が過ぎて、更に一年。

 増加する<マスター>に変わりゆく世界。

 激動の天地で、柳葉は己の“可能性”を探し続けた。

 

 女海賊から助けた友人、磯羅(いそら)と組んで商人兼海賊として旗揚げ。

 稼業の傍らに襲い来る修羅を斬っては沈め。

 華々しい活躍で多方に目をつけられてしまい、庇護を求める対価として東青殿家の軍門に降り。

 いざこざで取り潰された青海波の領地を下賜されて御家復興。磯羅は苗字を襲名して大名に出世した。

 

 祝いの宴を抜け出して、柳葉は星を眺める。

 騒がしい空気から離れたい気分だった。

 

「よう。こんなとこにいたか」

 

「おい磯羅。護衛はどうした大名だろ」

 

「ばっかおめえ、気ぃ利かせたのが分からんかね」

 

「……酔っているな?」

 

「つーか柳葉以上に腕の立つ奴がいねえよ」

 

 磯羅は胡座をかいておもむろに酒盛りを始めた。

 宴の席からつまみも拝借しているようだ。

 

「一杯どうだ……って、お前下戸だったか」

 

「酒を飲む習慣がない」

 

「だからお前は商人向いてねえのよ。付き合いで酒を交わさないでどうするっての」

 

「放っておけ。これでも人並みに仕事はできる……ようになった……はずだ。きっとそうだろう多分」

 

「嘘こけ昨日の商談とか酷かったぞ。マナの助け舟がなかったら大損こいてたわ」

 

「そうか」

 

「そうだ」

 

 磯羅は友人のためを思って心を鬼にした。

 毎度本人の希望で仕事を振っているが、柳葉に商売の才能は皆無である。護衛戦力としては最高峰なのだが。

 逆に相棒のメイデンはどの仕事を任せてもそつなくこなすあたり神様の采配は残酷である。

 

「まあ商人は駄目でも他があるさ。そうそう……領地を賜ったから畑を作ろうと思ってな? 人を集めてるんだがお前もやってみないか。いつも言う可能性とやらが見つかるかも知れんぞ?」

 

「……いや、遠慮しておく。どうせまたいつものように迷惑をかける。念願の領地なんだ。折角なら幸先の良いスタートを切りたいだろう」

 

「今日はどうした水臭えなあ。俺とお前の仲だろう。迷惑とか思ってねえし、考えなくていいんだよ。貸し借りを持ち出したら俺の方が返しきれなくなる」

 

 赤ら顔で磯羅は語気を強めた。

 

「初めて会った時のことは覚えてるか?」

 

「無論だ。お前の可能性は輝いていた」

 

「実は俺、お前を利用したんだよな。あのいけすかないお頭をぶっ殺してくれそうだったから」

 

「初耳だが」

 

「そりゃそうよ。お前に言ってねえもん。集まった連中の中でお前が一番扱いやす……ンン、純粋で腕が立つように見えた。俺の目に狂いはなかったってわけだな」

 

「騙したな。許さん」

 

「待て待て冗談だ。……とにかく今の俺があるのはお前のおかげなんだ。あの日、柳葉に会わなかったら俺は今でもあの蛙ババアの船でせこせこ働いていたと思うぜ」

 

 だからよ、と。

 柳葉の瞳を見透かすように彼は告げる。

 些細な変化に伴う心境を本能で察して。

 

「頼むから勝手にいなくなるなよ。俺はまだお前に恩を返しきれてないんだ」

 

「分かっている。不義理はしない。それに……俺は磯羅の行末を見届けたいと考えている」

 

「まだ終わらねえよ!? これからって時に縁起でもねえこと言うんじゃねえわ!」

 

「いやそういう意味ではなく」

 

「うるせえ〜! 宴だ柳葉ぁ、お前も飲め!」

 

「下戸だっつってんだろ!?」

 

 ささやかな宴は磯羅が酔い潰れるまで続いた。

 許容量を超えた友を運び、柳葉は再び一人に。

 暗い海を見つめる彼の隣に少女が実体化する。

 気を利かせて紋章に戻っていたマナだ。

 

