【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み   作:きりぼー

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さぁ、いよいよお泊りデートだ。


14 別荘旅行・星降る夜に

8月5日(金)夏休み13日目

 

「倫也、この映画つまらない」

「そうだな。でも、もう少し言葉を選ぼうか。これを楽しいって人もいるかもしれないし」

「でも、評判は悪いし、観客動員数は爆死しているし、フォローすべきところがないわよ」

「う~ん。映像が斬新でカメラワークが面白い・・・とか」

「消していいかしら」

「一応、最後までみたら?」

 

『バブリー』という、90年代の日本の経済アニメかと思ったらぜんぜん違った。ストリートランの近代SFファンタジーということになるのだろうか。ぼんやりとみていたがストーリーが頭にはいってこない。

 

 英梨々が頬杖をつきながらつまらなそうに見ている。俺は睡魔に負けてウトウトしはじめた。那須までは車で4時間以上かかる。渋滞にはまれば6時間を超える長丁場だ。まだ常磐高速道にすら入っていない。

 

 運転をしているのは澤村家執事の細川さん。助手席には奥様が同席されている。いつもようにビシッと決めたフォーマルではなくラフな格好をしていた。白髪に原色の青いポロシャツが似合っていた。

 細川さんは定年を過ぎても嘱託として勤めていたがついに引退を決意されたらしい。その功労賞として東北の旅行がプレゼントされた、その道中に那須があるので俺達は車に乗せてもらっている。

 公私混同しているが、英梨々にしてみれば「公」の部分がむしろ納得いっていないようだ。

 

※ ※ ※

 

「倫也。インター着いたわよ。トイレぐらい行ったほうがいいわよ」

 

 俺はアクビを1つして車を降りた。高速のインターチェンジだった。ずいぶんと進んでいる。

 トイレはガラガラだったので道路は順調なのだろう。トイレをすませる。英梨々と一緒に売店を見て回った。ご当地コラボ系が英梨々は好みだった。でっかいポッキーを買っている。

 

 俺と英梨々は後部座席に戻る。細川さん夫妻はのんびり喫茶店でお茶を飲んでいるらしい。ゆっくりと休憩し安全運転を心がける。大事なことだと思う。そういう焦らないところは見習いたい。

 

 遅くなった昼食は那須の温泉街にある有名な手打ち蕎麦で、水がいいせいかとても美味いことで有名だ。

 

 細川さん夫妻と一緒のテーブルを囲う。掘りごたつのある上品な和室で居心地がとても良い。俺も英梨々も天セイロ大盛を頼んだ。細川さん夫妻はザル蕎麦と、だし巻き卵を頼んでいた。夫妻は寡黙で無駄なことはしゃべらない。俺と英梨々は周りの景色や、メニューのことや、お土産売り場のめずらしい野菜について話をした。それを2人はニコニコして聞いていた。

 

 蕎麦がやがてくる。俺も英梨々も腹が減っていた。「いただきます」をしてから、天セイロをガツガツと食べる。お米も頼めばよかったかなと思うが、せっかくの蕎麦なので、蕎麦を心ゆくまで堪能した。何度来ても期待を裏切らない。

 

 この後、細川さんに別荘まで届けてもらい。お礼をいってここでお別れをした。時刻は16時を過ぎていた。

 

 俺と英梨々は2人きりで別荘に泊まる。信頼されているのはいいが、それでいいのか澤村家。

 

※ ※ ※

 

まずは別荘の掃除をする。布団を干したかったが、布団乾燥機で代用する。もう少し早ければ庭の雑草をとったり、コケを削ったりと施設管理もしたかった。もう夕方で虫がでている。外はヒグラシが鳴いていた。

 

「倫也、明日の予定はわかってるわよね?」

「ああ、大丈夫だ」

「6時に起きるから、今日は早く寝るわよ」

「ああ。わかっている」

 

 明日は山登りの予定だ。今日のうちに準備を整えておく。ここから最寄りのバス停まで徒歩で40分はかかる。それからバスにのって登山道入り口まで移動する。始発が早く6時にはバスが出ている。

 

英梨々が『早く寝る』ことを強調していることから、夜遊びはしないのだろう。実際問題として、アレをするとどれくらい疲れるのか俺はよくわからない。英梨々だってわからないだろう。初めての後の女子は股関節が痛くなって歩くのが辛いとかいう噂も聞く。登山前にはできないだろうなっと、バカなことを考えた。

 英梨々が怪しい笑顔で俺を見ている。さては心の中を見抜いているようだ。

 

