No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~   作:Easatoshi

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 ゲーム内のキャプチャー画像使ったりとかの補足説明いる……いらない?


第27話

オルガ達がキリト達やナーダ達スペースアノマリーの面々と顔合わせを済ませ、拠点に戻った鉄華団はそれぞれが得意とする分野に分かれて各自行動をとっていた。

 まずみほ達戦車道メンバーはプロミス/48に残り、惑星の細かな調査を行っていた。 そこにウマ娘組とペコリーヌ等アストルム出身組はそれに便乗する形で、食べてしまった食料を含む基地の資材集め兼、みほ達の随伴を務めている。

 そしてオルガにビスケット、タカキ等旧メンバーとシャルロット達IS組はイサリビに乗り込み、このフリージア星系の残りの星を探索していた。

 

 

 そう言った行動に切り替えて2週間が経ち、オルガ達は三日月達の捜索について進展が見られない中、先立つ物の確保の為、現在墜落した貨物船にて廃材集め(スカベンジング)を行っていた。

 

 

 

 

新たなるトキシ

フリージア星系 新しいディスカバリー

 

 

 

■■惑星 ―苛性の土地―

気候           毒性の通り雨

センチネル        間欠的

植物           生命レベル 低4

動物           生命レベル 低1

 

 

 

 破片をそこら中にまき散らして辺りを焼け野原にし、クレーターの中央で真っ二つに折れて地殻に突き刺さる痛々しい残骸は、困った事にカジュアルに星々を行き来する割に、治安の行き届かない宙域がザラにあるこの世界においてはありふれた事なのだ。

 して今は、船に積み込まれていただろう散らばったコンテナの1つの前に立ち、隅々までチェックしているようだ。 オルガ達が今調べているのも含め、コンテナはいずれも潰れて変形しており所々隙間が空いてるものもあるが、いずれも開け口がひしゃげている為に側についている解放用の操作パネルなど受け付けない。 無論それさえも破損しているが。

「どう?」

 シャルロットがISを展開してラウラ共々宙に浮いたまま、コンテナの前で何かを分析するオルガとビスケットにタカキへ声をかける。

「――――こいつもだ、ガイガーカウンターが振り切れやがる」

「そんなご大層なもの積み込んでないのに、一体何で放射能漏れが起きるんだろうね?」

「どんな設計かは分からないけど、積み荷がダメにならないものなんでしょうかね……シャルロットさん、ラウラさん。 少し手を貸して下さい」

「任された」

 ラウラとシャルロットは地面に降り、ISを着用したままオルガ達と入れ替わるようにコンテナの前に立つと、二人揃って顔を見合わせて無言でうなずき、コンテナの開け口に空いた隙間にISの手を添える。

「皆離れていてくれ、また放射能が漏れるかも知れない」

「毎回すまねえな。 男だてらに力仕事で任せっきりなのは歯がゆいもんだ」

「気にするな団長。 それだけISが優秀だからな」

「違いねぇ」

 オルガはラウラと軽口を言い合うと、大人しくビスケット達と揃ってコンテナから後退する。

「……行くぞ」

「うん――――ふんっ、んんっ!

 隙間から開け口をひっぱり出そうとするラウラだが、ISのパワーをもってしてもビクともしない。

「ふぬぅ……!」

 シャルロットも同様に、力を込めるがやはり開かない。

「はぁ、はぁ……今回のは結構重たいね」

「そうだな、変形がかなりきつくて開かないな」

 二人は息を切らせて汗を流し、額を拭いながら再び目を合わせる。オルガ達はその様子を黙って見守る。

 すると今度は二人でタイミングを合わせ、同時に腕に力を入れると、ギシギシと音を立てながらもゆっくりと開いていく。

 そして完全に開き切った時、オルガ達全員のガイガーカウンターが著しく変動する。

 

<警告:放射線被曝量が臨界点に達しています>

 

