【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み 作:きりぼー
読み終えるとどっと疲れが出る。
8月6日(土)夏休み14日目
「ずいぶんおっ立てているわね」
「むにゃ?」
目が覚めると、そこは澤村家の別荘のロフトだった。俺は下半身を確認する。濡れてない大丈夫だ。昨日はギリギリだったので夢精するかと思った。よくがんばった俺の無意識。
・・・朝からバカなことを考えたが、さっき声をかけられていた気がする。俺は上半身を起こした。英梨々が梯子のところから顔をだけ出して覗いている。なんて変態行為が似合う女の子なのだろう。すでにツインテールになっていて、緑色のリボンで結んでいた。
「これ、ただの生理現象だから」
「しんどい?」
「秘密」
「そう。朝食できてるわよ」
「あいよ」
俺もリビングまで降りる。トイレを済ませ、洗面所で手と顔を洗う。水が冷たい。歯をみがき、櫛で髪型を整えて、リビングに行った。時刻はまだ早朝の5時半。外はすでに明るい。
テーブルの上にはバナナと、コンフレークと、牛乳パックが置いてある。さすが英梨々が用意してくれた朝食だけある。洋風だがハムエッグすらない。
いや、今時だと女の子ならハムエッグぐらい用意して当たり前という思考は古臭いだろう。ここはコンフレークのトラに感謝をささげて、文句を言わずに食べ始める。
「ねぇ、倫也」
「どうした?」
「さっき、トイレいったわよね」
「トイレいったな」
「それって、やっぱり出すの?」
「トイレは入れるとこじゃないからな」
「はぁ?あんたバカ?」
「いや、たぶん、朝からバカな質問しているのはお前の方だと思う」
「なによ・・・教えてくれたっていいじゃない」
「何をだよ・・・」
「だから、出したか出さないかでしょ」
「ほうぉ・・・もう一度聞くが、何を出すんだ?」
「・・・」
コンフレークだけだとおいしくない。バナナを齧る。もうちょいまともなものを食べたいがしょうがない。メロンパンぐらい買っておけばよかった。
「だって、あんなになっていたら、出さないと落ち着かないでしょ」
「何がだ・・・」
なんでこれから山登りをしようとする爽快な朝に、俺は下ネタに付き合わされているのだろう。興味津々の英梨々はきっと常識が壊れているのだろう。何しろエロ同人漫画を描くために、無修正動画を見る変態少女なのだ。目の前の俺のふくらみをみて、何かのスイッチが入ったのかもしれない。とはいえ、こちらはスルーしかない。
「もういいいわよ」
顔を真っ赤にしていうセリフか。女には女の秘密があるように、男には男の秘密がある。男の朝立ちは悶々としない。気が付くと収まっている。これも考えてみると不思議かもしれない。
朝食を終えて、昨日のうちに冷やして凍らせたおにぎりをリュックに詰めた。スマホはとりあえず俺の方の電源を切った。非常時に両方のバッテリーがなくなると困るからだ。これで準備万端だった。
英梨々も俺も上下のウインドブレイカーを着ている。真夏でも早朝は寒いぐらいだ。玄関で登山用の靴に履き替えた。ドア開けるとひんやりとした空気が心地よかった。さすが避暑地である。この快適さになれると東京のコンクリート砂漠は辛い。
「体調は大丈夫か?」
「ええ、万全よ」
「無理するなよ」
「ええ」
「じゃあ、いくか」
英梨々の別荘から、さらに道なりに上に進んでいき、大きな道路まで出るのに40分かかる。途中で人に出会わなかった。熊に出くわすこともあるらしく、警戒してしゃべりながら歩く。音を出してこちらがいることを示していれば、熊も人間が怖いので近寄って来ないらしい。
緩やか山道は緑が多くて気持ちが良かった。40分も歩くのは大変だけど、意外と楽しくて時間が経つのは早い。
バス停の時刻表では次のバスが来るまで、まだ20分ほどあった。
自販機でペットボトルの水を1本買って2人で飲んだ。リュックのペットボトルはできるだけ取っておきたい。間接キスになってしまうけど、あまり気にならなかった。
