No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~   作:Easatoshi

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 これでもかと言わんばかりの専門用語の嵐に、自分で書いててある程度用語解説あった方が良いかなと考える今日この頃。


第4話

「本当に……オルガなんだ……!!」

 オルガと向き合う、シャルと呼ばれた金髪の少女は感極まり、その無骨な金属製の手足をどこからともなく収納し、生身の身体でオルガに抱きついた。

「あぁ……。久しぶりだな、シャル。お前も無事だったみたいだな……」

『シャルロット・デュノア』は目から涙を流して、オルガの胸元に顔を埋める。 オルガはそんな彼女を愛しげに頭を撫でてやる。

「うんっ! 僕もみんなも元気だよ! でも、どうしてここに? それにその格好は?」

「……俺にも分からねぇんだ。気がついたらここに居た、前後の事は何も覚えてねぇ」

「そっか……その様子だと、オルガも色々あったんだね」

 ため息交じりに答えるオルガに対し、シャルロットも困ったように笑う。

「この外国の人、オルガさんの知り合いなんですか?」

「ん、ああ……なんて言うかだな。 その」

 スペシャルウィークからの問い掛けに、オルガは少し照れくさそうにする。

 見るからにわかりやすいリアクションに、スペシャルウィークは同じく頬を赤らめて恥ずかしそうに口元を押さえ、トウカイテイオーはオルガとシャルロットがそう言う関係なのだと悟り、生暖かい目線で口元をにやけさせていた。

 シャルロットとラウラはスペシャルウィーク達に向き合い、一言。

 

「初めまして! 私はシャルロット・デュノア。 オルガの恋人だよ!」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。 シャルロットの友人で、オルガ団長とは共に学園生活を駆け抜けた仲間だ」

 

 

 

 

 

 オルガ達はここに至るまでにあった事、一緒に居るトウカイテイオーやスペシャルウィークの事、そんな二人に話した身の上の事も含め色々と話し合った。

 シャルロット達は、ウマ娘という未知の人種である二人に驚きつつも、お互いの持ち前の社交性の高さもあって()()があったのか、快く受け入れてくれた。

 どうやら顔合わせは円満に済んだらしい。

「そっかぁ~……ありがとう、オルガと仲良くしてくれて!」

「いえ! 私こそオルガさんには辛い時に励ましてくれたりして良くして貰ったんです」

「にっしっし♪ スペちゃんライバル出現だねぇ! カノジョ持ちの壁は厚いよお?」

「て、テイオーさん! そんなんじゃなくって!」

「ふむ、これが噂の三角関係か」

「わ、私は別にそんなつもりじゃ……!」

「えぇ~? だってさぁ~、ボクが見た感じだと~……、オルガはスペちゃんと一番仲良しだと思うけどなぁ~? なんせボクが見てた時なんて…………」

 そこまで言いかけた所でトウカイテイオーは口をつぐんだ。 何故なら目の前に居るシャルロットは微笑んではいるが、目は全く笑っていなかったのだから。

 

 

 

「オルガ~?」

 笑顔のままドス黒いオーラを放つシャルロット。

 そのプレッシャーに思わず冷や汗を流すトウカイテイオーであるが、それ以上に震え上がっていたのは怒りの矛先を向けられたオルガであった。

「おいテイオー! 勝手に俺をプレイボーイにしてんじゃねえ!」

「ダメだよオルガ~。 僕という者がありながらすぐ鼻の下を伸ばしちゃって~♪」

 滲み出る怒りに完全に気圧されるオルガに対し、シャルロットの怒気に萎縮しテイオーは両手を合わせて謝罪のジェスチャーを送る。 謝りはするがシャルロットを宥めるつもりはないようだ。

 一方でスペシャルウィークは慌てふためきながら、場を納めようと必死で考えを巡らせているようで、ふと何かを思いついたのかハッとした様子でこんな言葉を口走った。

「La victoire est à moi!(調子に乗るな!)」

 意味は知らないが、オルガはスペシャルウィークが友人から教わったフランス語を口にした事に気づく。

 どうやらシャルロットの母国語に触れる事で、彼女なりに注意をこちらに向けようとしたのだろうとしたのだろうが――――それは絶大な効果を発揮した。

「スペシャルウィーク、だっけ……それってどういう意味かな?」

 場の空気を凍り付かせる方に、だが。

 オルガはふと思い出していた。 その言葉をスペシャルウィークが口にした時、相手がどんな風にそれを受け止めていたのかを。

 それを思い出した瞬間、ただでさえ背筋が凍る思いをしたオルガは更にゾッとする感覚を覚えた。

「あ、あのあのあの!! 私、その!!」

「こんな時に()()()()()()()とか、それってつまり挑戦状なのかな~?」

「「ピエッ!?」」

 慌てて弁明するスペシャルウィークだったが、シャルロットの口からその言葉の意味を聞かされた事で、完全に地雷を踏み抜いた事を自覚した。 隣にいたトウカイテイオー共々異口同音に悲鳴を上げる。

