No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~ 作:Easatoshi
……ネタ、拾うか。
これはオルガ達が初めての星系間ワープを実行する、その為の準備段階における話。
スペシャルウィークは普段プロミス/48の地上において、食料や基地設営の資材などを集める役割を負っているのだが、地上では調達困難な物品が欲しいと言う事で気分転換も兼ね、今回オルガの駆るラディアントピラーに同乗する形で、宇宙ステーションを訪れていた。
オルガと二人して買い込んだ多くの資材を縦に何十も重ねて両腕に抱えながら、人の行き来も盛んで聞き慣れない言語に満ちあふれた活気あるステーションの商業エリアを練り歩く。 特に彼女はウマ娘という珍しい地球人種も合わさり幾ばくかの視線を集める中、流石に息切れを起こした二人は近くのロビーに訪れ、ソファーの側に大量の荷物を置いてやっと腰掛ける。
「フー……ったく、買い過ぎだぞスペ。 そんなに一気に買い込まなくても良いじゃねぇか……第一スーツにはアイテムケースあるんだから、わざわざ重たいのに両手で持つ必要ねぇだろ?」
「はぁ、はぁ……それならオルガさんも律儀に付き合わなくても……。 いんですよ、最近運動不足気味な気がしますし、ペコリーヌさんのご飯もその……美味しくてつい」
気恥ずかしそうに言う自身に対し、オルガは座りながらこちらの全身を一瞥する。
「……ぱっと見筋肉量は減ってねぇし、心配しなくても無駄な脂肪だってついてねぇよ。 生活基盤整えるストレスでむしろ痩せすぎを気にしろよ」
「! あんまりじろじろ見ないでくださいよ……恥ずかしいです」
「おっと悪い。 サブトレーナー時代の癖で、な」
顔を赤らめて身を抱えるスペシャルウィークに対し、オルガは天井を仰ぎ見る。
トレセン学園に三日月と共にスペシャルウィークと訪れた際、オルガは沖野トレーナー率いるチーム『スピカ』において、スペシャルウィークの保護者でもあるという位置づけから選手兼サブトレーナーとしても働いていた。
彼の言う幾度となく重ねてきた異世界の旅々の経験から身につけたフィジカルによる、実際にウマ娘と併走出来る強みを生かしてきたオルガ。 それは沖野トレーナーのトレーニングプランの組み立てにも大いなる貢献をもたらしたことを彼女は記憶している。
「スペ、俺がいなくなった後もあいつら元気にしてたか?」
オルガが尋ねるとスペシャルウィークは少しだけ寂しさを込めたような笑顔を浮かべる。
「元気は元気でしたよ。 でも、やっぱり三日月さんやマッキーさんも一緒に居なくなって、私だけじゃなく皆もどこか寂しそうにしてました」
「そっか……」
スペシャルウィークは輝かしい記憶に思いを馳せながら言葉を紡ぐ。
「スズカさんとトレーナーさん。 ウォッカちゃんにスカーレットちゃん。 ゴールドシップさん。 マックイーンさんとテイオーさん。 そしてオルガさんと三日月さん……私は皆がいるスピカが恋しくて仕方が無いです」
「――――ああ」
皆がいるスピカ……その言葉と共に一瞬身を震わせるオルガの仕草をスペシャルウィークは見逃さなかった。 少しの間を開けて相づちを打つ彼の口ぶりはどこかぎこちない。 本意では無いとは言え、彼らの元を去ってしまった後ろめたさがあるのだろう。
「オルガさん。 三日月さんやマッキーさんも見つけて、絶対に元の世界に帰りましょう!」
「……そうだな」
「あ、いたいた! オルガー!」
オルガとスペシャルウィークの会話を遮るように、商業エリアのブースの向こう側から声がかかる。
視線をやるととそこには、レオタードとも水着にも見える露出度の高い格好の女性二人。 凜々しそうな銀髪の少女と手を振る快活そうな金髪の少女がこちらに駆け寄ってきていた。 ラウラとシャルロットだ
「遅れてゴメンね! 随分と貴金属の収集に手間取っちゃって」
「かなりの数が集まったからな。 売却にも少々時間がかかった……それにしてもスペシャルウィーク、随分と買い込んだな?」
二人は歩み寄るなり、オルガとスペシャルウィークの側にある大量の資材の山に目を見張る。
「スーツのアイテムケースには入れないの? いくらウマ娘だからってこの量は重たいでしょ?」
「いいんですシャルロットさん。 身体がなまっちゃわないようにしないと、いざ現役復帰って事になったときに困りますから」
