無職さんのデンドロ履歴書 作:リリアーナを照れさせ隊
□■皇都郊外
「た、大佐! 助けてください、減速できません……! 助けてマードック大佐ぁ!」
<叡智の三角>の【高位操縦士】は悲鳴を上げた。
操縦桿は彼の手を離れ、機体はみるみる加速。
大気との摩擦で赤熱化した<マジンギア>は超音速まで加速して、ついに粉微塵の鉄屑となる。爆破!
「動力関係は会心の出来でしたね! これなら飛び出していけますよ宇宙の彼方!」
「でも、やっぱ強度が足りないね。これ以上の速度を出すなら機体の素材を変えないと」
「予算カツカツだもんねえ。後どこを削る? コックピット周りの装甲? ラジエーター?」
新型機テストを終えて、和気藹々と盛り上がる開発部門の二軍三軍メンバー(趣味嗜好により本流から外れたクランの爪弾き者たち)。
護衛に連れ出されたマードック・マルチネスは正気を疑った。「こいつら空中分解する棺桶作るつもりか? ◯ダかな?」と、まあそんな感じである。
先程の爆散したテストパイロットが脳裏に焼き付いて離れない。なんて軽い人の命だろうか。
流石に一言物申すか。マードックは口を開き、
「お前ら」
「待っててください大佐! 僕らが【トールハンマー】に負けない戦車を作るんで!」
「おうよ、【マーシャルⅡ】がなんぼのもんじゃい! 戦車の<マジンギア>が【ガイスト】止まりとはもう言わせねえ、世間を一泡ふかせてやるぜ」
「ワクワクが止まらないよ! 今から大佐に乗り回してもらう日が待ち遠しいね!」
……ゆっくりと、開けた口を閉じる。
悪いやつらではない。
彼らは日雇いのアルバイトと共に、設計図の見直しを進めている。気のいい遊戯派であった。バカとも言う。
「……あんまり無理はしなくていいぜ。あっちで【電波大隊】の製作は進んでるからな」
「でもよぉ大佐! 俺だって大佐と戦車乗りてえよ!」
「一緒にがんばろうねえ!」
「とらさんチーム、ふぁいおー!」
「「「おー!」」」
意気揚々と拳を突き上げる彼らだったが。
突如として飛来した砲弾の雨にあっさり吹き飛ぶ。
直前に《危険察知》が発動したマードックだけは自らの戦車に搭乗し、爆撃を逃れた。
「敵襲ー!」
「<安全高校戦車研究会>のあん畜生め……」
生き延びた数人が憎々しげに硝煙を睨む。
隊列を組む戦車はどれも特徴的な改造【ガイスト】。
うちクランを率いる一両が大音量で無線を垂れ流す。
『しねぇ<叡智の三角>の戦車バカ共!』
宣言と同時に問答無用の砲撃。それを、
「事情は知らんが」
マードックは間に【トールハンマー】を滑り込ませ、展開した電磁バリアで受け止める。
「クランの仲間を見殺しにはできやせんぜ」
『【車騎王】……貴様も
「は?」
『とぼけるな! 貴様の後ろにいる連中は……我が安高の【ガイスト】を整備と銘打って(強引に)徴収し……! バラバラに分解しやがった……!』
漢、安高戦車研の部長。涙の訴え。
すべて《真偽判定》に反応がない。となると話が変わってくるな? マードックは味方を振り返る。
「誤解だよ? 今は
「素材を買うお金がなければ機体を借りてくればいい、やっぱ天才的な閃きだろ!」
「ん、奪えば全部!」
すべて《真偽判定》に反応がない。
遵法精神の欠片もない無法者である。
『ゆえに我々は貴様らの戦車を要求する! もちろん【車騎王】、貴様が乗っている【トールハンマー】とやらもな! これは当然の権利だよな!?』
「巻き込み事故にしたって限度がねえか……?」
困惑と同情が半々の割合で溢れる呟き。
しかしマードックとて、自らに降りかかる火の粉は払わねばならぬ。重ねて自分を慕うクランメンバーの行動に(いささかやりすぎだが)感謝を感じなくもない。
(ただ……味方の距離が近すぎる。生産職の耐久なら《
あるいは、こだわりを捨てて。
仲間を気にかける必要がなければ。
マードックのジンクスは変わらずそこにある。
――《ハイエンド・サンダー・レジスト・ウォール》、“超多重展開”。
――誰かの実績とポリシーもまた同様に。
◇◆◇
あなたは雷属性+物理防御魔法を展開した。
数千万単位のMPを注いだので、たとえ雷属性特化の<超級>だとて破れぬ強度。
“帷”の異名を誇る大魔法使いの知識の賜物だ。
やはり積み上げた経験は決して無駄にならない。
本日のお仕事は戦車の開発及び整備。
メカニックあなた、皇国でアルバイトである。
雇い主が天地並みの世紀末思考で荒事を呼び込んだが、野盗の迎撃は業務内容のうち。
追加の報酬は十割あなたの懐行きとなる。
あなたはミスティコを使った。
あなたは【アウトレイル】になった。
元皇国最強の<マジンギア>(諸説有り)、爆誕。
四本足に車輪がついているから、どちらかといえば戦車寄りの機体ではないだろうか。異論は認める。
超絶劣悪最低塵芥と評判の操作才能だって自分の体のように扱える。実際あなたのアバター扱いなので。
ともあれ。野盗とPKは皆殺しだ。
クランバトルしようぜ、クランバトル!
あなたは調子に乗って戦車研を挑発した。
おいおい俺達に手を出していいのか? こっちにはマードック大佐がついているんだぞ?
あなたとマードックはツーカーの仲。
つまりマブよマブ、大佐のマブ。
<超級>は大概どこかイカれており、頭のおかしい連中だが、味方になればこれほど心強い戦力はない。
でもフレンドリーファイアだけは勘弁な!
「頭のおかしい無職……何を考えてやがる?」
嗚呼、何ということでしょう。
まるであなたの気遣いが伝わっていない。
空飛ぶ【竜王】だって舌先三寸で切り落とすと評判な、あなたのコミュニケーション能力の敗北である。
気にせず戦え。協力プレイだ。
簡潔に伝えるとそんな感じであった。
「……へっ。そいつぁ、悪くない提案ですな」
「俺達もいるよお!」
「これ操縦席に乗れる!? バイトさんすんげええ!」
「いっちょやろうぜ大佐! みんなで突撃するのがドライフ流*1だろ!」
士気は上々。あなたは物言わぬ戦車として、<叡智の三角>と共同戦線を構築する。
「いくで! とらさんチーム、ふぁいおー!」
「「「おー!」」」
・とらさんチーム
<叡智の三角>の中で過激な戦車好きが集まったグループ。
戦車のためならわりと何でもする。
テロリスト予備軍で、マッドエンジニア。
・マードック
心なしか普段より晴れやかな顔をしていた。
・ホールハイム
はい? クラン間の揉め事!?
報告を受けて眉間にシワが増えた。頑張って金で示談に持っていく。