【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み 作:きりぼー
8月29日(月)夏休み37日目
朝に目が覚めた時、頭はまだぼんやりとしていたが痛みはない。だいぶ体調は戻っていた。手元の体温計で測ると37.2度の微熱で、体感とだいたいあっている。
俺は起き上がって、トイレに行き、顔を洗い、空腹だったので何かを食べようとキッチンに向かった。
冷蔵庫の中には、透明なグラスに入ったプリンが3つほどあった。カラメルソースとのセパレートが美しく涼やかだ。加藤が昨日作ってくれたのだろう。
他にはすぐ食べられそうなものはなかった。俺はプリンを1つと、牛乳を出して皿に盛ったシリアルにかける。あとはバナナが一本とオレンジが1つ。
それをテーブル上に並べ、1人なのに「いただきます」をして、まずはプリンから食べた。卵の旨味のする素朴な味で甘さは控えめだ。カラメルソースのほろ苦い甘さと相性がいい。去年に比べてだいぶ上達していて、プリンは滑らかで気泡が入っていないから、舌触りも固さも心地よかった。束の間の至福の時間を味わう。
あとはシリアルを牛乳で胃に流し込み、バナナをかじり、オレンジを手で剥きながら食べた。なんだか意識高い系みたいな食事だが、まともな食べ物はこれぐらいで、他にはカップ麺ぐらいしかなかった。
胃が落ち着いたところで英梨々に連絡を取った。
英梨々は体調が完全回復して絶好調らしい。まだ退院手続きが終わってないので、午後にはこちらに顔を出すと言っていた。俺の具合はまだ本調子でないと伝えると、何か欲しいものはないかと聞かれたので、野菜がとれそうな食事と答えておいた。
それから加藤にもお礼のLINEを送ったが、既読はつかない。電話を鳴らしてみても出なかった。これだけ徹底して俺を避けるのに、昨日はなぜ来てくれたのだろう?このプリンはいったいなんなのだろう?
加藤の気持ちはよくわからなかった。
英梨々が来るまでは時間がありそうなので、リビングのソファーに座ってのんびりとしていた。そういえばシャワーを浴びていないことに気が付き、少し怠かったがシャワーを浴びてさっぱりする。
活動したら頭がまたぼんやりとしてきたので、ベッドに横になった。体温は少し上がってしまっていた。
目を閉じる。もう冷たいタオルをのせてくれる人はいない。
※ ※ ※
頭の上がひんやりとする。目を開けると、カーテンが風で大きく揺れていた。新しい空気が気持ちいい。外はそこまで暑くはないようだった。頭の上に手やると、凍らしたチューペットがタオルで巻いてあった。そういえば子供の頃によく食べたなぁ。
「倫也。起きた?」
「ああ、英梨々か。来てたのか」
「なによ、その言い方。来ちゃ悪いのかしら?」
「退院おめでと」
「ありがと。倫也も早く良くなるといいわね」
「いや、もうほとんど大丈夫だよ」
俺は体を起こして体温計で測る。36.8度。平熱より少し高い程度だろうか。
「いいのよ。無理せず寝てても」
「そうだな。それにしてもその恰好は・・・」
「ふふふ。可愛いでしょ」
「カワイイ・・・のかな」
「なによ」
「いや、うん。可愛いと思うぞ」
英梨々は白地に青いラインのセーラー服を着ていた。学校の制服のようなセーラー服とは違う。前面の左右には金色のボタンが縦に並んでいた。形もどうやらワンピースのようで、下はプリーツスカートになっていた。全体的に夏らしい爽やかな印象をあたえる。
英梨々の金髪ツインテールともよく似合っている。カワイイというよりは綺麗というか、凛々しい?感じがする。でも、英梨々がこうやって笑ってみると、カワイイ制服姿ということでいいだろう。
「それは、用意していた衣装がもったいないから着てきたのか?」
「・・・倫也」
「どうした?」
「なんでその事知っているのよ」
「どのこと?」
