【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み   作:きりぼー

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そして、いよいよ最終日。
壮大な伏線の回収がっ(ない)


40 最終話 朝チュン

8月31日(水)夏休み 最終日

 

 気が付けば夏休み最後の一日になっていた。

 

 おかしい・・・俺は受験生で毎日勉強をするはずだったのに、学校の課題が1ページも終わっていない。

 進学校とはいえ、受験生に課題など出さないと思うが、これを休み明けに提出し損ねると内申書に響くだけでなく、俺の卒業が危ぶまれる。

 だから答えを丸写しにしてでも、課題を終わらせなければならない。学力の向上や受験対策よりも優先順位が高い。留年だけは勘弁してくれ。

 

 そういうわけで今日こそ英梨々にビシッと言って、勉強に専念するつもりだ。英梨々が俺の家に遊びに来るのはだいたい午後だから、午前中に進めるだけは進めておきたい。

 

ピンポーン。

 

 呼び鈴が鳴った。窓から外を見ると人影はない、階段を駆け上がってくる音がする。この足音は英梨々だ。扉がバンッと開いた。

 

「倫也ぁ~」

「どした?そんなに慌てて」

「課題よ。課題。やらないとまずいのよ」

「奇遇だな。俺もだ」

「あんたの課題なんて、どうでいいわよ」

「俺にはよくないんだが?」

 

 英梨々が俺の机の課題用テキストを見た。英梨々にも同じものが配られている。当然、英梨々もこれをやらないと問題が起こるはずだ。

 

「まさか、あんた、それまだ終わってないの?」

「ああ、1ページたりともな」

「えっ?でも、それ提出しないと倫也じゃ卒業できないわよ」

「ああ。だから、今日こそ課題をやるからな」

「安心しなさいよ。倫也が例えダブっても、一年ぐらいじゃ見捨てないから」

「卒業させてねぇ!?」

「いいのよ、あんたのことは。ほら、いくわよ」

「どこに」

「あたしの家よ。わざわざ迎えに来たんだから、感謝しなさいよ」

「俺、断ったよねぇ!?」

 

 朝に英梨々からLINEで連絡があった。俺は課題があるからとちゃんと断っている。

 

「はぁ・・・。もう、そんなのちゃっちゃっと終わらせておきなさいよ」

「英梨々は終わったのかよ」

「あたしは宿題代行業者にちゃんと頼んで、もう準備できているわよ。倫也、わかってるの?提出は明日よ」

「わかってるから、焦ってんだろうが!」

 

 俺はテキストをめくった。あれ・・・解答欄が埋まっている。パラパラとめくると最後のページまで埋まっていた。

 

「なぁ英梨々」

「なによ」

「小人さんが俺の代わりに仕事してくれたみたいだ」

「はぁ?あんたバカなの?そんなことあるわけないでしょ」

「それが、実際終わってるんだからしょうがないだろ。事実は受け入れないと」

「どれ」

 

 英梨々がパラパラとめくる。

 

「あら、ほんとね。良かったじゃない。じゃ、行くわよ」

「しょうがねぇーな」

 

 まぁ、小人さんなんているわけがない。この字からして、おそらくは加藤の仕業だ。俺が高熱を出して寝込んでいる時に、机に向かって何やら作業をしていた。見かねて俺の課題を終わらせてくれたのだろう。あとで確認してお礼をいわなきゃ。そういえばプリンのお礼もまだだったな。

 

 とにかく最低限のノルマが終わった以上は英梨々の要望にも応えないといけない。これでも一応彼氏だからな。

 

※ ※ ※

 

 英梨々の部屋にやってきた。俺は窓際で英梨々に言われるがままモデルをやっている。

 

「ほら、脱ぎなさいよ」

「いやだよ!」

 

 そして、さっきから脱げとうるさい。

 英梨々の課題というのは、美大推薦用の提出課題だ。締め切りはまだ先だが、休み明けに美術の先生に下描きを提出する必要があるらしい。実技試験というやつだ。

 