「マスター君……」

 

「悪いな。待たせた」

 

 彼女は纏う衣装が様変わりしていた。

 青のドレスに新たな装飾とアクセサリー。

 伸びた髪は昨日までと比べてより大人びた印象に。

 

「<()()()()()()()()()()()()()

 

「どう変わった?」

 

「まず名前かな。今の私は【源辿海姫 マナナーン・マクリール】だよ」

 

 TYPEはメイデンwithルール・アームズで上級の時と変わらないね、と一回転してドレスの裾を翻す。

 かわいいと伝えたら喜ぶのだろう。余裕がある時なら柳葉はいくらでも無意識に相棒を褒めそやす。

 それをしない、ということが答えである。

 

「他には」

 

「……必殺スキルを獲得したよ」

 

 彼らにとっても念願の、<エンブリオ>の切り札となるスキルの習得は本来なら言祝ぐ慶事である。

 そうではない、ということが答えである。

 

 柳葉は説明を聞き、ウィンドウを開いた。

 <エンブリオ>はパーソナルを参照して孵化・成長する、言わば<マスター>の本質を映す鏡だ。

 マナナーン・マクリールが第七形態となって獲得したスキルは即ち、柳葉という人間の本質。

 

「は……はは……」

 

 否応なしに突きつけられたのは。

 

「やっぱり……これが、俺の可能性か」

 

 ある意味で、彼の願いを否定するもの。

 

「マスター君……あの、あのね! これはきっと何かの間違いだと思うんだ。だから、その……」

 

「心配するな。薄々気付いてはいた。というよりも、気付いたからマナが進化したのか……?」

 

 いつの時点でそうだったのかという推測自体があまり意味を持たないと柳葉は諦めた。

 進化してしまったものは仕方ない。

 知ってしまったら知らないでは済まない。

 

 例えば――大名就任を祝う青海波領に夜襲を仕掛ける、海賊の連合が接近している事と同じで。

 

「ちょうどいい。初陣だ。今後の憂いを断ち切る」

 

「……うん。磯羅のためにもね!」

 

 その日、青海波磯羅を快く思わない者達がかき集めた百隻に及ぶ海賊連合艦隊は……たった一人の<超級>に襲われて全滅した。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 □■イベントエリア中央部

 

 そして現在。柳葉は歓喜に震えた。

 

 ようやく“可能性”が出てきたと。

 

 <超級>に至ってからの彼に敗北はない。

 元より剣の腕は飛び抜けていた。

 加えて第七形態のマナナーン・マクリールで突破できない困難に遭遇しなかったといえる。

 

 【勇者】は戦う前に天地を出奔してしまった。

 【抜刀神】とは技量以前の問題で勝負にならない。

 “技巧最強”……己を倒す可能性が最も高い彼とは不幸にも遭遇できず、すれ違ってばかり。

 

 運営主催イベントは東西問わず猛者が集うと耳にして、期待に胸を膨らませていた。

 蓋を開けてみればどうだ。

 二人の少女に、目の前の無職。豊作である。

 

(いいな。《霧雨》が通じないか。いいぞ)

 

 マナナーン・マクリールの特性は液体操作だ。

 周囲の水を操り、吸収し、ストックする。

 万能性を誇る能力だが、スキルの対象が広範囲に及ぶため、個々の出力は<超級>としては低い。

 柳葉はスキルの数を絞る事で効果を高めている。

 

 彼が普段使いするスキルは三種類ある。

 液体で武器を作る《秋水》。

 肉体を水に変化させる《霧雨》。

 水の振動で周囲を探査する《水鏡》。

 

(水の身体ごと殴られるなら《霧雨》は無意味。《水鏡》も要らん。使うのは《秋水》だけでいい)

 

 柳葉は剣尖を揺らして無職の動揺を誘う。

 フェイントを交えて隙を作る狙いだ。

 攻めの姿勢は必ずどこかに空白が生じる。

 ゆえに柳葉は無闇矢鱈と攻めたりはしない。

 当たると確信した瞬間に本命の一太刀を見舞う。

 

「お前は俺を倒せるか?」

 

