No Orphan's Sky ~異世界オルガ外伝~ 作:Easatoshi
「だーかーらー!! 人様の物まで食べちゃダメって言ったでしょーに!!」
「あははっ……ごめんね皆。 お腹が空き過ぎちゃって見境無くなっちゃいました」
しばらくして、皆が探し求めた食料を平らげてしまった事実に気付き、流石にしょげるペコリーヌに頭を下げさせるは、後から彼女を追って事情を知った、ペコリーヌと同じ仲間の猫耳娘のキャルだった。
二人はかつてアストルムという異世界……と言って良いのかどうかは分からないが、とにかく旅の中で出会った心強い仲間達である。
ペコリーヌは旅路の中であらゆる食材を探し求め、美味しい物を仲間達と共に共有する事を生きがいとする、強く心優しい女の子だ。
もう一人のキャルはそんなペコリーヌに対し、ある存在からの密命を受けて彼女を狙ってやって来た刺客だった。 しかし不器用な優しさを持つ彼女にそれは果たすことが出来ず、ペコリーヌとの触れ合いを通し彼女の仲間になる道を選んだ少女だった。
「いや、困った時はお互い様だからいいよ」
「う、うむ……それよりもだ……」
受け答えするシャルロットとラウラは特に怒っている様子はないが……深刻なのはウマ娘二人だった。
「はちみーはちみーはちみー……はちみーをなめーるとー……」
「ご、ごはんはあげません……」
ハイライトオフ。 やっとありつけるはずだった食料を目の前で失った事への怒りと悲しみで、ここまでの過酷な旅も相まって完全にグロッキーになってしまったのだ。
特にトウカイテイオーは明後日の方を向いてはちみーの歌をブツブツと歌っており、深刻な状況である事が窺える。
「……ダメだな、こりゃ完全にダウンしちまったか」
ため息をつくオルガ。 彼はウマ娘がそこでばつの悪そうにするペコリーヌ同様、力を発揮できる代わりに『燃費』がすこぶる悪いことを知っている。 こうなってしまった以上、誰かが彼女達に物を食べさせない限りテコでも動かないだろうともわかっていた。
そして現在進行形で自分達の命に関わる食料難に陥っている事を思い出した。
宇宙服……エクソスーツは生命維持システムで体調を整えてはくれるが、決して空腹は満たされないのである。 食べる物を食べなければこのままでは餓死まっしぐらである。
さてどうしたものか……と思案してると。
「わかりました! 食べちゃった分は私が食料を取ってきます!」
ペコリーヌは決心したように、勢いよく立ち上がった。
「実は私、食料になる植物が一杯生えている場所を知っています! 本当はそこを目指していたんですけど、たどり着く前にエネルギー切れを起こしちゃいまして……でももう大丈夫! 助けてくれた御礼に、私がそれ以上の食料を皆さんに持ってきます!」
「!本当か!?」
「期待して良いんですね!?」
「マックイーンじゃないけどパクパクするよ!?」
その言葉に、気力を無くしかけていたスペシャルウィーク達が立ち上がった。 死んだ魚のような目だった二人が期待に色めきだっている。その食いつきぶりにペコリーヌはにっこりと笑って答えた。
「もちろんです! 鉄華団は嘘つきませんよオルガ団長! 食べ物がいっぱいある場所まで案内しますよ! さあキャルちゃん、食料集めにもう一度ランデヴーですよ!☆」
「ヘェッ!? ま、またぁ~? 長旅でいい加減疲れたんだから、食べちゃったアンタだけで行きなさいよ~~!!」
「旅は道連れです! ささ、レッツゴー!☆」
キャルを引きずって明後日の方向へ行くペコリーヌの力強い声を聞いて、相変わらずな様子にオルガは安堵した。
(……?)