 急激に減少する危険防御シールドのエナジー。 ラウラは解放したコンテナから手早く中の物資を取り出し、それを確認したオルガ共々全員直ちにその場から離れた。

 足早く少し離れた所に停めた宇宙船、USGケリオンの元へ戻ると皆で今日の成果を見せ合う事とした。

「これでコンテナは全部か?」

「うん、合計7個。 確かに回収したよ。 皆、お疲れ様」

 ビスケットはシャルロットとラウラをはじめ、貨物船のサルベージに貢献した皆に労いの言葉をかける。

 オルガはそんな彼の肩を叩き、親指を立てて笑いかける。ビスケットはオルガの笑顔につられて笑みを浮かべた。

「しかしその、お二人を見てるとちょっと心配になりますね……素肌を出してる分、放射線とかこの星の毒性とか、その」

 タカキは心配そうにシャルロット達に目を配ると、その視線を周囲の景色へと移す。

 青緑の大気に緑々した大地が広がるこの惑星……分だけだと鉄華団の拠点たるプロミス/48のような環境を連想するが、実態は全く異なる。

 

 

 空気中には猛毒が漂い、毒に耐性のあるウマ娘でもこの星の大気を、スーツの危険防御機能無しに一呼吸でもすれば即死は免れないだろう。 そして地面を緑に染め上げる元にして劇物の大気の原因と思わしき、毒々しい深緑のキノコやカビがそこら中に生えている。

 特にキノコ……『ファンガルクラスター』と呼ばれるそれはいずれも背丈が一番高いオルガよりも更に一回り大きく、物によってはちょっとした建築物に迫るほどの巨大な個体さえもそれなりの数が存在した。 これらはスーツ越しであっても触るだけで毒が回りかねない厄介者で、同時に対応した手袋などで安全に採取出来れば、高額な貿易品の原料にもなるとも言われている。

「シールドエナジーが守ってくれてるから安全……とも言い切れないな」

「物理的に地肌が覆われてない部分が多いから、シールドエナジーが切れたときの事は考えたくないよ」

「この星の毒や放射線に熱波に冷気、それに真空状態もある。 ゾッとするだろうな……」

 オルガは極寒の星でキャルとテイオー共々凍死しかけた記憶を思い出していた。 ISは宇宙船とエクソスーツのいいとこ取りをした素晴らしい代物だが、同時に両者の欠点をも引き継いでしまっている。

 生身で宇宙に出られる反面、万が一に機器の故障を招けば極限とも言える悪環境に即座に晒されかねないのだ。

「……まあ、頭だけ晒したまま宇宙を旅するってくらいなら、この世界じゃメジャーな方だけどね」

「ですね」

 ビスケットとタカキは空を見上げ、オルガ達も倣う。

 空にはこの星の探索にやって来たであろう、異星人達の宇宙船の数機が編隊飛行を楽しんでいた。

 この銀河に幅広く勢力を広げる、ゲック・コーバックス・ヴァイキーンなる勢力も、危険防御技術の発展からかシャルロット達同様にヘルメットをかぶらずに宇宙に出る者達も多く存在する。 わりかしメジャーな部類に入る行為らしい。

「さてと……あんまりこの星の大気にスーツを曝したくはねぇな。 そろそろ基地に帰るか」

 オルガは全員に呼びかけると一同は帰還の準備を始める。

 ビスケット、タカキの3人でケリオン内に入り込むと運転席にはビスケットが着席する。

「それじゃ、帰りの運転は僕がするよ」

「ああ、頼む」

 ビスケットを挟み込むように、オルガとタカキは左右それぞれの助手席に座る。

 ウィンドウ越しにシャルロットとラウラが再度ISを展開するのを確認すると、ビスケットは指で外の二人にサインを送る。 それを了承したシャルロット達が飛び立つと、オルガ達の乗るUSGケリオンも出発した。

 毒々しい地上が瞬く間に離れていき、瞬きする間にあっさりと大気圏外を離脱する。

 有毒の緑に染まった惑星を見下ろす形で、ラグランジュポイントにたどり着いたオルガ達。

「それじゃあ皆、パルスドライブを起動するね? 着いてきて」

<ああ、いつでも構わない>

<僕達も後に続くね>

「目標プロミス/48。 3、2、1――――発進!

