真・恋姫†無双 革命 ~曹魏の暗殺者~   作:リュオネイル

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お久しぶりでーす! リュオネイルです!最近、ワンピースにハマり、いつかワンピースを交えた作品を書きたいなぁと思っていて、以前にワンピースと恋姫無双をクロスオーバーしている作品を発見し、全部読み終えて続きを楽しみにしているのですが、我慢できずに自分も手を出すことにしました!
……といっても、オリ主にワンピースの技を覚えさせて恋姫無双の世界で頑張るだけになりますので、原作キャラ同士の掛け合いとかにはなりそうにないので、楽しんでもらえるか分かりませんので、楽しんでいただけたら幸いです!
では、あまり前書きで長くなるのもあれなので、さっそく本編に行ってみましょう!
では、どうぞ!


第一章 天の暗殺者と地の覇王
第一話


 真昼の空に、一筋の光が流れた。

 

「……流れ星?」

「……様! 出立の準備が整いました!」

「……様? どうかなさいましたか?」

 

 全身黒毛の馬に騎乗している少女が、空を見上げ不思議そうにつぶやく。 その少女に女性二人が話しかける。

 

「えぇ。今、流れ星が見えたのよ」

「流れ星、ですか? こんな昼間に?」

 

 少女の言葉に女性の一人が不思議そうに空を見上げる。 女性の言う通り、彼女らの真上の空は星の見えないほどの明るさの昼であり、本来夜見えるはずの星など、見えるはずがないのだ。

 

「……あまり吉兆とは思えませんね。 ただでさえ怪しげな物を追っている最中だというのに……。 出立を延期いたしましょうか?」

 

 もう一人の女性も訝しげに空を見上げて少女に提案する。

 しかし、少女は首を振って言葉を返す。

 

「吉か凶かを取るのは己次第よ。 それに、こんな理由で滞在を延期しては、また栄華に小言を言われてしまうわ」

「はっ。 ならば予定通りに。 ……姉者」

「おう! 総員、騎乗! 騎乗!」

 

 女性の号令に三人の後ろに控えていた剣や槍を武装した者たちが一斉に馬に乗り始める。

 全員紀終えたことを確認した少女は女性二人の先頭に移動し、前方を見据える。

 

「無知な悪党どもに奪われた貴重な遺産、何としても取り戻すわよ! ……出撃!」

 

 少女が号令をかけ、その一団は馬を進め始めた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「…………いっ……っ()ぅ~……」

 

 闇の中。 俺は全身を包む痛みに思わず顔をしかめていた。 突然目の前が真っ暗になって、それから……。

 ……ん? ちょっと待て。 なんで俺、目の前が真っ暗になってたんだっけ? あれ? 俺、何してたんだっけ?

 え、なにこれ……これってあれか? 記憶喪失ってやつ? マジで? なんか頭もめっちゃ痛ぇし……。

 

「お、俺は……」

 

 お、かすれてはいるが声は出るぞ。 全身、特に頭が痛ぇが、感覚的に体のどっかが折れてる感じや、体から大量出血している感覚はない、か……。 ひとまずは安心だな。

 んで、体の方はこれでいいとして……次は俺の記憶の方だな。 こんな体が痛ぇんだ。 何かがあったに決まってらぁ……。

 

「……俺は……。 ……?」

 

 ……あれ? 思い出せない!? うっそだろおい?!! なんでこんなに体が痛ぇのか、それすらも思い出せねぇってのに、自分のことすら覚えてねぇって、救いようがねぇじゃねぇか!

