No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~   作:Easatoshi

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まさかの連日投稿。


第41話

「……今、何かが」

「横切りましたね……」

 小さな穴の向こうで蠢き、そして通り過ぎていった巨大なナニか。 暗がりではあるがフラッシュライトに僅かに照らされて見えたそれを、みほとスペシャルウィークはハッキリと視認した。

「……まさか」

2人はその巨大な何かの正体に心当たりがあったようだ。 この鍾乳洞に落下し、エクソクラフトを壊されみほが怪我をする原因になった……その生物は。

「さっきのワーム、ですか……?」

「うん。 でもさっきと比べるとかなり小さな個体だったね」

「私達からすればそれでも大きいですけど……」

 先程地下の洞窟に落下する前に執拗に攻撃され、危うく食われる所だったがなんとか難を逃れたタイタンワームだ。

 しかし人が何人も入るエクソクラフトを丸呑みしかねない大きさだったが、今見えたそのシルエットや物音の規模を考えればまだ小さい方にも思えた。

(それでも身の丈の何倍も巨大な、自分達を捕食しかねないサイズには違いないが)

 とは言えあのワームがあの一匹だけとも思えない考えが2人の脳裏にあり、もしかするとこの鍾乳洞の地底には奴の巣があるのかもしれない。 それを想像すると2人は身震いする。

「……なるべく早く、この洞窟を脱出しようね?」

 みほの言葉にスペシャルウィークは無言でうなずいた。 地上で出会った奴ほどでないにせよ、十分に巨大なその体躯で、しかもこの狭い洞窟で遭遇した時の恐ろしさは計り知れないだろう。 スペシャルウィークがいささか早足でその場を離れようとするのは、その本能的な恐怖心を体が感じ取ったからかもしれない。

そんな折、みほが背負われているスペシャルウィークの後頭部をぽんぽんと優しく撫でてきた。

 そして彼女は小さく微笑む。 その笑みはどこか得意げで、まるでいたずらっ子のようでもあった。

(あ……)

 その様子にスペシャルウィークは一瞬虚を突かれた様子を見せるも、すぐに彼女も小さく笑う。

 早くここから出よう――そんな思いを込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人がしばらく洞窟を道なりに歩いていると、再び周囲が大きな揺れに包まれる。 先程と同じく、かなり近い位置でワームが徘徊しているように思えた。 天井から剥がれた小石が仕切りに2人のヘルメットを叩く。

「うう、暴れ回らないでくださいよぉ……」

 タイタンワームの驚異に対して、凶暴な存在であると理解していてもついそう言わずにはいられないスペシャルウィーク。

 そんな彼女の嘆きが届いたのか、揺れも収まり再び静かな鍾乳洞に佇むと、緊張の糸がほつれたように2人してため息をつく。

「はぁ……洞窟は崩れずに済んだみたい」

「……こんなに生きた心地しなかったのは、初めてのウィニングライブで棒立ちになった時以来ですよ」

「?」

 スペシャルウィークの独白にみほは聞き慣れない単語に首を傾げた。

「ウイニングライブを知らないんですか? レースが終わった後に出走者で歌って踊ったりするんですけど」

「むしろレース後にそんなことする体力がある方が驚きかな……ウマ娘って凄いんだね」

 苦笑するみほに対し、スペシャルウィークはハッとした表情になる。

(そうだ、そもそもみほさん異世界の人だから……)

 シャルロット等も偶に口に出していたが、スペシャルウィークのいる世界以外は、自分達ウマ娘の代わりに馬という4本足の動物が存在するのだと耳にする機会があった。

「レース後にって事は、競バ自体はあるんですか? シャルロットさんも言ってましたけど、私達に似た馬って言う四足の動物が自分達の世界には居たって」

「うん、私達の世界にも馬はいるよ。 人を背中に乗せて、1位を目指して競争したりするの。 その、レースの跡は流石に疲れててライブをやったりはしないけど、ね」

 そう言って、みほは少しだけ困ったように微笑んだ。

 カルチャーギャップに驚くスペシャルウィークだが、それを言うならば馬は存在しないしシャルロットのように空飛ぶ人型の機械も無いし、背中に乗せるみほのように戦車を嗜む文化もこちらにはない。

