No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~ 作:Easatoshi
フリージア星系 新しいディスカバリー
■■惑星 ―差し迫ったコア爆発―
気候 予測できない大火
センチネル 支配を確立
植物 生命レベル 低4
動物 生命レベル 中2
「……何か思いっきり火山が噴火してるんだけど」
「こ、こんくらいなんてこたぁねぇ「声がうわずってますよオルガさん」
大気圏突入後、厚い雲を掻き分けて地表へ降り立ったオルガ達を迎えたのは灼熱の大地だった。
空には焼き付けるような恒星が燦々と輝き、地上では真っ赤な溶岩があちこちから噴き出していた。 気温も当たり前のように摂氏50℃を超えている。
着用している宇宙服の『危険防御ユニット』のおかげで平熱は保たれているものの、バイザー越しに窺える熱気のようなものが、オルガ達をあるはずの無い暑さを通り越す熱さの感覚に包み込んでいた。
「ゲェェ……この惑星に立ってるだけでゆで卵が出来ちゃいそうだよ……宇宙服のおかげで熱くはないけどさぁ」
「さっきの惑星も中々だったですけど、50℃越えなんて……こんな所に長くは居たくないですよ……とりあえず、早く目的地探しましょうか」
「……だな」
オルガはナビデータの指示通り『マルチツール』内の『分析レンズ』にある追加機能、『ターゲットスイープシステム』を起動する。
曰く現在の目的を達成する為に必要な座標を、より詳細に割り出すツールとの事だが――――センサーの共鳴によっておおよその方角を特定しツール掲げてみると、早速そうと思わしき座標を特定した。
「コイツは本当に文字通りの万能機材だな」
「ここから大体2キロ……そんなに離れてないですね」
「ちょっと地形の凹凸はあるけど、軽く走って行こうよ!」
「いいぜテイオー!競争するか!?」
「いいよ!」
そう言うなりオルガ達は走り出した。 丘に谷間や地面にある石や奇妙な植物、障害物だらけではあるもののウマ娘のトウカイテイオーとスペシャルウィークは、宇宙服という重装備に関わらずすんなりと走り抜けていく。
「流石に速ぇなお前ら! G1ウマ娘は伊達じゃねぇって事か!こりゃあ負けてらんねぇな!!」
「えっへん!!ボクは最強だからね!!」
「って言うか、当たり前のようにオルガさん付いてきてるんですね! 今更って気もしますけど!」
ウマソウルによって人知を超えた力を発揮できるウマ娘の膂力は、それこそ成人男性相手であっても軽々と超えてしまう。 特に走力に関しては時速70キロを超える俊足……の筈なのだが、オルガは当然のように息も切らさず彼女達について行く事が出来ている。
「そうだよねぇ。 何で人間なのにウマ娘と同じ速度で走れるんだろ?」
(飛ばされまくった先でゲーム感覚で変な能力手にしまくってたら、多少はな)
何を隠そう、オルガは彼女達ウマ娘の居る世界に転移した際、あろう事かウマ娘と共に重賞の大舞台に立って共に走り抜けた事があるのだ。 幾多の転生・転移を繰り返した影響であろうか、彼自身も予測が付かない人知を超えた能力を宿しているのだが……。
「……お、どうやら目的地が近づいてきたみてぇだ……て」
三人の目先にあったのは、広場の真ん中に置き去りにされたであろう色取り取りの貨物類と、円錐の頂点を切り分けたような形状の火花を噴く機械だった。
信号の発信源はこの機械からのようで、オルガ達は駆け寄って機械を検める。 どうやら機械の中にある端末から情報にアクセスできるようだが、蓋の部分に脈動する不気味な緑色の『残留粘体』がこびりついており、取り除かなければ開かないようだ。 それは一緒に置かれている貨物の緑色のケースも同じで、こちらは『さびた金属』がケースの口の稼働部にかじりついているようだ。
「コイツは俺が回収する。 スペとテイオーはそっちの箱でも開けておいてくれ」
「いいよー」
「わかりました」
オルガは機械の方へ歩み寄り、その側面に張り付いている粘液をインベントリにしまい込んで丁寧に除去していく。
すると中からは端末が出現し、誰かに宛てたのだろうか次のようなメッセージが残されていた。 オルガはそれを解読する。
「……?」
突然割り込んだ数字の羅列にオルガは首を傾げる。 しかしそれも束の間、表示された次のメッセージに意識を向けた。
