No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~   作:Easatoshi

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反乱軍の星の下で
第28話


 

 

 

 

カイエル 300/B 星系

《small》ユークリッド銀河McGillis Fareed が発見(/small)

 

 

 

 

 

 

「ここが座標の指し示した星系か……」

 ハイパードライヴによる星系ワープを敢行後、オルガはイサリビのブリッジにおいて神妙な面持ちで呟きながら、とウィンドウの向こう側に広がる光景を見渡す。

 そこは静寂に覆われた宇宙空間であり、小惑星帯や機械の残骸などあちこちにデブリが散らばるように浮いている。 中でもひときわ目を引いたのは、そう言ったデブリをかき分けるように鎮座する巨大な建造物。

 

 漆黒に覆われた装甲の隙間からは人工の輝きは見受けられず、無数の錆び付いた鉄骨やケーブルが複雑に絡み合い、中央上部には一際大きな砲塔だったと思わしき、ひん曲がった主砲を備えた要塞じみた、戦艦と一目見るだけでは間違えるだろう貨物船の残骸。

 それらは先程までオルガ達が惑星上でサルベージしていた遺棄貨物船のように、いくつかの大まかな部分に分断されており、その一つ一つのパーツが独立して浮遊している。

「オルガ、座標はあの貨物船の残骸を指し示してるみたいだよ?」

 コンソールに転送した位置情報の指し示すポイントを見て、ビスケットは怪しげに目を細めつつ、オルガに報告する。

 ビスケットの言葉にオルガは黙って首肯すると、その地点にある廃棄されたであろう貨物船の残骸をモニターに映した。

「皆聞いてくれ。 どうやら俺達は無事に目的地に辿り着いたようだ――――が、もっともらしい演説……? で呼び出したにしては随分と辺鄙な場所に思える。

 ひょっとしたら罠の可能性があるかも知れねえから、チーム分けをして一部はこの貨物船に残って調査しようと思う」

 オルガは通信回線を通じて艦内の全クルーに呼び掛けると、気を引き締めるよう促す。

 そんなオルガの号令に対し、みほ達戦車道のチームが返事を返してきた。

<ならオルガさん、私達がイサリビに残って周囲を見張るね? 貨物船の運用なら私達が精通しているし――――>

<いざ調査に乗り出してる隙を狙われたら、オルガ殿の帰るべき船がなくなってしまいますので!>

<うん! いざとなったら砲撃で火力支援するね!>

「助かる……異論はねぇな?」

 オルガの呼びかけに、全員が肯定の声を上げた。

 

 

 

 

 

 