 それは自身のウマ娘という存在やウィニングライブ1つとっても、異世界人であるみほからは今みたいに変に見えるだろうし、シャルロットやみほ達の間柄にしても、ISと戦車道という互いの文化が奇っ怪なモノに見えるのは至極当然だろうと、スペシャルウィークは思った。

「……なんだかごめんなさい、ものを知らない人みたいな言い方になっちゃって」

「気にしないで。 それを言うなら戦車道も同じようなものかも知れないし、もっと言うならペコリーヌさん達みたいな剣と魔法の中世みたいな世界なんて、絵本の話みたいに見えちゃうんだから」

「あはは、そうですね。 こう言うレンガ造りの建物とか、こっちの世界じゃ歴史ある建物ぐらいでしか見たこと無いです……か……ら……」

 スペシャルウィークは鍾乳洞の中に埋もれていたレンガ造りの石壁を撫でながら、今自分が何に触れたのかに気付いたようにぎこちない動きをする。

 

 そう、ここは自然に形成された洞窟。 にも拘わらずレンガ造りというある筈の無い人工物が、かすかだが壁の岩肌から僅かに露出していることに今気がついた。 無論洞窟に入ってみほ達を探していた段階では一切見つけられず、たった今偶然それを目の当たりにしたばかりなのだ。

 みほも呆然とした様子で彼女と同じ場所を見つめており……スペシャルウィークは後ろを振り返って2人は互いに見合わせた顔を近付けた。

「……自然の鍾乳洞、ですよね?」

「かなり古くなってるみたいだけど、これって人工物だよね? ……見て、この部分崩れてるけど、なんだか配管とか千切れた配線が見えてる!」

 みほの指摘を受けて、スペシャルウィークは目を凝らしてむき出しになったレンガの壁を見る。

 するとそこには確かに彼女の言う通り、所々に崩落した形跡があり、その断面には配管やパイプが剥き出しになっている。 単にレンガを積み上げたのでは無く、インフラと思わしき何かが張り巡らされているのを見るに、ステレオタイプな古代の遺物と言う訳でも無さそうであった。

「昔の建物が地下に沈んじゃった、とかですか?」

「かもしれないね。 さっきのタイタンワームみたいなのがそこらを徘徊してたんじゃ、どんな丈夫な建物も地下に沈んじゃいそうだし。 ほら、例えばあんなのとか」

 みほは崩れた壁の隙間から見える、液体を滴らせる大口からうなり声を上げる巨大な何かを見ながら言った。

 あの怪物ならそれくらいのこともやってのけそうだと推測できたが、そうなると壊れる前のこの建物はどんな姿だったのだろうかと思いを馳せる。

「……こんな丈夫そうな壁なら、かつての姿も立派だったんでしょうね」

「それを簡単に粉砕しちゃうんだから恐ろしいね……今みたいに大口を開けて、簡単にバキバキって」

 

 

 

 

 

「「――――――え?」」

 

 

 

 

 

 2人が同時に間抜けな声を上げた瞬間、正にその地盤ごと建物を崩落させた恐るべきタイタンワームが、レンガの壁を大口で粉砕しながら飛び出してきたのだ!!

 

「「嘘おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!???」」

 話に入り込むあまりに緊張感を削がれていたスペシャルウィーク達に、この鍾乳洞の水脈よりなお冷たい冷や水をぶっかけるが如く現れたその巨蟲は、自分達をこの奈落の底に突き落とした恐るべきワームと大きさを除き、寸分違わぬ出で立ちと威圧感を持って彼女達に迫った!

「うひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

「こ、来ないでぇええええええええええええええッ!!!!!!」

 みほを背負ったまま慌てて全速力で駆け出すスペシャルウィーク。 それを追跡するように、狭い洞窟を埋め尽くさんばかりの大きさのタイタンワームが壁や天井を破壊しながら彼女を追った。

 迫り来る恐怖に絶叫しながら必死に逃げるも、その圧倒的な質量とそれに見合わない俊敏な動きからは、如何にウマ娘とは言え人を背中に乗せ、慣れない洞窟で足を取られそうな状況下では逃げ切れない。