 

 パルスドライブを点火し、シャルロットとラウラを引き連れ亜光速移動を開始するUSGケリオン。その先には、まるで流星群のように通り過ぎる小惑星の数々が無数に存在していた。

 宇宙空間にて過ぎ去っていく無数の岩の群れを前に、ビスケット達は目を輝かせている。

「いつ見ても凄いですね」

 一切機体に触れる事なく通過する障害物の数々に、タカキが呟いた。

「だね。 デブリ帯の通過なんて僕達にとっては頭を悩ませる部分なのに」

 タカキの言葉にビスケットは苦笑しながら答えた。 彼ら宇宙時代の人間でも宇宙に漂う小惑星帯の存在は航行に当たっての悩みの種でしかない。 しかも普通の岩だけならまだしも、その中にはモビルスーツの残骸……その動力源たるエイハブリアクターも含まれている。

 それらは単なるエネルギー源だけに留まらず、妨害電波の発信や船内に重力を発生させるパワーソースとしての役割も持つ為、無造作に宇宙に転がせばあっという間に異常重力の発生源という厄介な地雷原と化す。 おまけにそうそう壊れない頑丈さも持ち合わせて。

 そんな苦労がこのパルスドライブの亜光速航行ともなれば、速い上にあっさりと障害物を透過出来てしまうのだから、元の世界にこれさえあればと思わざるを得ない。 まぁ、無い物強請りしても仕方が無いのだが。

<宇宙を航行するのが当たり前なんだっけ、オルガ達の世界では>

<私達にはにわかに想像がつかない世界だな>

「なーに、そんな優れたISがあっちの世界にはあるんだ。 宇宙の旅も遅かれ早かれ実現するだろうよ」

 シャルロットとラウラの声に、オルガは笑いながら答える。 ビスケットの運転に安心感を得ながら、オルガ達は気ままに雑談を楽しんでいた。

 ――――その矢先だった。

 

<アノマリーを検知 ■■ パルスドライブを終了します>

「「「!?」」」

 全員のパルスドライブが突如一斉に停止した。

<な、何!?>

<何かを検知したぞ――――って何だアレは?>

 突然の事態に一同が困惑する中、ラウラが航路の先に何かが漂っているのを発見する。

「何か、浮いてるね」

「ここからじゃ少し距離があって見えねぇな」

<待っていろ。 ハイパーセンサーの感度を上げてみる……ん!?

「どうしたんですかラウラさん? 何か見えたんですか<あ、アレは……!!>え?」

 ラウラの驚愕した声にタカキを始め一同は首を傾げるが、彼女の言葉の意味はすぐに理解出来た。

 何故ならラウラは驚き呆れた面持ちで、自身の視覚センサが捉えた映像を全員のスーツのHUDに共有したからだ。

 そこには、オルガの知る人型の機動兵器……モビルスーツ、と言うにはいささか小さいを象った像がそこにあったからだ。 しかしその形状が問題だった。

 白を基調にしたそれはシンプルな造形ながら均整のとれたフォルム。 背中の左右に対になるように設けられた翼のようなブースター。 それらに挟まれるような位置取りで、腰の後ろにマウントされた対になる二本の金の剣。 そんな像が両の手を広げこちらに招き入れる、と言うよりは大声で何かを宣言するように威風堂々と立たず待っていた。

 オルガにとってはよく知っている、ある意味で異世界転生の遠因とも言える忌々しい代物に酷似していた。

 

 

<――――聞け、全宇宙を股にかけるトラベラーの諸君!>

 

 

「うん!?」

 更に、オブジェからは何者かの音声とも言える放送が成されていた。

 ラウラを通して共有される映像から、その声がこの場にいる全員の耳に入る

<今、数多の世界を飛び越え……この kzzktkzt の元に、 kzzt  が舞い降りた!>

 肝心な部分にノイズが入っているようにも聞こえるが、間違いなくこれは何らかのアジテーションと思わしき演説だ。 オルガはそう確信した。

<トラベラーを名乗る身ならば、この宇宙に遍く存在するアトラスとセンチネルが、如何にして我々を抑圧してきたかは理解できるだろう。 だが、この世界においても kzzktkkt を操る者こそが唯一絶対の力を持ち、代わって頂点に立つ!>