<エントリー#4925C:燃料がもう無い -kzzkt- ステーションに辿り着けなかった。>
<危険防御機能も落ちている...これしか方法はない -kzzzkt- 地下に... -kzzktzzkt- 設置した『基地のコンピューター』>
ログメッセージの他に、文中で触れた『基地のコンピュータ』ともう一つ『地形操作機』の設計図のデータも入っていた。
前者は誰のものでもないこの惑星の土地の一部に対し、所有権の主張と基地建設の支援機能が実装されており、後者はマルチツールに装備する事で、文字通り地形を操作して穴を掘ったり土を盛り付けたり、地面に埋まっている資源の鉱脈を掘り返したりする事も出来るデバイスのようだ。
そしてこの基地のコンピュータのデータには、使用者の痕跡とも言えるログデータが残されている事も確認できた。
(まあ、コイツの中身は後で確認させて貰うか)
「スペ、テイオー! 終わったか?」
「はい、何だか色々な物資が入ってました♪」
スペシャルウィーク達は回収した物資をオルガに見せる。 そこには炭素やソジウムの精製物に二水素ゼリー、そして鈍色に輝くヒトと爬虫類を合体させたような生物の小さな像があった。
「それボクが見つけた奴なんだ……なんだろコレ?」
「テイオーさんが見つけたの? う~ん……」
「ま、特に害は無さそうだし回収はしておくか……ッ!!」
考え込むトウカイテイオーの背後に、奇妙な四足歩行の大柄な生物が回り込んでいるのを見たオルガの背中に悪寒が走る。 それはHUDに赤地に白い蹄のタグが表示されており――――
「テイオー! 後ろだ!」
「ふぇ?」
慌ててマルチツールを引き抜くオルガだが時既に遅し、生物は大きな口を開けてテイオーのまんまるとした可愛いお尻にかぶりついた!
「ピエェェェェェェェェェェェッ!!!!」
「テイオーさん!!」
「この野郎ッ!!」
スペシャルウィークが引き剥がしに掛かるより先に、オルガはブースターをかけながら生物の首根っこにめがけて蹴りを入れ、テイオーの尻にかぶりついていた大きな口を強引に引き剥がす。
流れるように押し倒し、倒れた生物の眼孔にマルチツールの銃口を突きつけ、容赦なく『マインビーム』を叩きこむ! ビームな眼孔を通して生物の脳を貫通、即死した。
「ハァ、ハァ、悪いが、仲間を食われるわけにはいかねぇんだ……」
息を整え、汗を拭うような仕草を見せるオルガのインベントリに『猫レバー』なる肉片が回収される。
「お、オルガさん……!!」
はっとした様子でスペシャルウィークの方を振り返るオルガ。 突然の出来事に恐怖を覚えているようだが、それは何もテイオーにかみついた生物に対してだけではないようだ。
やってしまった。 どうやら容赦の無い戦いぶりにスペシャルウィークに不安を与えてしまったようだ。 オルガはバツが悪そうに目線をそらす。
「悪い、やり過ぎた」
「! お、オルガさんは何も悪くないです! その……ちょっと、怖かったですけど」
後ろの方の言葉は小声だったが、オルガの耳にはしっかりと届いていた。 つい忘れてしまったが、彼女達はこのような鉄火場には慣れていないのだ。 生き残る為とは言え、余り乱暴な戦いぶりを見せる訳にはいかないと心に刻み込んだ。
「そ、そうだ! テイオーさん大丈夫!?」
「! 大丈夫かテイオー、気分はどうだ!?」
「ピエェ……肉は食いちぎられなかったけど痛いよぉ」
幸い宇宙服に傷一つ付かず、トウカイテイオーの肉体的なダメージも『生命維持システム』のシールドが防いでくれたようだ。 しかし痛み自体はあるようで、かまれた尻をさするテイオーの目には涙が溜まっている。
「はあ、しくじったぁ……まさか地球外生物なんてのが居るとはな――――」
<警告:センチネルドローンが作動しました>
「「えっ?」」
「あ?」
オルガ達が振り返ると、宙に浮かぶ複数体のオレンジ色をした一つ目のような機械が三人を囲んでいる。
それらは瞳のようなレンズの部分を赤く光らせ、オルガ達をじっと見つめているようだった。 警告のメッセージといい、控えめに言っても友好的な雰囲気は感じられない。
<警告、抑制手段を実行>
次の瞬間オルガは二人に覆い被さった。 間髪入れず取り囲んだドローン達の数体が、オルガにめがけて赤い光線を発射する!
