No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~ 作:Easatoshi
ルイズと名乗る少女に救助され、九死に一生を得たスペシャルウィーク達の元に慌てた様子でシャルロットらが駆けつけたのは、ルイズの自己紹介からのほんのすぐ後だった。 なし崩し的に顔合わせを果たすことになったが、スペシャルウィーク達を間一髪助けてくれた礼もあって、互いの印象は好意的であった。
はぐれた仲間達同士で合流も果たし、談笑しながら一同はビスケットの元へと帰路につく。
「それじゃあ、ルイズさんはそのサイトって言う使い魔……大切な人を見つける為に宇宙を旅しているって事ですか?」
スペシャルウィークからの問い掛けに、ルイズは束の間を置いてから照れくさそうに一言「そうよ」と返すと、周囲は黄色い声を上げて姦しい様子を見せた。
探し人を『使い魔』と呼んだのは彼女が元の世界において、使役する目的で生物を召喚する儀式を行った際に、彼女の言う『平賀 才人』なる同年代の男性……所謂現代日本人を呼び出したことを切っ掛けとする。
最初は価値観の違いから衝突も絶えなかったものの、時には泣いたり笑ったり、ある時には生死を共にする経験を共有するようになった。 そんな彼を敢えて使い魔と呼称しながらも、どこか声色に熱っぽさを感じるのは、主従を求めていたつもりが自然と相思相愛になっていった様子が垣間見える。 ルイズの身の上話に周囲が盛り上がる様子が見られ、それをルイズ自身も照れくさそうにするもまんざらでもない振る舞いが、彼女が如何にその使い魔たる男性に思いを寄せているかを窺わせる。
「……それにしても、まさかファリド先生がそっちの世界で一度生まれ変わっていたなんてね。 それもグラモンって言う名前で生徒として」
シャルロットが違う話題を振ると、ルイズも何か呆れたように天を仰ぎ見る。
「ギーシュの事ね……アイツったら、ガンダムバエルって言うよく分からない銅像を学園中に作ろうとしてて、ルックスの良さを武器に女生徒に迫って「君もアグニカ教徒になりたまえ!」って怪しい勧誘をよくやってたわ……なんの話をしてるのやら」
「プッ! 全然変わってないね」
うんざりした様子で話すルイズにシャルロットは軽く噴き出した。
彼女やマクギリス……向こうでは『ギーシュ・ド・グラモン』と名乗っていた彼も、形は違えど学び舎で共に貴族としてあるべき姿を学ぶ同じ学生であったようで、よく分からない『アグニカ教』を広めるのに躍起になっていたとルイズの口から告げられ、そんな光景がいとも容易く想起出来てシャルロットは更に笑いが止まらなくなった。
異世界への転移を経ても、ギーシュもといマクギリスのアグニカ教への傾倒ぶりに変化はないらしい。
そうやって絶えない談話を繰り広げながら足を進めていた先に、ビスケット達と共に滑落したあの広い鍾乳洞へと帰ってこれた。
「あ、ビスケットさんだ! ……あれ? 隣に誰かいる」
スペシャルウィークが遠くに見える、エクソクラフトの修理に取り組むビスケットの姿を見て声をかけようとするが、その側で長身の誰かを発見する。
見れば紺色のシンプルな意匠のエクソスーツを身に纏い、ビスケットの作業に指示したり時には共に部品をくみ上げたりと、積極的に彼の仕事を手伝っているように見えた。
「コルベール先生!」
ルイズが大手を振って声を上げた。 彼女の声かけに、コルベールと呼ばれた長身の男性が手を止め、ビスケット共々こちらを振り返る。 彼らも手を振って出迎えてくれた。 どうやらルイズの先生という呼称から彼女の知り合い、それも保護者でもあるようだ。
「おお、ルイズ君!」
「皆! 無事で良かった!」
出迎える2人を見て、皆が一斉にスーツのブーストを噴かせては、飛び寄って彼らの目前に着地する。
「ビスケットさんも無事で何よりです! ――――貴方はルイズさんの」
スペシャルウィークが問い掛けると、目の前でコルベールと呼ばれた男性がヘルメットを外す。 小さなメガネを掛けた、頭の輝ける優しげな中年男性の顔が露わになる。
「『ジャン・コルベール』だ、ルイズ君の教師をしている。 君達の事は隣のビスケット君から話を聞かせて貰ったよ、以後お見知りおきを」
コルベールは柔和な微笑みを見せると、ゆっくりと手を差し出してきた。
そんな彼にスペシャルウィークも微笑んで握手を返す。 彼を見るスペシャルウィークの緩んだ面持ちは、仲間にして友達という今までの関係性では無く、年長者に対する明確な保護者としての安堵の眼差しであった。
「と、言う訳で。 修理中に偶然彼女と先生の2人がやって来て、捜索と修理をそれぞれ手伝ってくれることになったんだ」