 そして、オルガは嫌な予感がした。

 この音声に対し妙に聞き覚えのある記憶が蘇ると同時にこんなことをする奴は、オルガの知る限り一人しか思い当たらなかったが、まさかと思いつつもオルガは聞きに徹していた。

<奴らの嘘を拒絶しろ! 自由の為に我々に続け! 全ては zztkzzktzkt の魂の下にーーーー<こら!! kzzktkzt !!>

 そして唐突に、メッセージの中で何者かが間に割って入り、何かが転がるような激しい物音が響き渡る。

 

<お前また kzzzttkz 気取ってるな!? この世界にまで来てまた革命ごっこでもするつもりか!?>

<ごっことはなんだ zztkzz !! センチネルという抑圧の象徴から俺は本気で戦いを挑まねば――――>

<どっかのアホ家督みたいな世迷い言はやめて下さい!! ――――ああ、またこんなに kzztzz のレプリカなんか作って!!>

<何、また資材を融かしたの!? それも周りを唆すのにこんなしょっぱい模型なんて作って、一体何時になったら kzztzz を卒業するの!? ――――――>

 ……声の主と思わしき誰かが割って入った何者達かに詰められ、そこで途切れ……しばらくして再び同じ放送が繰り返された。 どうやらこの音声は録音された物で、近場に通りがかったトラベラー達を煽動しているようだった。

 そして申し訳程度に、この音声の発信主と思わしき者の座標データが機体に転送される。

 

<……な、なんか凄まじい会話だったね>

<ああ……それよりもだ>

()()、だと?」

 一同、先程の会話越しに何やら不穏なワードが聞こえてきたことに冷や汗を流す。

 特にオルガはその単語に強い引っかかりを覚えていた。

 今し方口にした()()にやたらとこだわりを見せる、異世界の旅々の道連れと言える存在。

 何だったら割り込んできた音声の主にも覚えがある。 元々敵として立ちはだかるも、元の世界での戦いや異世界における何度かの邂逅により和解した存在。 特に内一人は今仲間に居るペコリーヌと性格は違えどよく似た感じの声。

 変わらず宙に漂うオブジェクトを見つめながら、この世界に来るまでに自分が辿った旅路を思い返される。 

「一人しか居ねぇじゃねぇか……!!!!」

「あの人まだやってたんですね、その……()()()()ごっこ」

 頭を抱えてメインパネルに突っ伏すオルガに、ビスケットとタカキ。 そしてシャルロットやラウラも微妙な表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってプロミス/48の基地近辺。 ウマ娘2人組は青い海と砂浜を背景に、マルチツールを携え横に並ぶ。

「テイオーさん、行きますよ!」

「うん、いつでも良いよスペちゃん!」

 2人は互いに視線を合わせた後、同時にマルチツールの銃口を正面に向ける。 視線と銃口の先にあるのは規則正しく並べられた、基地の運営にあたって出た廃材の類。 

 それらに向かって同時にトリガーを引くと、2人の銃口からそれぞれ光弾が放たれ、見事に的に命中させた。

「やった! 当たった!」

「気を抜かないでよスペちゃん! ほら次!!」

 テイオーはガッツポーズを取るスペシャルウィークを叱咤激励しながら、次の的に向けて銃口を向け引き金を絞る。

 現在彼女達は、『ボルトキャスター』……マルチツールに内蔵出来る機能の一つで、マルチツールのエネルギーに『発射弾』の金属元素を充填、バースト射撃する武器を使った射撃訓練を行っている。

 テイオーの放った弾丸は、スペシャルウィークのそれよりも早く、正確に的を撃ち抜いた。 元々射撃ゲームなどでこう言ったシューティングにある程度の心得があった事に加え、テイオーのマルチツールは先日ほぼ新調と言える改修を行った事で、ストック付き拳銃の形状に改造が施されていた。

