【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み 作:きりぼー
夏だ!海だ!水着だ!
そんな明るい週末が風邪で中止に。それでもこの危機を英梨々は切り抜ける。
8月26日(金)夏休み34日目
晴天。今日も暑くなりそうだった。
白地に水色の水玉模様のワンピースを着た英梨々が、大きなキャリーバックを片手に玄関先に立っている。
「説得をお願いします」
その隣は澤村家に仕えるメイド長の海部さんが立っている。今日も黒いスーツ姿がかっこいい女性の方だ。英梨々を心配そうに見ている姿は、仕事だけの関係というほどドライでもなく、こうしてここまで車で連れてきたことからも優しさが伺える。
「倫也ぁ、ゴホッ」
「もう、しゃべるな。で、熱は何度だった?」
「大丈夫よ、ゴホッ、これくらい・・・」
「38.5度です。早く病院へ連れていくべきと考えます」
「まったくだ。英梨々。フラフラじゃねーか。とりあえず病院いってこいよ」
「嫌。ゴホッ。今日はクルーザーゴホッ、乗るの」
「どうみても無理だろ。ほらほら」
俺は英梨々を急き立てるように車へ追いやった。しょうがないので後部座席の隣に乗って付き添う。なんで高校三年生にもなって病院嫌いなのか。
車に乗り込むと英梨々はぐったりしている。もはや執念だけでうちまで来たようだ。
今日の予定はクルーザー旅行だったらしい。しかし、そんなことは健康な時にするもので風邪をひいたら無理に決まっている。
診察を受け処方箋をもらったら薬を飲み、家でのんびりと過ごせばいいと思っていた。フラフラと診察室から出てきた英梨々は、次はレントゲンだという。レントゲン?付き添いは海部さんに任せて、俺は待合室で待つ。
英梨々の診察が終わるまで、棚に置いてあった雑誌や漫画を手にとって眺める。もちろん頭には何もはいってこなかった。
ここは大きな大学病院の本館で、1~4階までが外来用の診察室になっている。1階は大きなロビーで会計スペースが広い。他にはコーヒーショップとコンビニもある。自販機の品ぞろえも豊富だった。5階よりも上は入院棟になっている。パジャマ姿の患者もいた。
渡り廊下を通じて隣が新館と呼ばれる入院専用のビルで16階まである。ちなみに最上階は展望レストランだ。
戻ってきた英梨々はすでに車イスに乗っていて、海部さんが押している。ぐったりとした様子で顔も赤い。急速に症状が悪化しているようだ。
「入院が決まりました」
「重い病気ですか?」
「いえ、風邪をこじらせた軽い肺炎です。自宅療養でもいいのですが、点滴をしてくれるそうです」
「そうですか・・・」
海部さんの説明は簡単に説明をしてくれた。そうなると入院の準備もあって大変だ。俺も何か手伝おうと思ったけれど、手伝えることはなく帰るように促された。
「ごめん、ゴホッ。ともや。ゴホッゴホッ」
「もう、しゃべるなよ。お大事にな」
俺は大きなため息をついた。やれやれ・・・どこで無理をさせてしまったか。英梨々がエレベーターに乗るのを見送ってから、俺は電車で家に帰った。
※ ※ ※
平穏でも暇でもなかった。何もやる気が起きない。今日は1人なので課題を終わらせてしまおう。頭ではわかっているが何も手つかずなまま時間が過ぎていく。ベッドの上でゴロゴロしながらソシャゲのデイリーミッションをこなしているうちに、イライラしてきてキャラを売却した上でアンインストールをした。何か食べようと冷蔵庫みたがろくなものがなく、1人でカップ焼きそばを食べる気もしない。
外に買い物をする気にもなれず、コンフレークに牛乳とハチミツをかけて、口に押し込んだ。
夕方過ぎに、英梨々からLINEが入った。
> 今日はごめん
< しょうがないだろ
> 点滴打って、寝たらだいぶマシになったわよ
< そりゃなにより
> あんた暇でしょ
< おかげさまで
> ramune1218
< なんだこれ?