同時にオルガは、食料探しに向かおうとしたペコリーヌを呼び止めた。
「ちょっと待てペコリーヌ。 そう言えばユウキとコッコロはこっちの世界に来てないのか?」
「はい! すぐに探し回ったんですけど、どうも私達だけこちらに来ちゃったみたいです! 騎士君とコッコロちゃんも元気にしていると良いですね!☆」
「……そっか」
オルガはそう言って、走り去るペコリーヌ達に手を振って見送った。
「なんて言うか、元気いっぱいだね」
「破天荒とも言うがな……妙に距離感が近いというか、少し圧倒されたぞ」
シャルロットとラウラは引き気味になりながらも、ペコリーヌの底抜けな明るさに悪い印象は抱いてないようだ。
そんな様子の彼女らを見てオルガは言った。
「さてと……俺達はいよいよお待ちかねの、だな」
オルガはインベントリから『有色金属』の在庫を確認すると、前の惑星で回収した設計図を取り出し実体化させる。
それは予てから設置するつもりだった『基地のコンピューター』だった。
四脚を地面に突き刺してコンピューターを展開、起動する。 オルガを中心に残り4人は背後からその様子を固唾を呑んで見守った。
<地図アーカイブを検索中...>
<全宇宙アーカイブ検索では、この土地の所有歴は検出されませんでした。 音波探知検査により、この土地は建設に適することを確認済みです。 土地を所有しますか?>
「はい」
オルガは淡々と了承すると、コンピュータを中心にソナーのような光の帯が広がり、この土地がオルガ達『鉄華団』の所有となったことが登記された。
「手続き完了だ。 さてと……拠点、建てていくか!」
「「「おおー!!」」」
オルガの掛け声に続いて全員が気合いの入った声で答える。
こうして彼等の本格的な基地建設が始まった。
<以前のユーザーのログにアクセス中...>
「! おお、忘れてた」
コンピューターにはこの設計図を残した者のデータが残っていると踏んで、前の星から持ち出したことをオルガはふと思い出した。 基地のコンピュータは続けてメッセージを読み上げる。
<エントリー#4925Dが残っています...>
<嵐が吹き荒れている -kzzzkt- シェルターの設計図は残しておくが... -kzzzkt- しなければ -kzkt- すぐに戻る...>
メッセージログには、最低限だが基地建設に使う部材の設計図が記されていた。 市から基地を作る必要があるかもしれないと覚悟していた皆にとって、これは渡りに船であった。
「基地のデータを残してくれた人には感謝だね!」
「ああ、恩に着るぜ……で、どれどれ?」
オルガ達は受け取った設計図のデータを確認し……一斉に驚いた。
「はあ!? 『木材製』だと!?」
なんと受け取ったデータに書かれている、基地の部材は『炭素』を元に生成する木製のパーツだったのだ。
「いや、そりゃこの星の気候は温暖だけどさ……」
「遍く環境で使える……のか?」
「あ、でもこの世界の技術力だから……きっとすごい木材なのかもしれませんよ!?」
「……どう見ても、余所の環境で使えるっていう風には見えないよー……」
皆が一様に、その性能について怪訝な目を向ける。
スペシャルウィークだけは肩を悩んでいても仕方が無いと結論づけ、設計図に書いてある通りに基地建設の準備を始めることにした。
「ま、スペの言う通り……シェルターとしての機能は確保されてんだろ。 この分だとアレだな……ごく簡単な建築しか出来ねぇが、それでも一先ずの仮住まいとしては十分だな」
「うん、それに資材の『炭素』は有り余りそうなくらいだし、せっかくだから有効活用しないとね」
シャルロットも納得して作業に入る。
建築自体は非常に簡単だ。 任意の位置に部品の立体映像が投影され、そこを指定すれば部材が勝手に設置される新設設計の極みだった。 その気になれば外装に凝った巨大基地も作れるとは言え、手に入れた設計図は本当に最低限の物だった為――――
完成したその基地は基地とも呼べない四角形、言うなれば掘っ立て小屋だった。
「……これはアレだな、一夏がやってたゲームの……」
