No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~ 作:Easatoshi
この世界における初めての宇宙における戦いはオルガ達の完勝に終わった。
敵機10機、全機撃墜。 お互いのパイロットに一切の死者は出さず、文句なしの戦果だった。 そんなオルガ達は拿捕した敵パイロット達に投降を促し、現在はイサリビの宇宙船ドック内に連行していた。
そんなオルガ達を、イサリビ内に残ったみほを初めとする戦車道の面々が出迎えた。
「オルガさん! お疲れ様!」
「素晴らしい戦果ですね! いやはや、これだけ状態の良い宇宙船を大量にサルベージ出来れば、当分食べるには困りませんよ!」
謙遜する彼女達に、オルガはフッと笑う。
「何言ってやがる。 僅差とはいえ一番撃墜数稼いだのは戦車道組だろ」
「そうですよ! 私なんか終始助けられっぱなしです! ……もっと活躍出来なくちゃやばいですね」
危機感を募らせるようにむむむっと口を出すのはペコリーヌだった。 宇宙船の操作が得意でないだけで、こうやって仲間に攻撃のチャンスを作り、無事に生還出来ただけでも上出来だ。 ここにいる誰もが彼女を足手まといなどとは思っていない。
「得意不得意はあるんだよペコリーヌ、君だって鉄華団がやって行くには欠かせない人なんだから、気にしないで」
「ありがとうございますビスケット君。 でもそれはそれで、いざという時に宇宙船でも戦えるようにならなきゃ行けません」
「……焦らずに、ゆっくりやっていけば良いよ。 だよね、オルガ?」
オルガは一言「おう」とだけ応えた。
「……さてと」
仲間達は改めて、襲ってきた不埒な自由の声の海賊達に厳しい視線を向けた。 怒りの程度は様々だが、鉄華団の皆が揃って怒りを覚えていることは確かだ。
捕虜とした敵達を取り囲むように詰め寄り、威圧するオルガ。 それに対し詰め寄られたリーダー格であろうゲックは、依然としてふてぶてしい態度を見せつけるように、余裕たっぷりの表情を浮かべている。
「落とし前だと? 一体何のことを言っている?」
「とぼけるんじゃねぇ、聞けば以前にウチとこの宇宙船を襲撃して、墜落させた因縁があるらしいじゃねぇか。 二度もちょっかい出しといて知らぬ存ぜぬが通ると思ってんのか?」
「フン、アトラスの言いなり風情が粋がるな。 それに墜とされたのはそっちの連中に力が無かったからだ。 良い子ちゃんぶって身も守れん貴様らが悪いのだ」
「あぁ!? アトラスだぁ!? テメェふざけてんのか、何を訳の分からねぇこと言ってやがる!」
激高してつかみかかろうとするオルガだが、それを手で制したのはビスケットだった。
「オルガ落ち着いて、ここでカッとなったら相手の思うツボだよ」
「チッ……分かったよ」
オルガは舌打ちしながら引き下がった。しかしそれでも、その鋭い目つきで相手を睨みつけるのを止めない。
「大丈夫、僕に任せて。 タカキ、頼むよ」
タカキははにかみながら首を縦に振ると、先程鹵獲した敵の戦闘機の1つに足を進めた。
それを見届けたビスケットは改めて敵のゲックに向き合うと、話を切り出した。
「随分、流暢に僕達と言葉を交わせるんですね」
「ハッ、何を言い出すかと思えば……当然だろうな、我々の新たなるリーダーも貴様らのようなスムーススキンで似た言語を話すからな……口を開けば訳の分からんエクソクラフト? っぽい何かを押しつけてくるがな」
「……だからペコリーヌとキャルが『自由の声』って名前を覚えてたんだ」
そう言われて、ペコリーヌら自身は勿論オルガも合点がいったようだった。 確かに彼女らはこの世界に来た時、この宇宙に遍く繁栄する三種族の言語を習得しておらず、対話と言えば
