No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~   作:Easatoshi

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第13話

「これだけ集めれば大丈夫かな?」

 青々とした空の下、シャルロットは額の汗を拭いながら、ストレージ内に集まった鉱物を誇らしげに眺めていた。

 つい先程まではむき出しの鉄鉱石が、地面を埋め尽くすほどに転がっていたここら一帯が、今や土が一面に広がる丸裸の地面と化していた。

「ああ、しばらくは建設にも難儀しないだろう……それにしても腹が減った。 早くぺコリーヌの元へ戻ろうか」

「そうだね。 これで彼女の為にキッチンを作ってあげられる。 僕達としてもちゃんとした手料理食べたいしね!」

「うむ、スペシャルウィークとならさぞかし食材集めも捗っているだろうしな。 帰ってからが楽しみだ」

 ラウラの言葉に同意すると、シャルロットは彼女と共にISを展開し、我らが鉄華団の基地への帰路についた。

 空を飛びながら二人は考える。 オルガ達の乗った宇宙船のワープアウトを、施設内に新造したモニター越しに見送ったのがつい二時間前。 光を超える速さで300光年先に消え去った恋人を心配しつつも、帰ってくると信じるからにはと変わらず基地の運営に取り組もうと、そう段取りを組んだのはシャルロットだった。

 近場は動植物が豊富ということでスペシャルウィークとペコリーヌが、特に前者のフットワークを生かして食料集めに邁進し、ISを使える自分達が離れた所で鉱物資源を収集する役割を担っていたのだ。

 飛行中、基地側から二人の無線機に通信が飛んでくる。

<こちらスペシャルウィークです! シャルロットさん、守備はどうですか?>

<こっちはスペちゃんが手伝ってくれたおかげで、沢山の食料が集まりました!>

 スペシャルウィークとペコリーヌは互いに笑顔を見合わせると、退いて背後に山盛りになったそれを見せつける。 豊富な肉や野菜といった食料の山だ。 その圧巻の光景に、特にラウラが目を輝かせた。

「ほう! 壮観だな、さぞかし食い応えがありそうだ!」

 軍人上がりというお堅い身の上にありながら、一方で彼女は実年齢よりも内面が純粋なところがある。

 期待を隠しきれない今のラウラのそれはまるで、自分の好きな物を目の前にした子供のようであった。

 シャルロットは苦笑してそんな彼女を嗜める。

「全部食べちゃダメだよ? ただでさえ僕達食料の消費が凄いんだから……でも、こんなに沢山集めて食料枯渇しちゃわない?」

<大丈夫です! 取り尽くさないようにある程度には残してありますよ! 食べ物は大事な自然の恵みですからね!☆ ……ただ>

 胸を張って答えるペコリーヌだったが、ふと考え込むような仕草にシャルロット達は次の言葉を待つ。

<私達沢山食べる方ですから、都度採取できなくなって他の所に取りに行くことをしていれば――――>

「段々と遠征の距離が伸びてコストがかかってしまうな」

<そうなると私の足でも対応できなくなってしまいますね……>

 ラウラは腕組みをして首を傾げる。

 ペコリーヌの言う通り、食糧調達のために遠くまで出かければそれだけ移動距離も伸びるわけで、つまりスペシャルウィークがいくら脚力に優れ長距離を移動できるといっても、いずれは対応できなくなってしまう。

 そうなるとそれらもいずれは彼女達も宇宙船に乗って都度惑星内を駆け巡るか、シャルロット達のISを使わねばならなくなるだろう。

「手間が増えすぎて他の事出来なくなっちゃうね」

「うむ、いっその事農業でも出来れば良いのだが……いざ自分で育てるとなると勝手が分からないな」

 ラウラの言葉を皮切りに、皆が今後の方針に頭を悩ませていた。

<農業ですか……当たって砕けろの精神で私は賛成ですね☆ それに……>

 ペコリーヌはしばしの間を置いて、屈託のない笑顔を見せながら答えた。

<三日月君もきっと、手探りでも喜んで取り組んだかもしれませんからね>

「!」

 その言葉にラウラはハッとした様子で顔を上げる。 そして、彼女は懐かしさを噛み締めるように顔をほころばせるのだった。

 戦うことしか知らずに育ったあまりに哀しい人生を送りつつも、一方で腐らずに懸命に生きてきた彼の姿。 そんな三日月は血生臭い生き様の一方で、のんびりと農業をやりたいという純朴な夢を度々語っていたことを、シャルロットとラウラはこの時思い出していた。

