【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み 作:きりぼー
8月8日(月)夏休み16日目
東京は暑い。何もやる気がでない。玄関前に水をホースでまいたが、すぐに乾燥してしまう。あのまま那須に引き籠っていても良かった気がする。
鉢植えの植物に水をあげていると、英梨々がやってきた。
「倫也、これお土産ね」
「どうも。って、これ那須の和菓子屋のじゃねーか」
「そうよ」
「あれ、細川さんもう帰ってきたの?」
「違うわよ。ネットで注文したものが届いたのよ」
「へぇ・・・」
昔は那須の和菓子屋に行きお土産を買い持って帰ってきた。
そのうち荷物になるので、和菓子を選び配送手続きをするようになった。
今ではあらかじめネットで注文し配送日を指定できるようになった。
お土産とは何かを哲学する時代が到来している。
本日の英梨々は、足元の裾が広がっているジーンズに、ピンクのミュール。上は真っ赤なキャミソールを着ていた。俺の千里眼がすぐさま英梨々のブラが同じ赤系統であることを見抜いた。ふぅ・・・
英梨々と部屋に戻る。部屋は弱くエアコンが付いている。さすがにエアコンなしは辛い。テーブルにグラスにはいった麦茶を置く。すでに結露がついていて、氷がカロンと音を立てて崩れる。
「あとね、もう一つお土産があるのよ」
「ほうぅ?」
「欲しいかしら?」
「もらえるものならもらいたいけど、なんだ?」
「そうねぇ・・・ちょっと倫也、そのベッドで裸になって四つん這いになりなさいよ」
「はっ?おまえどうした?頭でもやられたか」
「ちがうわよ。マンガの資料。いい感じの四つん這いが見つからないのよね。その系統のAV見るのも気持ち悪し」
「だったら気持ち悪いものを描くなよ・・・」
「BLものだと、必要なのよ。割と真面目に言ってるんだけど」
どうやら、割と真面目に言われているらしい。が、断固断るとかいうレベルではない。
「で、お土産ってなんだ?」
「だから、四つん這いにならないとあげないわよ」
「その前に何をもらえるかぐらい教えろよ」
「だったら、服を着たままでいいから、ベッドの上で四つん這いになりなさいよ」
「はぁ~?だったら、お前もやれよ」
「いいわよ」
「いいのかよっ!」
英梨々がベッド上に上がって、後ろ向きので四つん這いになった。割とマジマジ見ると恥ずかしい恰好だったけど、スカートじゃないし、英梨々としては問題ないのかもしれない。せっかくなんてケツをしっかり目に焼き付けておこう。あんまりでかくないが、それでも女性らしい丸みを帯びている。
あれ、今、誘われているのかな?
「はい次。倫也ね。約束は守りなさいよ」
どうして、こう変態少女なのだろう。この顔で変態とか、ちょっと考えさせられる。とはいえ絵の資料ならしかたない。彼氏として協力してやろう。
俺はベッドにあがって、さっき英梨々がした格好をする。棚で何かを探しているならいざ知らず、ベッドの上でこの格好は恥ずかしかった。
カシャッ
シャッター音がした。英梨々がスマホで画像を撮っている。聞いてないぞ。
「おい、英梨々、こんな恥ずかしい姿で写真とるなよ・・・」
「絵の資料なんだからしょうがないでしょう。それに顔も映ってないし、恥ずかしがることないじゃない」
「だったら、お前のも写真に撮らせろよ!」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?捕まるわよ、この変態!」
「そっくりそのままお前にそのセリフを返すわ!」
疲れた。まったく・・・変態レベルに合わせて会話とか無理がある。俺は麦茶を飲んで頭を冷やす。ああ、英梨々を写真撮影とか楽しそうだ。今度提案してみるかな。
「はい。これ。見せてあげる」
「なんだこれ・・・あっ!」
俺が英梨々から受け取ったのは、瓶だった。黒い液体が入っている。ラベルがすべて英語なので一瞬わからなかったが、レトロなドクターペッパーだった。
「瓶入りのドクペ」
「こんなの売っているんだな」
「もう売ってないわよ。瓶を落札したの」
「へぇ・・・えっ、中身は?」
「頼んで詰めてもらったのよ。ちゃんとドクペよ」
無駄にコストかかってそうだなぁ・・・
どうしてこういう無駄使いをしてしまうか、しかし、この魅力!なかなかツボをおさえた道楽じゃないか。
「それ、欲しいなら裸になりなさいよ」
「ちょっとまて、考える」
裸はただだ。俺は精神的に英梨々に凌辱されるが、目的のものは手にはいる。悩ましい。いやいや、何かの性癖が目覚めそうなので、ここは男らしく断るべきだろう。
「こ・・・断る」
「あっそ」
「俺はこうみえて、パンピーだからな」
「オタクでしょ」
「オタクのパンピー」
「もうそれ、矛盾しているわよ」
一応、解説しておくと、パンピーとは一般ピープルの略であり、オタクがそうでない人をそう呼ぶのが語源である。
「なら、倫也。交換条件でどうかしら?」
「交換条件?」
「あたしも脱ぐわ」
「はいぃぃぃ!?」
あらやだ、この子ったら、何言っているのかしら。俺は頭が混乱する。
「さっきと同じよ。あたしも脱いでそこで四つん這いになるから、あんたも同じことしなさいよ」
えっと。英梨々が裸になり、ベッド上で四つん這いになるっと。ふむふむ。なぜか妄想上では巨大なモザイクが見えるが、これはなかなかどうして・・・いやいや。ここはちゃんとツッコもう。それはもう、全力でバックからツッコミたい!