「確か豆腐建築って言うんだっけ?」
「アレ? ひょっとしてスペ達の世界にも『マイクラ』ってある?」
「はい、テイオーさんがヒマな時に良く遊んでましたね」
「なんだよ……お前らだって素手で木を折ったり、木のピッケルで石とか掘った事あるのかよ」
痛そうに手を摩りながら思い出し笑いをするオルガの一言に、4人は思わず首を傾げてオルガに問い返した。
「え? ゲームの話をしてるんだけど?」
「オルガさん、『マインクラフト』ってゲームは流石に聞いた事ありますよね?」
「流石のボク達ウマ娘も、素手で木をへし折る子はまれだよー! まあ、パワー系が居ないとは言ってないけど」
「まさか団長……異世界転生しているからと言って、本当にマインクラフトの世界に迷い込んだのか?」
4人の追求するようなまなざしに、オルガは目線を泳がせる。
事実その通りで、*1オルガはてっきり実体験の記憶に基づいた会話のつもりで受け答えをしてしまったのだが、どことなく4人の眼は期待に色めきだっているように見える。
ここでその話をすれば、絶対に色々と質問攻めにされるのは間違いない。 オルガはとりあえず目先の基地に集中する事とした。
「ま、まあアレだ! 折角作った建物に入ってみようぜ!」
「えー! ケチー! リアルマイクラとか絶対面白そうじゃん!」
「話を逸らさないで下さいよー!」
「俺達だって建物を手軽に作れるようになったんだから、特に珍しくもねぇだろ? ほら、話は後にして中に入るぞ」
そう言いながらオルガは基地の中へ入る。 4人も会話を遮られて不満気味に彼に続いた。
中に入るとそこは完全に真四角な部屋。 大きめに作っただけあってスペースにゆとりはあり、これから戻ってくるペコリーヌとキャルを入れて7人、更にはその他諸々の資材を入れても余裕があるだろう。
しかし、何より驚いたのは――――
「驚くほど快適だな」
オルガの言ったことは誇張ではない。 木製ではあるが、これらはスペシャルウィークが言った通り、宇宙という広大な舞台の為の前哨基地として使用できるよう設計された、れっきとした先進設計の部材なのだ。
いずれも耐環境に優れた加工が成されていて、床と壁と天井全てをきちんと組み合わせ運用すれば、外的要因による障害をほぼ取り除ける優秀なシェルターになるのだ。
文字通り放射能も高温も、まだオルガ達が発見していない超低温や猛毒の環境も問題なくシャットアウト出来ると言っても過言ではない。
「ほんとですねー! 危険防御システムが回復して行ってますよ!?」
「宇宙船の中みたいに、外の悪い環境シャットアウト出来るんだって!」
「スペシャルウィークの言う通りだな。 確かにこれなら他の環境でも使えるかもしれない」
「中に仕切りをつけて、部屋分けとかしても良さそうだね♪」
シャルロットの言葉に一同が同意し、早速部屋を分けることになった。 大きめに作った建物だが、製造コストは思いのほか少なくて済んだ為、中を部屋分けする程度には十分すぎるほどの『炭素』が残っていた。
「流石に家具とかの類いは無いみたいだけどね……」
「それなら皆さんで作ってみても良いかもしれませんね! 力仕事なら私達にお任せです!」
「うむ、ではベッドやテーブルも作っていくとするか」
「おーしお前ら! ペコリーヌ達が戻ってくるまでのもう一仕事だ!」
「「「「おー!」」」」
ようやく見つけた安住の地に、皆がこれからの展望を和気藹々と語りながら、住む為の基地を彩る家具を作り上げていく。
そして1時間後、約束通りペコリーヌはキャルと共に、大量の食料を持ち帰ってきた。
「おいっす~! ただいま戻りました!☆」
「戻ったわよ! お、掘っ立て小屋みたいだけど基地が出来てる! あ、テーブルとか作ってたのね!」
「おお! 待ちかねたぜ……その分じゃ成果もバッチリみてえだな」
帰還した2人を迎え入れると、早速お待ちかねの食事会が始まろうとしていた。
「……そう言えば、基地の部材にキッチンとかは無かったですけど――――」
「心配ご無用! しっかりと料理の為の道具はありますよ!」