「グゥッ!!」
「だ、ダンチョー!?」
「何やってるんですか! オルガさんッ!?」
「――――アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
背中を撃たれながらもオルガはマルチツールのマインビームを、発砲してきたドローンに発射! ビームは命中する。
「なんだよ……結構当たんじゃねぇ――――か!?」
反撃も空しく、オルガの放ったマインビームは先程の生物相手と異なり、大したダメージは与えられていないようだ。
「……と、止まるんじゃねえぞ」
「だ、ダンチョーーーーーーーー!!!!」
オルガの背中に、希望の華が咲いた。 しかしドローン達は攻撃の手を緩めない、トウカイテイオーはスペシャルウィークと顔を見合わせ、全速力でその場を離脱する事とした。
ドローンは執拗に三人に対し、光弾の追撃を行う。 全速力で走り抜ける二人の側スレスレに弾がかすめ、死の危険を否応なしに煽り立てた。
「どうしてええええええええ!? ボク達襲われた側なのにいいいいいいいい!?」
「助けておかあちゃああああああああああん!!!!」
悲鳴を上げながらかつて無いスピードで逃げ回るウマ娘達。 そのスピードは悪路にありながらレーシングスピードをも上回る速度だったが、計測している者は誰も居ないので無論その事実には気づかないし気も配れない。
背後からの攻撃に当たらないよう、オルガをお姫様抱っこのように担ぐスペシャルウィークだが、流石に成人男性一人分の重量は重いのか、いかなトップアスリートであっても直ぐに息切れを起こしてしまいそうだった。
幸いにして、ドローンの機動力を持ってしてもウマ娘の必死の全速力には及ばなかったらしい。 HUDの警告を見ればドローンの警戒は解除され、無事に追跡を撒いたらしい事が窺えた。
スペシャルウィークは過呼吸の余り倒れ込み、オルガを放り出してしまった。
「だ、大丈夫二人共?」
「さ、流石に疲れましたよぉ……」
「ぐ、うう……!! ま、また死んじまったのか俺は」
背中を撃ち抜かれた衝撃により死亡したようだが、オルガの固有の能力がそうさせるのか、無事に蘇生を果たしたようだ。
撃ち抜かれたはずの宇宙服も、当然のように修復されている。
「なんて言うか、レースの時より速く走った気がしますよ」
「ホント、これ芝の上でやってたらレコードタイム出てたんじゃないかな――――」
<気象情報:嵐が接近中>
「「「今度は何だ(よ)(ですか)!?」」」
三人が見上げると、そこには巨大な炎の壁が迫っていた。
温度も見る見るうちに上昇し、ただでさえ高かった気温が優に100℃を超え始めたではないか! 『危険防御システム』の残存エネルギーも、見る見る内に減少を始めていった。
「どうしよう!? このままじゃボク達焼かれちゃうよ!!」
トウカイテイオーが叫ぶ。
オルガは歯噛みし、迫ってくる業火を前に解決策がないか思考を巡らせた。 それはスペシャルウィークも同じだった。
「えーっと! 洞窟か何かないかな!?」
「! どうしたスペ!?」
オルガが尋ねた。
「こう言う嵐をやり過ごすには、洞窟の中に隠れるのが良いってナビゲーターが言ってたんです! 実際『気密シール』を探しに行ってる時に嵐に見舞われて、それで――――」
辺りを見渡すが、山々が重なりつつも洞窟のような谷間は全く見当たらない。 スペシャルウィークがそうやって難を逃れたのは嘘ではないのだろうが、しかし肝心の洞窟がないのでは――――そう思った所で、オルガはある事を思いだした。
「……確かさっきの設計図に!!」
オルガはマルチツール用の追加デバイスに地形操作機の設計図を回収した事を思い出した。 すぐさま実装の為のレシピを確認すると、『カーボンナノチューブ』×2と『二水素ゼリー』×1が必要なようだ。 幸いにして両者共にスペシャルウィーク達が回収した貨物の中にあった資材で賄えそうだ。
「おい、何とかなるかも知れねぇ! さっきの資材を俺にくれ!」
オルガはスペシャルウィーク達に資材を要求、一通りまとめて受け取ると早速必要なそれをマルチツールに実装する。
「モードを切り替え……これか!」
オルガが操作を行うと、マルチツールの銃口から赤い波形が拡がり、それが地面に当たるや否や岩盤があっさりと破砕され、大穴が空いた。
「す、凄い!」
「おっし、これなら何とかなるぜ!」