翻訳機という優れた代物はあるが、わざわざ撃墜するつもりの相手にそんな気遣いをする必要も無いとなれば、答えはひとつしか無いのだから。
「そう、それじゃあ話が早い……僕達もそのリーダーに会わせて下さい。 同郷のよしみなら、話が合うかも知れませんし」
「バカを言うな。 何故お前達を我らが閣下に会わせる必要がある? それにこの宙域は自由の声の勢力圏、直に我々の仲間が異変を察知してここにやってくるわ!!」
ゲックは高笑いをしながらそう言うと、彼の仲間達も釣られて余裕ぶった笑みを浮かべ始めた。
聞きに徹していたオルガ達も流石に我慢出来なくなったのか、一歩前に踏み出そうとする。 しかしビスケットはそれも手で制するとゲック達に冷静に返す。
その表情には焦りの色すら伺えない。 まるで相手の言ってることなどまるで意に介さないかのように。
「……そうですか、それじゃあ貴方達をこの船に留めておく理由は無い。 解放してあげましょうか」
「「「「「「「「「「「ビスケット(君)(さん)!?」」」」」」」」」」」
女性メンバー全員が驚愕の声を上げる。しかしビスケットはやはり平静なままだ。
そんな皆のやり取りをただ1人、オルガだけはここに至っては一瞬気を取られて間の抜けた表情を浮かべた後に……ニヤリと笑みをこぼした。
(ああ、そう言う話か)
彼等の反応に、ゲック達は虚を突かれたのか一瞬たじろぐもすぐにまた強気に返してきた。
「ク、クク……力の差が分かったと言う事かな?」
「ええ、それはもう嫌というほどに」
「ビスケットさん、準備終わりましたよ?」
そんな中で、鹵獲した宇宙船の中からタカキが何やら部品の幾許かを抱えて下りてきた。
「ビスケットさんの望んだ通り、宇宙船のコックピットの機材の一切合切を取り外してきました。 これでこの人達全員が1機に収まりますね」
「ありがとうタカキ。 デブリだらけのこの宙域に放り出すのはかわいそうだし、航路からもうんと遠くに離れた場所で解放してあげよう!」
「ゲッ!?」
ゲックは驚愕した。 それもその筈、タカキが機材を取り外したと言うのは彼が乗っていた戦闘機であり、コックピットの横には座席から操縦桿……そしてタカキが脇に抱えているのは『シンギュラリティコア』と言う、ハイパードライヴの現在位置とワープ座標の計算を司る部品。 更には無線機や遭難時用のビーコンもそこにあったのだから。
ビスケットは穏便を装っているものの、タカキとのやり取りも含めこれが意味するところは最早語るまでもないだろう。
「命は大事ですし、言った通り
「! う、うん」
「……ふむ。 正規軍でもなく、そもそもジュネーヴ条約も無いからな。 妥当な捕虜の扱いだ」
収納したISを再度展開し、彼らの仲間1人の肩に背後からアームを添えてやると、あからさまに震え上がった素振りを見せる。
どうやらなまじ言葉が理解出来る分、ビスケットが発した言葉のニュアンス……決してタダでは済まない事を理解してしまっているのだろう。
「やめろ!! 離せ!!」
「き、貴様ら!! 我々を宇宙の片隅に置き去りにするつもりか!?」
「人聞きが悪いこと言わないで下さいよ。 命は大事ですから、文字通り解放してあげるって言ってるじゃないですか」
「ま、運が良かったら親切な通りすがりが助けてくれるだろうな……運が良けりゃ、な?」
ここぞとばかりにオルガも煽りを入れると、ゲックをはじめ敵達の動揺がますます大きくなる。 最早パニック寸前にあると言っていい。
「どこのどいつが命が大事と言って、空っぽの棺桶に詰め込んで宇宙に放り出すのを良しとするんだ!! ふざけるなよ!?」
その瞬間、ビスケットは目を見開いてゲックに詰め寄った!