「ハハは……修理の手伝いと言っても大半は君が終わらせていたよ」
「いえ。 コルベール先生の指示のおかげで非常に作業がやりやすかったです。 実務だって手伝って頂けたじゃないですか」
ビスケットはコルベールに謝意を表しながら、事のあらましを話してくれた。
ルイズとコルベールは先程ルイズが話してくれた平賀才人を探しているらしく、時系列的に自分達鉄華団がこの星に到着した直後に地に降り立ったようだ。
熱く磁気を伴う砂嵐を彷徨っていたところ、こちらがタイタンワームに襲われた場面を遠巻きに発見、鉄華団のシンボルマークを掲げていた車両が地割れに飲まれていく瞬間を目撃したことで、生存者を見つけ出そうとこの洞窟に入ったと告げられた。
「この星にまさか他のトラベラーがいるなんて思わなかったわ。 それも特に、あの鉄華団の面々なんて」
「我々もサイト君とも共通の知り合いだから、なおさら助けに行かねばと思いましたぞ。 ただ、どうも知らない子……はそうとして、ここにいる皆が若者のようにも見えるのだがね……?」
コルベールはどこか困惑の色が混じったような目線を送った。 彼も鉄華団を知っていると言うことはオルガがから聞いてはいただろうが、生き別れの仲間達がいるとだけで、ティーンエイジャーの集まりだとは流石に言っていなかった可能性があるのだろう。
対するシャルロット達は困ったように乾いた笑いを浮かべて茶を濁す。
「で、ルイズさん達はこの星で手がかりは見つかったんですか?」
スペシャルウィークはルイズ達に問いかけたが、コルベールはため息をつきルイズは黙って首を横に振った。
「その為にここにあるホロターミナスって言う塔を目指していたのよ。 でも砂嵐だらけでとても見つかりっこないわ」
「嵐が出ている間は機器も狂って宇宙船で飛ぶことも出来ない。 正直、芳しくはありませんな」
「! ホロターミナスを探しているんですか?」
シャルロットが突然話に割って入り、ルイズとコルベールもそれを肯定するように頷いた。
「それなら僕達のアウトポストの側にあります。 僕達もそれと資源を目当てにこの星にやってきたんです」
「アルテミスって言うトラベラーが私達の貨物船にコンタクトを取ってきて――――」
「本当!?」
2人が目の色を変えて食いついてきた。 思わずたじろいてしまうシャルロットとみほだが、すぐルイズ達は気づいたように身を退いて謝罪する。
「――――ごめんなさい」
「……アルテミスという名前は我々にも耳に覚えがありましてな。 サイト君も彼を探しに行くとメッセージを残していたんだ」
「そんなことが……」
会ったこともない才人なるルイズの探し人、彼もまたアルテミスの行方を捜している人物だったらしい。 ルイズ達がホロターミナスを探しているというのも、もしかしたら才人の手がかりを持っているかもしれないアルテミスと、接触を図る為だったのかもしれないと推測できた。
鉄華団の面々は無言でアイコンタクトを取ると小さくうなずき、代表してビスケットがルイズらに問いかけた。
「ルイズ、コルベール先生……良かったら僕達と行動を共にしませんか?」
その提案に、ルイズとコルベールは2人して同時にビスケットの方を振り向いた。
「アルテミスの捜索という当面の目標は同じですし、何より貴方達も同じ鉄華団の面々です。 お二人さえ嫌じゃ無ければ、サイトって人の捜索も手伝えるかもしれない――――」
「それは渡りに船だ! 助かるよ!」
こちらが全てを言い終わる前に、食い気味にコルベールが賛同の声を上げる。 ルイズも目を輝かせており、肯定的な様子が窺えた。
「ありがとう、この世界で人間を見たケースが『殆ど』なかったから――――」
「?」
殆ど、と言ったルイズの言葉に、一瞬引っかかりを感じたビスケット――――だが。
エクソクラフトの側で布をかぶせて寝かせていたペコリーヌらが、遂に目を覚ましたようだ。
ニワトリ顔負けの大音量で飛び起きるペコリーヌに対し、隣にいたキャルもびっくりして変な声を上げながら目を覚ましてしまった。
「あ、おいっすー!☆ 皆さん無事でしたか!? ひぃふぅみぃ……良かった、皆勢揃い……ってかお二人程見慣れない「ペコリーヌさあああああああああああんっ!!!!」
目を覚ましたペコリーヌに、スペシャルウィークがその胸に飛び込んで強く抱擁する。
「良かった! 無事に目を覚ましてくれて良かったですぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!」
「あ、スペちゃんおいっす!☆ 無事って事はあの巨大なワームから逃げ切れたんですね!?」
「それが……!!」