 片付けと準備が終わった。英梨々がお風呂を沸かす。俺はローカル番組を見てすごす。ローカルニュースがなかなか面白い。

 晩御飯を食べるには早すぎる。まだぜんぜんお腹が空かない。とはいえ食べずに寝るわけにもいかない。明日の朝はおにぎりを持っていきたい。朝は忙しいだろうから今のうちにご飯を炊いておこうか。おにぎり作って冷蔵しておこう。冷凍も用意しておけば保冷になる。キッチンで米を水に浸した。水が冷たい。

 

 英梨々がお風呂からでてきた。昼は黄色いワンピースを着ていたが、パジャマ姿に着替えている。セクシーなネグリジェなんかではもちろんなくて、蛍光色のケロケロケロッピのパジャマだった。フード付きでかぶるとケロッピになれる。これが英梨々なりの距離の置き方なのかもしれない。ただ、髪は濡れていて、バスタオルで拭いている姿は、それなりに・・・綺麗で大人の感じがする。

 

 続いて俺が風呂に入った。バスタブには泡がたっている。俺は体と頭を洗い、最後には風呂のお湯を流しながら浴室の掃除もした。さんざんヌくべきか、ヌかざるべきかを悩んだ末、明日に体力を残しておくことにする。

更衣室には着替えが用意してあった。大人サイズのパジャマで、水色のプラレールだった。しかも夜に光る部分がある。N100系から700系まで描かれた新幹線バージョンにちょっとテンションがあがる・・・わけがない。

 

 風呂場から出ると、英梨々がハト麦茶を用意してくれた。一気に飲み干す。英梨々の髪は乾いていて、ケロッピのフードをかぶっていた。うんうんカワイイよ。それはわかる。

 

「あら、倫也。似合ってるじゃない」と口に手を当てて笑っている。バカにしたような言い方をわざとしているのは英梨々なりの気づかいか。

「お前ほどじゃねーよっ」と俺は言ってやった。高校三年生にもなって、ケロケロケロッピのパジャマを着こなせるのは英梨々ぐらいのものだろう。

 

 英梨々がTVをつけた。最近はメガネにも凝っているらしい。今日はフチのないメガネだが、ほぼ真ん丸なのでインテリっぽい雰囲気にはならない。牛乳瓶メガネをイメージしているのかもしれないが、それにしては可愛い。ぜんぜんメガネで美少女感を隠せていなかった。

 

 俺が英梨々をじぃーと見惚れていると、英梨々はそれに気が付いたらしく顔が赤くなっている。昨日のエレベーターのキスを思い出した。

 俺は英梨々に手を伸ばすと、英梨々は、サササッ!と距離をとって逃げた。

 

「倫也。今、キスしようとしたでしょ?」

「・・・」

 

 わかってるじゃん。ケロケロケロッピ程度には負けない。小学生モードっぽい英梨々でも、可愛いのは可愛いのだ。キスぐらいしたくなる。

 

「ダメだからねっ!」

「なんでだよ」

「今、キスしたら・・・もう、バカ!」

 

といって、座布団を投げてきた。

 

「とにかく、倫也はそこのロフトで寝なさいよね!あたしは下のベッドで寝てくるから」

「あいよぉ」

 

 俺は生返事をした。ちなみに英梨々の別荘は二階建てでリビングは二階にあり、寝室が一階だ。

 

 英梨々が階段を降りて下へ行ってしまった。時刻はまだ20時だ。いくらなんでも寝るには早いだろうに・・・寝室にテレビはなかったはずだ。慌てて降りたせいでスマホをテーブルの上に忘れている。

 俺は英梨々と自分のスマホを充電器に接続し照明を消した。部屋が真っ暗になる。びっくりするぐらい暗かったので、もう一度照明を付けて、ロフトへ上がってスタンドランプを灯した。それからまた降りて電気を消した。

 

さっきほど布団乾燥機で乾かしたので布団はフカフカしていた。ロフトのスタンドランプを消すと、部屋が真っ暗になった。

 

布団に横になって上を見ると、天窓があって、そこからは夜空が見える。目が暗さに慣れてくると星がだんだんと増えてくる。ロフトの隅には立派な天体望遠鏡もある。調整すれば、土星の輪や木星の衛星も見えるが、俺はぼんやりと全景を観る方が好きだ。

 

※ ※ ※

 

 考え事をする。さっきからエロいことしか思い浮かばない。やっぱり風呂場で落ち着かせるべきだったかもしれない。トイレで済ませるか・・・ああ悶々とする。そりゃそうだ。高校生なのだ。

 

 下の寝室にいる英梨々に会いにいったら、やっぱり自制心は働かないのだろうか。俺の童貞力ってそんなに弱いのかな。トランプでもしたかった。もしくは見飽きたヂブリアニメでいい。あるいはザマーウォーズとか・・・