「スペちゃん右に避けて!!」

 みほの咄嗟の指示にスペシャルウィークは咄嗟に右へ回避行動を取った。

すると先程まで彼女の居た位置に、タイタンワームの巨大な口が激しい地鳴りと共にすぐ側を通過! 大地を砕いて横隣に現れた。

「わああああああああああああああああああッ!!!!!!」

 間一髪の状況にこの上ない悲鳴を上げるも束の間、その巨蟲は直ぐに向き直り再びスペシャルウィークに向かって突進する。

「しゃ、シャルロットさん!! シャルロットさん!! 応答ねがいまああああああああああす!!!!!!」

<――――ちら -zzkt- スペ -zzzzttt- が聞こえ -kkzt- どうし 無線が -zkt- 

「そ、そんな!! 無線が――――あッ!?」

 慌ててシャルロットに助けを求めようと無線を飛ばしてみるが、間の悪いことに無線はノイズが酷く繋がらない。 激しい音と自身の悲鳴のおかげで異常事態を察しているような素振りは聞き取れるが、事前にビスケットから警告されていた事を今になって思い出し、入り組んだ洞窟で電波が反響している為にブースターが効き目を失っているのだろうと察してしまった。 恐らくは、正確な位置さえ向こうからは把握しかねているだろう。

 救助に来て貰うのを待っていたらそれこそワームの餌になる方が早いだろうと、スペシャルウィークの心をどん底にたたき落とすには十分だった。

「ひいい!?!? わ、私の身体はあげませんッ!!!!」

「スペちゃん今度は左ッ!!!!」

 食べられまいと更に必死な様子で逃げ続けるスペシャルウィーク。 みほはそんな彼女に指示を飛ばしながら、自身も必死で背中にしがみ付き続けた。 しかしそんな彼女達に対して、無常にもタイタンワームの再度の突進攻撃が繰り出される!

「うわわッ!?」

 いとも容易く洞窟の壁面を抉る一撃をまたもや間一髪で回避するが、2人とも足が縺れ姿勢を崩しそうになる。 しかしながらここで倒れては2人共ワームの胃袋に収まる羽目になると、必死に姿勢を立て直そうとする。

「!! ちょっとまって! そのまま倒れて滑り込んで!!」

「え!? ――――あっ!!」

 急に血迷ったようなみほの指示に一瞬呆気に取られるスペシャルウィークだったが、その意図は直ぐに理解出来た。

 何故なら目先には人工の水路、その間に張り巡らされたパイプとすぐ下に、人が寝そべった状態なら滑り込みで入れそうな隙間が確かに見えたのだ。

「みほさん!!」

 スペシャルウィークは倒れる一瞬の時間でみほの身体を背中から側に抱き寄せ、そのまま滑り込んでパイプの隙間を滑り込んだ! くぐり抜けたパイプは直ぐ後ろでワームの行く手を阻むように引っかかり、ワームもまた堅いパイプに負けじと食らいつく!

「今の内に!!」

「待ってスペちゃん! これ!!」

 みほは滑り込んだその瞬間に何かを見つけたようだ。 酷く錆び付いて今にも朽ち果てそうだが、赤いハゲ書けた塗装のパンパンに膨れたボンベのような、微かに炎のようなマークが見て取れるその物体を指差した。

 恐らくは、()()()()()()()()()――――!!!!

 スペシャルウィークは流れるようにそのタンクを拾い上げ、今にもパイプを食いちぎろうとするワームめがけて投げつけた!

「これでも食べててッ!!!! おりゃあああああああッ!!」

 ガスタンクは見事にワームの牙の一つに引っかかる。 だがその直後にパイプを食い破ったタイタンワームが大口を開いて迫る!

「スペちゃん!! マルチツール!!」

「分かってます!!」

 スペシャルウィークとみほは同時にマルチツールを構え、あのガスタンクに照準を合わせ引き金を引いた!

 

 

 

 ツールの銃口から尤も標準的な装備である『ボルトキャスター』のバースト射撃が放たれた!

 

 2人のそれは、スペシャルウィークの方は若干拙いながらもテイオーとの訓練の成果が出たのか、しっかり当てるべきガスタンクに命中!

 朽ちかけてなお密封されていた可燃性ガスが引火によって解き放たれ、爆熱と共にワームの顔面に炸裂!! ワームだった頭の一切を粉砕し、弾き飛ばしたのだ!!

 スペシャルウィークは咄嗟に身動きのとれないみほを庇った!

