No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~   作:Easatoshi

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返り咲く鉄の華
第18話


 オルガにとってビスケットは特別な存在だった。 火星のPMCの1つであり、ある意味で鉄華団の前身とも言える『CGS』時代に出会った、三日月とはまた違うオルガにとってのもう一人の相棒だった。

 そんな彼はさる仕事で地球に訪れた際に仲違いを起こしてしまうも、それを乗り越え命の危機に遭ったオルガを間一髪救おうと身を挺した結果横転した車両に潰され、項垂れるオルガの腕の中で息を引き取った。

 

 それから、彼もまた後のオルガと同様に異世界に転生を繰り返す、数奇な人生を送ることになる。

 主に現代日本らしき世界が多かったが、ある時は鬼退治に駆り出されたり、少女達の痴情のもつれを目撃したり、戦車道の試合中に事故に巻き込まれて下半身が不自由になったり、砂漠の大地で共に拠点を再興したり……またある時は太陽系の星々から人々がやってくる学園において、同じく転生したオルガ相手に溜まった鬱憤をぶつけてみたり……等々、時にぶつかったり共に手を取り合ったりを繰り返してきた。

 

 そんな彼が今、一面の銀世界の中で朗らかに笑みを浮かべながら立っている。

 

「そうか……お前だったのか」

「オルガもきっとこの世界に居ると思って、鉄華団の名前使っちゃったよ」

 ビスケットは悪びれた様子も無くおとぼけてみせる。

 オルガにとって鉄華団は家族の絆の代名詞だ、その名を捨てずにかつての仲間が拾ってくれていた事実に、悪い感情など抱きようが無い。

 オルガの胸中は感慨深い気持ちで一杯だった。

「さあ、感動の再会は後にしよう? 君が異世界で出会った仲間も一緒に居るんだし、この危険な星から早いうちに脱出しよう!」

「……そうだな!」

 積もる話は色々あるが、今はビスケットの言う通りこの危険な『EDN-3RD』から離れるべきだ。 オルガはビスケットが手配してくれた代わりの宇宙船に案内され、テイオーとキャルを一緒に連れてそのコックピットに乗り込んだ。

「ダンチョー。 あの乗ってきた船って()()()()()って言うので操縦してたんでしょ? ……急にマニュアル操作で運転出来るの?」

「まあな。 基礎知識は同調した時に頭に入ってくるしよ、何だかんだでこっそり練習もしてたんだよ。 こう言う可能性も有るかも知れねぇって」

「用意周到なのね」

 一応この星系に来るまでの間に何度か宇宙に出る機会があったが、実はその際に何度かマニュアル操作で宇宙船を操作することをオルガは経験していた。 こう言った不慮の機会で『阿頼耶識』に頼れなくなった可能性を想定してだ。 出来れば生かしたくない対策が結果的に役に立ってしまった訳だが、それはそれとしてキチンと対策するオルガにテイオーとキャルは感心した素振りを見せる。

「ねえねえ、ボクにも()()()()()って使えたりするかな?」

 ……そりゃムリだ、こいつが定着すんのはもっとガキの内からじゃねぇとな」

「えー、ヤダヤダー! ボクだってそんな便利そうなの使いたいよー!」

 駄々をこねるテイオー。 地団太を踏んでいるようだが、そのリアクションに本気の意思は見られない。 それを悟ってかオルガは諭すように告げる。

「定着しなかったら半身不随か寝たきりか、最悪死ぬぜ?」

 トウカイテイオーは固まった。

「それにこいつは脊髄に直接注射してコネクタも移植するんだ……麻酔なしでな。 お前も俺の背中見たことあるだろ。 想像を絶する苦痛を伴う羽目になるが、それでもやるか?」

う゛っ! そ、それはその……

「仮に使えるようになっても、阿頼耶識越しに機械から流れ込んでくる情報で脳が焼き切れる危険性もあるし、これも言うまでもねえけどよ、こんなコネクターが背中にあったらジャマで仰向けで寝れなくなる「も、モウイイヨー!! 分かった、分かったから!!」

 見るからに言葉を詰まらせ辟易するテイオーに畳みかけるように現実を突きつけると、遂に観念したか面白半分に告げるオルガの発言を遮って発言を撤回した。

「ハハッ、わりーわりー!」

「……アンタも中々にハードな人生送ってんのね」

 身に迫った、と言うよりは実体験を口にしたオルガに対し、キャルは苦笑いを浮かべながら小声で呟いた。

 

<んー……オホンッ! 話はもう済んだかい?>

 無線機越しからビスケットの催促する言葉が、わざとらしい咳払いと共に発せられた。

「おお、すまねぇビスケット」

<いいよもう……さ、それじゃあ皆。 僕達の貨物船に帰ろう>

<了解、『あんこうチーム』……準備OKです!>

<タカキ・ウノ、準備OKです!>

「OKだ、いつでも良いぜ……案内は任せた!

