風太郎君には、辛い過去に向き合って貰いましょう(捏造)
まだコレを書いている段階で、完結まで読んでないし、なんなら映画も見に行ってないし、ハガレンの完結編も見に行かないとなぁ、とか思いながらモンハンを触っている今日この頃です。
時間が足りねぇ
と言うわけで、あと少しですので仕方なく付き合って下さるのであれば、続きをどうぞ。
一つ嘘をついた。
『未来のために、勉強をする』
成る程、実にそれらしく聞こえる。実際の人間はその為にしているのだろう。一つ問題があるとすれば、風太郎の行動理由に未来はないということだ。
過去に少女と交わした言葉、それを嘘にしたくなかったのだ。あの時の少女の言葉が全てで有り、勉強に対して見返りを求めることも無い。実力が身につくと目に見える点数で結果が現れることに歓びはあるが、それ自身に大きな意味は無い。そもそも大切な未来のため等と嘯くのであれば、勉強以外の大切な事を天秤に掛けなければならない。勉強を以て目指す目標がない風太郎には、選ぶべき未来など見えはしないのだ。
その日は珍しく外で勉強をしたいと三玖と一花に誘われた。理由を聞けば、いつもと違う環境で勉強がしたい、ということだ。図書館では駄目なのか、と問うと四葉が騒ぐと他に迷惑が掛かると言うことだ。
「まぁ、確かに気分を変えるのは悪くない、か」
そう呟いてファミレスに足を踏み入れようとした瞬間、つま先から頭の先まで、警鐘が鳴り響く。
「……なんでだよ」
見間違いかもしれない、というよりもその可能性の方が普通に考えれば高い。だとすれば直近に二乃に変なことを言われた所為だろう。十年以上前の出来事の影に怯える等、非合理にも程がある。
「……」
にも関わらず、風太郎の足は止まった。今なら未だ間に合う、手遅れになる前に決断を下さなければならない。全身から沸々とわき上がる嫌悪感から、一刻も早く逃れなければならない。
「……今日は調子が悪いな」
実際に調子は悪い。張り付くシャツの不快さが異常な発汗を伝えているし、目眩や頭痛すら感じる。こんな時は一人で静かに勉強でもするべきなのだ。
「……っ!?」
返した踵に、掴まれた左腕。掴まれているのに非力で、懸命に握る指先は、無理に扱えば壊れてしまいそうな危うさに足を止めざるを得なかった。
「……フータロー」
文字通り、風太郎を待っていたのだろう。彼の姿を見て、不穏な気配を感じて走り寄ってきたのだ。頬を伝う汗がそれを風太郎に感じさせる。
冷たい指先は、極度の緊張を。
震える指は、恐怖を。
小刻みに揺れる膝は、焦りを。
涙が溢れそうになる瞳は、怯えを。
見れば、或いは見なくても分かる。彼女の知識や経験の中にある行動ではない。未経験で、不確かで、曖昧で、それでいて決して良くは無い事に挑戦しているのだ。
同じ物を前にして、逃げ出そうとする風太郎とは正反対に。
「離せよ」
掴んでいたくないはずだ、ヘッドホンを身につけ、外界の音を遮断して、ふさぎ込んでしまいたいはずだ。それなのに、懸命に首を横に振る。
「お前に関係ないだろ」
その言葉に、瞳は泳ぐ。他者からの不理解と拒絶は、彼女の特大の苦痛だからだ。
「……」
なのに、手を離さない。言葉も無い。だけど、痛い程伝わる。風太郎にも聞き覚えのある沈黙が。
「何も分からないだろ、お前には!」
咄嗟に張り上げてしまった声に、自分自身驚く。手が一層冷たく、顔は俯き、息が上がって過呼吸気味かも知れない。だけど、決して手は離れない。
「……教えて欲しい」
「え?」
呟いた彼女の言葉に、頭が真っ白になる。
「分からないから、教えて欲しいの」
俯いたまま、震える手足は止まらず、先ほどの怒声に、息を整える事もままならない。
「過去のこと、それから……」
一花からは、傷つけるだけだと言われた。
二乃からは、わかり合えるものでは無い、と止められた。
四葉からは、隠し事は隠したままの方がいいのではないか、と諭された。
五月からは、他人にそこまでされることではない、と諫められた。
「それが人の心なら、深さ等分からない」
自分はお呼びでは無いのかも知れない。それでもなお、止まれなかったのは。
「君が飛び込んでくれたから」
痛みも隠し事も、見ず知らずだって関係ない、分かち合える物ではないのだというのなら。
『二倍あればいい』
風太郎は、息を吸う。態々意識しなければ出来なくなるほど、普段しているはずの動作すら分からなくなるほど、恐怖している。
それでもなお、足は進む。過去は未来に続くのだと、彼女に伝えなければならない。よりよい明日を選択するために、過去と向き合う時が来たのだ。
「久しぶりだな、風太郎」
テーブルの向こうに座る幼馴染みと向き合う。逃げ続けてきた過去が、現在に追いつく。
「ああ、久しぶりだな」
声が震え、手が震え、足が震え、心臓が口から飛び出るのを必死で抑えているのは、自分では無く、死んでしまいそうなほどの恐怖の中で、風が吹けば倒れてしまいそうなほど震える体で、手を離さない彼女に届けなければならないのだ。