 これは今後を見越したテイオー自身の要望であり、彼女はより精密な射撃を可能としているのだ。

「これで、最後だぁ!」

 最後の一発を放ち、テイオーの撃ったそれは、彼女の宣言通り見事、全ての的の中心を貫いた。

 テイオーが満足げに振り返ると、そこにはマルチツールの弾倉を空にして、早々にその場に座り込み息を整えるスペシャルウィークの姿があった。

「えっへん! これがテイオー様の実力だぁ! お疲れ様、スペちゃん!」

テイオーは笑顔で彼女に労いの言葉をかける。

「あ、ありがとうございます、テイオーさん……それにしても凄い、私なんか殆ど当たらなかったのに」

 その言葉に、スペシャルウィークも微笑みを返す。彼女の顔には、明らかな疲労の色が浮かんでいた。

「気を落とさないで、ボクだって最初は全然当たらなかったんだよ? 実物とゲームは違うって、ラウラにものすごくシゴかれたんだから……」

 乾いた笑いを浮かべながら言いつつも、テイオーの顔はどこか誇らしげであった。 それを見て、スペシャルウィークはふと思う。

(テイオーさんは本当に努力家なんだな……。私がもし同じ立場だったとしても、こんな風になれるかな?)

 そんな事を考えていると、突如として二人の無線に仲間からの通信が入った。

 通信主はペコリーヌからだった。

「もしもし? どうしたのペコリーヌ?」

<テイオーちゃん! スペちゃん! そちらは今どこで何してますか!?>

 慌てた様子のペコリーヌの声に、2人は一瞬驚く。

 普段の彼女からは想像できない声色に、何かあったのかと心配になった。

「ど、どうしたの? 切羽詰まった感じだけど……」

<今すぐその場から離れて下さい! やばいですよ!>

 ペコリーヌの焦ったような口調に、テイオー達は思わず顔をしかめる。

 一体どういう事だろうか。 早々の事で動じないペコリーヌがこんなに慌てたように無線をかけてくるとは。

「キャルやみほ達も一緒じゃなかったの? 大丈夫なの、そっちは<とにかく逃げて下さい! 凶悪なモンスターが何匹かそっちに逃げたんです! だから早く逃げて――――>

 全てを言い終わる前に、通信を遮る形でおぞましい叫び声が無線機から聞こえてきた。

 それはまるで断末魔の悲鳴のようだ。

「……テイオーさん、とにかく逃げません?」

「うん、そうだね――――ッ!!!!

 

 

 テイオー達がペコリーヌの指示に従って逃げようとしたその矢先、同じような叫び声が基地の建物の後ろ辺りから響いてくる。 つい様子を伺うと次の瞬間、ペコリーヌの言う逃げ出したクリーチャーと思わしき化け物が数体、建物に飛び乗るようにして現れた!

 

「キシャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

「――――――ッ!!!!」

 思わずテイオーとスペシャルウィークは硬直する。

 現れた化け物は昆虫に似た緑の姿。 頭部は複眼が並ぶシュモクザメのような張り出した側頭部を持ち、大きく開いた鋭い歯の並ぶ口からは、ウマ娘という獲物を前に唾液を滴らせていた。

 その姿はまさに捕食者、数は5~6匹。 とてもではないが、今の二人では太刀打ちできそうに無い。

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!」

「ぴぇぇぇぇええええええええええッ!!!!」

 

 凶悪なクリーチャーの雄叫びを前に、スペシャルウィークとトウカイテイオーは怯えの声を上げる。

 彼女らはトップクラスの実力を誇るアスリートではあるものの、当たり前だが実戦経験などない。 目の前の未知の怪物に恐怖を覚えるのは当然だろう。

 

 

 大きく口を開け、クリーチャーが飛びかかってきた。咄嵯に二人は避けるが、スペシャルウィークはその際にバランスを崩し転倒してしまう。

 そこに追い討ちをかけるように、別のクリーチャーが襲いかかってきた!

「きゃああああっ!」

「!! 危ないっ!」

 トウカイテイオーは慌てて拳銃を取り出し、スペシャルウィークに迫るクリーチャーへ発砲する。 しかし、弾丸は命中したものの、甲殻に覆われたクリーチャーには対して通用しなかった。

 銃弾はめり込んで出血を強いたものの、致命傷には至らない。

「――――こ、こっちだバケモノ!! ボクが相手だ!!」

 テイオーは銃を構え、大声で威嚇しながら後退る。 クリーチャーは攻撃を受けた事でテイオーに狙いを定め、怒り心頭に一斉にテイオーを追いかけてきた!