「あたしがこの衣装を用意していたことよ」
「ん?だって、お前が教えてくれただろ?」
「いつ」
「パスワード」
「あれは暇そうな倫也の為に、提供した写真でしょ?」
「そこにあったぞ?」
「なにがよ」
「だから、お前のメモが」
英梨々が口を開けて固まった。顔がみるみる赤くなる。あっ、さてはあれは秘密だったか。人に見せるような内容じゃなかったもんな。
「ちょっと倫也。あんた何みてんのよ?この変態」
「いやいや、普通に確認するだろ」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?あんな内容、人に見せるわけないじゃない」
「現に見せただろ・・・」
「見せたつもりはないわよ。百歩譲ってみたらいけない内容ってことぐらいわかるわよね!?」
「あー。そうかもしれない。エロかったし」
「かぁー」
英梨々が本気で照れているようで、両手で顔を隠している。このあざとい仕草が白のセーラー服とあいまって、なかなかカワイイじゃないか。
「もう・・・お嫁にいけない・・・」
なんかしおらしいこといい始めた。ベッドに顔をうずめている。やばい笑ってしまいそうだ。およそ英梨々らしくない。
俺は、ポンッと英梨々の肩を叩いた。
「大丈夫だ。凌辱エロ同人作家の時点で、嫁になる夢は両立できない。キリッ」
「あんたね、ほんと泣くわよ?」
なんか物凄い目で睨まれた。言い過ぎたか。
「まぁあれだな。嫁の行きてがないようなら、俺のとこにこいよ」
「だが、断る」
「断るのかい!」
せっかく優しくしてやったのにネタで返しやがった。そろそろ話題をかえよう。
「そろそろ昼食か?」
「もう2時を回ってるわよ」
「そっか、なら英梨々は食べたんだな?」
「うん。済ませてから来たから」
「俺、どうしようかなぁ」
「買ってきたわよ。あんた頼んだわよね?野菜食べたいって」
「まさか、まるごと野菜を・・・」
「バカ、リンガーバットの皿うどんをテイクアウトしてきたわよ」
「おおっ」
英梨々。なかなか使える子。そうそう、そういう野菜が食べたかった。うまいよね。ときどき無性に食べたくなる。
「下にあるから取ってきてあげるわよ」
「いや、トイレに行きたいから俺が下にいくよ」
俺は立ち上がった。英梨々も立ち上がる。英梨々は白いストッキングを履いていて、白で統一されていた。リボンやスカーフが水色に近い青。英梨々の足取りは軽くて、階段を降りる時には鼻歌を歌っていた。何かそんなにいいことでもあったのだろうか。
俺がトイレに行っている間、英梨々が皿うどんをテーブルに用意してくれた。まだ温かい。パリパリの細い揚げ麺に野菜あんかけをかける。
「いただきます」
「感謝しなさいよね」
「感謝。感謝」
箸を使って食べ始める。この絶妙に甘い餡がたまらない。野菜をたくさん食べている感じがする。英梨々が麦茶をいれてくれて、それをグビグビと飲んだ。なんだかんだガツガツ食べてしまう。
「ずいぶんとお腹が空いてたのね」
「ああ、昨日は喉も痛くて、あまり食べれなかったし、今朝もコーンフレークと果物とプリンだけだ」
「恵が作ってくれなかったのね」
「いや、加藤は頼めば作ってくれたと思うが・・・というか、お前、加藤が来ていること知ってたんだな」
「知ってたも何も、あたしが頼んだのよ。昨日の朝に氷堂美智留から助けを求められてね、でもあたしは入院中だったし」
「よく承諾したな」
「別に、友達が困ってたらお見舞いぐらいは来るんじゃないかしら」
「友達か・・・」
「あんた達、まだケンカしてんの?」
「半年すぎたら、ケンカというよりは疎遠だな」
「まっ、しょうがないのかしらね」
「・・・。そうだ、プリンがあるぞ」
「もらうわ」
英梨々がキッチンに向かって冷蔵庫を開けた。後ろ姿を目で追ってしまう。白いプリーツスカートが揺れていて、生足がちらちらと見える。かなり短いスカートなので、少し覗き込めば見えそうだ。