「ドヘンタイがっ!」
「倫也。間が悪いわよ。間が」
「そ・・・そう?」
「何妄想してんだか。ほら、さっさと脱ぎなさいよ」
「脱がねぇよ」
俺はそういつつ立った。勃ったから立った。
「ちょっと・・・トイレいってくる」
「あんたねぇ。どんだけ妄想たくましいのよ」
「英梨々が悪いだろ?」
「もういいわよ。ほんとつかえないわね」
「普通だと思うぞ」
「で、今日の予定はなんだっけ」
あっ、こいつ強引に話題変えやがった。だいたい前振りが長いんだよ。ノリノリじゃねーか。
「ああ、アニメ鑑賞か。倫也、何見るのよ?」
「えっと、そうだな・・・」
俺も忘れちゃったよ。ほんと準備しておいたのに。なんのアニメだっけ。
「えっとだな。『アイの歌声を聴かせておくんなまし』だ」
「タイトルがえらく和風ね」
「これがさ、最初はつまらなぁと思って観てたんだが、途中からツッコミどころ満載でなかなか面白かったんだよ」
「もう見たのね」
「ああ、でも二度見ようと思ってさ」
俺はネットにアクセスしてアニメを上映した。ジャンルはSF学園ラブコメになるのだろうか。
部屋の遮光カーテンを閉める。
「倫也。FC2動画とかみない?」
「なんで、昼間からAVみないといけないんだよ」
「別にFC2ってエロ以外もあるわよ」
「知らん」
「ちなみにこれは、どんなアニメなのかしら?」
「一応、幼馴染が勝つアニメでランキングされてたぞ」
「ふーん」
「仲のこじれた主人公と幼馴染ヒロインの間を、AIロボットが仲裁する話かな」
「あんまりネタバレしないでよね」
「お前が聞いてきたよねぇ!?」
わがままだなぁ・・・
お土産の和菓子の箱を開けて、俺は大福を選んだ。英梨々はクリーム餡の洋風の物を選ぶ。せっかくなのでドクペを冷やしてこようと立ち上がった。
「どこいくのよ。もう始まっているのに落ち着かないわね」
「ドクペ冷蔵庫に冷やしてくるだけだよ」
「あんたまさか、トイレいくんじゃないでしょうね」
「トイレぐらい自由にいかせてください」
「変態」
「お前にだけは言われたくねぇわ!」
やれやれ、俺は下に降りて冷蔵庫にドクペをしまった。コーラの瓶よりも太い。レトロなデザインが秀逸だった。
トイレを済ませて、手を洗い上に戻る。別に賢者タイムにはなっていない。
薄暗い部屋で、英梨々がモニター見つめている。ツインテールはライトグリーンのふわふわしたリボンで結ばれている。その分だけ余計に幼く見える。
こうしておとなしくしゃべらずに、モニターの明かりに照らされた英梨々はひたすら可愛い。なぜ、この顔でこの性格になったのか・・・
両手で和菓子を手に持ってハムスターみたいに食べている。仕草もカワイイ。うーん。
けっこう真面目に見始めているので、俺も隣に座った。
「あんまりギャグシーンは面白くないわね」
「お約束なんだろう。天然暴力女的な」
「まだあんまり面白くないわよ」
「だよな。俺もそう思いながら見てたよ」
※ ※ ※
見終わった。英梨々がティッシュで目頭を抑えて涙をふいている。感動してちょっと涙を流している姿は、可憐な美少女といった具合で絵になる。しかし、その後に鼻をチーンと高らかにかんだところで台無しだ。
そりゃね?美少女だって、鼻もかめば、鼻くそだってほじることもあるだろう。問題は人前でどの程度自分を隠せるかだ。もっとも、英梨々は学校では可憐な少女を演じ切るので、俺の前だと油断しているのかもしれない。
「なかなか、良かったわよ」
「だよな、伏線の置き方と、回収の仕方にぜんぜん気が付けなかった」
「多少強引よね」
「そうだなぁSFなんてツッコミどころ満載のご都合主義だからな。どれだけ目をつぶって見るかは大事だと思うぞ」
「それにしても、そういうことだったのね」
「もう少し評価されてもいいと思うけど、一般向けは難しいのかもな」
「なんでかしらね」
「ベースがオタクアニメだからじゃないか?狙いすぎているというか」
「構成も複雑かしらね」
「本筋を隠しているのかもしれないけどな。アイデアに対して、脚本が追いついていない感じがする」
「そうよねぇ」
俺は立ち上がって遮光カーテンを開けた。日差しが眩しい。夏の真っ盛りにエアコンのある部屋でアニメを観る。なかなかの贅沢である。しかも美少女付き。
「でな。このアニメとは少し話が違うんだけどさ・・・」
「倫也。話はいいけど、外に出ましょうか。ランチがてら」
「ああ、そうだな」
エアコンを消して、俺と英梨々は外に出た。ムワッとした空気と、地面がユラユラと蜃気楼のように揺れる暑さ。強い日差し。
「外、暑いぞ」
「いいのよ。あんまり家の中にいると、倫也が襲ってきそうだし」
「オソワナイヨ?」
「だんだん自信なくなってきてるでしょ」
「おまえもな」
別に無理して貞操を守る必要もないのかもしれない。『倫理君』なんてあだ名は返上して、とりあえず英梨々と会ったら一発ヤッて、それから次のことを考える方が、高校生として健全な気もする。
「ほら、また変なこと考えてる」
「英梨々。今日のブラって赤色だよな」
「あんたねぇ・・・ほんと、バカよね」
英梨々が、あきれた顔でニヒッと笑った。少し見える八重歯が小悪魔風の英梨々にはぴったりだ。
上空の高くに飛行機が飛んでいて、その後ろに飛行機雲ができていく。
(了)
感想。評価。いただけると英梨々が喜びます。