「ピエェェェェエエエエッ!!!! ボ、ボクなんか食べてもオイシクナイヨーーーーー!!!!」

「テ、テイオーさんっ!!!!」

 スペシャルウィークもテイオーを助けようと、必死になって追いかけてくるクリーチャーに慌てて立ち向かおうとする。

 だが、重ねて言うが彼女は運動神経が良いとはいえど、戦闘の経験はない。

 そもそもまともに喧嘩すらした事がないのだ。 そんな彼女が、数匹のクリーチャーを相手に立ち向かうというのは無謀極まりなかった。

「テ、テイオーさんから離れてぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 スペシャルウィークは、追ってくるクリーチャーに向けて何度も発砲するが、やはり効果は薄い。

 しかし、それでもスペシャルウィークは諦めず、逃げずに戦い続けた。

 その甲斐あってか、今度はクリーチャーの意識が再びスペシャルウィークに向かう。

 慌てて逃げ出すと再びテイオーが射撃し、またも彼女に意識が向いて……そんな繰り返しだった。

「こ、このままじゃ……!!」

「倒すのも逃げきるのもできない……もう弾も尽きそうだよ……!!」

 しかしいくら頑張ったところで足りない銃弾をまともに当てるのも難しく、この数を二人で相手にするのは無理があった。 ペコリーヌに従って逃げようにも、どっちか片方にクリーチャーが集中してはそれを必死で散らしても、結局は攻撃した方に執拗にたかるばかりで、敵を分散して逃げることもままならない。

 

 

 

 いよいよ持って限界が近づいたその時―――――轟音と共に、爆風がクリーチャーの群れに炸裂!

 

 

 

 クリーチャーの群れは吹き飛び、一体は完全にバラバラに粉砕。 緑の体液をぶちまけて絶命する。

「テイオー! スペ! 大丈夫!?」

「よくもやってくれたなバケモノめ!! 落とし前はつけさせてもらう!!」

 声のした方……空を見上げた先には、ISを展開したシャルロットとラウラの姿があった。 IS用のライフルを携え、ラウラに至ってはより強力なレールガンを展開している。

「シャルロットさん! ラウラさん!」

「フッ、無茶をするなと言ったはずだぞ二人共」

「でももう大丈夫、後は僕達に任せて!!」

 そう言ってシャルロット達は、二機のISによる一斉射撃でクリーチャー達を掃射する。

 容赦ない攻撃にクリーチャーの群れは瞬く間に肉片と化し、爆発と立ち上る硝煙の中へと消えていった。

 しばしの間を置いて、規則正しい波の音だけが辺りを支配する。

 どうやら全滅させたらしい。

 トウカイテイオーはホッと息をつくと、腰が抜けたかISを解除したシャルロットとラウラの前に崩れ落ちた。

「た、助かったぁ……ありがとう、正直限界だったよー……」

「テイオー、大丈夫!?」

「……ふむ、怪我はないようで何よりだ」

「本当に助かりました……何とか二手に分かれて逃げようとしたら、必ずどっちか片方に集中しちゃって……」

 心配して駆け寄ったシャルロットとラウラに、スペシャルウィークは息も絶え絶えながら申し訳なさげに頭を下げる。

 ラウラはそんなスペシャルウィークの頭をポンと撫でると、優しく微笑んだ。

「よく頑張ったな二人共。 お前達が無事ならそれでいい。 星に近づいた際に偶然ペコリーヌの無線を傍受してな、急いで救援に向かった甲斐があったというものだ」

「ホント。 僕達だけでも先に帰ってきたのは思わぬファインプレーだったね……で、このクリーチャーはなんなんだろう?」

「あ、それは――――「スペちゃーーーーん!! テイオーちゃーーーん!!!! 無事ですかーーーーーー!?」」

 

 シャルロットが状況を聞こうとした矢先、遠くから聞き覚えのある声が響いてきた。

 その方向を見ると、そこにはみほの率いる複数台のエクソクラフトに乗ったペコリーヌとキャルの姿が。

 大手を振って必死に呼びかけるペコリーヌとグロッキーのキャル、その出で立ちは搭乗する乗り物も含め煤こけて、ただならぬ様子であった。

 基地に到着するなりペコリーヌは機体を飛び降り、テイオー達に駆け寄るなりウマ娘2人を抱き寄せる。

「本当に良かった……!! ごめんなさい、私達が油断したせいでこんなことになってしまって!!