その後、返信はいくら待っても来なかった。ラムネの後の番号は俺の誕生日だ。何かのパスワードっぽい。
俺と英梨々が共有していて、英梨々がパスワードをかけているもの・・・クラウド上のデータしか思い浮かばない。昨年、サークルでゲームを作った時に立ちあげたものだ。共有の素材やデータなども入っている。英梨々がそれを流用し、同人漫画の下書きを俺に見せる時に使用していた。
そこに鍵のかけられたフォルダがいくつかあった。おそらく素材だろうと思っていた。凌辱同人漫画のための素材だから、かなり際どい18禁画像もある。
ここは加藤や美智留とも共有している。パンピーの彼女たちが間違ってアクセスしてショックを与えないための英梨々なりの配慮だろう。普通の人は、男性同士でつながっているBL画像や、SM画像などは軽くトラウマになりかねない。
ノートPCを立ち上げて、クラウドデータにアクセスをする。鍵のかかったフォルダにアクセスをしたが開かないものが多い。そのうちの一つ『summer』のフォルダにパスワードを入力すると、鍵が解除された。BINGOだ。
3桁以上の数の画像ファイルだった。この夏休み専用フォルダらしい。写真の多くに俺が1人で映っていた。風景もあり、一緒に撮った写真もあり、英梨々が1人で自撮りしたものもある。
俺も英梨々も、そんなにはスマホで写真を撮らなかったつもりだ。写真を撮る事ばかりに気をとられるのがいやだったからだ。それでもこの枚数だ。いや、たぶんこれはセレクトされている。もっと膨大な数があったと思う。
いつのまに撮ったのだろう。画質の良いものはスマホでなくて、デジカメのものかもしれない。英梨々の撮影したものが多いが、それ以外のものあるのだろう。
俺が竹と格闘している流し素麺台から始まり、風鈴、マンガ喫茶でさぼっているところ、スイカ割り、海浜公園・・・ずいぶんと前な気がする。
ラブホテル内での映像は消し去りたい。アソコ見えているものはせめて加工してくれ・・・
染色工房の作品も多い、焼きとうもろこし、別荘で過ごした時間。
庭のプールで水遊びをした時に英梨々はスク水を着ていて、これは胸を強調しながら自撮りしている。夏の光の中でウインクしながらポーズをとって、髪は輝いて白く見えるぐらいだ。
夏コミの写真ではコスプレ関連が多い。綺麗に英梨々アーニャが撮れていた。俺も見覚えがあるのでネットで集めたのかもしれない。澤村家の家族写真が微笑ましい。美術部の後輩も映っていた。集合写真では英梨々のすました笑顔がちょっと面白い。
うちわ制作をした。それから、夜行列車で旅をした。花火は綺麗で英梨々はエロかった。
帰りの電車では何もないところでキスをした。それを綺麗に自撮りしている。俺は気がつきもしなかった。窓辺に幸せそうなバカップルがいる。
究極の焼きそばを作り、秘密基地を作り、昨日はナースコスプレをしている。英梨々は挑発的にミニスカに手をかけて少しめくって自撮りしていた。
この夏の思い出がぎっしり残っていた。遊びに遊んだといった感じだ。もう懐かしくすらある。
最後にテキストファイルが置いてあった。
・メモ①クルーズ船。特等室はツインベットだからセーフ。セーラーコスプレ。倫也が暴走したら鎮めてあげる頃
・メモ②釣り。天気が良ければ磯釣り、釣り人コスプレ。釣れなかったら、倫也のせい。釣れすぎたら重いから倫也のせい。夜は民宿で和室なのでセーフ。
・メモ③浜辺デート。水着。倫也にどこまで許してあげようか。帰りは飛行機で帰る。
「なんだよ、このメモ・・・」
俺は笑ってしまった。どうやら英梨々は俺と最後までエッチをする気はなかったようだ。まぁそれはそれでいい。それでも男の事を少しは理解していて、どうやらまたエッチなことはしてくれるらしい。
あの綺麗な英梨々の身体を触りながら、英梨々はその繊細な指や、あるいは形のいい小さな口で・・・
思い出したら、もぞもぞしてきた。ただここにある画像で、英梨々をオカズにしてはダメだろう。その辺のエロ画像はしっかりと別に管理しているようだ。
ゆっくりと見ていたので、ずいぶんと時間がたってしまった。気を取り直してコンビニまで行き、適当なお弁当を買ってきて食べた。
それから俺は自分のスマホの画像を同じクラウド上にアップをした。フォルダ名は「summer2」がわかりやすいだろう。俺も何かメモを残すか。テキストファイルを作る。
さて、なんとメッセージを残すか。ああ見えて英梨々は変態だが繊細でもある。露骨な要求はよくないだろう・・・
『海じゃなくても英梨々の水着姿が見たい。早く退院してこい』と書いた。
『はぁ?あんたバカなの?死ぬの?』
英梨々のいつものセリフが聴こえてきそうだ。ちょっと困ったあとに笑うと八重歯がこぼれる。目に浮かぶような光景だ。
フォルダに鍵をかけて、クラウドからログアウトする。
スマホで、英梨々のLINEに、
< 『yakisoba0320』
と打ち込んで送信した。
すぐに既読がついた。
(了)
まぁお休み回は総集編と決まっているので。