もし、二人とも風邪なんかひかずに旅行にいってれば、英梨々のメモ帳通りにエッチな展開もあったのだろうか。って、ついつい邪な事を考えてしまった。週末は寝ているだけだったから溜まったのかも・・・
「ごちそうさま」手を合わせる。
「足らなかったかしらね?」
「いや、これぐらいで十分だよ。夜にまた何か喰えばいいし」
英梨々がプリンを一口食べている。舌の肥えた英梨々でも美味しいらしく、満足そうに食べていた。
「あと一個あったわよ」
「そうだな。今日は一個食べたし、明日にでも喰うよ。もしかしたら美智留が来るかもしれないし」
「氷堂美智留?昨日はライブだったのよね。顔ぐらい出してあげたかったけど」
「また次もあるさ」
俺は皿うどんの入っていた発泡スチロールの容器を軽く洗って伏せておいた。それから歯を磨く。
英梨々はプリンを食べ終わって、洗い物を済ませていた。
リビングのソファーに移動して並んで座った。今日は月曜日で何かアニメを一緒に見る日だ。
「倫也、体温測って」
「俺の?」
「・・・そうね」
「体温計は上だな」
「ならいい」
「いいのかよ」
「風邪っぽい?」
「そうだな」
「そういう時は治ったって言いなさいよ」
「そうもいかないだろう」
リモコンを動かして、アニメの動画を再生させる。今日は「この中に妹が1人おりゅ」だ。内容は置いといて、DVD版では修正がなく乳首がみえるアニメである。かといってそんなにエロが全開でもない。
今の俺たちはアニメの内容が頭にぜんぜん入ってこなかった。
「倫也」
「ん?」
「体温測ってあげる」
「やめとけって」
「いいの。目を瞑りなさいよ」
俺はあきらめて目を瞑った。英梨々がおでこにおでこを当ててきた。英梨々の吐息がする。甘い香りがするのはプリンのバニラエッセンスの香りだろうか。
キスをするのを2人でグッと我慢した。
「早く治しなさいよ」
「だな」
「夏休みが終わってしまうわよ」
「ほんと、振り返ってみると今年もあっという間だったな」
「まったくね。こんなに遊んだのに、倫也は童貞のままなんてね」
「しょうがないだろ。誰かさんが何かしら理由をつけて、今日もセーフなんていうから」
「それに、今日はアレがまだ完全に終わってないし」
「・・・生々しいな」
「あんたには風邪とダブルで重なった時の悲壮感はわからないでしょうね」
「わからんなぁ」
英梨々は俺にべったりと引っ付いている。少し熱いぐらいだ。
「アニメ。消して」
「ん?・・・わかった」
リモコンでTV画面を消した。英梨々は俺の右肩に寄りかかっている。俺は腕を回して英梨々を抱き寄せた。キスもできないし、それ以上のこともたぶん今日はできない。
「あした以降なら大丈夫だと思うの」
「何が?」
「あんたねぇ、バカはほどほどにしときなさいよ」
「でも、英梨々としては、旅行先のダブルベッドがいいんだろ」
「倫也、何を妄想してるのよ」
「えっ?アレだろ・・・」
「アレって?」
「ほら、英梨々とその・・・」
「はっきりいいなさいよ」
「エッチする話だな」
「そんなはっきり言わないでよ。バカ」
「どっちだよ」
「バカ」
英梨々が俺をじっと見ている。サファイヤーブルーの透き通った瞳。白皙の肌に金色の髪。真顔だと可愛いというよりは美人になって、少しツンとした感じになる。少し間抜けに笑って、八重歯が見えているぐらいの方が俺は好き。
「はやく風邪治しなさいよ。バカ」
今日は、このセリフを何度もいっている。それが俺の身を案じてのことなのか、自分がキスをしたいからなのかはわからない。
ときどき、おでこを当ててじゃれてくる。
何もせずに時間ばかりが過ぎていった。部屋がとても静かなので、外でリーンリーンと鈴虫が鳴いていることにやっと気がついた。
もうすぐ夏休みが終わる。
(了)
もう余計なものがいらないかな。
評価と感想をですね・・・