「で、どんなの描くつもりなんだよ」

「いくつか草案を描いてから、美術の先生と相談するつもりだけど、倫也を描くわよ」

「俺なんて描いて大丈夫なのか」

「別にそのままの人物画なんて描かないわよ。この夏の体験を生かして、『暑さ』みたいのを描きたいのよね」

「ほう・・・」

「だから、さっさと脱ぎなさいよ」

「ぜんぜん、話がつながらないんだが!?」

「まずは裸の男性がいるのよ。そして、そこにはマンガだの、ラノベだの、フィギュアだの囲まれ、性的倒錯の中に自己を失う現在のなんちゃらかんちゃらを描くのよ」

「最後、言葉になってねぇじゃーねか」

「あんたねぇ?協力する気あるのかしら?」

「あんまねぇな・・・」

 

 英梨々が頬を膨らませて口を尖らせた。これはあざといな。

 今日の英梨々芸術用の衣装で、袖が染色された白いシャツにデニムのサロペットだ。髪型はツインテールでリボンの色はネイビーブルー。まぁ要するに英梨々だ。

 

「しょうがないわね、この変態。あたしのいうこと聞いてくれたら、何かこちらも要求をのむわよ」

「ほう・・・」

 

 どうやら本気で裸の俺を描くつもりらしい。要求といってもお金をせびるわけにもいかない。こういうのは難しいよな。

 

「じゃあ、俺も脱ぐから、お前も脱げよ」

「あんたねぇ・・・もう発言がただの変態だって自覚してるのかしら?」

「そのセリフをそのままお前に返すよ」

「あたしは芸術のためにお願いしているのよ」

「そうかよ。それは高尚ですな」

「ほら、さっさと脱ぎなさいよ」

「俺の要求はどうなった!?」

「・・・いいわよ。それで」

「いいのかよっ」

 

 ふぅ。冗談にせよ言ってみるものだ。この夏になんどか英梨々のセミヌードはみているけどな。はっきり全身は見ていないし、明るい所でも見ていない。まぁ当然だろう。

 俺はとりあえずTシャツを脱いだ。

 

「下も」

「下もかよ・・・嘘だろ」

「ヌードモデルなんだから当然でしょ。ハァハァ」

「荒い息を音声で読むな」

「そんなに恥ずかしいものが付いているのかしら?」

「あのなぁ・・・」

 

 もういいや。脱ごう。夏休みの最後の思い出作りとして、変態彼女の要望に応えてあげよう。俺はズボンを下ろし、トランクスを脱いだ・・・

 

ガコンッ

 

 俺の頭に、ティッシュボックスが当たった。解せぬ。

 

「なんだよ」

「前ぐらい手か、何かで隠しなさいよ。ハァハァ」

「バカだろ、お前」

 

 俺が座り直すと、英梨々がポーズの指定を言ってきたので、そのポーズをとる。裸でいるのもすぐに慣れるものだ。英梨々ともう少しくだらないやりとりをするのかと思ったら、けっこう真剣な目つきでデッサンをはじめている。

 

 俺は退屈だったが、英梨々は興に乗ってきたようで動かす腕が早い。俺が多少動いたり、アクビをしたりしていても怒らなかった。床に座ったり、立って後ろを向いたり、英梨々に言われるがままポージングをする。まぁこうしてやってみると、ちゃんと役に立っている気がする。

 

「次。ベッドの上で四つん這いになって」

「嫌だよ」

「はぁ?あんた今更恥ずかしがってどうすんのよ」

「恥ずかしいもんは恥ずかしいわ!俺にだってささやかなプライドがあるんだからな」

「そんなつまらないプライドよりも、ポーズとって写生が終わったら、その姿のまま後ろから射精に導びいてあげるわよ?」

「どんな羞恥プレイだよ・・・」

「もう、ほんと使えないわね」

 

 俺は辛うじて一線を守った。羞恥プレイを楽しめるほど、まだ性的に開放されていない。童貞だからな。

 