スペシャルウィークは簡潔に説明した。 ワームのせいで鍾乳洞に落ち、一度は仲間と分断された。 そこから捜索し無事に見つけることは出来たが、ワームの幼生と思わしき化け物に襲われ間一髪難を逃れたこと。 その際にそこにいるルイズに救助され、コルベールはビスケットのエクソクラフトの修理に手を貸してくれたことなどを全てを話した。
「お二人も崩れた岩の下敷きになっていて大変だったんですから……!!」
「ぶへっ!? なによそれ!! ヘタしたら私達二人して圧死してたんじゃない!!」
「やばいですね☆」
「本当にやばいわよッ!!!! ってかヘタしたら協力者が増えた以外状況改善してないじゃない!」
目覚めたばかりで元気ハツラツなペコリーヌと騒々しいキャルの姿。 鉄華団にしてみれば見慣れた光景に、思わず笑みがこぼれる。
「鼓膜が破れるかと思ったわ……騒々しすぎるわよッ!!」
「げ、元気な仲間ですな……」
その場にいた皆が耳を塞いでいた中でルイズは抗議の声を上げ、コルベールは引きつった笑みを浮かべていた。
そんなルイズがペコリーヌと不意に目が合うと、ペコリーヌは一直線にルイズに飛び込無用に抱き寄せた。
「貴女がルイズちゃんですね! スペちゃんを助けてくれてありがとうございます!」
「だぁああっ!! な、何すんのよ! いきなり抱きつかないで!!」
「くぉら!! 何やってんのよアホリーヌ!! 離れろっての!!」
女三人で姦しいを地で行くような状況。
ルイズとキャルの2人がかりでの引き剥がしにも、ペコリーヌは一切動じる様子はない。
馴れ馴れしいを通り越した過剰気味なスキンシップが行われ、ルイズも抱きしめに抵抗できない中、小声で『また私より胸が大きい』と不満そうに唇を尖らせてぼやいていた。
そんな様子を苦笑いしながら眺めていたコルベールであったが、ビスケットが口を挟む。
「……いつもあんな感じなんです。 彼女なりの親愛の証といいますか」
ビスケットは苦笑いを浮かべてそう説明した。
「はは、心配せずともそれは伝わりますぞ……あと、彼女は高貴な家の出ですかな? やんちゃな振る舞いにしてはどこか気品を感じるような……」
「一国のプリンセスだそうです。 それとああ見えて、人肌恋しい所があるとやりとりの中で見え隠れしていましたし、それ以前にもオルガの口から……」
「成る程」
コルベールは腑に落ちたようにうなずくと、騒がしい少女達をよそに辺りを見渡し始めた。 そしてそれは、騒動に温かな視線を送っていたスペシャルウィークも同様だった。
「スペちゃんどうしたの?」
その様子をたまたま視線に気がついたみほが声をかけた。 そして次にシャルロットが身構えた。 彼女の目前にUIが展開される。
「!! これは――――」
「這いずるような足音が聞こえます……これって!!」
スペシャルウィークは青ざめる。 どうやら彼女には聞き覚えのある音だったようだ。 よく見れば、彼女と同じようにいち早く反応したコルベールが、そしてその隣にいたビスケットがマルチツールを取り出し、辺りを警戒していた。
「……どうやら、のんびりとここにいる訳にもいかなさそうですね」
「そうかもしれない」
目を細める彼らの表情には鬼気迫るものがあった。 どうやらスペシャルウィークが、そしてシャルロットも気づいた通り望ましくないモノが近づいてきているようだ。 近づく引きずり音からもスペシャルウィークは背筋を撫でられる悪寒が増していき、悪い想像が現実味を帯びてきているように感じられた。
「ああ、間違いない……この音は間違いなくさっきの……!!」
「ビスケット君! もうこのエクソクラフト、動かして大丈夫なんだよね!?」
「!! ああ、大丈夫!! 修理のデキについては折り紙付きだよ!!」
問いかけるみほに対しビスケットが答え、その言葉を聞いたみほが他の仲間達に呼びかけた。
「あんこうチームのはエクソクラフトの中に入って! 迎撃の準備を!」
「――――来る!!!!」
ビスケットがそう告げた次の瞬間、鍾乳洞の穴という穴からそれは一斉にエクソクラフト目掛け飛びかかってきた。
もう1月も終わりかけですが、明けましておめでとうございます!
めっちゃ忙しくて中々執筆に集中できず、去年の12月はついにお休みしてしまいましたが皆さんはお元気でしょうか?
ルイズとコルベール、こういうキャラで合ってたっけと色々思い出しながら書いてますが、まあ何かある度に新キャラ出すと動かすのに苦労するのなんの(白目)
異世界オルガって言う共通のテーマとは言え、水滸伝よろしく多くの主人公勢が集まる作品はこの辺が大変ですね……でもめげずに最後までやるぞ!
と、言う訳で……変わらず不定期連載になりますが、今年もよろしくお願いします!