 最後のオルガの合図と共に、宇宙船に乗り換えていたタカキや戦車道の面々と一緒に、銀色の大地からその身を空の向こうへと浮上させる。 頼りになる独特の浮遊感がオルガ達三人を包み込み、この世界に来て慣れた感覚が再び戻ってきた事実に、ようやくオルガ達は安堵の感情に包まれた。

「『エクソクラフト』だっけ、乗ってきたあれを置いていくのは良いの?」

<貨物船にはそれを回収出来る設備があるから大丈夫だよ? 惑星の側ならテレポーターを使って船内と大気圏内を行き来させることが出来るの>

「へぇ~、凄いんだね! なんかもう何でもありって言うのかな♪」

 疑問に答えたのはみほだ。 その彼女の答えにテイオーは関心を示した。

 確かにこの世界に飛ばされてから何でもありで、テレポート装置についても普遍的な技術としてレシピが存在することが、基地内のコンピューターを通して知っているが、よもやそれが乗り物の転送にも使え、実際に運用している事実に出くわすとは思わなかった。

<ほら、その()()()()()がそろそろ見えてくるよ>

 感心するテイオーに注意を促したのはタカキだ。 彼の言葉で宇宙船の進行方向を見ると、彼女は更に目を輝かせて運転席に身を乗り出した。

 対してオルガは姿を見せたというその貨物船を前に目を丸くしていた。 宇宙を旅する貨物船の存在は、既にオルガ達にとっては見慣れたものだったのだが……問題はその形状にあった。

「何よオルガ、貨物船なら今までもちょくちょく見てきたじゃない「イサリビ」?」

 キャルの疑問の声を、オルガはつぶやきをもって断ち切った。

 

 何故なら目の前の宇宙空間に大きく佇むは、骨太で頑丈そうな船首から後ろに行くにつれ細く引き締まった逆くさび形のフォルム。 上部に赤い外板を身に纏った、貨物船と言うには少々無骨とも言える戦艦のような出で立ち。

 

 『NOAー0093 イサリビ』、それはかつての鉄華団の旅を支えた、懐かしき第二の我が家そのものだった。

 

<何故か最初からこの船と共にこの世界に来たんだ。 でも、今こうして僕達が本当の意味で再出発するには、この上ない最高の船じゃないかってね>

「ビスケット……お前って奴は!」

 オルガは目頭が熱いのを感じた。

<さあ、皆順番に船に乗り込もう! 宇宙船ドックもオートパイロットだから、落ち着いて誘導に従ってね! ……それから、後で皆でゆっくりと話そう>

「……ああ!」

 オルガ達はイサリビの宇宙船ドックから放たれる、青白い誘導光に従って宇宙船に乗り込み始めた……。

 

 

 

 

 

 

「ダメです……無線機が全然繋がらない……」

「スペちゃんもですか……私もさっきから全く繋がりませんよぉ」

 そろそろ日も暮れかけてきた『プロミス/48』惑星上のさる場所において、スペシャルウィークは一向に繋がらなくなったエクソスーツ内蔵の無線機に四苦八苦し、同様の症状が出ているペコリーヌ共々心底困り果てていた。

 食料も順調に集まり、基地待機組にして食糧確保の役目を負う彼女とペコリーヌ。

 この星にある新たな食材を探索すべく、ペコリーヌの運転する『プリンセスストライク』号に乗り込み、惑星内の別の場所を散策したその帰りの時であった。

 

 妙な反応がある。 機内のセンサーがそう感じ取った際、二人して未知なる何かの好奇心に駆られ現場へと降り立った。 そこは青々とした草原が広がるだけの、何の変哲のない場所に見えたが……。

 

「うーん、機械に詳しくはないですけど……素人目に見ても機械が壊れてる感じしないのに何故でしょう」

 ペコリーヌもため息をついて途方に暮れる。 

「……やっぱりこれのせいだったりするんですかね?」

 スペシャルウィークは()()に目をやりながらごちる。

 

 そう、正に彼女達が察知した妙な反応の出所……草原のど真ん中から突き出ている、青と赤の金属の構造体に対して。

 それは表面も傷ついていて雨風に晒されて汚れ、一見長い年月を経て風化したような様相を示していた。

 しかし所々塗装が剥げてむき出しの金属面に錆は見えず、今なおも妙な反応の正体とも言える奇妙な波長を発し続けていることが、二人のスーツにも信号反応という形で捉えられている。