 二人して抱きついて許しを請うような視線を送るが、それに待ったをかけたのは先程から沈黙していたラウラだった。

「そこまでにしておけ。 スペシャルウィークとやらがそんなつもりじゃ無いのは分かっているだろう?」

 シャルロットは沈黙の後に、軽く笑ってみせた。

「……あはは、ごめんね♪ ちょっとからかっちゃおって思って♪」

 シャルロットはスペシャルウィークに謝罪の弁を述べる。 スペシャルウィーク達は乾いた笑いで返すが、恐らくは僅かだが寿命が縮んだだろう。

「オルガもオルガだよ。 ちょっと一夏みたいに無自覚に女たらしな所あるんだから……後で分からせてあげるね♪

「勘弁してくれ……」

 オルガは苦笑を浮かべるが、シャルロットは微笑みながら言う。 彼女の本心としては冗談半分、残りの半分は本気なのだが。

「……で、二人はどうしてこの惑星にいたの? そのISって言う機械のエネルギーが切れかけるまで、何をしてたの?」

 トウカイテイオーがシャルロット達に問いかけるが、その質問に答えたのはラウラだった。

「……お前達がオルガ団長の身内なら、この男に見覚えはあるか?」

 ラウラが端末を操作すると、ホログラムウィンドウが空中に投影される。

 

 

 そこに映し出されているのは、オルガにとっては子供の頃から生死を共にした相棒。 喜怒哀楽を強く表には出さない、誰よりも純朴な少年。

 三日月・オーガス……オルガにとっての掛け替えの無い家族であり、愛すべき弟のような存在。

 オルガは勿論の事、スペシャルウィークとトウカイテイオーもその映像を見て懐かしさと寂しさを感じていた。

「ミカ?」

「これって……三日月さん?」

 二人の呟きを聞いて、シャルロットとラウラは確信を得たようだ。

「やっぱり知っていたんだね?」

「……ミカは私の()だ。 ……元いた世界からある日突然行方が分からなくなったんだ。 オルガ共々、な」

 そう言ってラウラは胸の内を明かした。  ……どうして男性である三日月を()呼ばわりするのかは割愛するとして。

 自分の伴侶とした三日月が行方不明になり、それと同時期にオルガも消息を絶った事。

 シャルロットとラウラは二人が何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いと判断し、二人の行方を追っていたという。

 オルガは偶然ではあるがこうして出会えたものの、三日月の方は芳しくないとのことだ。

「……そうか、お前達二人までそんなことになってたなんてな……何かラウラなりに手がかりは掴んだのか?」

「それらしい人物を見かけたと言う目撃情報だけだ……それも正直、芳しくはない」

「そっか……」

 オルガは額に手を当てて思案する。 ここに来てあまりに多くの出来事に遭遇し、今ここにいる自分達だけのことで手一杯ではあったが、彼とて三日月達のことが気がかりだったのは事実だ。シャルロットとラウラの二人も、三日月に会いたがっている様子なのは明らかだった。

しかし、どうすればいいのか分からないのもまた事実であった。

 

<気象情報:嵐が過ぎました>

 その時、オルガの元にアナウンスが流れる。 オルガは思わず洞窟越しに空を見上げた。

 見上げる先には決して快晴とは言えないが、焼き尽くすような炎の壁は消え去っているようだった。

「……とりあえず、この星から離れよっか」

 トウカイテイオーの提案に皆が首を縦に振った。

 

 

 センチネルと言う謎のロボットに追われそこら中を走り回った為、宇宙船ラディアントピラー号から随分離れてしまったが、ウマ娘とオルガの走力にかかれば取るに足らない誤差ではあった。

 シャルロットとラウラはISで空を飛びながら彼女たちの速度に合わせていたが、生身で本当に競走馬並みに走る彼女達に驚きを隠せずにいた。 オルガが当然のようについてきていた点だけは、特に驚かれなかったが。

 一悶着あったが、この星で集められる情報を拾い尽くしたであろうオルガは、トウカイテイオーの提案通り新たに加わったシャルロットとラウラを連れ、大気圏を離脱。 現在は惑星のすぐ側の小惑星帯で飛行機を止めていた。

 

「シャルロットさん、本当に宇宙飛べるんですね」

 宇宙船外のすぐ側を悠々と飛ぶ、シャルロットとラウラの姿に目を輝かせるスペシャルウィーク。

<うん。 元々は宇宙空間の船外活動用スーツとして開発されたからね。 生身を晒すのは宇宙を感じたいって言うISの開発者の意向らしいけど……>

<改めて宇宙というものは雄大で……少し、怖いな>

 元々宇宙飛行士は、無音で光のない空間に耐えるだけの精神的な強靱さを問われる職業だ。 女性専用かつ数にも限りがあるISを身につけられる二人は、その時点で選りすぐりのエリートなのだが、だからといって宇宙空間という原初の恐怖を煽られる空間に対し、畏怖の念を抱かないわけがなかった。

だが、この二人にとってはこの程度の恐怖は、恐れるべきであると当時に乗り越えられるものではあった。

<でも、僕達にはオルガも、今この星で出会えたスペ達もいるんだ>

<そして三日月だって見つけ出す。 これくらいはなんてことは無い!>

 そう告げる二人の目は輝いていた。 二人の言葉を聞き、オルガ達はふっと微笑む。

「……で、これからどうしましょうかオルガさん。 三日月さんを探すのは良いとしても、さっきの変な無線も気になりますし……」

「なんかさ、色んな事起きすぎて整理つかないよー……ちょっと腰を落ち着けたいなぁ」

 オルガはふと思ったことを口にした。

「それについては考えがある。 何をやるにしろ、この調子じゃ長丁場は避けられねえしな……」

 そう言ってオルガはこの場にいる全員に、先ほど端末から見つけ出した設計図を共有する。

 

 

「どこか定住できそうな手近な惑星を見つけて、まずはそこに基地を作ろうと思う。 活動拠点は必要だ」

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