わぷっ!? ちょ、ちょっとペコリーヌさん落ち着いて……!」

「でももう大丈夫ですよ! 残りのクリーチャーは全部やっつけましたから!」

「ぐええっ! 締まってる締まってる!!」

 ペコリーヌはテイオー達が窮屈さを感じるほどに強く抱きしめる。

 その様子を見ていたシャルロットは、ふとペコリーヌに質問した。

「ねえペコリーヌ。 さっきのクリーチャーって一体何だったの?」

「あんな凶悪そうな生物が住んでいたなんて初めて知ったぞ」

「……アタシから説明するわ」

 エクソクラフトから降りてきたキャルとみほが、シャルロット達の疑問に答える。 その面持ちは酷く憔悴していた。

 

 

 

 みほ達と共に周囲の探索に向かった際、ここから少し離れたところに何らかの基地跡と思わしき廃墟を発見、調査を開始することになった。

 しかし基地はグロテスクな粘性の有機物に覆われており、慎重に建物内を探索していたところ基地の設備に擬態していた触手と思わしき生物にキャルが弾き飛ばされてしまい、近くに転がっていたクリーチャーの卵と思わしき物体に誤って接触。 地下深くに潜んでいた先程のクリーチャーの群れが飛びだし、そのまま激しい戦闘となった。

「まさかあんな生物が地中に隠れていたなんて思わなかった……こっちもエクソクラフトの主砲で対抗したけれども、あんまりにも数が多くて乱戦になってもうメチャクチャ……」

「結局廃墟は流れ弾に当たって全焼しちゃったわ……散々振り回されて腹が立ったからコレ、持って帰って来ちゃったわよ!!」

 そう言ってキャルは手に持っていたものを見せる。

 それは粘液に覆われた、毒々しい緑に斑点のあるバスケットボール大の物体であった。 一見するとアメーバのような形状をしているが、全身が脈動している。

 また、表面はブヨブヨとした質感で悪臭を放っており、原初的な恐怖を煽り立てる。

「うぇえ!! 何この気持ち悪いの!?」

「まさかこれって……」

「そ、クリーチャーの卵……『幼生コア』って名目で一部じゃ高値で取引されてるらしいのよ、コレが」

 げんなりした表情で答えるキャル。 その隣ではみほが頭を抱えていた。

「正直持ち帰って良いか分からなかったけど……さっきの戦いでエクソクラフトも所々破損してたから、先立つもの必要かなって……」

 そう言うみほの様子からはリアクションも相まって、どう見ても不本意であることが窺い知れる。 その様子を見ていたラウラから、ため息交じりに質問が飛ぶ。

 彼女はみほの心情を察しているようだった。

「わかった、もういい……とにかく、さっきのクリーチャーがまた襲撃してくる心配はもう無いんだな? だったらそれでいい」

 これ以上はもう言わせまいと、ラウラは話を中断する。 今はラウラの言う通り一旦忘れようと、一同は何も口に出さず暗黙の了解で納得した。

「……そういえば、ダンチョー達はどうしたの?」

 テイオーが思い出したように、何故かこの場にいないオルガ達の不在を指摘する。

それを聞いてシャルロットは、少し悲しげな顔をする。

「団長達なら、宇宙ステーションに寄ってから帰ると言ってたが……」

「そう言えばさっきラウラさん達だけが急いでこっちに戻って来たって言ってましたね」

「オルガ君が戻ってきてないのはたまたま寄り道してたからなんですね――――て、あ。 噂をすれば、ですね」

 ペコリーヌが空を指さすと、USGケリオンの影が見えた。

 