「……そうだな。 そうかもしれない」

「農業かぁ。 最初は大変だと思うけど、上手くいきさえすればもう食べ物に右往左往せずに済むかもね」

<やってみる価値はありますよ! 私、牧場育ちだから動物の世話とかなら心得はありますよ! ……この星の生き物は、その、さっぱりですけど……

 照れくさそうに言うスペシャルウィークに、皆が一様にどっと噴き出した。

「でも、真面目に検討する価値はあるかもね。 とりあえず今は基地に戻ってご飯にしよう?」

<もちろんです! シャルロットちゃんも一杯資源を集めてくれましたよね? それで設けたキッチンで腕によりをかけますよ!>

 張り切るペコリーヌの意気込みに、二人は心躍らせながら基地への帰還を早めた。

(オルガ……僕達は三人揃って帰ってくるまで、いっぱい基地を充実させるからね?)

 今は遙か遠くの地に飛び去った、オルガの帰りに思いを馳せながら。

(ペコリーヌの美味しいご飯もいつでも食べられて、皆が笑って暮らせる基地にするから、だから無事に戻ってきて……そして)

 隣にいる、元いた世界から一緒にやって来た無二の親友に気をやりながら。

(ラウラの為にも、三日月を見つけて帰ってきて……皆で農業でも、しようね?)

 

その日が来るまで、共に頑張ろうと決意したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし彼女は知らない……驚くほどに希望に充実した生活を起こるこちら側と異なり、オルガ・イツカは正に危機的状況に追い込まれているなど。

 

「ううっ……!! 結構響くわね」

「しっかりしてよキャル! 大丈夫だからね? ボク達がついてるから……」

「お前こそ大丈夫かテイオー? 疲れてきたら俺が担ぐ「いいよダンチョー、ボクなりのお礼ってか恩返しだもんね!」

 負傷したキャルを担ぐトウカイテイオーを、寒さの中にありながら生暖かい視線を送るオルガ。

 エクソスーツの上から、墜落した宇宙船の端材とその辺の草木からなる添え木で、応急手当されたキャルの姿は痛々しくも、元気いっぱいにおぶさるテイオーの姿に思わず笑みをこぼす。

 

 思いがけぬ不時着によってたどり着いた厳冬の惑星『EDN-3RD』。 得体の知れない相手に送られた座標を目指す、不確かな道程を歩む3人の足取りは重い。 謎の通信によって道を指し示された一行は、雪に頼りない足跡をつけながら目的地を目指し、妙に減りの早い『ソジウム』を道中かき集めながら、吹雪の勢いが増してきた針葉樹林の中をひたすら歩いていた。

 

 現在3人の気温計には、氷点下……それも-70℃を下回る数値が表示されていた。 もし裸一貫で放り出された日には、当然ながら凍死は免れない過酷な環境である。

 凍死と隣り合わせの極限状態に神経をすり減らす、そんな彼らの命を守るたった一本の命綱と言えるエクソスーツ。 少々のことでは消耗しない筈の『危険防御システム』の残存エネルギーの消費が妙に著しく、3人の内心は焦りに染まっていた。

「……それにしてもやっぱ寒いねー。 キャルを背負ってるから身体自体は暖まるけどね」

-70℃を下回ってんだ。 地球の極地並だぞ」

「冗談じゃない寒さね……これでスーツがお釈迦になったらアタシ達もただじゃ済まないわね」

「縁起でも無いこと言わないでよー……ん?」

 唐突に足を止め、耳を澄ませるテイオー。 彼女の耳は人間より優れており、遠く離れた場所で鳴った音すら聞き分けることが出来る。

 その耳は今、不穏な音を捉えた。 何かの信号音が近づいてくる……それも一つではない。 幾つもの無機質な信号音が重なり合って響いているのだ。

 やがてそれは、徐々に大きくなって行く――――そして。

 三人の前に現れたのは、赤い輝きを宿した橙色の装甲を持つドローンだった。

 オルガはとっさの判断で、乱暴は承知で二人を抱きかかえるように茂みの中に引き倒した!