ベンチ座ってバスが来るのを待つ。他にも登山の恰好をしている人が2人いた。誰もいなかったら、キスをしていたと思う。静かな朝でときどき鳥が鳴いていた。しゃべると自分達の声だけが響くので、俺も英梨々も静かに過ごす。
バスが来た。すでに何組か乗っている。急な上り坂をエンジン音立てて登っていく。車内放送で天気が崩れる予報だと教えてくれた。確かに少し曇り空だが、まだまだ雲は分厚くない。山の天気は変わりやすいので防水グッズのカッパは用意している。
20分ほど走るとバスはロープウェイ乗り場に到着した。ここが終点だ。みんな降りていく。どの客も登山の準備をしていた。俺たち以外の客はロープウェイ乗り場に歩いて行った。
ロープウェイで登った先から、山頂を目指すルートもあるが、俺たちが行く場所はそことは違った。
車道の横の歩道をさらに上へ進んでいく。まだまだ道は補装されていて、遊歩道のようになっている。やがて山門に到着した。登山道入り口と書いてあった。俺と英梨々の他には人がいなかった。ここで一度地図を広げて確認する。大丈夫。合っている。ベンチがあったので座って水を飲んだ。午前8時前だ。なんて健康的な朝なのだろう。
山門を超えたあたりから、道路の舗装がなくなる。それでも道はしっかりしていて石畳がある。茶屋跡があり、そこに無人の入山手続きする場所があった。ここで名前と住所を書いて投函しておく。何かあった時に役立つらしい。詳しい仕組みはわからない。
日がだいぶ昇ってきて熱くなってきた。俺はウインドブレイカーの上を脱いでたたんでリュックにしまった。英梨々もピンクのウインドブレイカー脱いだ。下に黄色いメッシュの長袖を着ていた。フード付きだ。薄っすらと透けて下の白いTシャツが見える。
爽やかな気分なので健康的な美しさを感じてもエロさは感じない。そこまで俺もいつも発情しているわけじゃない。たぶん。
「暑いわね。今、どの辺かしら」
「まだまだ入り口だよ」
「まぁ、そうよね。ここから次のポイントまで何分ぐらい?」
「一応2時間の予定だ。休憩を挟めばもう少しかかるのかな」
「天気は平気かしら?」
「無理しないで引き返す手もあるぞ」
「雨が降ってきたら、考えましょ」
「それじゃ、遅いんだけどな」
「雨具ももってきたわよね?」
「そうだけど」
「なら平気でしょ」
「たぶんな」
何しろ観光地の整備された山道なのだ。遭難することもないだろう。一本道だし崖があるわけでもない。熊はちょっと怖いが、この道は登山者も多く熊も近寄らないらしい。
日がどんどん高くなってくると、雲が多いとはいえ直射日光が熱かった。英梨々はフードをかぶっている。俺は帽子をもってきていないことに気が付いた。ウインドブレイカーにはフードが付いているが着るには暑い。
「あんた帽子もってこなかったの?」
「ああ、すまん」
「別にあたしに謝る事ないけど、熱中症とか大変よ」
「だよな、こんなに暑くなるんだな」
「夏だもん当然でしょ。タオルでも巻いて起きなさいよ」
「ああ、そうだな。そうする」
リュックからタオルを出した。残っていたペットボトルの水を頭にかけた。タオルを巻くとだいぶ涼しい。無理やりあごのあたりで結んだ。ペットボトルはつぶしてリュックにしまう。当然だがゴミは持ち帰る。
「ドジョウ掬いの芸人みたいになってるわよ」
「ほっかむりっていうんだっけ?」
「知らないけど。とにかくダサいわね」とバッサリだ。
「俺は容姿にはとらわれない主義なのさ」
「かっこよくいっても無駄よ。ほらこっち向きなさいよ」
「記録に残すのかよぉ・・・」
英梨々がスマホカメラをこちらに向けて笑っている。フードからでたツインテールが風で揺れていた。
それからお菓子の飴ちゃんを一粒くれた。チェルシーのヨーグルト味だ。ゴミを回収しリュックにしまっていた。
けっこう歩いたが、俺たちはぜんぜん疲れていなかった。10時を回った。雲がどんどん分厚くなっていて、灰色がかってきた。雨は降っていない。その分、温度は下がる。