「相変わらず真面目なヤツだよなぁお前。 さてと、そんじゃあ皆でステーションを見てまわろうぜ」
そう言ってオルガは先陣を切って歩き出すと、当然のようにシャルロットはオルガの隣に並んで足を進める。
二人の背中を追うようにして興味津々に周囲を見渡して歩くラウラに対し、スペシャルウィークは担いだ荷物を物陰代わりに談笑するオルガ達を覗き見ていた。
(そう言えば、シャルロットさんと恋人同士なんだっけ)
朗らかに笑みを浮かべ他愛のない話題を繰り広げる微笑ましいその姿は、恋人同士としても違和感の無い距離感であった。
幾多の世界を渡り歩いているというオルガ達。 つまり順番こそ後か先かは分からないが、物心ついた時には一緒に居たオルガと三日月には文字通り別の人生があった。 そう、今彼の隣に居るシャルロットと交際していた、スペシャルウィークの知らない彼の人生が。
(……本当に、本当に私やテイオーさんと一緒に元の世界に帰ってくれるのかな。 オルガちゃん)
自然とオルガを呼ぶ口調が昔のものになるスペシャルウィーク。 幼少の頃は母親に対してのものと同様、彼を義理の兄として『オルガちゃん』と親しみを込めてそう呼んでいた。
育ての母親曰く突如として敷地内に現れ行く所がないと三日月共々引き取り、むしろ働き過ぎなぐらいよく動いて怒られていた事。 こちらの感情の変化に機敏で辛い時はよく励ましてくれたりしてくれたこと。
何より、自分と同じ目線で接してくれていたことが嬉しかった。 彼自身も本当の親の顔をよく覚えておらず孤児だったことも手伝って、まるで本当の兄妹のような関係だった。 そんな彼と共に成長するにつれ彼女の胸中は言いようのない複雑な感情が込められ、いつの間にか呼び方が『オルガさん』に置き換わっていった。
今でも偶にちゃん呼びをする事があるが、無垢な子供の頃とはまた違う感覚だ。
「どうしたスペシャルウィーク?」
考え込んでいると、思考を遮るように声をかけてきたのはラウラだった。
「ひゃ! ら、ラウラさん!」
「……荷物を担いだまま考え事をするな、怪我をするぞ」
「い、いえ何でもありません! ちょっとボーっとしちゃっただけです!」
「気をつけろ。 もう荷物はしまい込んだ方が良いんじゃないか、手が震えているぞ?」
ふと言われてみてスペシャルウィークは、自身の両の手が荷物の重さに悲鳴を上げている事に今更ながら気付いたようで、有無を言わさず荷物をスーツのインベントリにしまい込む。 間髪入れず両手を振り、腕や肩に溜まった乳酸の痺れを散らす。
「あ、ありがとうございます。 もうちょっとで落っことしちゃう所でした」
「……」
知らずの内に負荷をかけ過ぎていたのか、スペシャルウィークはしばし自身の腕の疲れにしかめっ面を浮かべていた。
「二人が気になるか?」
「ふえ?」
思いがけないラウラからの問い掛けに目が丸くなるスペシャルウィーク。 その視線の先には、こちらを気にも留めず談笑するオルガとシャルロットの姿からは、完全に二人だけの世界に入っているようにも見受けられる。 そんな彼らに思う所があるのはラウラも同じらしく、表情からして苦笑いに近い。
「まあ、お前からしてみれば居て当たり前の関係だった所に、突如としてシャルロットが現れたように見えなくもないだろうからな」
「え!? あ、いや! そんな、シャルロットさんを泥棒猫みたいだなんて、私!」
不意打ちに動揺を隠せないこちらの姿を見て、何かしら察するところがあったのかラウラは失笑する。
「私は
「!!」
「ふむふむ、テイオーが言っていたのもあながち的外れではないと言う事か」
「ラ、ラウラさん!! 私そんなんじゃ!」
慌てるスペシャルウィークを見て、ラウラは悪戯っぽい笑顔を向ける。
「からかいすぎたか、すまないな。 だがいずれにせよ、親しい身内の知らない顔に複雑な気分になるのは当たり前だ」
ラウラの言葉に、スペシャルウィークは押し黙る。 確かに彼女にとってオルガは兄のような存在だ、そう自身は思っている。 だが今は、自分よりも年上な少女が恋人として彼の隣にいる。 あの頃の自分達とは違う、今の彼と自分の間には大きな隔たりが生まれたような気がしてならないのだ。
「……私も正直複雑だ」
ラウラもまた、オルガ達に目線を向けながら語る。