 ……まぁ、しゃぁねぇよな。 なんせ思い出せねぇんだもんな。 いつまでも考え込んでもしょうがねぇ。

 さて、記憶の次は今いる場所だな。 考えてみれば記憶がないっていうのも一時的なものかもしれねぇ。 周囲の景色とか見ればポロっと記憶が呼び醒まされるかもしれないしな。

 そう考えた俺は、閉じていた目をゆっくりと開けて……。

 

 目の前には俺の近くで横たわっている少女の姿だった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!! し、死んでるぅぅぅ!!? お、おい! だ、大丈夫か君!? もしもし! 生きてる? 生きてたら返事を……!」

「…………んぅ」

 

 目を開けた先にあった予想外な出来事に俺は思わず叫び、倒れている少女に必死に声をかける。 すると少女は少し身じろぎをしてかさついた口元から漏れた呼気を聞いて、息はあると少し安堵する。

 

「ほっ……寝てるだけか。 いやぁ良かった良かった……。 ……にしても」

 

 ひとまず安心した俺は、改めて少女の様子を確かめる。視界の邪魔にならないようにだろうか、無造作にまとめたぼさぼさの髪の下にある寝顔は、整ってはいるが、美人というよりかどちらかというと可愛らしい少女だろう。 見た感じ歳は俺より下っぽいし。

 次に服装だ。 一般的なお洒落というにはざっくりとした……はっきり言ってだらしがないというか……そんな服装と、少女の傍に転がっている、少女の身の丈ほどの馬鹿デカい金属の塊。 ……形からしてこれは……斧、だろうか。 本物か? 本物だとしたらこれは俺のになるが……まぁ持っている記憶がないが。

 

「しっかし、風邪ひかないかこの格好? いや、ツッコむべきところはそこじゃないんだけどさ」

 

 しかし、死んでないと分かっていてもここで倒れているって話だよな。 はっ!? もしかして病気で倒れているのか!? それとも空腹で意識が!?」

 

 仮に病気だったとしたら応急処置とかしないといかんし、空腹とかだったら……うん、どうにかして食べモンとか用意しないといかんしな!

 

「大体、俺も俺でなんでこんなところで寝てたんだ? こんな土の上……ん?……土の上?」

 

 ……そういえば、今の今まで気づかなかったが……。

 

「…………ここ、どこや?」

 

 果てまで抜ける青い空。 浮かぶ雲はずっと閉じていた目には痛いほどの真っ白だった。視線を下ろせば、天を衝くようにそびえたつ無数の岩山がところどころにあり、地平の果てまで広がる赤茶けた荒野に繋がっている。

 地平線は黄色っぽいし、時々吹く風も妙に乾いてて、口の中がジャリジャリするほどだし。 いやマジでここどこだ……? 見渡しても近くに建物っぽいものは見えないし……。

 

「…………むにゃ」

 

 少女の様子を横目に見たが、少なくともすぐさま人に……ってわけでもなさそうだが。

 

「ひとまず、ここがどこか知らないとな」

 

 こんなところに少女が寝てるんだ。 多少待っていれば他の人がここら辺の近くを通るはず。 その時に聞いてみるとするか。 ……あんまり待っても人が来ないようならこの子背負って多少遠くまで歩いてみるか。

 

「……今は、大体昼あたり、かな」

 

 太陽は俺たちの真上に昇っているからでの推測だが、時だけでも分かれば上々だ。 あとはもう少し太陽が傾けば方角がわかる。 方角が分かれば、道を聞いたときに動きやすくはなるはずだ。

 

「…………むにゃ」

 

 まぁとにかく、今俺にできることといえば、この子の目覚めを待つことくらいだろう。 そう思った俺は少女の近くに腰を下ろそうとした時――――。

 

「おう、兄ちゃん。 珍しいモン着てんじゃねぇか」

 

 俺と少女以外の声が荒野にしたのは。

 

「アニキ! 女の子もいますぜ!」

 

 声をかけてきたのは三人組の男たちだった。 恰好は少女と同じで鎧、というかなんだろうか……少なくとも、あまり見たことがない格好だが。

 

「…………」

「ほぉ、こいつぁ中々……どうやら俺たち、中々ツイてるみてぇだな」

 

 三人組の一人、背丈が一番小さい男が寝ている女の子を指さし、中背くらいの男が少女を見ると顔をニヤつかせる。

 

「おい、兄ちゃん。 金と身ぐるみ、それとそこの女を置いて行ってもらおうか」

 

 アニキと呼ばれた男が俺の首筋近くに手に持っている物――――剣を近づけ厭らしい笑みを浮かべる。

 