「「きゃあああああああっ!!!!」」

 爆風が2人を飲み込むも、幸いにもスーツの危険防御機能により衝撃の大半は緩和され、水面を数回転がる以外のダメージは無かった。

「ううっ、痛たたたたた……みほさん! 大丈夫ですか!?」

 スペシャルウィークは庇ったみほの身を心配する。 スーツの一部機能に不備がある身では不安だったが、幸いみほも無事だったようで、直ぐに腕を上げて大丈夫と合図する。

「うん、大丈夫。 スペちゃんが庇ってくれたおかげだよ……スペちゃんこそ大丈夫?」

「ちょっとスーツが焦げちゃいましたけど、私も大丈夫です。 でも、よくこんなタンクが都合良く落ちてましたね……?」

「ひょっとしたら、ここは昔の貯蔵庫だった場所だったのかも」

「……あ、それよりワームは――――」

 スペシャルウィークは自分達を執拗に追っていた巨大なワームの姿を探そうとしたが……。

 

「うっ!!」

 

 その真っ黒に焦げて頭部を失った末路を目の当たりにして、秒で後悔した。

 撃たなければ自分達が食われていたとは言え、自分の手で生き物の命を奪った事実は多少なりとも堪えた。

「ごめんなさい……どうか恨まないで」

 自分達をここに引きずり込んだ敵ではあるが、悪意では無く生きる為にやった事。 助かりたい一心で命を奪う選択を取ったスペシャルウィークは沈んだ面持ちで、せめてもの情けもあって心の中で十時を切ってやった。

「スペちゃん……」

「……行きましょうみほさん。 今は助かるのが先決です」

 こちらの心情を察したように表情を曇らせるみほを、スペシャルウィークは多くを語らずに背負う。

 

 

 そんな時であった。 さっきの爆発で天井から何かがひび割れる音が聞こえたのは。

 今度は何!? そう言わんばかりに上を向くと、その音に違わぬように鍾乳洞の至る所にヒビが入り始めた!

 

「「げ」」

 

 そう、この鍾乳洞は至る所が砂岩で出来ていてとても脆い。 今みたいに強烈な衝撃が加わったり、そうでなくても下手に切り崩せば連鎖反応で一気に崩落しかねない。

 ましてや昔からワームが動き回って地質が揺さぶられることが度々起これば、地層がズレて力がかかったまま放置され、それが何らかの切っ掛けで取り払われることで一気に揺り戻しが起きる『岩はね現象』(山間の鉱山採掘やトンネル掘削にも見られ、山はねとも言う)も起こりえるだろう。

 それを恐れてビスケットは、先程の出発前の話し合いでスペシャルウィーク達に言って聞かせ、彼女もそれを律儀に守って地形操作機の使用を控えていたが――――ワームの撃退に用いた爆発で、全てが台無しになった。

 

 少し長くなったが、洞窟が崩れ始めるのは至極当然のことだったろう。

 

 

 慌ててみほを背負い直し、その場からの脱出を試みるスペシャルウィーク。

「ふええええええええええええっ!!!! どうしてこうなるべぇぇぇぇぇえええええ!!!???」

 崩れてくる天井をかいくぐりながら泣き喚くが、当然ながらそれで崩落が止まるはずもない。

 絶望的な状況の中、2人は全速力で鍾乳洞内を駆け抜けるしかなかった。

 後先考えない全力疾走で息も絶え絶えだったが、それでも足を止めるわけにはいかなかった。 しかし2人を追うように次々と落ちてくる天井や岩盤は、いくら逃げてもきりがない上に、足を止めればそれこそ潰されてしまう。

 スペシャルウィークとみほは既に体力も限界に近づいていたが、それでも必死に走り続けるしかない。

 しかしもう足の感覚もなくなってきたその時だった。

「――――あれは!!」

 わずかだが、日の差し込んでいる空間が遠方に見えた。 あそこまで走り抜ければ何とかなるかもしれない! そう信じたスペシャルウィークは最後の力を振り絞って、そこに目掛けて走り始めた。

 

 

 

 G1ウマ娘の豪脚で出口までの距離を詰め、脱出が目前に迫ったが瞬間――――目の前を大量の岩石が降り注ぎ行く手を阻む。 出入り口は完全に塞がってしまった!

「「まだまだぁ!!」」

 わずかに見えた希望が潰えそうになるも、2人してマルチツールを構え一か八か地形操作器による粉砕を試みる。 崩れた岩石を直ちに除去するも、い打ちをかけるように彼女らの背後で起こる崩落スピードが加速、連鎖的に洞窟が埋まっていく!!