 機能は生きているようなのだ。 構造体の正体が何なのかは皆目見当もつかないが。

 そしてやっかいなことにこの波長こそが、彼女達の持っている機器に対し誤作動を起こす原因となっており、無線にジャミングを起こす原因や、又は乗ってきたプリンセスストライクに対しても機能障害を引き起こしている……リチャージされないのだ、宇宙船の『発射エンジン』のエネルギーが。

「困りましたね……自然にチャージされないなら発射エンジン用の『宇宙船発射燃料』が必要なんですけどね」

「この近くに『二水素の結晶』も無いですし……何より」

 

「「お腹ペコペコ(です)……」」

 

 燃費の悪い彼女達にとって空腹は気力を奪う最大の原因だ。 件の燃料の材料である『二水素』がある場所は、ここからでも歩いて取りに行ける距離に存在はしている。 しかしその距離は片道3キロ離れており、スペシャルウィークが走って取りに行こうとも思ったが、如何せん腹が減ってしまい動くに動けないのだ。

「うう……お弁当になりそうな食料品しっかり積んで来たのに」

「結局全部食べちゃいましたからね……やばいですけど仕方が無いです。 今日は周辺で食料探して、ここでビパークするしかないですね」

「シャルさん達に心配かけさせちゃいますよ……って」

 確実に迷惑をかけるであろう、IS乗りの仲間二人を思うと憂鬱になるスペシャルウィークだったが、太陽の沈み行く方向の空を見上げていると……

 

 

 

「あ、いたいたー!」

「大丈夫か! 怪我は無いか?」

 

 

 

「「!!」」

 

 

 空の向こうからやって来た見覚えのある姿が、自分達を見つけて声をかけてきた――――正にその迷惑をかけそうだと憂いていた少女二人、ISを纏ったシャルロットとラウラの姿だった。

「おーい! 私達はこっちでーーーーす!!!!」

「やっと来てくれた!! 助けて下さーーーーい!!」

 スペシャルウィークはペコリーヌ共々大手を振って助けを呼ぶ。 その声に応えるようにシャルロット達は大慌てで飛んでくるが、二人はハッと思い出したように両手を突き出し飛んできたIS組を制止する。

「あ!! ちょっと待ってください!!」

「着陸するなら少し離れた場所にしたほうがいいかも知れませーん!!」

 その声が届いたのか、空中に急制止したシャルロット達は互いに顔を見合わせて首を傾げるが、こちらの言う通り直接側に飛来せず、少し離れた場所に着陸後ISを部分展開のみに留めてこちらに歩み寄る。

「ふむ、無事で何よりと言いたいが……一体どうしたんだ? 無線もノイズだらけで繋がらなかったぞ?」

「何か直接降り立っちゃだめな理由があったの? ……確かに妙な波長がこの辺りから出てるみたいだけど」

 やってくるなり怪訝な顔をするラウラとシャルロット。 スペシャルウィークは仲間の到着に安堵するも束の間、ここに来て起きたことを包み隠さずに話した。

 シャルロット達と同様に奇妙な反応をキャッチしたので、資材集めの帰り際に調査しに来たこと。 近づくと機体の調子が悪くなり発射エンジンのリチャージも行われず、また空腹で力も出なくなって途方に暮れていたこと。

「その原因がどうも……これみたいなんですけど」

 スペシャルウィークは身を翻し、自身の背後に突き出している原因の構造物に目線をやる。

 

 それに釣られたシャルロッツやラウラも訳が分からないように首を傾げるが……しばしの沈黙を置き、何かに気付いたように口を開いた。

「何か、見覚えないかな……コレ?」

「……シャルロットもか」

 どうやら何か心当たりがあるようだ。 それにしては随分と判断に困っている様子を醸し出しており、二人して小声で「でもサイズ感が」「そうだな……しかし」と話し合っている事が、スペシャルウィークの聴覚にハッキリと伝わっている。

「シャルロットさん……ラウラさん。 ひょっとして、見覚えあったりするんですか?」

 意を決して尋ねてみた。

「……全然大きさが違うけど、ひょっとしたら、ね」

「もしかしたらお前達二人も見ている物かも知れない」

「??」

 意味深に告げるシャルロット達だが、当然だがスペシャルウィークには何の事だか分からない。 ……しかし。

「……ひょっとして……いやまさか、だとしたら……大きさが違いすぎてやばいですね」

 一転してペコリーヌには、思い当たる節があったようだった。 集まった4人の内何の事だか分からないスペシャルウィークは、説明を求めるように視線を周囲に向ける。 すると残り3人は視線のやりとりをして、考えていることは同じだと再確認するように無言でうなずくと、一斉に口を開く。

 

 

 

 

 

「「「ガンダムバルバトス(だね)(だな)(ですね)?」」」




 ウマ娘の前でモビルスーツを披露したのは、マッキーのバエルだけだったはず。
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