「…………」

「ぁん? ……おい、テメェ! 聞こえてんのか!」

 

 剣を突き付けられたまま、黙っている俺にいら立ちを隠せない男。 うぅむ……このままだと怒りに任せて何をするか分かったものじゃないな、仕方ない。

 

「……あぁ、悪いな。 あまりに急な出来事が短時間に置き続けていて、ちょっと頭の中で整理しててな」

「……んで、ようやくテメェの今の立場ってぇのを理解したわけだな?」

「あぁ。 その上で聞きたいことがあるんだが……」

「ぁ? なんだってんだ?」

「ここはどこだ?」

 

 相手を刺激しないように言葉を慎重に選び、男に質問を投げかける。 質問された当の男は剣を突き付けながら口をポカンと開けたまま呆然としていた。

 

「……はぁ?」

「いや、起きたらこんな荒野にこの子と一緒に寝ていて、しかも俺は今記憶が無くてな……なんでこんなところで寝ていたのか、この子は誰なのか分からないからとりあえず人のいるところに行こうと思ってい――――」

 

 その時、俺の腹に付き揚げられた衝撃が襲い、中の空気が全部押し出された。 俺はその場を吹っ飛び、乾いた砂の上を二転、三転して止まった。

 

「おいおい、服を蹴るんじゃねぇよ、ばか野郎が。 やるんなら……顔にしときな」

「こりゃしまった。 すいやせん、アニキ。 あの野郎、ずいぶんと馴れなしかったもんでして……」

「ま、そこは俺も思ったがな。 ったく、せっかくデカい盗みが上手くいって、さらにチビとはいえ中々上玉な女が付いてきそうなんだ。 これ以上、余計な手間を掛けさせんなっての。 さっさとバラせ」

 

 男は三人組の中でもリーダー格なのか、男(以下アニキ)の言葉に他の2人も俺に近づいてくる。 きっと俺にとどめを刺しに来るのだろう。 ……しかし、なんでかな。

 

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 恐らく、俺と目の前の連中の実力は大したものじゃないのだろう。 なんとなくだが、そんな感じがするのだ。

 

(そういえば、あの子は……)

 

 二人が俺を殺そうとするなら残りの一人があの子に手を出すんじゃないのか。 そう考えた俺は少女の方を振り返ると……。

 

「…………」

「あ」

 

 その子と、目が合った。

 

「…………んー?」

「…………」

「おはよ?」

「おぅ、おはよう」

 

 少女は寝起きで、まだ周囲の状況に気付いていないのだろう。 どこかぼんやりとしたままの視線で、ぼうっと辺りを見回し……。

 

「あたまいたい……」

「この状況を見て第一声がそれか。 いや、大丈夫なのか?」

 

 どうやら頭の病気の方で倒れてたらしい。 まずいな。 腹が痛いとか腹が減ったとかならこの事態を収めてから対処できるが……時間を掛けられていられない以上、少女の容態を最優先に考えたいが……。

 

「あー。 落ちてきた人」

「……は? 落ちてきた? 俺が、か?」

「うん。 お空に流れ星が見えたから、見に行ったら……シャンの頭の上に、落ちてきたの。 おーって思ってたら、よけるの忘れちゃった」

「えまさかの頭痛の原因俺だった!? わ、悪ぃ……」

「…………っ!」

 

 シャンと名乗った少女は俺の言葉に小さく体を震わせて……何かを思いついたように、図分の全身をあちこちぺたぺたと触ってみせる。 自身の体が無事か、周囲の状況からようやく確かめているのだろうか。

 

「……ん? どうした?」

「ううん。 へーき。 ……うん。 だいじょーぶ。 まあ、そういうこともあるよね……」

「いやねーよ、人が空から落ちてくるとか。 人はいつから鳥になりかけてんだよ。 人類の進化にしても急すぎるだろうが」

 

 この子も外見通りのマイペースというか、よくわからんな。 よくわからんといえば、さっきの連中も…………あ。

 