「英梨々。天気がやばくね?」
「次の目的地までどれくらい」
「あと1時間もないとおもうけれど」
「小屋があるのよね?」
「そこが分岐点だから、小屋はあるみたいだぞ」
「じゃあ、そこまで行ってから引き返すか検討しましょうよ」
「そうだな」
さらに30分ほど歩いた。高校生の足なので、たぶんそろそろ着いてもおかしくないはずだ。
ポツンッ と雨粒が地面を濡らした。
「降ってきたな」
「涼しくてちょうどいいじゃない」
あたりが少し暗い気がした。太陽はもう見えない。直射日光がなくて確かに助かる。とはいえ少し急ぎたい。小屋まで進めば、一息つける。
雨粒は徐々に多くなってきた。英梨々の服に雨粒が落ち、それが吸収され黄色いメッシュに広がって消える。だんだんと雨が強くなると、英梨々はリュックからウインドブレイカーを取り出して着た。こちらはナイロン素材で水を多少は弾く。体が濡れる前にウインドブレイカーを着たのは正解だと思う。俺も同じようにウインドブレイカーを着た。
あたりがすごく暗くなっていることに気が付いた。夕方とは違う暗さで不気味だった。
ザァー!!と激しい音と共に、ドシャ降りの雨が降ってきた。東京でときどき降るゲリラ豪雨みたいだ。すぐに通りすぎるかと思ったが、雨脚がさらに強くなっていく。
山の天気は変わりやすいというが、さっきまでは暑いぐらいだったのだ。
「倫也ぁ」と英梨々がか細い声を出す。
英梨々はリックリック足取りも軽く少し離れて歩いていたが、今は近くに寄り添っている。手をつないでやりたいが山道なのでそれは危ない。
「大丈夫だよ、もうすぐ着く」たぶんそのはずだ。道は一本だし、迷うような場所はなかった。このまま進めば問題ないはずだ。それでも不安になってあたりを見回したら、高山植物を説明する看板があった。
「ほら、人工物があるし、道はまちがっていない、心配するな」
「うん」
正直、山を舐めていたのだと思う。どの時点で引き返すべきかわからなかった。反省は後でいい。視界がすごく悪くなった。こんなに雨雲で暗くなるのを俺も英梨々も知らなかった。東京はどこかしらで電気がついているが、ここに人工的な光はまったくなかった。
「懐中電灯があったよな」
「うん」
「どっちのリュックだ?」
「あたしの方だと思う」
「出せるか」
「うん」
英梨々が大雨の中でしゃがんだ。リュックを広げて、中から懐中電灯を出した。小さなランプだが、LEDなので力強く明るい。しかし足元を照らすには、光量が足らない気がする。でも、光があるだけで安心できた。
「やばいかも」
「もう少しそばにいろよ」
足元の土がぬかるんできて、一歩歩くごとに少し沈みこんだ。俺も英梨々も登山靴を履いていたので、滑ることはなかったが、すごく怖かった。
俺が心配なのは時間だ。歩く速度が遅くなれば、自分達がどの程度なのか検討が付かない。英梨々がスマホでMAPを開いたがGPSは機能しなかったし、携帯はどこにも通じていない。電波などないのだ。
「できるだけ足元を照らして、慎重に歩けよ」
「わかってるわよ。でも・・・」
雨脚が強くて視界が数メートルしかない。自分達が正しい道を歩いているのかわからなくなる。
「レインコートを着た方がよかったかしら?」
「もう手遅れだよな。一応ウインドブレイカーも水を弾いているから大丈夫だと思うけど・・・」
初動で間違えたか、雨が降った時にレインコートをしっかりと着るべきだった。ウインドブレイカーも防水で多少の水が防げただけに判断に迷った。
「うん・・・あっ、倫也、あれ」
英梨々が指を指した先に、赤いランプが点灯している。
「小屋かしら?」
「たぶんそうだろう。とにかく慌てるなよ。小屋に到着すれば大丈夫なんだから」
「うん。ついたらおにぎり食べる?」
「ああ、そうしよう」
今、おにぎりのことを考えるなんて、英梨々はまだ余裕があるようだ。道が少し迂回していて、進む先に赤いランプがないのは不安になった。それでもだんだんとランプが近づいて見えた、小屋も見え始めた。