「ミカがここにいたのなら、私もシャルロットと同じように振る舞えていただろうと思うとな。 何せあいつは私の嫁だからな」
「!」
オルガと同じように共に過ごしてきた少年、三日月・オーガス。 そう言えば彼もシャルロット達と同じ世界に居た時に、ここに居るラウラと男女の仲にあったのだと思い出す。(婿と嫁を逆に覚えているのが妙ではあるが)
「……ミカは、元の世界へ帰る事になっても共に居てくれるのか?」
考え込むようなラウラの口調に、スペシャルウィークには何も答えられない。 彼らにとっては数ある異世界で知り合った仲間だが、自身にとってはオルガ・イツカや三日月・オーガスはたった一人なのだから。
「おーい、お前等どうした?」
「二人して難しい顔しちゃって……ああごめん! 僕達二人で舞い上がっちゃってたかも!」
すると自身とラウラがいつの間にか立ち止まっていた事に遅れて気付いたオルガ達が、踵を返してこちらへと駆け寄ってくる。
慌てて謝罪するシャルロットに対して、ラウラはいつものように軽く呆れたような態度を取る。
そしてその横では、オルガが心配そうな面持ちを浮かべてこちらを見つめてくる。
「何でも無いんですオルガさん。 ただまあ、お二人の空間をジャマしちゃいけないというか」
「悪い、気を遣わせちまったか」
「気にするなオルガ団長。 さあ、残りの買い物も済ませてしまおう。 ステーションでないと入手出来ない資材はいっぱいあるんだ」
「そうだね! じゃあ行こう! みんな!」
4人は改めて気を取り直し、宇宙ステーションの散策に繰り出した。
オルガとシャルロットが道の先を向いたタイミングでラウラが耳打ちする。
「いずれにせよ、ミカが戻ってきて帰還の目処が立ってからの話だな」
「……そうですね」
それは自分にも言い聞かせるような、スペシャルウィークの呟きだった。
話は無事に帰れるアテがついてから――――今はただ、それでいいと。
ステーションでの用事を終え帰路につき、今正にパルスドライブを起動しようとしたラディアントピラーの船内に、それを遮るように響き渡ったのは小気味良いスペシャルウィークの腹の音。
<……そろそろ昼時だったかな?>
気恥ずかしそうに顔を赤らめるスペシャルウィークに対し、無線越しに問い掛けるシャルロットの声色には明らかに堪え笑いがにじみ出ていた。 折り悪く無線が繋がったままであったようで、思春期の女の子として恥ずかしい瞬間を共有されてしまったようだ。
「ううっ、笑わないでくださいよー!」
「ククッ、安心しろよ。 基地に帰れば今頃はペコリーヌが昼飯を用意しててくれてるだろうな」
<うむ、何よりペコリーヌの作る食事はIS学園の食堂と比べても遜色ない! 今日も楽しみだ!>
照れ隠しに頬を膨らませるスペシャルウィークを、笑い声をあげながらもオルガは優しく宥めてくれる。
ラウラの方は相変わらず、自身と同じで食べる事が娯楽の彼女らしい感想を述べる。 言うまでもなくスペシャルウィークの腹の音を本気で揶揄する者など一人も居ないのだが、それはそれとしてやはり音を聞かれるのは気恥ずかしい物があった。
(……こうなったら)
スペシャルウィークはスーツのインベントリの片隅にこっそり保管していた、あるものをおもむろに取り出すとスーツの栄養補給口に放り込む。
(う"っ……やっぱり美味しくない)
素朴と言えば聞こえはいいが、大してまともな味付けもされてない読んで字のごとく味気ない代物。 食感もモソモソとして口に残り水分を奪われるようで、やっとこさ飲み込んだ喉越しは悪い。
お世辞にも美味しいと言えないそれは、テイオーと共にこの世界に迷い込んだその時から、彼女達の命脈を繋いできたライトブラウンのペレット状の固形物。 彼女が非常用の携帯食料と記憶する物体だった。
「おま……基地に戻りゃ飯だって言ったろ」
呆れたように振り返るオルガの呼びかけに、ふと我に返るスペシャルウィーク。 しかし彼女は頬を膨らせて抗議した。
「オルガさんにはあげません!」
「そうじゃなくって、なあ」
<なんだかごめんねスペ>
<しかしそんなに気にすることではないぞ。 腹が減るのは当たり前なのだから>
いつの間にか、シャルロットやラウラも外からコクピットをのぞき込んでいた。 3人から間食を見とがめられるようで流石にばつが悪い気分になってくる。