ツールの引き金を引き続け、オルガは盛り上がった地面に深々と穴を開けていく。 掘り進めるも周辺の縁に強度が保たれているからか、割かし雑な穴の開け方にも関わらず崩落の危険性は無さそうであった。
「お前ら! この洞窟に逃げ込め!」
そうして、三人は掘ったばかりの洞窟へと逃げ込んだ。
洞窟の中は荒れ狂っていた嵐の中にありながら、不気味なほどに安定した空間だった。
その光景はまるで嵐の中にポケットが空いているかのようにさえ思える程に。
オルガは不思議に思いながらも、ひとまずは嵐が過ぎるまでここで待つ事に決めた。
「……はあ、助かったぁ」
「一時はどうなるかと思ったよぉ」
「嵐が過ぎ去るまで、少し休憩しましょう」
三人は安定した気温の洞窟の中で休息を取る。 危険防御システムも、常温の空間に置かれる事でリチャージされているようだった。 一方で嵐は未だ収まらず、外は相変わらず燃えさかる火炎に包まれている。
「あの情報に書かれてた『センチネル』って、さっきの危険なロボットの事だったんですね……」
「放射能に火の壁……宇宙ってこんなに危険な場所だったんだね」
トウカイテイオーが言った。
「ああ、地球どころか火星でも見た事もなかったぜ。 ……テラフォーミングもロクに進んでねぇようだ」
オルガも両手を後ろ手に付きながら答える。 そんな中、おずおずとスペシャルウィークがオルガに話しかけてきた。
「あの、オルガさん……さっきの」
「! ああ、俺も済まなかったな。 ああ言う修羅場になれてねぇってのに、あんな戦い方して怖がらせちまったみてぇだ」
スペシャルウィークは首を横に振った。
「いえ! 悪いのは私です、助けて貰ったって言うのにあんな風に……」
「気にすんな」
オルガがはにかんで答えた。 彼の表情はどこか晴れやかだった。
そんな彼に、スペシャルウィークは尋ねた。
「……オルガさんって、何者なんですか?」
「ボクも気になってたよ。 こんな状況なのにテキパキ動いてさ、それに火星とかテラフォーミングって……まるでSF作品の住人みたいな口ぶりじゃん」
「それに……」
スペシャルウィークが一テンポ開けてから言葉を続けた。
「どうしてドリームトロフィーリーグの後、私達の前から居なくなったんですか?」
それはスペシャルウィークにとって、ずっと聞きたかった疑問だった。
彼女にとってはオルガは幼少を共に過ごした家族同然、何ならもう一度共に走りたいとさえ思っていた。
だが彼はその願いを裏切り、そして忽然と姿を消してしまった。 それはトレセン学園で知り合ったトウカイテイオーも同じだった。 何故なのか、知りたくて仕方がなかったのだ。
「ダンチョーだけじゃないよ。 ミカやマッキーだって居なくなっちゃったし……ボク達仲間じゃなかったの?」
『ミカ』に『マッキー』……『三日月・オーガス』に『マクギリス・ファリド』、それはオルガが元いた世界の住人にして、オルガと共に異世界を巡ってきた戦友。 特に三日月は子供の頃から運命を共にしてきた兄弟同然の相棒だ。
寂しげに言うトウカイテイオーの言葉に、スペシャルウィークは俯いた。 別れさえ告げず皆と離れ離れになった事に対して、スペシャルウィーク達は心に少なくない傷を負っていた。
オルガは、スペシャルウィーク達の気持ちを知ってか知らずか、静かに語り始めた。
「……話せば長くなるんだがよ――――」
オルガは話した。 自分がスペシャルウィークの居る世界でもない、どこか別の科学の発達した世界の人間だと。 孤児の生まれで生きるだけでも過酷を極め、時に手を汚さざるを得なかった事を。 傭兵になり、出会えた仲間達と共に『鉄華団』を築き上げるも、成果を出そうと生き急ぐあまりに道を踏み外し全滅してしまった事を。 それを見かねた神によって生き返るもその手を振り払おうとして逆に呪いを受けてしまい、異世界への転生や転移を重ねるようになった事を。
そして訪れた世界の問題を解決すれば、否応なく別の世界に飛ばされてしまう事も。
「……なんてな、こんな所だ」
スペシャルウィークとトウカイテイオーは黙って聞いていた。 オルガが話を締めくくる。
「……」
「……」
二人とも、何も言わなかった。その顔には、様々な感情が入り交じっていた。
「嘘くさい話かも知れねえが、俺は紛れもなく本当の事を話したつもりだ……。 ……失望したか? 生きる為とは言え犯罪まで手を染めた事もあった。 仲間でさえ危険に晒しちまった。 その上自分は異世界人だとか突拍子のない話までしちまって……正直、狂った奴だって思われてもおかしくねえよな」