ピカッと空が光った。
ゴロゴロゴロッ、ダーンッ!と雷鳴が鳴り響いた。
「きゃああぁ」と英梨々が、けっこうカワイイ悲鳴を上げた。俺も「おおぅりょ」とわけのわからない言葉でてしまった。
でももう小屋が見える。とはいえ、あたりに高いものが何もないし、雷の音はだいぶ近かったので、危ないかもしれない。ぬかるんだ足元に気を付けながらも、俺も英梨々も少し急いで歩いた。
※ ※ ※
小屋に無事についた。木の引き戸を開けて中にはいる。中は広かった。非常用と書いてあるボタンで電気をつけた。6畳が二間ぐらいある。災害時用のヘルメットがプラスチックケースの中に無数に入っていた。壁際はベンチになっていて木のテーブルがある。
「これで、安心よね」
「ああ、さすがに熊は出てこないだろう」
「いやなフラグ立てないでよ」
英梨々がウインドブレイカーの上を脱いだ。その下のメッシュの服もだいぶ濡れていた。
俺はリュックから新しいタオルを出した。これは濡れていなかったので英梨々に渡す。
日光がなくなると山のせいか涼しい。俺は濡れたTシャツを脱いで、新しいTシャツに着替えた。
英梨々の白いTシャツは体にぴったりとくっついていて、下着が浮き出ている。本来ならエロい容姿にドキッとすべきなのかもしれないが、今は風邪が心配だ。
「英梨々、Tシャツも着替えちゃえよ」
「うん。あんた後ろ向いてなさいよ」
「もちろんだよ」
「覗かないでよ」
「覗かねぇよ。ほら、早くしないとだれか来ちまうかもしれないだろ」
「少しは覗きたいとか思わないのかしら」
「いいから早く着替えろ!」
・・・まったくのん気というか、危機感がないというか。とりあえずこの雨脚では当分は帰れない。雨がやんでも夕方を過ぎたら下山は無理だろう。バスが出ているかもわからない。さすがに夜に別荘までは帰れそうにない。道路沿いはいいが、バス停から英梨々の別荘までの道はおそらく漆黒に沈むはずだ。英梨々の家の前ですら、道路がみえなくなるぐらい暗いのだから。
「着替えたわよ~」
「OK振り向くぞ」
「もういいわよ」
俺が振り返った。英梨々が頭をタオルで拭いている。黄色いTシャツには英語でロゴがはいっていた。あれ・・・
「あの、英梨々・・・」
「なによ?」
「一応、確認しておくが・・・お前、ブラはずしてね?」
「いや~んエッチィ!ってやっぱりわかる?」
「わかるよ!」
「しょうないでしょ。濡れてるんだから!ブラの替えなんて持ってきてないわよ」
「おぉ・・・」
「いいわよ。見ても」
「はぁ・・・」俺はため息をついた。
こう見ると英梨々もなかなか胸がある。乳首っぽいところもなんとなくわかる。Tシャツは緩めなのではっきりとしたラインはでない。英梨々が腕を上にあげて背伸びでもしたら、膨らみがはっきり見えるだろうけど・・・
「あんたねぇ・・・そんな凝視しないでよ」
「いやいやいや、そんな気はないのだけど、本能がな」
「さっ、おにぎり食べましょ」
冷蔵しておいた方のおにぎりを取り出した。俺はそれを受け取って食べ始める。
「確か、携帯コンロを持ってきていたよな」
「あるわよ。お湯を沸かしてカップ麺も食べられるわよ。そうする?」
「いや、カップ麺はいいけど、それで乾かしたほうがいいんじゃないか?」
「そうねぇ」
英梨々が動くたびに、Tシャツのふくらみとボッチのところが気になる。裸も見続けるとなれるというが、これも慣れるのだろうか。
英梨々がリュックの中のものを全部テーブルに広げた。カセットコンロは俺の方にあるらしい。俺もリュックの中のものを広げた。カセットコンロにガスボンベをはめ込み、スイッチを回す。カチカチカチッという音の後に火が付いた。
「なんだか、ほっとするなぁ」
「そうね。やっぱり文明って火なのよ」
直火は危ないので、そこに小さいポットをかける。新しいペットボトルを開けて中に水をいれた。弱火にしておく。
「しょうがないから手で持つわよ」
「ああ、実にシュールな構図だよ」
英梨々がコンロの前でブラジャー広げている。