響く救難信号。
深い海の底のような、遙か高い山の頂上のような。自分の知らない場所から響くそれを、まるで灯台の灯のように彷徨い目指す。
祈るのはどちらだろう。
祈られるのはどちらだろう。
もしかすると、その答えを知るために、歩くのかも知れない。
何も考えていなかった。そもそも考える余裕すらなかったのだが。それよりも、目の前の光景が信じられなかった。
「すまなかった」
テーブルに頭をこすりつけ、ただただ謝罪の言葉を並べる幼馴染み。
「い、いや、おい。待ってくれ、どうしたって言うんだ」
事の顛末は、その幼馴染が女友達に喋ったことらしい。しつこく食い下がられたから、接点がないだろうと思いぼかして内容を伝えた様だ。しかし、ある程度の内容を知っていたため、明確な悪意を持って二乃に伝わった。消し去りたい過去が、現在まで追ってきたのだ。
「二乃さんから聞いた。噂を流した本人にはきつく言ったし、他の友人には広まっていないはずだ」
頭を下げたまま、幼馴染みは言葉を続ける。
「それでも、許してくれとは言わない。あの時の俺は、その重大さに気付いて居なかったとしても……悲劇にならなかったとしてもだ」
風太郎は思い出した。らいはに対して悪意を抱いたのは、彼の言葉が始まりだった。貧乏になったことには、原因があるはずだ。何かそうなった時に変化があったはずだ、と。
「……」
ただただ頭を下げる幼馴染みに、掛ける言葉などあるのだろうか。罪悪感に押しつぶされ、記憶の片隅においやった自分を。何が原因で、何が悪かったのかすらも忘却し、それを無かったかのように振る舞っていた自分を、棚に上げて掛ける言葉など無い。
「……そうだな」
それでも、自分が忌み嫌い、心の奥底に押し込み、無かったことにしようとした自分を見つけてくれる人がいた。同じだけの痛みを食いしばって、誰にも分からない沈黙を聞いて、自分も気付かなかったメーデーを届けてくれた人がいた。それならば、渡さなければならない。
「あの日、あの時の事、悪かったのは……俺達だ。お前一人じゃ無い」
その言葉に、幼馴染みは顔を上げる。
「俺も、許してくれとは言わないからさ。また友達になってくれないか」
酷い作り笑いだ。腹の底にある、暗い感情はまだ、濁り溜まっている。だけど、それでもなお、他人のために言葉を取り繕う事は、許されて良いのでは無いだろうか。
「……ありがとう」
外の空気は、一息吸うだけでも感動するほど爽やかだった。もしくは肺の中身がヘドロか何かだったのではないかと疑ってしまう程、先ほどまで口から取り込んでいたものは、粘りつき重く、喉から全てを焼き尽くしてしまいそうだったから。
「……」
無言の視線に気付く。先ほどまでの頑として譲らないその意思は、今はどこかに消え去り。ヘッドホンが音を遮り、長い前髪が視界を遮り、手の平を覆う袖が触覚すら鈍らせる。
「ありがとうな、三玖」
氷解するように柔らかな笑顔になるのを見届けて、歩き始める。
「さぁ、勉強をしようか」
勉強が終わり、五つ子のマンションを後にしようと自動ドアを跨いだ時、後ろから呼び止められる。
「ごめんなさい。軽率だったわ」
嘘偽りも、装飾もない謝罪。風太郎は一瞬その言葉の主が二乃だという事に気づけなかった。
「あんたの優先順位が、赤の他人よりも下だったとしても、言って良いことと良くないことの分別くらいはあるつもりよ」
故に心寄りの謝罪を。
「いいよ」
「ふ、ふん。謝ったからって、何でもしてあげる訳じゃ……え?」
風太郎の意外な言葉に、呆れた顔をする二乃。
「てっきりアンタのことだから、脅して何か要求してくるのかと……」
「今回の事じゃ無ければ、三日三晩勉強会に強制参加でも良かったんだぜ?」
絶対に嫌だ、と食い気味に返される。風太郎がその左手に目を落とすと、未だ微かに冷たい温もりが残っている気がする。
「まぁ、俺はお前達五つ子の先生だからな。今回のことは水に流してやるよ」
認めた訳じゃない、と二乃に反発されるが、気にした様子もなく帰路を歩く。
「ああ、早く勉強しないとな!」
教える以上は、彼女達に誇れる自分で無くてはならない。その為に、少しだけ未来を見るの悪くは無いかも知れない。
読了ありがとうございました。
風太郎君が少しだけ先生になるような話だったのでしょうか(適当)
メーデーの歌詞を混ぜたいだけの二次創作だったような気がする。
でもきっと、三玖ちゃんにはお似合いの歌詞だと思うんだ。
でも多分、俺の推しじゃねぇんだよなぁ……
くっころ系お姉さんが好きだからか、未だに推しが決まらん。
漫画の続き読んだら変わるかな、どうだろう。
ここまで稚拙な文章を読んで頂きありがとうございました。
何かの間違いで続きが脳裏に浮かべば書くかもしれないし、書かないかも知れない。