「ゲッ!?」
ビスケットの気迫に押されたのか、ゲックは思わず後ずさってしまう。 彼の後ろではシャルロットとラウラが控えているのだ。 逃げることは叶わない。
周囲で見ていたスペシャルウィークらもビスケットの豹変に目を丸くしている。
「散々俺達を襲っておいて殺される方が悪いだとッ!? 身勝手なのもいい加減にしろッ!!」
そこからビスケットはなおもヒートアップし、両手でゲックの胸ぐらを掴んで前後に激しく揺する。
「言え!! 貴様等のアジトは!? 本拠地はどこにある!! 俺達は怒っているんだ、言わないと許さないぞ!!」
「グエッ!! グエッ!! グエッ!?」
「さっさと吐けよ、俺達もそこまで気は長くねぇんだよ……ビスケットの望み通りこのまま
「グエェッ、わ、分かった!! 言う通りに、いうとおりに、する――――」
唐突に、オルガのエクソスーツに謎の通信が入った。 怪訝な表情を浮かべながらも応答すると……。
<そろそろ許してはやってくれないか? 不出来だが私の大事な部下に違いはないのだよ>
「! その声は!!」
無線機越しの聞き覚えのある声に、オルガは思わず反応した。
突然の通信に声を上げたことでこの場にいた皆がこちらを振り返る。 ビスケットも締め上げていたゲックを離してやると、ゲックは尻餅をついてむせ込んだ。
構わずオルガは黙って無線を全員に見聞き出来るよう、ホログラム通信に切り替える。
オルガと座り込むゲックの間に、その男の立体映像が姿を現した。
その瞬間、その場にいたオルガ以外の全員が驚愕の声を上げる。
「ゲゲッ!? か、閣下!?」
ゲックが男の姿を見た瞬間後ずさる。 それは彼の仲間も同様だった……予想はしていたが、どうやら『彼』こそがゲック達の、自由の声のボスだったらしい。
「……やっぱりアンタだったのか」
現れたその男は長身でスマートな金髪翠目の容姿端麗。 知的さと蠱惑的な色気さえ感じさせる、素性を知らぬ女性なら一目惚れしてしまいそうな人間の白人男性であった。
そしてオルガのみならず、ここにいる鉄華団の面々全員がその男を知っていた。
何故ならば、彼こそが原初の鉄華団を破滅に導き、異世界の旅の切っ掛けを作ったとも言える……ある意味で全ての元凶とも言える男だったからだ。
『マクギリス・ファリド』……決してブレない鋼の意思、自他共に認めるバエルバカのお出ましだ。
もう何度やったか分からないやり取りを、オルガは脱力したような素振りで返した。
だが当のマクギリスは余裕綽々と言わんばかりの笑みを浮かべている。
<久しぶりだなオルガ団長。 私の部下が君の仲間達に粗相をしたようで済まなかった>
「全くだ。 おかげさんで随分と危ない目に遭わされたぜ……誰も死なずに済んだのは幸いだった、誰もな」
震え上がるゲックに憎々しげな目線を送ると、ゲックは強く身を震わせる。
<こちらの管理不行き届きであると言わざるをえない。 責任者であるこの私がしっかりと
「ヒィッ!!」
<罪のない人々を襲うなと強く言い聞かせておいたはずだが……君たちには
「お、お、おおおおお許しをぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!! アグニカコワイバエルコワイアグニカコワイバエルコワイアグニカコワイバエルコワイアグニカコワイバエルコワイ」
「フ、フシューッ!! バエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエルバエル」
「ウガァッ!! アグニカカイエルノタマシイアグニカカイエルノタマシイアグニカカイエルノタマシイアグニカカイエルノタマシイアグニカカイエルノタマシイ」
意味深なマクギリスのお叱りに、海賊共はハイライトオフのまま呪文のように聞き慣れた単語を繰り返す、壊れたスピーカーと化してしまった。
どうやらアグニカ教の彼は、荒くれ者を矯正するのに得も知らぬ恐ろしい治療……もとい教育を強いているのだろうと察した。
「ダメだこりゃ……もう使い物にならねえな」
「……でも、こうしてこいつらのトップがお出ましなら」
「改めて尋問する必要は無いかも知れませんね」