「白いレースの飾りのついたオシャレなブラだな」
「真ん中の小さなリボンが可愛のよね」
「そうだな」
「触りたい?」
「どっちを?」
「どっちって?」
「いや、なんでもねぇよ」
「あんた何考えているのよ。この非常事態に」
「まったくだよ!この非常事態にノーブラの美少女がブラを乾かすなんてな」
「倫也がもって乾かしてくれてもいいわよ」
「だが、断る」
英梨々がブラを持つのに飽きたようで、ブーブー言い始めた。まったくわがままだよ。しょうがないのでペットボトルを二本立てて、そこにブラをかける。もうセクシーさのかけらもない洗濯物がそこにはあった。
手の空いた英梨々もおにぎりを1つ食べ始めた。
お湯が沸いてきた。もったいないので相談した結果、カップヌードルを1つ食べることにする。時刻はまだ12時よりも前だった。運動したせいかお腹は空いていた。朝食をもっとしっかりと摂るべきだったと思う。
その他にも食糧はまだある。冷凍しておいたおにぎりが二つ。これはまだ凍っている。カップヌードルのシーフド味が1つ。カロリーメイトが2箱。チェルシーの飴。ガム。ラムネ。さくらんぼが書いてある四角形のピンク餅の駄菓子。ベビースター。スポーツドリンクが2本 水があと1本
これだけあれば、明日の朝までは余裕だろう。
沸いたお湯をカップヌードルに注ぐ、割り箸は一組だけ使うことにした。蓋の上に、英梨々が食べかけのおにぎりをラップにくるみ直して置いた。少しでも温かくしたいのだろう。気持ちはわかる。俺はもう食べてしまった。
「長丁場になるかもしれないから、お菓子とかは我慢しような」
「うん」
カップヌードルが出来上がった。先に英梨々に食べてもらう。「熱っ」と言いながら、笑っている。フーフーしながら食べている姿がカワイイ。ノーブラTシャツ姿にも少し慣れてきた。はっきりボッチ見えないので気にしなければ問題なかった。そういうことにしておこう。
俺もカップヌードルを食べる。非常時の特別感のせいか美味しかった。雨で冷えた身体も温まる。
外はときどき雷が鳴っている。雨の音も聞こえる。
俺がカップヌードルを食べていると、英梨々が油断したのか、大きくアクビをしながら腕を大きく上にあげて伸びをした。Tシャツが胸に張り付いて、はっきりと形が浮き上がった。乳首の突起がしっかり確認できる。
「英梨々。見えてるよ!」
「なんで、怒り口調なのよ。そこは感謝するべきでしょ」
「そうだな」
ごもっともだと納得してしまった。ありがたや、ありがたや。いやいや、そうじゃない。
「ねぇ、どんな気分?」
「何が?」
「あたしのノーブラの乳首みて」
「そこまではっきり言うなよ、聞いててこっちが恥ずかしくなるだろ」
「ねぇ、ねぇ、今、どんな気分?」
「煽るなっ」
「割と真面目に感想聞きたいんだけど」
「そうだなぁ・・・ピンポンダッシュしたくなる気分?あるいは、ステレオの音量を微調整したい感じだな」
「わかりやすいわね」
「そりゃどうも」
英梨々にカップヌードルを渡した。フーフーしながら汁を飲んでいる。しかしまぁ、こんな非常時でも人間は発情するもので、むしろ非常時だからこそ発情しているのかもしれない。くだらないことばかり考えてしまう。
※※※
午後の3時に近くなった頃、雨はだいぶ弱くなったようだ。ただ、地面はぬかるんでいる。下りだと滑って危ないかもしれない。でも、帰るならこの時間が限界だろう。空もだいぶ明るくなってきている。これ以上遅くなると帰るのは無理になる。
英梨々は乾いたブラを、Tシャツを着たまま身につけた。器用だなぁと眺めてしまった。
「エッチ」と英梨々がこっちを見て、舌を出している。いやいや、お前がカワイイの十分承知しているから、あざとい仕草はやめてくれ。こっちも理性と煩悩で揺れ動いているのだから。
外で大きな音がした。何の音かわからなかったので、俺も英梨々も身構えた。
コンコン。と扉がノックされた。俺は一応、内側から鍵をかけていた。熊がきたら怖いと思ったからだ。他の避難者だろうか?