「(悪い! 痛くなかったかキャル!)」

「な、何なのよ一体! 驚いたじゃない――」

 オルガは有無を言わさずキャルのバイザーに手を押し当てると、人差し指を立てて声を出さぬよう指示する。

 その意味を二人は、特にトウカイテイオーは恐怖の色と共に理解した。

 

 辺りを見渡すように悠然と飛ぶ複数の丸いドローン……『センチネル』の姿がそこにあった。

「(やっぱりアイツ等この星にも居たんだ!!)」

「(クソッタレ、こんな時に面倒だな……何とか見つからねぇように迂回するしかねぇか)」

 悪態をつくオルガだが、幸いにしてドローン側は木々が邪魔をするようで、こちらの位置までは掴めていないようだ。

 オルガ達はゆっくりとその場を離れようとしたその時――突如として、一機のセンチネルがスラスターを吹かせ、凄まじい速度で接近してきた。

 オルガは咄嵯に身を屈めると同時に、テイオーの頭を庇いながら小声で呼びかける。

「(落ち着けよお前等? 馬鹿な真似はするんじゃねぇぞ?)」

「(わ、分かってるわよ……早くどこかへ行って!!)」

 しつこく辺りを探し回るセンチネルに毒づきながら、なんとかやり過ごそうと必死で茂みに姿を隠す。 しばし辺りを飛び回って何度も確認するも……やがて諦めたのか、他の機体と合流するとそのまま何処かへと飛び去って行った。

 それを確認すると、緊張の糸が切れたかのように安堵の息を漏らす。

「ふう……もう行ったみてぇだな」

「全く、寿命がちょっと縮んだかも知れないわね。 こういうのはもうゴメンよ」

「ううっ……身体がちょっと冷えてきちゃったかも、寒いよぉ」

「大丈夫かテイオー? やっぱり俺がキャルを担いでいこうか?」

 心配を寄せるオルガだが、トウカイテイオーは首を横に振る。

「いいってば! ボクの役目なんだからね! それにちょっと寒いぐらいなら、身体動かしてるぐらいが温まって丁度良いんだし、アスリートをないでね!」

「……わーったよ」

 テイオーは胸を張って答えると、その様子に苦笑を浮かべながらも、オルガはそれ以上何も言わなかった。

 センチネルとの遭遇を警戒し、なるだけ茂みの多いルートを選んでオルガ達が更に森の中を突き進んでいくと、ようやく目的地らしい座標を見つける事が出来た。

 遠目である為に雪降る中で視界も悪いが、うっすらと橙に光り輝いているようにも見えた。

「見えたぜ! ありゃ何かあるな?」

「当然よ……!! ここまで来てガセだったらたまんないわよ!」

「と、とりあえず、ハァ、ハァ、向こうに行こうよ! ボ、ボクもうちょっと頑張れるから」

 そう言ってキャルを担ぐテイオーの言葉は辿々しく、息切れを起こしているようにも見えた。 そんな彼女の心なしか徐々に弱々しくなっていく様子に、オルガは一抹の不安を覚えつつも、今はテイオーを信じて足を進めることとした。

 

 

 

 

「な、何だよオイ……墜落船じゃねぇか!」

 それは明らかに宇宙船であった。

 落下した衝撃でか、周囲の木々は全てなぎ倒され、地面は大きく陥没してクレーター状になっている。

 中心には墜落した宇宙船が煙を噴いて上向きのまま地面に横たわっていた。 周りに誰かがいる気配は無く、雪の積もり具合から放置されて暫く経っているようにも見え、恐らくはここを発ってしまったかあるいは力尽きた可能性があるだろう。

 形状は鋭い胴体の後ろ側に左右対称に羽とエンジンが取り付けられた、オルガのそれとは異なるも似たような技術体系からなる宇宙船に見えた。

 損傷もオルガの大破したそれよりかは軽微に見え、装備さえ万全なら十分修理は可能そうではあるものの――――。

 