「オルガー!!」

 シャルロットが手を大きく振ると、遅れてやって来たオルガ達もそれに応えるように、基地の側の離着陸場に着陸。 よく見れば、機体の背後には何やら大きなコンテナが牽引されているようだ。 コンテナにワイヤーなどの物理的なものは見当たらず、無線誘導によって機体に引っ張られているらしく、その重々しい白の長方形の金属体はまるで重力など働いていないかのように、機体同様にやんわりと着陸。

 しばしの間をおいて、こちらの騒動など何も知らない様子でオルガ達がケリオンから降りてきた。

「おう、帰ったぞ――――って、お前らどうしたんだ?」

「シャルロットとラウラ以外随分ボロボロになってるね? ……何かあったの?」

「う、うん……そうなんだよ、実は――――」

 テイオーはこれまでにあったことをオルガ達に話すと、オルガ達3人は目を見開いて息を呑んだ。

「そ、そりゃ大変な目にあったな……済まなかった」

「IS組が先に帰還してくれて良かったですね……」

「全くだよ……もうちょっとでボク達食べられてたかもしれないんだから……」

 テイオー達の反応を見て、オルガ達が彼女らがどれだけ危険な目にあったのかを実感したようで、改めて震え上がる。

「とにかく、無事で良かった。 後はゆっくり休んで、って……言いたい所なんだけど」

 するとビスケットはオルガやタカキらと無言で目を合わせたと思いきや、何かを言いよどむように視線を泳がせる。

 一体何があったと言うのだろうか。 テイオーは尋ねてみる。

「3人ともどうかしたの? 何か言いたいことあるの?」

「あー、えっと……それなんだが」

「コレを見て貰った方が、早いかと思う」

 タカキはシャルロットやラウラにも目配りをした後、彼女達も「あー……」と言いたげに気まずそうに視線を送られながら、一緒に牽引してきたコンテナに足を進める。

「な、何よ……あのコンテナには何が入ってるの?」

「ひょっとして厄介なトラブルの元を持ち帰ってきたとか?」

 キャルとみほが心配そうに問いかけてくるが、それをシャルロットが手で制止する。

「多分皆も見覚えがあると思う……よく見てて」

 地上にいた面々が、黙って首を縦に振る。 静かになったのを確認すると、タカキはコンテナのコンソールを操作する。

「……皆さんは、これに見覚えはありますか?」

「さっき別の惑星からの帰りに、宇宙で漂っていたものを回収したんだ」

「間違いなく、あのバカが関わってる代物だろうがな」

 呆れたようにため息をつく3人の声と共に、コンテナの蓋が開き中身が解放される。

 

 

 その中身が全貌を露わにした時、一同が一斉に驚きの声を上げた。

「こ、これって……!!」

 中に入っていたのは、白を基調としたガンダムバルバトスのようなモビルスーツ……を幾許か小さくしたような模型が入っていた。

 翼のようなブースターと対になる2本の金の剣を背中に携えるそれは、両の腕を開いた状態で収納されていた。

「このす○ざんまいみたいなポーズは……まさか!!

「もうちょっとマシな例えねぇのかよスペ……まあ、アイツにはソレで十分かも知れねぇがな」

 寿司屋のそれに例えるスペシャルウィークに思わず失笑するオルガだが、あながち間違いでも無いと言わんばかりに同意する。

「妙なアジテーションとセットでご丁寧に位置情報まで送ってきたんだよ」

「なので皆さん。 お疲れのところ申し訳ないんですが、今からそこを目指すことになります」

「……ちなみにどの辺?」

 テイオーの再度の問いかけにタカキは目頭を押さえながら告げた。

 

「ここから364光年……この前行ったネイビーズ星系とは違う方角ですが、またワープしないといけないんです」

「治安の行き届いていないならず者の星系も通過するかも知れないから、心してかかって欲しいんだ」

 

 タカキとビスケットの申し訳なさそうな、しかし無慈悲な宣言に対し……鉄華団の基地に悲鳴が響き渡った。




 例のアレごっこって、誰何やろなあ?(すっとぼけ)


 ……丸わかりですけど、知らないフリをお願いしますw
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