「……派手に壊れてるね」

「ですね。 こう言う放棄された貨物船ってこの世界じゃ当たり前なんでしょうか?」

 USGケリオンにオルガ達と共に乗り込み、男3人が座る操縦席の後ろから身を乗り出しては呟くトウカイテイオーとスペシャルウィーク。

 機体の接近と共に破壊された貨物船の残骸が目前に迫り、その凄惨な戦禍と思わしき痕跡を目の当たりにして2人は息を飲む。

 そんな彼女達の反応にオルガも内心緊張感に身震いし、操縦桿を握る手に力を入れた。

<……んー>

<? どうしたのよペコリーヌ>

 不意に、ペコリーヌとキャルが無線機を通して意味ありげに言葉を紡ぐ。

<ずっと引っかかってるんですけど、さっき聞いた演説の内容に覚えがあると言うか、『自由の為に我々に続け』っていうくだりが妙に引っかかるんですよね>

「まあ、どう考えたって()()()が垂れ流しにしてるとみて間違いはねぇからな……妙に耳に残る言い回ししてやがったし」

 ペコリーヌの言葉に、オルガは小さく溜息をつく。 しかしペコリーヌとしてはもっと別なところが引っかかったようだ。

<違うんですオルガ君、どっちかというと内容と言うより()()ってワードが引っかかるというか――――>

「? 聞き心地の良い言葉でアジテーションするのは、古今東西よくあることじゃないんですか?」

<そうなんですけど、それも違うんですタカキ君。 その――――>

<あ、思い出した!>

 会話を遮るようにキャルが声を上げる。

『自由の声』*1よ!! アタシ達の宇宙船を撃墜してくれたアレ!!>

「!」

 キャルの放った言葉に、オルガは思わず目を見開く。 しかしそれはオルガだけではなく、ケリオンの同乗者や通信機の向こう側の全員も同じだった。

<そうよ、すっかり忘れてたわ! アタシ達がプロミス/48に墜落させられた時にも、あいつらにそんな捨て台詞吐かれたのよ!!>

 演説を聞いている間、ずっとモヤついていたものが一気に晴れたと言わんばかりに、興奮気味に叫ぶキャル。

 明らかに怒っている彼女の怒りに同調するように、オルガもドスの聞いた声で口を開く。

「つまりアレか、今回の一件とペコリーヌらを襲った連中は同じグループの可能性がある訳か……!!」

「かも知れないね」

「酷い! 運が悪かったらペコリーヌさん達と生きて出会えなかったかも知れないのに!」

「文句言ってやんなきゃ気が済まナイヨー!」

<のみならず>

<けじめをつけさせる必要があるかもな――<皆さん大変です! 座標地点近くにワープアウトする宇宙船を確認しました!>

 

 無線機から聞こえてきたみほの焦り声に続いて、宇宙船内のスピーカーから流れるアラーム音。

 オルガ達の大方予想通り、どうやら待ち伏せをされていたようだ。 みほからの警告を聞いたオルガは即座に返信する。

「数はどれくらいだみほ!」

<10機! かなり多いです! 皆さん気をつけて下さい、私達も援護します!>

<――――総員戦闘準備だ!! スペとテイオーはしっかり掴まってろ!!>

「分かってるよ!」

 言われるまでもなく2人はシートベルトの締め付けを強くして、この後来るであろう激しいドックファイトに備える姿勢を取る。

 一部の面々にとっては初めて経験する宇宙での戦闘に、否応なく緊張感が走る。オルガは操縦席から振り返って、後方確認を行う。

 モニターに映る敵影を示すUIは、ワープアウトを予測して既にデブリ帯の隙間に位置を指し示し――――瞬きしたその直後にそれは出現した。

 

 

<!! あいつらよ間違いない!! アタシ達を襲った『自由の声』の連中よ!!>

 キャルが叫ぶ。 その指差す先には、ワープアウトによって出現した宇宙船の集団がそこにいた。

 機体数はみほの分析通り10機ほど。 全員が以前オルガが登場していたラディアントピラーに代表される、『戦艦』タイプの宇宙船に乗り込んでいる。

 

<カモがノコノコやってきたかと思えば、そこにいるのは以前我々が惑星に撃墜した宇宙船だな!>

 声の主は驚くことにオルガ達の知る標準語でキャル達を煽り立てていた。 どうやら向こうとしてもペコリーヌらの乗るプリンセスストライクに見覚えがあるらしい。

<貴重な『エキゾチック』タイプの宇宙船だ! 中のトラベラーごと生け捕りにしろ!! 周りの連中もだ!!>

<ウガァ!! アトラスの使いっ走りを駆逐しろ!!>

 有無を言わさず、現れた宇宙船はこちらにビームを放ってきた!!

『フェーズビーム』だ、危ない!! シールドエナジーを剥がされる!!」

「全員散開しろ!!」

 

 オルガの合図とほぼ同時に、仲間達の宇宙船とISが蜘蛛の子を散らすように散開する――――束の間をおいて、敵の放ったビーム兵器がその場を通過する。

 ビームは先程までオルガ達がいた場所を薙ぎ払い、その威力でデブリの1つが吹き飛ばされて消滅した。 元々岩石採掘用のマインビームと類似した技術で作られ用途も準ずるが、兵器として用いれば宇宙船を保護するシールドエナジーを剥離し、吸収すら可能にする代物だ。

 ワンテンポ遅かったらビームが直撃し、危機的状況に陥る可能性すらあった。 そう考えるとゾッとするが、そんな感情をおくびにも出さずにオルガ達は敵機を見据えた。

「ペコリーヌとキャルの件では世話になったな……お礼はキッチリさせて貰うぜ!!

「シャルロットとラウラは特に気をつけて! 宇宙空間でシールドエナジーを切らしたら命取りだ!」

 ビスケットがIS組を気遣うと、真っ先にラウラが反応した。

<分かっている! 任せろ!>

<今度はこっちの番だよ! 行こうラウラ!>

 IS組2人が顔を見合わせ、シャルロットはISの背部からスラスターユニットを展開すると、高速で飛び回り攻撃をしかけてくる敵宇宙船に接近戦を挑む。

 ラウラもそれに続き、両手のワイヤーブレードを振るい、更にISのレールガンを連射して反撃に出る。

 しかし、敵宇宙船はシールドを展開しており、その攻撃を全て弾き返してしまう。

<厄介だな……互角のシールドに互角の機動力で飛び回る宇宙船というものは――――だが小回りなら!