過去を思い出し、疲れたようなオルガは自嘲気味に笑う。しかし、スペシャルウィークは首を横に振った。
「色々辛かったんですね。 オルガさん」
「大丈夫、何があってもボク達はダンチョーの味方だから」
「……え?」
首をかしげるオルガ。 薄汚れた過去と、自身ではあまりに情けない失敗をしたと思っている鉄華団のくだりを話した事で、軽蔑されるやもと思っていた自身には意外な反応だった。
「確かにオルガさんも、生きる為に悪い事もしました。 焦って酷い失敗もしちゃったかも知れない……でも、自分一人で全部を抱え込むやり方が悪かっただけで、皆の為にだれよりも一生懸命だったオルガさんを嫌う理由はありません!」
「異世界の話もそうだよ! ダンチョーが嘘ついてる訳じゃないって事はよく分かるよ! こんな訳の分からない世界に飛ばされて、それを手を差し伸べてくれたのはダンチョーだよ!? 今ボク達がこうして生きていられるのもダンチョーのお陰なんだ!」
「……だから、次はもう焦ったりしなければ良いんです。 同じ間違いをしないようにすればいい」
「もし次にダンチョーが間違ったことをしようとしたら、ボク達が蹴っ飛ばしてでも止めてやるもんね!」
必死の様子で言い募る二人の姿にオルガは本心だと受け止める。 本当に自身を嫌ったりしないのか? 答えを待っていると束の間を置いて、彼女達は穏やかな口調でその答えを口にした。
「「オルガさん(ダンチョー)、私(ボク)達は『
オルガの目頭に熱いものがこみ上げる。 宇宙服のバイザー越しで見られづらくはあるものの、目が潤みそうになるのをぐっとこらえ、オルガは笑みを浮かべた。
「……サンキュ」
「「どういたしまして!」」
スペシャルウィークとトウカイテイオーが微笑む。 オルガの中でわだかまりが少し溶けた感じがした――――
突如、洞窟の外から少女二人の大声が響き渡った!
ふと気になって洞窟の外に目をやると、そこには空中に浮かぶ人型のような何かが――――正確に情報を伝えるのなら少女の身体に機械の大柄な手足、背面に浮かぶブースターを噴かせながらこちらに飛び込んできた!
「な、何あれ!? 生身の女の子浮かんでるよーーーー!!」
「大変! こっちに向かって来てます!!」
(――――あれは!?)
オルガはその姿に見覚えがあった。 しかし今はそこに意識を向けている場合ではない。 自分はともかくウマ娘二人は奥に避難させなければ――――。
何とかスペシャルウィーク達を押し入れるように洞窟の奥へ追いやると、直後オルガの背中に二機の人型機械が衝突した。
「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「ダ、ダンチョーーーーーーー!!!!」
洞窟内に激しい地響きと土埃が舞い上がり、オルガの姿が見えなくなる。
やがて煙が晴れた時、そこには地面に横たわり真っ赤な希望の花が咲き乱れるオルガの姿、そして空から突っ込んできた二機の人型の機械があった。
「だからよ……止まるんじゃねえぞ」
「また死んだああああああああああああ!!!!」
トウカイテイオーが叫んだ。 いずれ復活するとは分かっていても、やはり目の前で惨死体を見せつけられたのではたまったものでない。
「あ、あの……そちらの人達は大丈夫ですか?」
スペシャルウィークは、飛び込んできた二名に声をかけた。
二名……金髪で後ろ髪を一本止めにした、オレンジの装甲に身を包んだ少女ともう一人、銀髪赤目で片方を眼帯で塞いだ黒塗りの機体を纏う少女。
銀髪の少女が、こちらを見るなり謝罪する。
「す、すまない……無茶なのは分かっていたんだが、もう少しでシールドエナジーが切れそうで、やむなくな……」
「えっと、怪我とか無かった? ごめんね、随分怖がらせちゃったみたいで」
「いえ、私達は大丈夫なんですけど……その」
スペシャルウィークは少女達に対し、視線を下敷きになっているオルガに向けて誘導する。
「あなた達の下敷きになってる、オルガさんが……」
「「え?」」
二人がオルガの方を見ると、オルガは束の間を置いて蘇生したのか、ゆっくりと身を起こす。
それを見た二人は、驚愕に目を丸くする。 一見即死したと思われた男が当然のように復活したのだから――――そう思われたのだが。
オルガが二人を見て、苦笑しながら言った。 そんなオルガの姿を見るや否や、二人の少女は表情が明るくなった。