「どちら様ですか?」と声をかけた。
「山岳救助隊のものです」と返事があった。俺は扉をあけた。
ヘルメットをかぶった救助隊が3名ほどいた。
話によると、細川さんから連絡があったらしい。連絡のつかない俺らが山に登ったと思ったのだろう。
バス運行会社で乗車人数を確認し、ロープウェイ乗り場の人数と合わないので、こちらのルートを通る登山者と判断したらしい。そこで地元の山岳救助隊が入山手続きのところに俺たちの名前を発見。確認のためここまで来たらしい。流石、登山観光の町。対応も手慣れえている。感謝すべきは細川さんの機転か。
無線でやりとりがあった。ヘリが近くに停まっていた。ヘリが出動する事態だったことに驚く。
山岳救助隊がいるとはいね、天気の変わりやすい山道を雨の中下るのは危険なのだろう。
大勢の人に迷惑をかけたことを反省する。救助ヘリの要請ってすごく高いんじゃ・・・そんなことが頭によぎる。
ヘリでロープウェイ乗り場まで一気に降りる。すぐに到着した。産まれて初めてのヘリに乗る体験は恐縮のしっぱなしだった。
そこで取り調べようにいくつかの質問を受け、何カ所かサインをした。何しろロープウェイ乗り場にはパトカーと救急車も来ていた。
関係者には心配はされたが怒られるようなことはなかった。途中で引き返さずに小屋で待機していたのは良い判断だったらしい。
あとは車で送ってもらった。
※ ※ ※
別荘には細川さんの夫妻が旅行を切り上げて待機していた。申し訳ない。俺も英梨々も謝る。
お風呂がすでに沸いていて、英梨々が先に入った。その後に俺が入る。
細川夫人が手料理を作ってくれた。それは普通の和食だった。ご飯があって、味噌汁があって、豚肉の生姜焼きがあって、カボチャの煮物があって、漬物があった。
英梨々が食べながら、途中でボロボロと大粒の涙を流して泣いた。
細川さんは一言も怒らなかったのに。非難めいた言葉も、なにか教訓じみたことも言わなかったのに。
まだ17時頃だったけれど、英梨々はベッドに潜るとすぐに寝てしまった。俺は細川夫人に英梨々の横のベッドを使用するように言われて横になり、同じくすぐに寝てしまった。どっと疲れが出た。
夜中にトイレで目が覚めた。夜は静かでとても暗い。細川さん夫妻は隣の部屋で寝ているようだ。せっかくのご旅行を台無しにしてしまって本当に申し訳ない。
俺は部屋に戻るとベッドサイドランプをつけて、英梨々の寝顔をみた。子供みたいにスヤスヤと寝息を立ててまだ眠っている。金色の髪が広がっていて、どこぞの童話のお姫様みたいだ。俺は守ってやれなかった。守ったのはもっと大きな力と先を読む賢明さだった。俺は無理をさせて深みにはまってしまったのだ。
英梨々の寝顔の頬にそっとキスをする。眠り姫は起きずに寝たままだった。
だから、きっと俺は王子様でないのだろう。
(了)
おやすみ