 静かに起動するスキルは三つのいずれでもない。

 メイデンの要素、ジャイアントキリングの体現。

 

(マナ。指定ステータスをAGIに)

 

(準備はできてるよ。《応刀(アンサラー)》――起動)

 

 マナナーン・マクリールが操作する液体、水に触れた対象の指定ステータスを一〇〇%減算する。

 減算したステータスは丸ごと柳葉に上乗せする。

 即ち、相手の弱体化と自己強化を両立するスキル。

 

 足元の水に浸かった無職はAGIがゼロに。

 対する柳葉は速度に追加補正を受ける。

 

 かの“断頭台”すら斬り返した柳葉の無法。

 極まった能力に対する格上殺し。

 どれだけの才能があろうと物理的に覆せない、圧倒的なステータス差を埋めるための力である。

 

 柳葉はサブジョブに剣士系統を取得しているため、レベル十の《剣速徹し》が攻撃に乗る。

 超音速かつ無職のENDを無視する水の斬撃。

 単独で十二分に機能する必殺の太刀であるが。

 

 更に柳葉は()()()()()()()

 

 柳葉は【海乱鬼(カイラギ)】の《波濤撃》を行使する。

 武士・海賊系統複合超級職の奥義は水を伝う一撃。

 威力は液体の接触面積と総質量に比例し、海で使用したなら戦艦を木っ端微塵に砕くことができる。

 なお、柳葉はマナナーン・マクリールに、イベントエリア東部の湖水を丸ごと吸収させていた。

 累乗した火力は無職一人を屠ってお釣りが出る。

 

「俺の可能性を破れるか?」

 

 必殺スキル《巡り廻りて漣に(マナナーン・マクリール)》。

 一定時間<エンブリオ>の出力を大幅に上昇させる代わりに、指定した単一スキルと《応刀》を除く全てのスキルが使用不可能になる制限が課される。

 強度と攻撃力を増した水刃。通常時の二倍以上に展延した刀身は大太刀の如し。

 

 万能の適正と可能性を切り捨て、たったひとつの才能以外を認めない……()()()()()()()()()()()()ことを柳葉は無慈悲に突き付けられた。

 

 であるならば。

 後はもう、願うしかないのだ。

 柳葉を正面から打ち破る者がいれば、つまり、彼の剣の才能がそこまでだったということで。

 彼は天才でも“リアル柳生”でもない、最初から可能性を持たない、取るに足らない凡人だったと。

 そもそも柳葉の才能など取るに足らないものだったのだから、剣才も、他の可能性と同じだと。

 あらかじめ生まれた時から才能が決まっていたと信じるより、その方がよっぽど救いになるから。

 

「見せてみろ。お前の可能性を」

 

 彼は祈りと共に剣を振るう。

 世界で一人【海乱鬼】柳葉のみに許される剣技。

 数多のスキルを組み合わせて編み出した複合(コンボ)

 

 名付けるならば――《我流魔剣・水月》。

 

 迫る魔剣と対峙した無職は……

 

 ――()()()()()()()()()()()




文章も能力も盛り過ぎたペコ……終わらねえ
もう少しイベント続きますのでお付き合いください

・剣道の理念
『剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である』。
柳葉の両親が一番学んでほしかった事は、竹刀の振り方でも、人の斬り方でもない。
勝負とは別の、精神的・人格的な部分だった。
本人には微妙に伝わっていない。

・ドラム缶
お前100%戦うのにそれ聞く意味ある?

・青海波磯羅
異世界の友人。いいやつ。
彼の人生を一言で説明すると貴種流離譚。

【海乱鬼】
二次オリジョブ。【荒波武者】から派生。
ステータスは万能寄りで超級職の平均程度。
海上戦闘に特化したスキルを持つ。

《我流魔剣・水月》
ベースの組み合わせは下記の通り。
【マナナーン・マクリール】の固有スキル《秋水》《応刀》と必殺スキル、【海乱鬼】の奥義《波濤撃》、【荒波武者】の奥義《八艘飛び》、サブ上級職に置いた【一刀武者】の奥義《一刀両断》、《剣速徹し》
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