「……恥ずかしいものは恥ずかしいんですよぅ。 それに私達ウマ娘は、常に何かを胃に入れておかないと調子が悪くなるんです」
<本当に馬みたいなこと言うんだね……>
シャルロットはよく分からないことを言うと言わんばかりに、スペシャルウィークは疑問符を浮かべるが、しかしそれはそれとして全員から食べている所を見られると、自身の大人げのなさや気恥ずかしさが先立ってくる。 これでは半分すねている自身の内心を見透かされた気分だが、事実その通りなのか考えを察したであろうオルガがペレットの一つをすかさず拝借し、有無を言わさずに自身の口に放り込んだ。
「あ! あげませんって言ったのに「うげっ! 何だこりゃぁ……」
自身も美味しくないと我慢していた携帯食料だが、粗食に耐えると自負していたオルガでさえもたまらずにむせかえったようだ。
<だ、大丈夫オルガ?>
たまらずに心配するシャルロット達に、オルガは手で制すると無理矢理にでも飲み下すと口元を押さえて顔をしかめた。
「前に言ってた味気ない非常食か? 良くこれを我慢して食えてたな……」
<そんなに不味いのか?>
「……食うに困って野良犬と奪い合った残飯の味がしやがる<ちょ、ちょっとオルガ!>あっ……」
今の一言はスペシャルウィークにとって聞き捨てならない台詞だった。
「悪かった。 機嫌を直してくれスペ」
プロミス/48に到着し基地の前に着陸して宇宙船から降り立つ今に至るまで、スペシャルウィークは終始不機嫌だった。
「確かに、お世辞にも美味しくない食料でしたけど! 犬の餌呼ばわりはあんまりじゃないですか!!」
オルガの言い方だと、我慢して粗末な食事を受け入れた自分が残飯を漁ってるような言い方に聞こえてしまう。
頬を膨らまし怒りを隠さない自身に対し、シャルロットやラウラの冷めた視線にせき立てられるように、オルガは終始謝りっぱなしだった。
「すまねえ。本当に悪かったよ。 いくら不味いからって俺が言い過ぎた」
そう言うとオルガは誠心誠意、強く頭を下げて謝罪の言葉を口にした。 その姿を見てようやくスペシャルウィークも落ち着きを取り戻してきた。
そんな2人のやり取りを見てシャルロットとラウラは目配せをして小さく笑みを浮かべると、スペシャルウィークに声を掛ける。
「ごめんね。 ボク達もデリカシーがなかったね。 オルガと同罪だよ」
「どうか団長を許してやって欲しい」
シャルロットとラウラも頭を下げてわびを入れる。
3人揃って同じような仕草をするスペシャルウィークは、流石に少しだけ気まずそうな表情をした。
わざとでないことは無論理解しているし、別に皆に頭を下げさせたかったのでは決して無いのだが、こうなってしまうと相手を責める気持ちなど沸いてこない。
「もういいですよ。 私だってちょっと大人気なかったですし……」
スペシャルウィークは顔を赤らめつつ苦笑いを浮かべて、これ以上の追及はしないことにした。
しかし、同時に疑問符を浮かべる。 あの味気ないペレットの非常食を食べて、犬の餌だとのたまうオルガのみそっかすに等しい酷評。
スペシャルウィークはペレットを取り出し、手の中で踊らせながらその不味い味わいに思考を巡らせる。
「……考えてみれば妙じゃないか?」
ふと、そんなペレットを見てラウラは疑問を呈する。
「大きな荷物を量子化によってある程度持ち運べる輸送技術が確立されていて、しかも『栄養プロセッサ』という
主に
「皆が皆、食事が美味しすぎるとおやつ感覚でも食べられちゃうから? 昔軍隊の携帯糧食だってつまみ食いを防ぐ為に、茹でただけのジャガイモよりマシな程度のチョコレートとかあったよね?」
「WWⅡの米軍だな? それは不評過ぎて結局殆ど食べられずに処分された。 土壇場で不味い食事を出される負担が大きいのは身をもって知っているだろう? 本末転倒というものだ」
確かに粗食に耐えるオルガをしても、民兵ではあるが正規の訓練を受けた者としてラウラの意見はしごく真っ当なものだ。 実際に平和な世界で生きてきた文明人であるスペシャルウィークも、テイオー共々ペコリーヌのできたてのご飯によって、不味いこのペレットから解放された際には涙を流して喜んでいたほどだ。
「……じゃあ、これの存在意義って一体何なんでしょうね?「あ! おいっすみなさーん! おかえりなさーい!☆」「おかえりスペちゃん! ダンチョー!」