 ラウラはブースターを噴射させ、急加速と急停止を繰り返し、不規則な動きで相手を翻弄する。

 

 瞬間加速(イグニッションブースト)、慣性を打ち消せるPICとブースターの出力を組み合わせた、ISであるが故の強力な瞬発力。

 敵が大回りに攻撃を回避しようとしたところを、小刻みな動きと素早い加速で先回り、同時に左手に握るISの量子ストレージから同じくフェーズビームの発射装置を取り出し、敵機に向けて発砲する。

 ビームは相手のシールドエナジーをそぎ取りバリアが完全に解除されたその瞬間、瞬時に武器をロケットランチャーに切り替えたシャルロットが援護射撃!

 放たれたロケット弾は追尾機能をもって敵戦闘機のパルスドライブに着弾! メインエンジンを破壊された機体の1つは立ち往生。

<礼を言う>

<どういたしまして>

 シャルロットとラウラは得意げにハイタッチする。

「いいぞシャル! そいつらは殺すな、生け捕りにしろ!」

<言われなくても!>

 

 

 

 

 

 

<ふーん。 オルガには悪いけど、アタシ達は手加減出来ないかも知れないわ――――って!!>

 話に割り込もうとしたキャル達だが、一瞬の隙を突かれ敵戦闘機の複数機に追跡を受けていた。

<ちょ、ちょっとペコリーヌ!! 逃げ回ってないでさっさと反撃しなさいよぉおおお!!!>

ご、ごめんなさい!! でもキャルちゃん、私宇宙船の操縦はやばいですよぉ~~~~!!!!>

 逃げに徹するプリンセスストライクを追い詰める、因縁の宇宙船達。

 初めてこの相手に撃墜された時に比べれば、遥かに磨き上げられたペコリーヌの操縦技術によりすんでの所で絶妙な回避運動を行うも、それは彼女自身があくまで操縦がもとより得意でない中で、せめて攻撃から逃げ切ることに特化して訓練を積んだからに過ぎず、実態としては多勢に無勢。

 地上においてはタンクの役割を担うほどに優れたスキルと戦闘経験で活躍出来る彼女だが、そもそも分野が違う彼女に苦手な宇宙船の操縦をした上で相手を殺さないように攻撃するのは土台無理な話だった。

「ああクソ、やっぱり付け焼き刃じゃムリがあったか! 仕方がねぇ<援護します!!>!」

 逃げ回るペコリーヌを追う2機の機体を、デブリ帯を縫ってイサリビからのビーム兵器による援護射撃がエンジンを貫く!

 ブルズアイ! たて続けにもう2発、今度は武器を貫き武装解除!

<ウ、ウガァ! こ、これでは戦闘が継続できん!>

<フシュー! してやられたか!!>

<ターゲットダウン!! ヒヤッホォォォウ!! やったぜぇぇぇぇ!!>

 今のはあんこうチームの優花里だ。 普段はですます口調で温厚な彼女だが、こと実戦となるとハイになる一面を見せる。 そんな彼女の役割は――――ズバリ砲手である。 それも超一流の。

 

<助かったわ……死ぬかと思ったわ>

<危なかった、ありがとう優花里ちゃん!>

<良いってことですペコリーヌ殿!>

<やるねぇ、見事な狙撃だったよ>

<セシリアと一度勝負をさせてみたいものだな>

<皆、気を引き締めて下さい! 敵はまだ8機残ってます!>

 みほからの激励に全員が直ぐさま戦闘を再開する。

「ペコリーヌ、無理に攻撃しようとするな! 敵を引きつけてさえくれれば俺とみほ達が迎撃する! 出来ることをやれ!」

<了解です!>

 あまりにも殺伐と慌ただしい戦場の空気。オルガ達はまるで自分達の命をチップに博打を打っているような感覚に襲われる。

 キャノピー越しにめまぐるしく動き回る宇宙空間に半規管をやられそうになる中、先程から沈黙を守っているスペシャルウィークとトウカイテイオーに違和感を覚えたタカキが振り返る。 2人は脚を踏ん張り、明らかにこみ上げる感情をこらえるような面持ちで目を見開いて、目前の戦場の光景をしかと焼き付けているようだった。

 