※ ※ ※

 

 英梨々は下書きが終わると、油絵でキャンバスに描き始めた。俺は暇になったのでゲーミングチェアに座ってゲームをする。何か大事なことを確認し忘れている気がするが、それが何かわからない。まぁ課題は終わっているのだ。いまさらジタバタしても仕方ない。

 

「ねぇ、倫也。また裸になって欲しいけど、やっぱり寒いかしら?」

「いや平気だよ。冷房ついてねぇし」

 

 窓は開いたままで爽やかな風が入ってきている。まだまだ残暑が厳しく、裸でも別に問題はない。

 

「じゃあ、そんなに脱ぎたいなら脱いでもいいわよ」

「あのなぁ・・・」

「肌の色のとか、影の具合を確認したいのよね」

「ちゃんと頼め」

「お願い倫也。後でいいことして、あ、げ、る」

「はいはいっと」

 

 俺はまた脱いだ。下も脱ごうと思ったら、今度は下を脱がなくていいと言われた。

 

 ・・・解せぬ。

 

 制作を開始すると英梨々は没頭するので、一時間ぐらいはすぐにたってしまう。ランチで宅配ピザを食べ、その後も制作を続けた。

 俺は服を着たり、脱いだり、やっぱり下も脱いだり、ときどき四つん這いを要求されて断ったりした。

 

 まぁ役にたっているのか、ただの英梨々の趣味なのか測りかねる。何枚かのキャンパスに絵が次々と描かれていくのは見ていて気持ちがいい。いったいどこにこんなに創作意欲があるのか不思議なぐらいだ。

 

 壁に立てかけられていくつかの絵をみると、俺が確かにいる。それが体の一部だったり、背景の一部だったり、あるいは真剣な横顔だったり(実に美化されている)、おどろおどろしいほど多数の裸が描かれていたりした。

 

 やがて窓の外が暗くなり始めた。少し涼しくなってきたので俺は服を着た。もう英梨々も脱ぐようには言わなかった。

 

「倫也、今日は晩御飯どうするの?」

「家に帰って何か適当なものを喰うよ。もしくはコンビニ弁当」

「また親いないの?」

「出張だってさ」

「そう・・・、ねぇうちで食べていきなさいよ」

「それは構わんが・・・」

「そ、ならちょっと頼んでくるわね」

 

 英梨々が部屋から出ていった。あまり英梨々の家で晩御飯を食べることはない。ケジメというわけでもないが、夕食は別々にしている。だから、英梨々が家で普通の食事をしているのが想像しにくい。

 スペンサーのおじさんや小百合さんと食事するのは、気を使うなぁっと思っていたら、英梨々が戻ってきた。

 

「別に余計な心配はいらないわよ。部屋に運ばせるから」

「そうか」

「うちは食事の時はバラバラなのよ。みんな忙しいのよね」

 

 しばらくして食事をメイドさんがワゴンで運んできてくれた。トレイの上に料理が乗っている。

 定食屋みたいだなと思った。料理の完成度が高い。ご飯。味噌汁。香の物。メインにチキンカツ。小鉢はモズク。内容は普通に思える。この鶏肉が特殊なものかどうか、いちいち確認する必要もないだろう。

 

 英梨々に言われて、俺は先に机で食事をする。どれも美味しい。感動するほどではないが、良い食材を無駄に加工せずにそのまま味わえる。そんな家庭料理だった。

 

 英梨々は作業を一段落するまで続け、それから食事を摂った。わざわざ俺を食事に誘ったのだから、何かあると思ったけど、特に何もなかった。

 

「ねぇ倫也。夏休みの最後の思い出作りしてあげるわよ」

「なんだそれ」

「『せ』のつく、いいことよ」

「セ・・・?」

 

 20時を回り、外が暗くなっていた。そろそろ家に帰ろうかと思ったが、英梨々が『セ』のつくことをやりたいという・・・

 

 夏休み最後だし、しょうがねぇな。何度もヤリそこねているし。

 