 もう少し英梨々と一緒にいたかった。

 

 20時過ぎなんて、東京では一番賑わう頃だ。でも、この那須の別荘では深夜の様に静かで闇に沈んでいた。

 

 俺は立ち上がって天窓を開けた。星空が綺麗だった。雲が少ない。東京では見えない天の川が見える。夏の大三角形は星が多すぎてすぐには見つけられない。ああ、英梨々にも見せてやりたいなぁと思う。でもこの小さな天窓から、2人でのぞき込んだら、体が密着してしまう。きっとキスをして、英梨々の言う様に止まらないかもしれない。

 

 俺と英梨々は距離が縮まって、昔のようにただ無邪気には過ごせなくなっている。どんなに幼いパジャマで隠しても、その下は成熟した男女なのだから。どんな時も頭の隅でそんなことばかり考えるようになってしまった。

 

 その時、綺麗な流れ星が見えた。「あっ」すごいと感動する。また流れ星が落ちた。目が慣れてくると流れ星がよく見えた。

 どうやら今日は天体観測にちょうどいい夜空らしい。

 

改めて英梨々にみせてやりたいと俺は思った。下にいって呼んでこよう。自制心をフル稼働して、子供を演じよう。

 俺は天窓を一度閉めて、スタンドランプをつけた。はしごを降りようと下を覗きこむと・・・

 

 英梨々が昇ってくる途中で驚いた。暗い部屋に英梨々の金髪だけが微かなランプに照らされて光っている。

 

そういえば晩御飯もまだ食べていないし、歯も磨いていない。水に浸したご飯も炊いて、おにぎりも作らないと・・・1人で悶々とエロいことばかり考えている場合じゃなかった。

 

「ねぇ、星空が見えるんじゃない?さっき下の窓から空をみたら雲がなかったように見えたけど」

「ああ、よく見えるぞ。俺も今、お前を呼びに行こうとしたところだ」

「そう」

 

英梨々が梯子を上り終えた。ロフトは天井が低くて立つことはできない。天窓を開ければ屋根が見えるぐらいの高さだ。

 英梨々はフードをかぶっていなかった。金色の髪は自由に広がってキラキラしている。

 

 俺は天窓を開けてやる。英梨々がそこに立った。俺も小さな天窓のところで英梨々の後ろに一緒に立つ。英梨々の洗い立てのシャンプーの香りが鼻をくすぐる。

 

「流れ星がさ、さっき見えた」

「うそ」

「ほんと。目が慣れたら見えると思うぞ」

「うん・・・」

 

 英梨々の返事がなんだか小さな声で弱々しい。こうして改めてみると小柄で華奢だった。

 

「倫也、夏の大三角形わかる?」

「ああ、えっとな、真東にある。あそこにミルキーウェイがみえるだろ?」

「うん」

「だから、上にあるのが琴座のベガだ。織姫様だな」

「で、右下のあれが、鷲座のアルタイル」

「ピコ太郎ね」

「あのなぁ・・・そこでボケる!?」

「だって、倫也の手がいやらしいんだもん」

「・・・バレたか」

 

 右手で星を示しながら、俺は左手を英梨々の前に回して抱き寄せていた。英梨々の背中が俺に密着している。

 

「で、あの彦星の左にあるのが、白鳥座のデネブだな」

「よくできました」

 

 俺は右手も英梨々の前にして両手を組んで、英梨々を抱き寄せた。後ろから英梨々の頬にキスをした。英梨々は抵抗をしない。クラクラとするような香りがする。

 唇にふれた英梨々の頬はすべすべで柔らかい。

 

 英梨々は星空をみたまま目線を動かさない。

 

「なぁ英梨々・・・エリリ・・・」

 

 俺は耳元で囁く。あと一言、『君が抱きたい』とはっきり言ったら、もう英梨々は断れないはずだ。言葉もいらないかもしれない。

 英梨々の息遣いを感じる。もふもふとしたパジャマの生地。英梨々は細くて華奢だった。

 

 

 その時、充電中のケータイ電話がけたたましくなった。緊急地震警報だった。

 

「・・・お約束だな!」

「お約束よね」

 

 俺と英梨々はしゃがんで、地震に備えた。別荘がガタガタと揺れる。震度3ぐらいかもしれない。揺れが収まってから俺は下に降りて電気をつけた。英梨々も降りてきて、それから2人でご飯を炊き、おにぎりを作った。

 

 少しご飯を食べ、歯を磨き、俺と英梨々は理性を総動員して別々に寝た。

 

 なんとか、『倫理君』の名を守ったのだ。誰も得をしないのに!

 

(了)




「このまま巨大地震が来て、別荘がつぶれたらいいんじゃないかな?」
(匿名希望)

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