「……2人とも大丈夫かい? 見るに堪えないなら目と耳を閉じてた方が良いよ?」

 見かねたタカキが彼女達に気遣うも、スペシャルウィークとテイオーは首を横に振った。

「いえ、最後まで見届けます」

「コレが戦場なんだって、ボク達は受け入れなくちゃいけないんだ……!!」

 その言葉通り、2人はこの過酷な現実を受け入れようと努力していた。自分達は安全な場所にいたり危険から目をそらしたりして、仲間達の無事を祈るだけではダメなのだと。

 仲間達と共にあろうとする心意気にオルガは内心複雑ながら、彼女達の覚悟を尊重することにした。

 上手く口では言えないが、特にウマ娘達には殺伐とした光景を出来れば見せたくはない気持ちだった。 その為にはやはり、無血のままこの戦いをいち早く終息させなければならない。

 オルガは自分が背負っているものの重さを再認識すると、迫り来る敵機の群れを睨む。

 まずは眼前の敵を一掃しなければならない。それがオルガの導き出した答えだ。

「よし、この調子で全部やっちまえ!!」

 オルガは仲間達に活を入れると、機体を加速させて敵集団に突っ込んだ。

 シャルロットとラウラもそれに続き、随伴するように飛びながら敵戦闘機に攻撃を加えていく。

 相手のバックを取るように3次元的に飛び回りシールドエナジーを削り、エンジンを破壊。 そう言ったドッグファイトを繰り広げ2機、3機と撃沈する。

 

 

 

 

 

 

<ラウラちゃん! 敵を引きつけました!!>

「任せろ!!」

 プリンセスストライクを囮に引きつけるペコリーヌに対し、ラウラは彼女達を追い回す五月蠅いハエにフェーズビームとレールキャノンを発射する。 しかしこの機体は機動力に優れるのと、デブリ帯を複雑に飛び回るその動きが軍人上がりの高い射撃スキルを狂わせ、小憎たらしい敵戦闘機のエンジンから発せられるマゼンタの軌跡を憎たらしげに見せつけていた。

「クッ! ちょこまかと厄介な――――ならば!!」

 ラウラはシュヴァルツェア・レーヴェンを制止させ、ペコリーヌを追う敵をじっくりと見据えながら機体の出力を徐々に上げる。

 狙いはあのちょこまかと動き回る奴だ。 機動力が厄介なら、それを奪ってしまえば取るに足らない有象無象だ。

 そしてシュヴァルツェア・レーヴェンは、最大出力に達した瞬間に『それ』を解き放つ!

 

 

「――――()()()ッ!!!!」

 

 

 執拗にプリンセスストライクを追撃していた敵戦闘機が、突如一切の減速なく制止した!

<な、なんだ!? 機体が全く動かん!!>

<ふぇ!?>

<ど、どういうこと!? 敵の動きが止まったわ!?>

 これには止められた敵はおろか、追いかけられていたペコリーヌ達も舌を巻いた。

「――――くっ、流石にこのサイズの敵を止めるのは骨が折れるな」

 

 アクティヴ・イナーシャル・キャンセラー……通称『AIC』とは、ラウラの駆るシュヴァルツェア・レーヴェンに実装された、PICを発展させ敵の動きのを一切を封じる目的で使用させる制圧兵器。 これに補足されればどんな物体であろうともその動きを制限することが可能であるが、他ならぬ搭乗者であるラウラが目視で相手を補足かつ集中力が必要であることから、同時に複数の……それも大きな機体を止めるのが非常に困難であるという欠点がある。

 故に、宇宙船ほどのサイズをそれほど長く制止させるのは不可能ではあるが――――

 

 

「一瞬で、十分だ」

 

 

 刹那の判断が問われる戦場において、既に敵機のエンジンにレールガンを向けていたラウラが、最早それを憂慮する必要はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

<撃て!!>

 みほからの指揮で、シャルロットの追い詰めていた2機の宇宙船のエンジンがイサリビの援護射撃で撃ち抜かれた。

<ありがとう、みほ!>

<どういたしまして♪>

 イサリビへのシャルロットのサムズアップに対するみほの声色は、得意げで非常に明るいものだった。 オルガを巡る恋のライバルとも言える彼女達だが、一人の人間としてはとても相性の良い女友達であった。

「……これで全部ですか?」

「いいや違うなタカキ、奴さんは10機いた筈だ……」

 シャルロットが撃墜した2機、ラウラが3機、イサリビの援護射撃によって4機……後1機が見当たらない。

 オルガは神妙な面持ちで周囲を見渡した。 ひょっとしたら逃げられた――――そう思いかけたが、USGケリオンの動体センサーは確かに後1機、まだ宇宙船が残っていることを告げている。

「ならこのデブリ帯のどこかに……どこに行きやがった」

「気をつけて、オルガ」

 ビスケットはオルガを諌めるように注意を促した。

 ケリオンのレーダーに動きはない。 しかし数多のデブリ帯に視覚的に遮られて正確な位置取りを掴みづらい。 

 オルガは警戒心を解かずに、周囲を注意深く見渡す――――次の瞬間!