※ ※ ※

 

「キレイだな」

「でしょ。これ、高級なのよ」

 

 しゃがんだ英梨々の手元には、花火が綺麗に咲いている。

 

「セ・・・線香花火ですか、そうですかー」

「当たり前じゃない、あんた、なんだと思ったのよ?」

 

 そういう英梨々は俺を小馬鹿にした笑いをした。もちろん俺だって、『セ』のつくものに期待したわけじゃない・・・どうせ、こんなオチだと思っていた。

 

「倫也もしたら?これ、日本産の高級線香花火なのよ」

「ほう・・・確かに、さっきからぜんぜん消えないな」

「でしょ。玉を落とさないように持つと、最後まで楽しめるわよ」

 

 俺も一本とって火をつけた。英梨々との花火は久しぶりだ。昔はネズミ花火を投げつけられたり、ロケット花火で狙撃されたり、散々だった。

 

 英梨々の家の庭は広いので照明を消すとかなり暗くなり、線香花火の繊細な光がよく映える。パチパチという小さな音もあって、しんみりとした気分になった。

 気が付くと近所のノラ猫がそばに来て見ていた。まさか花火を鑑賞しているわけもないだろう。猫用のカリカリを英梨々が用意して餌をあげていた。

 

 スマホに着信が鳴った。画面を見ると加藤からだ・・・

 

「もしもし」

「あっ安芸くん?わたし加藤だけど、今大丈夫かな?」

「大丈夫だけど、どうした?」

「実は今、明日の準備をしていたのだけど、課題のテキストブックが見当たらなくって、もしかしたら安芸くんの家に忘れてしまったかなと思って」

「えっと・・・」

 

 まさか。いやいや、そうかそういうことか。嫌な予感がする。

 

「安芸くんのお見舞いの時に、終わらせたのだけど、持って帰るのを忘れてしまったみたいで」

「ああ、たぶん、あると思うぞ」

「良かった。教えてくれたらよかったのに」

「だって、加藤・・・俺のLINEスルーするじゃん」

「ん・・・それは・・・。とにかく明日学校に持ってきてくれるかな?」

「嫌だと言ったら?」

「言うの?」

「言わないけど」

「じゃあ、お願いね」

「わかった」

「おやすみ。安芸くん」

「ちょっとまって、加藤」

「どうしたの?」

「プリン。ありがとな」

「ああ、うん?食べてくれた?」

「うん。久しぶりで美味かったよ」

「そう、良かった。風邪も良くなった?」

「おかげさまで。加藤に風邪をうつさなかった?」

 

 加藤との会話が続きそうだったけれど、俺の視界には英梨々が1人で座って線香花火をしている。早く戻ってあげないと、心なしか背中が寂しく見える。背中で演技するな。

 

「うん。平気・・・」

「良かった。じゃ、また明日学校でな」

「うん」

「おやすみ。加藤」

「おやすみ。安芸くん」

 

 名残惜しいが電話を切った。

 

「恵から?どうしたのよ?」

「なぁ、英梨々。重大な問題が発生した」

「そう」

「そうって、お前なぁ・・・あの俺の小人さんが終わらせてくれた課題だけどな」

「恵の課題だったんでしょ?」

「そう!なんでわかったんだ」

「むしろ、なんでわからなかったのか聞きたいわよ」

「いや、困った俺に加藤が課題を代わりにやってくれたのかと・・・」

「倫也、頭がお花畑なのは前から知ってたけど、いくらなんでもそれって無理があるわよね」

「・・・だよな」

「しょうがないから、あたしも手伝ってあげるわよ」

 

 英梨々が終わった線香花火をバケツに入れた。シュッと消える時に音がする。火薬の匂いが広がる。

 

 周りからはコオロギだか鈴虫だかが鳴いている。もう、秋がそこまできていた。

 

 

※ ※ ※

 

 