<ふむ、では私から君たちを招待させてもらおう。 我々のアジトはこの星系内にある。 今から座標を転送しよう>
そう言って通信が切れると、ワンテンポ遅れてオルガのスーツに自由の声のアジトの位置情報が転送される。
「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……やっぱりアイツじゃねぇかよ……」
全てが終わった途端、オルガは膝に手をつくように大きく項垂れ、深くため息をついた。
「やっぱりマッキーだったんだ……ボクも学園の大感謝祭であのオブジェの形には見覚えあったけどさぁ」
「バエルの時点で分かってましたけど、正直予想が外れていて欲しかったですね……」
「よりにもよってアイツの部下がコレなんてねぇ……」
「気まずさがやばいことこの上ないですね」
「なんて言うか、マクギリスさんこっちの世界でもアグニカ教徒なんて……どこにいても変わらないというか」
「まさかファリド先生……セラピーって言うのはひょっとして」
「……前に一夏にやろうとしてた、アレの事では?」
各々がマクギリスへ呆れの感情を吐露する中、ラウラが未だにおびえて発狂する海賊共に目をやる。
彼女が言う
しかしながらその中の一つ、マクギリスが彼に対して行った励ましの行為というのが、なんと彼の信奉する英雄『アグニカ・カイエル』なる人物と、彼の駆る『ガンダムバエル』を象ったアメニティ一色を押し付け、全方位からバエルを連呼したりサブリミナルを狙ったりと洗脳まがいの行為に及んだ事があるのだ。
「もし同じ事をされていると考えれば、まあ気の毒な話ではあるな」
「だからといって無罪放免ともいかないけどね……」
「ああ」
震える海賊達の処遇についてはこのまま身柄の引き渡しと言う形で、一先ずは空き部屋に閉じ込めておく事とした。
一同は指し示した座標を確認すると、イサリビの航路をそれらに向ける事とした。
「同じ星系内にあるのか……だがこの位置はどこかの星に点在してるって訳じゃ無さそうだな」
「だね。 宇宙空間のどこかって事は宇宙ステーション的なのがあるって事かな?」
オルガとビスケットは、指し示された座標にイサリビを向かわせながら、目的地の正確な場所について思案する。 奴らのボスだというマクギリスが話を通したと言う事は、これ以上の攻撃の可能性は無いとみて良いだろうとするものの、渡航警戒の指示が出ている危険な空域においては警戒の余地は十分にあった。
「ま、いずれにせよ行ってみねぇと分かんねぇ……っと」
オルガがそう言いかけた時、同じくブリッジで計器とにらめっこしていたみほが、何かを見つけたように目を丸くしていたのを見逃さなかった。 彼女に問い掛けてみる。
「どうしたみほ? 何か見つけたのか?」
「うん……目的地の座標に、こんなのが」
ブリッジから見て丁度正面の窓の向こう……それらの先にあるものを拡大するように、みほはコンソールを操作して拡大表示する。
そこにあったのは宇宙ステーションだった。 ただし朽ち果てて外板のそこら中に穴やひしゃげたような形跡が見受けられる。
「どういうこった?」
オルガは疑問に感じた。 どう見ても、放棄されているとしか思えない外観であるからだ。
つい先程破壊された貨物船に誘い出されてドンパチを起こされた身としては、再び罠にかけられるのではないか……そう言いたげな動揺が周囲に巻き起こる。
「……アイツはバエルバカだが、そう言った不義理はしない筈だ。 落ち着け」
オルガは不安げな表情を浮かべるメンバーに呼びかけると、落ち着いて相手側の動向を待った。
すると、電源が落ちていると思われていたステーションの出入り口に赤色灯が点灯し、イサリビの通信機に『自由の声』からの連絡が入った。
「俺だ」
オルガは通信してきた相手にぶっきらぼうに返答する。
<――――まさかここに来て再び鉄華団と相まみえるとはな、つくづく俺達は腐れ縁らしい>
「!」
返答が帰ってくるは男性の声……しかし皮肉めいた口ぶりで応対するその声はマクギリスのものではない。
だがオルガにとっては同じ世界の住人……だが、実際にハッキリと面識を持ったのは数ある異世界での旅の最中である、ギャラルホルンがセブンスターズの一人。