「律儀に船を直す余裕なんかねぇぞ……こんな時にガセネタ掴まされた気分だな」

 可能性としてある程度想定はしていたが、いざ期待外れの成果を目の当たりに三人は落胆する。

「ねぇオルガ……地図の座標ってアレのこと言ってるんじゃない?」

 肩を落としかけるオルガだが、キャルが指さした方向を見ると、確かに煙を噴く球状の大きな物体を座標が指し示しているようだった。 駆け寄って物体を調べてみると、それは今正に機能不全に陥りかけているビーコンであり、見ると大半のデータが喪失する寸前、正に風前の灯火だった。

 オルガはめげずに内部のデータを取り出そうとはしてみるが、ノイズばかりで大した情報は得られなかった。

「……どう?」

 芳しくはない。 そう言いたげにオルガは落胆した様子で首を横に振った。

 敢えて言うなら通信主にしてこの墜落船の持ち主の情報に、『マインビーム』関連のテクノロジーがセットになって入っていたぐらいだろうか。 尤も、マルチツールの壊れてる今のオルガ達には無用の長物であるが。

「……は、はは、こ、ここまで来てそりゃないよー……」

 乾いた笑いを浮かべるトウカイテイオーだが、キャルを背負ったまま力なく膝をついてしまう。 数少ない希望としてこの場所を目指し、特に張り切っていたトウカイテイオーは空元気というのもあったのだろう。 期待を見事に裏切られたとあっては、無理もない反応であった。

「テイオー……」

「……そう気を落とすもんじゃ無いわよテイオー。 この宇宙船、壊れてるけど吹雪は凌げるみたいだから、一先ずはかわりばんこで休憩しましょ――――?」

 膝をついて項垂れるテイオーを宥めるオルガとキャルだが、彼女の仕草にふと違和感を覚えた。

 両肩を抱えるように蹲るテイオーの身体が小刻みに震えている。 それはまるで本当に寒いと言わんばかりに、身をよじって肌寒さを訴えるように身体を摩っていたのだ。

「何か様子が、変じゃないかしら?」

 疑問を口にするキャルの言葉に、オルガも雪に伏したテイオーの前に膝をついて、雪の上に蹲って寒さに身を震わせる彼女に声をかける。

「大丈夫かテイオー!? やっぱりどこか痛めたんじゃないのか「――――()()

 身を震わせるテイオーの言葉に、オルガとキャルはふと首を傾げた。

3人はエクソスーツを着ている……危険防御システムが生きているなら、暑そうや寒そうに()()()()()()()ことはあっても、内部そのものは適温に保たれる為に実際に厳しい環境に晒されることはない……筈なのだが。

「すまねぇテイオー、少し身体を調べさせて貰うぜ……うっ!!」

 オルガはテイオーのバイザー越しに透けて見える表情を見やると、明らかに寒さをこらえているような血色の悪い顔つきがそこにあったのだ。

 乙女の身体をむやみに調べるまいと思いつつも、万一を考えやむなくエクソスーツ越しに彼女の生態情報をスキャンする。

 

 そして息を呑んだ。 トウカイテイオーは明確に低体温症を起こしかけていたのだ。

「おい! まさか本当に寒いのか!?」

「そうだよ……急にスーツの中身が冷えてきちゃったんだよ……でもどうして……!?」

 肯定するテイオーの声にいつものハツラツとした元気は見当たらない。 そんな時、キャルはテイオーのエクソスーツのバックパックの違和感に気づく。

「オルガ! テイオーのバックパックから何か漏れてる!?」

 三者一様に破損したエクソスーツのバックパックだが、特にトウカイテイオーの物からは気体とか液体というか、形容しがたい何かが破損箇所から漏洩していることにキャルが気づいたのだ。