 

 

 

<隙を見せたな、トラベラー!!>

 

 

 

 突如ケリオンの左側面にあるデブリの1つから、隠れ潜んでいた最後の1機が突進する!

「しまった!!」

 ケリオン内の人員が、一斉に驚愕する。

<オルガ!! 皆!!>

 シャルロットが慌てて追跡するが、なまじ少し離れた位置まで移動してからの敵の不意打ちに、デブリ帯の数々を縫って進む事を強いられる。

 みほ達も慌てて援護射撃を行おうとするが――――

<撃って――――<ダメです! ここからじゃデブリに当たってかえって破片が散らばってしまいます!!>

 砲手からの反対にみほは慌てた様子で指示を取り下げた! 確かに下手に撃ったところでデブリの陰に隠れる敵機に対して有効打を与えられない。 ばかりか、当たったデブリが散らばりオルガ達のケリオンまで損傷しかねない。

「まずい!! この狭い空間じゃ小回りがきかない!!」

 慌てた様子のビスケットに、オルガは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 絶体絶命のピンチに、テイオー達も流石にパニック寸前に陥りかけていた。 そんな時、彼女がバックパックのラックに引っかけていたマルチツールを見つける。

 オルガは問いかけた。

「テイオー、そのツールに『ブレイズジャベリン』は実装しているか!?」

 う、うん。 一応精密射撃の訓練用にってラウラが「悪い、ちょっと借りるぞ!」

 オルガはテイオーの同意を待たずに、ストック付の拳銃とも言えるそれをふんだくる。

「ダ、ダンチョー!?」

「オルガさん、どこに行くんですか!? そっちは――――」

 仲間の制止を無視して、オルガはマルチツールのトリガーを引いたまま()()に駆け寄ると、腰の安全帯を出入り口側の手すりに引っかけた。

 

 

 そう、ケリオン搭乗口の左側ハッチに。

 

 

<クケケケケケケッ!!!! 冥土に行けエエエエエエエエエエッ!!!!>

「!! ダメだ、もう回避出来ない!!」

「皆、衝撃に備えて!!」

 ビスケットとタカキの呼びかけに、スペシャルウィークとトウカイテイオーが共に身を縮め、この次に起こりうる惨劇になけなしの抵抗を試みる!

<オルガ団長!!>

<オルガさあああああああああん!!!! みんなあああああああああああ!!!!>

<やめろおおおおおおおおおおお!!!!>

 最早仲間の救援も間に合わない! 敵機がフェーズビームとダメ押しのロケットランチャーの発射態勢を取りながらケリオンの横っ腹に迫ったその時!

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

<<え??>>

 

 敵機のパイロットと後を追ってすんでで間に合わなかったシャルロットが間抜けな声を上げる。

 

 そしてオルガはマルチツールを向け、その赤く光を溜め込んだ銃口を敵機のコックピットにめがけ、絞った引き金を解き放つ!!

 

 細く鋭く、赤い収束されたプラズマチャージ光が解き放たれ――――敵機コックピットを貫通!!

 

 超高温のイオン化ガスを一極に集中させ放射するチャージ兵器、ブレイズジャベリンの真骨頂である。

 

<ゲェエッ!?>

 

 それはすんでの所でパイロットの頬をかすめ、縦一直線に機体を貫通。 メインエンジンの制御基板をも溶解し、機体はケリオンをかすめるように明後日の方向へ飛んでいくと、側にあった大きめの小惑星に激突!

 

(危ねぇ所だった……感謝するぜ、キリコ)

 かつて異世界の旅で出会った、『キリコ・キュービィー』なる愛すべきAT乗り(最低野郎)が用いた……機体ごと押し倒されつつも、自らハッチを開け装甲を貫通する携行兵器(アーマーマグナム)で反撃、撃破した戦法をオルガは土壇場で思い出していた。

 オルガは呆気に取られて宙に浮かんだままのシャルロットに向き合うと、不敵に笑って見せた。

「へっ……こんな所じゃ終われねぇ、だろ?」

<――――オルガ!!>

 

 

 

 

 

不敵に笑うオルガを、仲間達の歓声が優しく出迎えた。

*1
第7話参照

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