 自分の部屋に戻った。課題用テキストは確かに「加藤恵」と後ろにはっきりと書いてあった。これに気が付かない俺がバカなのか、無意識に現実から逃げたのかわからない。

 俺の課題用テキストは机の棚にちゃんと収まったままだった。毎日やろうと出しっぱなしだったから、加藤が来たときに片付けられたのだろう。本棚の中も整理されている。

 

「だいたい、倫也は無計画すぎるのよ」

 

 俺が課題の解答を丸写ししている時に、英梨々はシャワー浴びて、今は扇風機で髪を乾かしていた。夏用の黄色いネグリジェを着ている。一応、俺の課題を手伝う名目でここに来ているが、手伝いようもないのだ。

 

「お前だって、昔はそうだったろ」

「いつの話しているのよ。宿題を最終日までやらなかったのは、小学生までよ」

「だいたい宿題代行業者に頼むとかずるいだろ」

「別にいいじゃない。需要があるから供給もあるんだし、自分で稼いだお金を何に使うかは自由でしょ」

 

 ああ、言い争っている場合じゃない。だいたい口じゃ勝てない。俺は必死に書き込んでいく。さすがに朝まではかからないだろう。

 

「倫也もシャワー浴びてきたら」

「全部終わったら入るよ」

「それじゃ、嫌なんだけど」

「なんでだよ」

「汗臭いじゃない」

「俺、匂う?」

「そこまでひどくはないけど、一日の最後ぐらいシャワー浴びてきなさいよ」

「わかったよ。一段落するまでな」

 

 英梨々は髪を乾かし終えると麦茶を飲み、マンガ本を読みはじめた。手伝うという名目はいったいなんだったのか。

 メガネはオシャレなピンクゴールドのものを付けていて、こうみるとなかなかカワイイ。ネグリジェの生地が気持ち薄く透けているように見えて、なんかエロい。そういえば昨日も未遂だった。しかも英梨々には何もしてもらっていない・・・いやいや、そんなこと考えている場合じゃなかった。課題をしなきゃ・・・

 

 でも、風邪をひいてから溜まったままだ・・・やばい、なんでもいいからヌきたくなってきた。

 

「ねぇ倫也」

「なんだよ」

「あたし、約束はいつ果たせばいいのかしら?」

「約束?なんの?」

「あんたねぇ・・・普通忘れるかしら」

 

 どうにも、俺に課題を進ませる気がないらしい。約束?なんだっけ。約束、約束・・・ああ、俺がヌードになった見返りのことか。冗談かと思っていて、忘れていた。

 

「もしかして、ヌードのことか」

「バカ、はっきり言わないでよ」

「あのなぁ・・・」

「しなくていいなら、しないわよ」

「それ、俺が決める権利があるわけ?」

「なによ権利って、約束は約束でしょ。別にいいならいいんだからねっ。ふん」

「いやいやいや、まって。じゃあお願いしたいけど、とりあえず課題がだなぁ」

「あんた、課題とあたしのどっちが大事なのよ」

「今は課題だな」

 

 ボスッ

 

 枕を投げてきた。こいつ、絶対に俺の課題をさせないつもりらしい。とりあえず・・・シャワー浴びてこよう。俺は立ちあがって部屋からでていった。

 

 シャワーをすませ、キッチンで水を飲み、俺が部屋に戻ると部屋は薄暗くなっていた。部屋にエアコンはついていなかったが、ちょっと暑いぐらいで温度はちょうどよかった。扇風機が回っている。カーテンも閉めてあった。

 英梨々は俺のベッドで寝ているようで、そこだけ膨らんでいた。ブランケットを頭までかぶっている。

 

「とりあえず、課題終わらせるぞ」

 

 英梨々から返事はなかった。俺はクッションに座ると、隣に衣類がたたまれて置かれていた。さっきまで英梨々が来ていた黄色いネグリジェと下着だ。

 

「ゴクリッ」

 

 俺は唾を飲み込み、冷静になって事態を把握しようと努めた。

 とりあえず下着を手にもって広げてみる。白いパンティーで中央にはピンクのリボン。フチにはフリルも着いていて、タグの素材は綿とシルクを示していた。俺には知らないブランド名だった。触り心地がいい・・・