 それでもと出力を最大にして崩れる大岩を除去を進め、遂にわずかな隙間が見え始めた――――

 

<警告:マルチツールの燃料が減少>

 

「ああもう!!」

 脱出を目前に、地形操作器のエネルギーが切れてしまった。 簡単に鉱物を採掘できる機械であるが、著しいエネルギーの消費を発生させてしまうのが難点だ。 エネルギー源には土に含まれる『シリケトパウダー』やフェライト系のミネラルを使用するのだが、慌てている状況ではリロードもままならない。

 そうこうしている内に崩落はすぐ後ろまで迫ってくる。 このままでは生き埋めだ!

「ダメ! 間に合わない!!」

(そんな……ここまで来て!!)

 生き埋め、心が折れる2人の脳裏を絶望が支配しかけた――――

 

 

 

「そこの2人!! 出口から離れなさいッ!!」

 

 不意に、崩落した出口の向こう側から少女の声がした。 

「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴェエル・カノ・オシュラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル――――」

 そして叫んだかと思えば早口で何かを唱え始めた様子に一瞬戸惑ったが、考えるよりも先に身体が回避行動を取っていた――――みほを庇うように出口から離れた瞬間。

 

 

 

 

「エクス、プロージョンッ!!!!」

 

 

 

 

 

 強烈な指向性の爆発により、出口を塞いでいた岩石の山が文字通り一瞬で粉砕された!

 間近での爆裂にスペシャルウィーク達も多少なりとも巻き込まれるが、スーツの危険防御機能が辛うじて衝撃を塞いでくれた。

「こっちよ! ボサッとしてないで早く出なさいよ!!」

 何者かの助けにより、千鳥足になりながらもみほを担いで何とか脱出。 狭い洞窟から出た瞬間、先ほどの爆発によってトドメを刺された洞窟は完全に埋没してしまった。 正に間一髪。

 崩落も一段落し、広場――――ビスケットらと別れた場所のような広々とした地下水脈の静けさの中、スペシャルウィークは側にみほを下ろして四つん這いに息を荒げていた。

(うう、2度も爆発に巻き込まれるなんて……でも)

 スペシャルウィークの独白通り、2度も爆発に巻き込まれたスーツはすすこけてズタボロ、危険防御システムのエネルギーも今ので完全に底をついてしまった。 これで中身の彼女自身は全くの無傷なのだから、エクソスーツの性能に感謝する以外無いだろう。 何よりも――――

 

「あ、ありがとうございますぅ……おかげで助かりました」

 スペシャルウィークは膝をついたまま顔を見上げると、そこにいたのは同じくスーツを身に纏う小柄な人間だった。 声からして少女だろうか、白と桃色を基調に洋風の貴族を思わせるようなエキゾチックな細工が施されたスーツに、黒っぽいマントを羽織ったような出で立ちの何者かが、膝をかがめてこちらに目線を合わせてきた。 その立ち振る舞いにはどこか気品を感じずにはいられない。

「来たばかりの洞窟が急に崩れだして何かと思ったら……まあ、無事で何よりね」

「潰されるかと思いました……本当に感謝しかないです」

「貴女が助けてくれなかったら私達は生き埋めになってた……本当にありがとう!」

 みほからも九死に一生を得た事を目の前の少女らしき存在に感謝し、少女は胸を張って高らかに主張する。

「光栄に思いなさいよ? だけどまあ、貴族たる者……救いの手を差し伸べるのは当然のことなんだから!」

 スペシャルウィークはみほと顔を見合わせた。 みほも西住流の家元の子で知人にもいいところのお嬢様は存在するし、スペシャルウィークも知り合いにメジロをはじめとする、やんごとなき家系のウマ娘の友達がいる。 そう言う家柄に馴染みがないわけではないが、貴族という直球のワードには一瞬面食らってしまった。

 

 

 そうしていると、目の前の少女が再び立ち上がるとヘルメットを取り外す。

 カールのかかった長い桃色の髪が広がり、凛とした吊り目の……しかし幼さを感じる可愛らしい少女が不敵に笑いながら告げた。

 

 

 

 

 

「私はルイズ……『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』よ」

 

 

 

 

 

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