スペシャルウィークの疑問点に、ペコリーヌは自信満々に胸を張って答えた。
ペコリーヌがインベントリから取り出したのは、コック帽をかぶったような丸みを帯びた機械の箱。
それはこの世界では一般的な物で、食材を調理する為にも使われる『栄養プロセッサー』なる代物だった。
「自分で調理したいのが本音なんですが、行く先々が落ち着いて調理できる安全な環境とは限りませんからね☆ どこでも確実に同じ調理課程を踏めるこの機械に、私のオリジナルレシピを登録してあります! これで美味しいご飯がいつでも食べられてやばいですね☆」
その言葉を聞いて、一同はゴクリと唾を飲み込んだ。
オルガは知っているが、旅先で振るってきた美食に情熱を注ぐ彼女の手料理は絶品である。
料理好きの少女は、どんな環境でもその実力を発揮出来るように様々な調理器具を用意しているのだったが、まさか極限の環境を想定して、全自動で料理をしてくれる機械まで調達していたとは。
「へぇ、レシピをプログラミングできんのか? この機械」
「いや、登録に当たっては何か改造してたようにも見えたわね。 旅先で知り合ったカップルがいたんだけど、男の方が機械工学ってのに詳しくって、機械の蓋を開けて何かいじくってたのを覚えてるわ……その間女の方は料理上手ってことでペコリーヌと気が合った物だから、ずっと料理談話してたわ……それはもう作業が終わっても何時間も」
代わりに質問に答えるキャルの目は、どこか遠い目をしている。
どうやら話が弾みすぎて相当待ちぼうけを食らったようで、かなり辟易していた事が容易に窺えた。
(プログラマーに料理上手の相方か……あいつらを思い出すな)
オルガは旅の記憶に思いを馳せて、一人ふと笑っていた。
「まあ、話は後にしましょう! 早速調理開始です☆」
ペコリーヌのレシピによって充実した栄養プロセッサの性能は素晴らしかった。
小麦や甘い根からは小麦粉とシロップを、そしてそびえ立つように大きく育った青い花……『スターブランブル』と呼ばれる花から採取した『スターバルブ』からは『ピルグリムベリー』なる木イチゴが、それらから更にジュースを搾り、一部は天然酵母として先述の小麦粉と練り合わせて発酵させ、更にもう一部はシロップとの掛け合わせでジャムを作り出したりさえした。
一緒に採取した『インパルス豆』なる植物からはカカオの代用品も作り出せ、それらはパンを焼く課程でチョコチップとして混入され、出来上がってみれば果物のジャムとチョコチップ入りの上等なお菓子のようなパンが出来ていた。 そこに低温殺菌されたミルクも用意されて完璧だった。
あとついでにオルガの持っていた『猫レバー』も、加熱殺菌により美味しそうな『加工肉』として香ばしい香りを漂わせていることを追記しておく。
エクソスーツ越しでも摂取できるとのことだが、安全に調理されている事は保証済みなので、折角だからしっかりかぶりついて食べてみたいと、安全なシェルター内ならではと言うことでシャルロットとラウラ以外皆頭部のバイザーを取り外し、生身での初めての顔合わせとなった。
「それじゃ、皆さん揃って」
皆の声がハモると同時に、各々が思い思いに自分のパンを口に運ぶ。
口いっぱいに広がる芳ばしい風味とチョコの味、生地自体のほのかな甘みと酸味が混じり合い、それが合わさることで極上のハーモニーが生まれていた。
空腹という極上のスパイスも相まって、その旨さは筆舌に尽くしがたい。
「おいしい!」
「うむ、学食のおばちゃんが出してくれたあの懐かしい感じを思い出す……この怪しげだったレバーも、いけるな」
真っ先に声を上げたのはシャルロットだった。 そこに食材に舌鼓を打ち顔をほころばせるラウラと続く。
「ぐすっ!うっうっ……まともな食事とったの、随分久しぶりな気がしますぅ」
「ぴえぇぇぇぇぇんっ!!!! おいしいよおおおおおおおおお!!!!」
「こーら、落ち着きなさいよ! 色々飛んでるじゃない!」
スペシャルウィークとトウカイテイオーに至っては、特に後者はどこぞのチケゾーの如く感極まって泣き出す有様だった。