 その言葉に何かを気づいたオルガはテイオーに問いかけた。

「おいテイオー! 『ソジウム』の残量はどうなっている!?」

「……? え、えっと……ッ!? そ、そんな……空っぽだぁ……!!」

「タンクが壊れてたのよ! ほんの少しずつだから気づかなかったわ!?」

 身を震わせ、力なく答えるテイオーの声は掠れていた。 既に意識が混濁し始めているのだろう。

「わけ、わかんないよ……エネルギー残量に、変化ないはず、だった、のに……」

「! おい、寝るなテイオー! 寝たら最期だぞ!!」

 キャルはテイオーの身体を揺すり、オルガは平手でテイオーのバイザーを叩いて気付けをするも、身体が急速に冷えていく彼女に意識の回復は見られない。

 せめてこの寒さだけ何とか遮断できないかと辺りを見渡すが、オルガはそこで墜落船の存在を思い出した。

 宇宙を行き来する宇宙船はその極限の環境に耐えるだけでなく、長期的な旅においてパイロットの消耗を避ける為、機内が快適な環境に保たれるよう気密がしっかり作られている。 それ故に中に乗り込めさえすれば、消耗する危険防御システムのリチャージも行うことさえ可能になっているのだ。

「……どこまで機能するかは分かんねえがな」

 全体に及ぶ機体の破損具合からして、その機能が生きている可能性が低いと思われたものの、それでも僅かな望みを託してオルガはコクピットへと潜り込む決意をした。

 幸いキャノピーの開閉は問題なく行われたものの、操縦桿周りは動かしても稼働せず、コンソール類は電源そのものが入らなかったり、壊れていたりとまともに動かない状態だった。 風防を閉じても気温の最適化は行われないが、しかし外気温の遮断と気密の維持は出来ている為、危険防御システムのリチャージは見込めずとも、減少を食い止めることは可能なようだった。

 この寒さで風防が凍り付かずに開閉が出来ている所を見るに、凍り付きによる閉じ込めの心配は無さそうだ。

 ピンチの時にこれ以外、わざわざ何もないこの場所に誘い込んでくれたのだ。 放置した墜落船を頂いてもバチはあたらないだろうと、オルガはこの船を拝借する決断をした。

「二人共、この墜落船の中に避難しろ……俺がお前らのスーツや宇宙船を修理できねぇか材料を探してくる」

 オルガはまず身体の冷えるテイオーを、そして身動きの取れないキャルを墜落船のコックピットに入れてやる。

 流石のオルガも、動くこともままならない二人を連れて行くことは出来ない。 安全なこの場所に避難して貰い、動ける自分が探索に出るべきだと決断する。

「……頼んだわよ」

「ごめんね、ダンチョー……ボクばっかり、足を、引っぱって……」

「お前のせいじゃねぇだろ? 団員を守るのは俺の仕事だ」

 申し訳なさそうにするキャルとテイオーに、空元気ではあるがはにかんで見せるオルガ。

 その表情には疲労の色が見え隠れしているものの、しかしそれでもなお立ち向かう気力だけは失われていないようだった。

 そんな彼に対し、キャルは懐から自身のマルチツールを取り出した。

 ストックのついた銃身の長い、言うなればアサルトライフル状の黒いマルチツールがそこにあった。

「マインビームがないから材料集めは出来ないわ……でも、武器をいくつか積んであるから、探索の役には立つわ」

「……いいのか?」

 問いかけるオルガにキャルは有無を言わさずマルチツールを押しつける。

「どうせこの怪我じゃアタシが持ってても使えないし、アンタに預けとく」

 確かにそのマルチツールがあれば、最低限の装備はあると言って良いだろう。

 オルガは預かったマルチツールにに実装されたを武器を調べると、バースト射撃の『ボルトキャスター』、散弾銃の『スキャターブラスター』、そしてもう一つ……グレネードランチャータイプの『ジオロジーキャノン』なる3種がインストールされていた。

「3つめは取り扱いに気をつけなさいよ……岩盤も抉る威力があるんだから」

「了解だ」

 オルガは礼を言う代わりに、力強く拳を突き出す。 キャルもそれに応えるように拳を出し、二人の拳がぶつかった。

 墜落船に背を向け、オルガがいよいよ一人の探索を始めようとした時。

「オルガ!」

 キャルが唐突に呼び止めてきた。 オルガはその場で振り返った。

「……それ、ちゃんと返しなさいよね」

「……ああ。 お前もしっかり受け取ってくれよな」

 キャルと軽く言葉を交わして、キャノピーが閉じられるのを見届けたオルガ。 今度こそ一人きりで墜落船を離れ、孤独な探索を開始した――――

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