「おう、忘れられたのかと思ったぜ」

「うん、ちょっと忘れかけてた」

「……ま、まあいい。 起きたんならちょうど良い。 抱えて連れていく手間が省けたぜ。 ……お前ら!」

 

 男の言葉に二人はさらに近づいてくる。 さて、起きたのならできれば遠くに行ってもらいたいが……そんなことを考えていると、少女が近づいてくるのを感じた。

 

「ねー、お兄ちゃん」

「あ……? お、お兄ちゃん?」

「ダメ?」

 

 いきなりのお兄ちゃん呼びに戸惑った俺の反応にシャンは不安そうに俺を見上げる。

 

「いやま、別に構わないがよ」

 

 というか、今明らかにそういうことを良いとか悪いとか言える状態じゃないよな。

 

「ならお兄ちゃんも、シャンでいい」

「ん? そうか? 分かった」

「それでお兄ちゃん。 こいつら、悪い奴?」

「ん? ……まあ、そうだろうな。 金やら俺の服だとか、シャンを置いてけとか言ってるから、そうだろうな」

「……それ、たぶんじゃなくて……確定」

「やっぱりか。 じゃあ、俺が何とかするから、シャンはちょっとどこかに……ってあれ?」

 

 俺はシャンにどこかへ逃がそうと言おうとしたが、いつの間にかシャンは俺の近くから消えていた。 もう逃げたのか、そう思っていた時だった。

 

「が……はっ!」

 

 荒れた大地を軽い足取りで踏み出したシャンが打ち込んだ肘打ちに、信じられない程鈍く重い音が響き、目の前の太った男が崩れ落ちたのは

 

「ひとりめ」

「~♪ 意外とやるなぁ」

 

 早い。 動きが全然見えなかったな。 シャンって、実はめちゃくちゃ強いんじゃ……。

 

「テメェ……ッ! 何しやがる!」

「それはこっちの台詞だが」

「なっ……て、テメェ!」

 

 仲間の一人がやられ、もう一人の男(以下チビ)がシャンに向かって吠え、俺はその男の後ろに移動する。 男は目を見開いて俺を見て驚くが、すぐさま拳を握って俺に殴りかかる。

 

「"鉄塊(てっかい)"」

 

 男の拳が間近に迫り、俺に直撃した時、ガツンっ!と鉄をぶつけたような音が響いた。

 

「……っ!! いっ…………てぇぇぇ!!?」

「お、おいどうした!? なんで殴ったお前の方が痛がるんだよ!?」

 

 殴った男が痛みにうずくまり、アニキが慌ててチビに駆け寄る。 見れば男の拳は内出血を起こして青黒い痣が出来ている。

 

「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたんだよ? デケェ奴は倍近くの小さい少女に伸されちまうし、ちょっとだらしがねぇんじゃねぇか?」

「んだとぉ……!?」

「……今のは、けーこく。 次は……」

 

 俺は男二人にポケットに手を突っ込んで挑発するとアニキは怒りに顔を真っ赤にして俺を睨みつける。 そしてその二人の後ろでシャンが小さく呟くと、足元に転がっていた斧を片手で無造作に拾い上げ……。

 

「本気」

 

 ……前言撤回。 この子は、強い。 武器を構えた瞬間、彼女の雰囲気が一変した。 いままでのほほんとした感じだったが、一瞬にして歴戦の戦士のような闘気が肌に感じた。

 

「う、うぅ……お、おいお前、生きてるか!?」

「だ、大丈夫……なんだな」

「しょ、所詮は女一人だろうが! 俺達三人で束になってかかりゃ……!」

「おいこら、なに小さい女の子相手に大の男が三人がかりで襲うとか、戦い以前に絵面がひどいぞお前ら。 傍から見るとすごく情けないからな?」

 

 チビが痛む拳を抑えながらシャンに倒された太った男(以下デブ)に声をかけ、デブはまだ快復しきっていないのか少しフラつきながらも立ち上がる。 そんな二人を見てアニキは劣勢を察して三人がかりでシャンに挑もうとしていた。

 