 匂いを嗅ぎたい衝動は全力で抑える。俺は英梨々みたいに変態ではない。

 

 英梨々はもしかして、今日こそヤるつもりなのだろうか。もう明日は学校である。時刻はすでに22時を回っていた。

 いやいや、そうみせかけて罠かもしれない。でも、今日は一日中一緒に過ごしたしなぁ。確認してみるか。

 

「おい、英梨々」

 

 ベッドの横に立って、上から見下ろすように声をかけた。

 英梨々が顔だけブランケットから出した。目つきが悪いのはメガネもコンタクトもしていないからだ。

 

「なによ。課題おわった?」

「いや、ぜんぜん・・・」

「はやく終わらせてきなさいよ」

「その前に、確認したいことがあってだな・・・」

「なによ、早く言いなさいよ」

「もしかして、裸?」

「それこそ、確認すればいいじゃない。スケベ。変態」

 

 俺はブランケットに手をかけた。そろりとめくっていく。英梨々の細い首から鎖骨、そして胸の膨らみが見えた。もう少しめくると乳首も見えそうだったが、とにかくブラはつけていないことはわかった。

 

「なぁなぁ、英梨々。もしかして、下も履いてないのか?」

「あんたねぇ・・・同じこと言わせないでよ」

「・・・と・・・とりあえず、課題終わらせてくるからっ」

「ヘタレ」

 

 よしわかった。英梨々がそのつもりならしょうがない。俺は机に向かって課題をやり始めた。まったく何も頭に入ってこないが、解答を写していく。悶々とする。いっそうのこと、一発ヌいた方が集中できる気がしたが、ここでするわけにもいかない。もう5日ぐらい我慢しているのだ。英梨々の中にぶちまけたい。途中で炭酸飲料を飲みながら作業をすすめた。

 

 がんばれ俺。

 

 

※ ※ ※

 

 

 0時を過ぎた。

 

「倫也、終わった?」

「3分の1ぐらい終わった・・・」

「あんたねぇ・・・もう夏休み終わったわよ」

「すまん」

 

 振り返ると英梨々がいた。体に大きなバスタオルを巻きつけている。もういっそうのこと、俺を楽にしてくれ。

 

「はやく終わらせなさいよね」

「ああわかってる・・・」

 

 棚からラノベを数冊持っていった。

 俺が課題と向き合っている間、後ろのベッドで英梨々が本を読んでいる音がする。

 

 2時を過ぎた。

 

 課題の半分が終わった。けっこうなボリュームでびっくりする。丸写しするにしても、国語も社会も論文がある。数学に到っては類似問題の作成まである。解答は例文しかないから丸写しはできない。

 

 完全に写すわけにはいかないし、先生もこういうこところはチェックするに違いない。どうしたって、すぐには終わらなかった。

 トイレを済ませ、コーヒーをいれて戻ってきた。眠気がする。最近はけっこう規則正しく生活していた。たまの徹夜は辛い。

 今日は学校に行った後は、午後にバイトがある。少しは眠っておきたい。アクビを1つして、また課題に向き合った。

 

 英梨々はすでに撃沈していて眠っている。小さないびきが時々聞こえる。

 

 4時。

 

 課題の3分の2が終わった。見通しが悪かった。こんなに時間がかかると思わなかった。

 英梨々はすでに熟睡していて寝相が悪い。俯せで寝ていて、片足を曲げている。辛うじてブランケットで大事なポイントを隠しているとはいえ、こりゃ、完全に裸なのがわかる。半ケツがでていて生足がすらりと伸びている。少しでもブランケットをめくりあげるか、俺の見る角度を変えれば、アソコがばっちり見えそうだ。

 また風邪を引かないようにブランケットを時々直してやる。めくって下の毛の色ぐらい確認したいが自重した。煩悩に負けたら止められそうにない。

 