食べてる最中に大声で叫ぶので色々と飛び散って行儀が悪いが、泣くほど美味しくパンを頬張る彼女達を咎める者はいない。 一応指摘をするキャルも怒った感じでは無く、ウマ娘達の苦労を知るオルガなら尚更微笑ましく思っていた。
そんなこんなで食事の席は終始和やかな空気に包まれていた。
オルガは一足先に食べ終え、余ったカカオから作り出した苦いホットココアを飲みながら、この惑星の夜景を眺めていた。視界の先に見える無数の星々……その美しさに思わず目を奪われていると、いつの間にか隣に来ていたシャルロットがこう切り出してきた。
シャルロットはインナーのみの姿で、オルガもエクソスーツは脱いで肌着姿だった。
「星が綺麗だね、オルガ」
「ああ、そうだな。 こんな星空は火星にいた頃だって見えなかったぜ」
「ホントだね♪ あんな輪っかのついた星がこんなにハッキリ見えて、僕達はつい朝方まであそこにいたって言うのが信じられない……本当に、違う世界の違う星に来たんだって思ったよ」
「そうだな」
シャルロットの問い掛けに短く答えたオルガだったが、すぐに言葉を付け加える。
「……この星の」
オルガはそう言うと一度息を吸い込み、吐いてまた続ける。
「この星々のどこかに、ミカやマクギリスもいるのか? あいつらもこっちの世界に呼び出されて、俺達を探していたりするのかって思っちまうな」
「オルガ……」
不安を感じさせないように気丈に振る舞うオルガに対し、何か言いかけたシャルロットだが何も言わずにただ黙っていた。そして、その気持ちに応えるかのように、オルガもまたこう告げる。
「もし今ここで、俺の声があいつらに届くのなら言ってやりたい。 俺達は元気でやってる。 新しい世界で居場所がないなら、また俺達が作ってやる。 だから、俺達の前に早く戻って来いよってな……」
オルガが呟くように言った言葉。 それは、今の彼を支えているモノの一つだった。
『三日月』『昭弘』『シノ』『ビスケット』『ダンジ』『アストン』……皆、元の世界で死んでいった団員達だ。 マクギリスも団員では無いが、一人の協力者として最後まで誠意を尽くしてくれた。 あまりに追い詰められ、一度はそんな彼を裏切りかけてしまったのはオルガにとっては悔恨の記憶だが、鉄華団を窮地に追い込む一因になったとはいえ、彼なりに筋を通そうとしていたことはしっかりと記憶している。
そんな彼等鉄華団の団員は、一つの家族として絆を深めていった。 その大切な家族の繋がりこそが、オルガが折れずにここまで異世界を駆け抜けて来た理由であった。 元の世界では失われてしまった仲間との再会を、異世界の旅の過程で果たしたいと彼は思っていた。
しかし、この広大な宇宙に浮かぶ世界に飛ばされた自分達を探し出せる可能性は低く、ましてやシャルロット達異世界の住人達とこうも立て続けに再会できたことは、それこそ奇跡的な物でしか無いとも不安げに感じていた。
「大丈夫だよオルガ」
「え?」
不意に声を掛けてきたのはシャルロットだった。
彼女の目は優しく、それでいて真っ直ぐで強い光を放っている。
「きっといつか、オルガの願いは叶うと思うよ。 オルガが前に進もうとする限りはさ。
僕にはわかる。 だって、オルガが仲間との再会を信じて報われたように、僕も同じだったもの。 再会を信じ合えるのなら、きっと願いも必ず叶うんだよ」
「シャル……」
オルガの肩に手を置いたシャルロットの温もりが伝わってくる。
かつてオルガ自身が三日月にも言った。 仮に死んでしまったとしても、仲間との絆があるのならたとえ『向こう側』に行ってもいつかは必ず会える。 そしてそれは果たされてきた。
ならば、今こうして生きているのなら、尚のこと再会の願いは果たされるべきでは無いのか、オルガはそう思い始めていた。
そしてシャルロットは、更にこんな言葉を続けた。
「オルガの願いは僕にとっての道標でもあるんだから、くじけないで。 僕達はまだ始まったばかりなんだから」
「……ああ、そうだな」
心の中の不安がほぐれたように、フッと笑うオルガを見てシャルロットもニッコリと微笑んだ。