「うるせぇ! 大体、テメェこそ調子に乗ってんじゃねぇぞ! たかが拳一発平然と受けただけで、強気になってんじゃねぇ!」

「ほぅ? なら試してみるか? 今度は拳じゃなく、その手に持っているモノでよ」

 

 そんな男たちに俺は後ろから指摘すると、アニキが俺に怒鳴ってきた。 そんなアニキの態度に少し腹が立った俺はアニキが手にしている剣を顎で指しながら挑発する。

 

「あぁ!? 何言ってんだお前!」

「お前さんの言うように俺が調子に乗っているかどうか、その目ではっきりとした方が良いだろ? あえて言っておいてやるよ……。 『お前に、俺は、殺せない』とね」

「……上等じゃねぇか……! なら望み通り、(コイツ)でテメェを切り刻んでやるよぉぉ!」

「っ! お兄ちゃん!」

 

 俺の挑発の言葉についに堪忍袋の緒が切れたのか、アニキは剣を振りかざしながら俺に向かって突進してきた。 シャンも斧を担いで俺の方に向かって走ってくる。

 

「うぉぉおぉぉおぉおおお!!!」

「……馬鹿だなぁ。 何の策もなしで突っ込んでくるかね、普通……」

 

 怒りで真っ赤に染まった顔で突っ込んできてきたアニキに対し、呆れるように呟きながら半歩下がって右手の人差し指を立てる。

 

「死ねぇぇぇぇええ!!」

「……それはこっちの台詞だよ。 『指銃(シガン)』……」

 

 アニキが剣を振り下ろすのと俺が人差し指を突き出そうとしたその瞬間。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 突然、俺とアニキの間を割って入るように突き出されたナニかが、甲高い音をあげながらアニキを剣を弾いた。

 

「おっとと……!? だ、誰だ! 今度は一体何だってんだよ!」

「ほほぅ。女一人と丸腰の、しかも無抵抗の男をを倒すのに、数や武器を振るうとはな……見下げ果てた奴らだな!」

 

 突然の乱入者にアニキは驚きながら慌てて後退し、いら立ちをぶつけるように怒鳴る。 それに対して乱入者は凛とした声で返した。

 

「テメェ……なにモンだ!? 名ァ名乗れ!」

「フッ……外道の貴様らに名乗る名など、あるものか!」

 

 おぉ、なんかかっこいいな。 俺も一度は言ってみたいな。

 

「あー。 星ー」

「…………」

 

 ……台無しじゃんよ、シャン……折角カッコよかったのに、なんか一気にダサくなったやん……。

 星と呼ばれた女性は、水色の短髪に動きやすそうな白を基調とした格好をしており、手には穂先が二つに分かれている赤い槍を持っていて、これでアニキの斬撃を防いだと思われた。

 

「……香風(シャンフー)。 お前も少しは、名乗りの美学や段取りというものをだな……」

「あーあー。 きこえなーい」

 

 星はシャン……香風に呆れながら首を振り、苦言を呈するが、当の本人は耳を両手で塞ぎながらよそを見て聞こえないふりをしていた。 ……この感じからするに、二人は知り合いなのだろうか。

 

「さて。 女が二人に増えたわけだが、どうする? 女一人に手間取るのに二人になっては、お主らに勝ち目はないのではないかな?」

 

 段取りを崩された気まずさを誤魔化すようにゴホンと咳ばらいを一つして、手にした槍で男達をゆっくり指し示してみせる。

 

「あ、アニキ……こりゃもう無理ですぜ。 あの本だけで諦めましょうや」

「くぅ……っ。 仕方ねぇ、お前ら!ずらかるぞ!」

「へ、へぇっ!」

「だな……!」

 

 アニキの号令に残りの二人も賛同し、背中を向けて俺達とは反対方向に逃げて行った。

 

「おぬしら盗賊を警備に突き出せば報奨の金がもらえるのだ。 逃がすか、貴重な路銀!」

「おい、動機が不純すぎないかそれ」

 