 6時。

 

 課題がもうすぐ終わりそうだ。英梨々のスマホのタイマーが鳴った。窓の外は白み始めている。

 

 元気よく雀が鳴いている。

 

 

 ・・・無事に朝チュンを迎える。

 

 

「英梨々。朝だぞ」

「んにゃ」

 

 英梨々の髪は乱れている。まったくもって俺はダメ人間だ。裸で寝て待っている英梨々を前にしても、ヘタレ根性が炸裂して、まったく手が出せなかった。

 

「俺、課題がもう少しで終わるから。お前は一度家に戻るんだよな」

「ああ、うん?倫也課題終わったの?」

「終わりそうだよ。もうすぐだ」

「あっそう、良かったわね」

「わっわっ、突然起き上がるなよ」

 

 俺は慌てて英梨々にブランケットをかけてやる。英梨々が急に上半身を起こしたので、朝日に照らされた綺麗な英梨々の裸が見えてしまった。白皙の肌は透き通っていて、乳首がほんのり淡い。ツンと上を向いている。固そうにみえるのに触ると柔らかいのだ。ああ、触りたい。つまみたい。ひっぱりたい。

 

「倫也」

「どうした?」

「服、とってくれるかしら」

「ああ、これな」

 

 俺はたたんであるネグリジェと下着を渡した。

 

「あんた、あたしのパンツ、頭にかぶったでしょ?」

「かぶってねぇーわ!」

「怪しいわね。たたみ方違っているけど」

「・・・かぶってないです。ちょっと見ただけです」

「変態。ついでにヘタレ」

「なんとでもいえよ・・・」

 

 英梨々がブランケットの中で下着を着始めたので、俺は机にもどって残りの課題と向き合った。6時半には終わりそうだ。

 

「あたし、先に下に降りて朝食食べてくるから、倫也も終わったら降りてらっしゃいよ」

「わかった。でもすぐに帰らなくて平気か?」

「だから、早くしなさいよ」

「まったくだ」

 

 英梨々は私服に着替えていた。昨日と同じ黄色いシャツとサロペットだ。部屋からアクビをしながら下に降りていく。俺もつられてアクビをした。

 

「終わった!!」

 

 やっと課題を終えて下に降りていく。英梨々は洗面所で身支度をしていた。

 

 テーブルの上のコンフレークを牛乳で胃に流し込む。バナナを齧る。眠い。

 

 英梨々が洗面所からでてきた、髪はツインテールに綺麗に結っている。今日は白いリボンだ。

 

「おはよう。倫也」

「おはよう」

「あんた、けっきょく寝なかったのね」

「おかげさまで、眠れずに課題ができたよ」

「ふふっ。ほんと、バカよね」

 

 英梨々が笑って八重歯少し見えた。

 リビングから出て、玄関に英梨々が向かったので、俺はそれを見送る。

 

「じゃ、また後でね」

「ああ、またな」

 

 英梨々が玄関から出ていった。それは気持ちいい早朝で外の天気は晴れていた。

 あとで制服に着替えた英梨々が一緒に登校するために、またここに迎えに来る。

 俺もそれまでに準備を終えて待つ。

 

 楽しい夏休みが終わってしまった。

 

 

 そして日常が始まる。英梨々がそばにいつもいてくれる平凡な日常が。

 

 

(了)




最終日にヤると思っていた方には、ごめんなさい。
それでも、R18進めや!という方はコメントに要望をどうぞ。

さて、これで40話に及ぶ夏休みの物語は終わりです。去年の恵の夏イチャよりも進歩している気が自分ではしています。いかがだったでしょうか?

40話のすべて読み終えた方には深く感謝を申し上げたい。
そして、是非評価をしていただきたく思います。
またコメント欄に面白かった話数だけでも教えていただけると、今後の参考にさせていただきます。
英梨々へのメッセージも喜ぶかと思います。

チラ裏まで英梨々を辛抱強く支えてくれた方には深く感謝を申し上げます。
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