話し合っていると、基地に残っていたペコリーヌ、トウカイテイオー、それとキャルの3人が基地から出迎えてくれた。
「あ、皆さんただいま! いっぱい資材買ってきましたよ!」
スペシャルウィークもペレットを持った手を大きく振ってそれに答える。
「スペちゃんそれ、美味しくない非常食じゃない! まさかそれ囓ってたの?」
「! う、うん。 どうしてもお腹が空くのが我慢出来なくて……」
「うー……本当に美味しくないって言うか、味気ないんだよね……ペコリーヌのご飯食べた後だと、尚更口にしたくないって言うか」
苦虫を噛みつぶすようなテイオーの酷評を遮るように、オルガは3人に問い掛けた。
「そ、それよりもだ、飯の準備って出来てるか? もうスペの胃が限界なんだよ」
「あー……それなんだけど、ペコリーヌったら「作りたいと思ってた料理の材料がなくってやばいですね☆」とかぬかすもんだから、ちょっとだけ遅れてるって言うか「あーーーーーーーーーー!!!!!!」
申し訳なさそうに質問に答えるキャルの間を割り、突如として大声でスペシャルウィークを指差すペコリーヌ。 その耳をつんざくような声に皆が強く耳を塞いだ。
「い、いきなり大声出すんじゃないわよアホリーヌ!「それですよ! その『クリーチャーペレット』! ちょっとお借りしますね!!」
ペコリーヌは有無を言わさず、スペシャルウィークの手の中にあったペレットを引ったくると、踵を返して森の入り口の方へと駆け込んでいく。
「お、おいペコリーヌ! 一体何だって「はいみなさーん! 美味しいご飯ですよ!☆」
こちらの制止にも耳を貸さず、ペコリーヌが森の中に大声で呼びかけると、引ったくったペレットを地面にまいた。 すると6本足の奇妙な親子連れと思わしき獣や、尻尾の枝分かれした二足歩行の小さなモンスターが喜んだ様子でこちらに駆け寄ってきた。 この星にすむ特有の生き物だが、形容致しかねる代物を引っかけられた思い出のあるオルガは特に後者の生物を見てあからさまに眉をひそめていた。
それにしても一体彼女は何をしようとしているのか、動向を見ていると生物達は地面に散らばるペレットを美味しそうに頬張り咀嚼していく。 すると――――
「そろそろですね、ちょっと失礼しますよ」
ペコリーヌは身を屈め、食事に夢中な6本足の生物の腹部へ手を伸ばす。 長細い管のような物が複数本ぶら下がるそこを優しく握ると、先端から乳白色の液体がしみ出し、勢いよく噴き出した!
「やばいぐらい出てきましたね☆ 頂きます!」
インベントリから透明なケースを取り出し、液体を絞ってはそのケースの中に納めていく。 すると子供と思わしき小さな六本足の生物がその管に吸い付き、液体を飲んでいく。 どうやらこの生物の母乳のようだ。 ペコリーヌは同じように食事に夢中になる二本足の生物からも、同様の手段でミルクを搾っていく。
ひとしきりペレットを食べ終わると、生き物たちはペコリーヌにお辞儀をして森の奥へ去って行った。 それを笑顔で手を振り見送ったペコリーヌは、ミルクを詰めたケースを持ってこちらへ駆け戻ってきた。
「ありがとうスペちゃん!
搾ったミルクを無邪気に見せるペコリーヌ。 一方でオルガ達は開いた口が塞がらず、テイオーは、
「うえぇ!! あれって動物の餌だったの!? ……知ってたらボク絶対食べなかった「テイオー!」
気持ちが悪そうに舌を出すその表情を、何かを察したキャルが慌てて羽交い締めにして制止する。
「ちょっとキャル! 一体何するのさ「スペ……あんた……なんて顔、してるのよ」
歯切れの悪いキャルの言葉で、テイオーも意図を察し言葉を止める。 ペコリーヌを除く皆が真顔になってこちらを見た瞬間、
彼らのバイザーにおぼろげに映り込む自身の顔が、今になって虚無に染まっていたことに気付かされた。
ペコリーヌ以上の大声で上げた金切り声により、彼女は人生で初めてオルガの鼓膜と心の臓を破る快挙(?)を成し遂げたのであった。
ちなみに、その日の昼と夜に振る舞われるミルクを使ったペコリーヌの手料理は、追憶の中で幾度となく鼻腔をくすぐった牧場の香りを思い起こすものであり、スペシャルウィークに元の世界への帰還を強く決心させたそうな。
とか言いつつ、一番書きたかったのは後半部の『クリーチャーペレット』のくだりだったり(白目)