 理由はともかく、賊を逃がさまいと槍を両手に星は賊達の後を追うように走っていった。 その速さは風と見間違うほどで、一瞬にして見えなくなっていった。

 

「……行っちゃった」

「あぁ、あっという間だったな……って、おいおい、いいのかシャン? 追いかけなくてよ。 あの星って奴、シャンを探しに来たみたいだったが……?」

「…………あー」

「リアクションうっす……」

 

 もしあの星っていうやつがホントにシャンを捜しに来ていたら……不憫だな、こりゃ。

 

「えーっとね、お兄ちゃん」

「大丈夫ですかー?」

「ん?」

 

 俺が賊を追いかけていった星に同情していると、シャンが俺に何か言おうとしていたが、少し遠くの方からまた別の女性の声が聞こえてきた。声の掛けられた方を見ると、そこから二人の少女が歩いてきた。

 二人の内一人はウェーブのかかった金色の長髪に人形(?)を乗せた、おっとりとした様子の少女。もう一人は茶髪に日の光できらりと光る眼鏡が知的な感じを醸し出している落ち着いた女性だ。

 

「探しましたよ、香風。 ……そちらの方も、大した怪我ではないようで何よりです」

「あぁ……そりゃ、どうも」

 

 眼鏡の女性にぎこちなく礼を言う。 大した怪我って……まぁ、あのまま続けてたらどうなってたか、分からなかったが。

 

「とはいえ、手当てはしておいた方が良いでしょうね。 風、包帯は?」

「もうないですよー。 こないだ、稟ちゃんが全部使っちゃったじゃないですかー」

「……おや、そうでしたか?」

「いやいや、そんな包帯で手当てするほどの傷じゃねぇんだが……」

「お兄ちゃん、頭。 頭」

「え? ……あっ、血がでてらぁ」

 

 シャンに指摘され、自身の頭から血が流れている事に気づいた。 どうやら転がったときに、頭を少し切っていたらしい。 気づかなかったな……。

 

「そうですか? ならいいですけどー」

「にしても、シャン達もあの男たちもそうだが、ずいぶんと個性的な格好しているんだな……」

「「っ!!?」」

「あー……」

 

 俺が二人の格好を見て、思ったことを口にした。 すると二人は急に表情が変わり、シャンは「やってしまった」というような顔をしていた。 ……ん? なんだ、急に?どうしたんだ?

 

「やれやれ。すまん、貴重な懸賞金に逃げられ……む? どうしたのだ?」

 

 と、そこに賊を追いかけていた星が申し訳なさと残念そうにしながら戻ってきた。

 

「お、ちょうど良かった。 なぁアンタ、ちょっと聞きたいことが—―――」

「星! ちょうどいい所に! この男、いきなり香風の真名を!」

「なにっ!? 貴様ぁ!」

 

 俺が三人の様子がおかしくなった理由を聞こうとした時、眼鏡の女性がいきなり叫んだかと思ったら今度は星までも眼を鋭くし、手にした槍を今度は俺に向けてきた。

 

「うぉお!? な、なんだよいきなり!?」

「黙れっ! 貴様、どこの世間知らずの貴族かは知らんが……いきなり人の真名を呼ぶなど、どういう了見だ!」

「りょ、了見って……なんだよ、たかが名前を呼んだだけだろう? 名前呼んだだけでちょっと大袈裟じゃ……」

「大袈裟、だと……!? 貴様……ッ! 先の啖呵や度胸は評価に値していたが、どうやら死にたがりのただの大馬鹿者らしいな!」

 

 あぁ……!? たかだか名前を呼んだだけで喚き散らすわ、槍突き付けられて命の危機に陥るわ……一体全体……!