「えっと、ガリガリ<『ガエリオ・ボードウィン』だッ!! だからどうして名前を間違えるんだ!?>」
オルガは思わず噴き出しそうになりながら、今し方怒鳴り声を上げた男の声を思い出す。
ガエリオ・ボードウィンとは、元の世界においてマクギリスの友人で『セブンスターズ』なる特権階級に連なる貴族の御曹司の一人にして、鉄華団にとって因縁浅からぬ間柄であった。
なぜならば彼らは『ギャラルホルン』という治安維持組織を支配する家柄の人間にして、彼自身もそこに所属する正規の軍人であるのだが、我らが鉄華団とやり合う形となり、結果引導を渡した因縁のある相手でもあるのだ。
もっとも彼本人が直接手を下したのではなく、その仲間達であるのだが――――
<私は面白い渾名だと思いますが……それはさておき久しぶりですね、オルガ・イツカ>
<お前もか『ジュリエッタ』!>
やりとりをしてくると、正にその引導を渡す形になった相手にして、結果的に悪魔と呼ばれた我らがエース・三日月にトドメを刺す形となった少女兵士『ジュリエッタ・ジュリス』の存在も明らかになった。
「お前もいたのか……」
<ええ。 チャイカとの冒険以来ですか? それとも戦車道での、まあ……些細な話でしょうが>
<カルタもいるんだがな、あいにく今は別件で席を外している>
「そっか……」
オルガはフゥとため息をつくと、相対した彼らを思い出してはこれまでの異世界の旅を思い出す。
当然ながら正面切ってやりあった相手なので、第一印象など宜しいはずもない。
一方で因縁があると言ってもそれはあくまで立場上敵同士で、互いに身内を殺しあうことになったからと言う理由だけで、別段組織的に敵対する理由もない異世界で再会した際には、お互い死んでいった筈の仲間と無事再会を果たせていた事情もあって、今となっては懐かしくわだかまりは完全になくなっていたと言うのが実情だ。
<まあ、詳しい話は後にしましょう>
<貨物船を下りて宇宙船に乗り換えてくれ。 着陸用のガイドは生きているから安心して入ってきてくれ。 なに、取って食ったりはしないさ>
「分かった。 こっちにもあんた等にとっても懐かしい仲間を連れてるんだ……積もる話は後にしよう」
そう言って通信を切ると、オルガは仲間達に宇宙船に乗り換えステーションに入る段取りを仲間達に通達する。
内何名かが捕らえていた海賊達を連れてくるが、彼らはギロチンを待つばかりの死刑囚さながらに青ざめて抵抗の意思は見られない有様だった。 扱いが楽では良いが、素直に連れて行って良いものかと情けをかけそうになるも、オルガは敢えてそれを黙殺し連行を決意する。
オルガ達はケリオンに、他の仲間達も宇宙船に乗り込みあるいはISを展開し、いよいよステーションへ乗り込む段階でみほが共有の無線を送ってきた。
<あれから久しぶりだよねオルガさん。 あの人達と会うのも、もうずっと昔のように感じられるなあ……>
「そうだったな、みほにしてみりゃ聖グロリアにプラウダ、黒森峰なんかの対戦相手だったもんな」
<毎回崖っぷちだったけど、しのぎを削ったのはよく覚えてるよ>
懐かしむような感情がみほの声色から伝わってくる。 彼女としても、今話した彼らが他校の生徒かつ戦車戦の対戦相手としてよきライバルだった記憶をオルガと共有している為、みほの感情がオルガには手に取るように分かる。 それはタカキやビスケットも同様だった。
「だね。 それにしても、なんだかガエリオさんやジュリエッタは他にもオルガの旅を知ってる素振りだったけど」
「えー! そうなんだー! ボク達にもその話教えてよー!」
テイオーが背後から身を乗り出してオルガをせっついてくる。
「後でなテイオー、話せば色々複雑で長くなるんだ。 第一ガエリオなら競バの記者として面識あるってか、取材だって受けてたろ」
「……だったかなぁ? でもいいや! 後でオルガの旅の話また聞かせてね! ゼッタイ! ゼッタイだもんね!」
テイオーは相変わらずマイペースだが、その無邪気さが今はありがたい。
オルガはふっと微笑んで、仲間達にも促しながらケリオンの機体を発信させ、イサリビ艦内のドックから心許ない赤色の誘導灯が灯るステーションの中へと入っていった。