 

「何だってんだ、テメェらよ……!」

 

 状況についていけず、さらには訳の分からない理由で責め立てられているようで徐々に苛立ちが募っていき、俺は槍の穂先をむんずと掴む。

 

「っ! 貴様……っ!? う、動かない……!?」

「はぁ~……大体よ、こちとらただここがどこなのか聞きたかっただけなのに……やれ変なカッコのおっさん達に喧嘩売られるわ、名前呼んだだけで殺されかけるわ……なんでこんな目に遭ってんだよ俺はよぉ!」

「っ!? ぬぅぅ!!?」

 

 俺は怒りに任せて掴んだ槍を星ごと持ち上げ、無造作にぶん投げた。 投げられた星は持ち上げられたことに驚いていたが、投げられても空中でくるりと一回転し、器用に着地する。

 

「フッ、どうやらただの馬鹿ではないようだ。 力の方は馬鹿力のようだな!」

「馬鹿馬鹿言い過ぎだろうが! そっちこそ、たかが名前呼んだだけで勝手に熱くなりやがって! テメェらの方がよっぽど馬鹿だろうが!」

「っ!! き、貴様…………っ!!」

「んだよ、なんか文句あんのかよ! 文句あんのならかかってこいやコラァ!」

「……ならば、望み通り殺してやる!!」

 

 そう言うと星は槍を構え、身をかがめると体がブレたかと思った瞬間、姿が消えた。

 

「っ!?」

「はぁぁぁぁぁああ!!」

 

 俺が驚いていると、星は瞬時に俺との距離を詰め、気合の掛け声と共に槍を突き付けた。

 

(仕留めたっ!)

 

 星の繰り出した槍はまるで吸い込まれるように俺の頭を的確に狙い、そして―――――。

 

「ぐぁぁ!!?」

 

 槍の穂先は、俺の脳天を確実に捉え、頭を突かれた俺は後ろに大きく吹っ飛んだ。 そしてチビに蹴られたと同様、乾いた地面を二転、三転、四転としてそこで止まった。

 

「フンッ……人の真名を勝手に呼んだのだ。 当然の報いだ」

「…………」

 

 星は動かなくなった俺を確認し、鼻を鳴らして侮蔑の目を向ける。 呼ばれた香風はというと、何か言いたげにしていた。

 

「……殺した、のですか?」

「仕方あるまい。 なにせこやつは他人の真名を勝手に呼んだのだ。 殺されても、文句は言えまい」

「まあ、それはそうですねー。 それで……香風ちゃん、大丈夫ですかー?」

 

 眼鏡の女性は俺の方を見ながら星に尋ね、それに対し星は毅然とした態度で答え、おっとり少女ものんびりとしながらも肯定し、隣のシャンに声をかける。

 

「…………」

「……香風ちゃん?」

「ん? 香風、どうかしたのですか?」

「どうした香風。 あぁ、お主の真名を呼んだ下郎はもう死んだ。 安心するといい」

 

 黙りこくっているシャンに不思議そうに見るおっとり少女も眼鏡の女性。 星も不思議に思っていたが、真名を勝手に呼ばれたことに対してまだ恐怖していたと思ったのか、安心させるように語りかける。

 

「…………」

 

 しかし、シャン本人は俺の方をただじっと見ていた。

 

「おい、どうしたんだ香風? 死んだ男をいつまで見ているんd」

「あぁ~…………(いて)ぇなぁ……おい……」

「「「っ!?」」」

 

 痛む頭を擦りながら上半身だけ起き上がる俺。 死んだと思っていた三人は驚きに目を見開いていた。

 

「おー、やっぱり生きてた」

 

 シャンだけは俺が生きていたと思っていたらしく、リアクションは三人に比べて薄かった。

 

「あぁ、クッソ……頭が割れるように痛ぇ……。 ……だが」

 

 俺は立ち上がりながら体に付いた砂埃を叩いて落とす。 ある程度落とし、前を見据える。

 

「やっと思い出せたわ……これまでのことが」

 

 ――――自身の目に闘志の炎を滾らせて。




……長いっ! いや長すぎるわ俺! 区切りが悪くなりそうだからって気がついたら一万字近くも行くか普通!?

こほんっ……さて、いかがでしたでしょうか? いきなり話が長くなってしまいましたが、次回からはなるべく短くなるように努力してみようと思います!

それと、主人公の容姿についてはいいアイデアが思いつき次第、紹介していきたいと思います!

では、短いですが次回もお楽しみください!
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