【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み   作:きりぼー

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夏イベントの代表ともいえるスイカ割り。アニメなんかでは常連イベントだが、実際にみんなが経験しているのだろうか。

本作はスイカ割りをするまでの流れ。
だいたい三千文字ぐらいを目安に書いているのですが、五千文字を超えたら収束させるようにしています。
スイカ喰うところまで書くとさらに倍ぐらいかかりそうなので。


07 スイカ割りをしたい

7月29日(金)夏休み6日目

 

「あ゛あ゛ぁ~~~~」

 

 暑さで気でも狂ったか、英梨々が扇風機に発声して遊んでいる。いやいや、ここは彼氏としてしかるべきツッコミをいれてフォローするのが優しさだろう。

 

「何、小学生みたいなことしてんだよ!」

「冴えないツッコミよね」

「っ!!」

 

 そして優しさを見せれば、この言いようである。別にツッコミの才能があるわけでもないし、ここは大人の対応で、スルーしよう。

 英梨々がうちに来て、課題もやらずにぼんやりと過ごしている。大きめのだぶだぶの白いTシャツには英語のロゴが入っていて、どこかオシャレだ。薄っすらと透けて見えるインナーは紺色かな。下はベージュの短パンを履いているが、立ち上がると膝上まで長いTシャツで隠れてしまう。これはこれでなかなかセクシーだ。水鉄砲で濡らしたい衝動が沸き起こる。俺が変態なんじゃない。環境が俺を変態にさせるんだ。

 

「ねぇ、倫也。夏の果物といえば?」

「スイカ」

「スイカといえば?」

「う~ん。志村けん?」

「・・・そうね。スイカといえば?」

 

 あっ、強引に同じ質問をしてきた。これはRPGでよくあるタイプの質問パターンだ。こうなったら、とことんボケるか、正解をさっさと出すか。それにしても冷房の効いてない部屋は暑い。窓は全開だけど、風があまり入ってこない。

 

「スイカといえば、夏だな」

「なによ、そのトートロジー」

「別にトートロジーじゃないぞ?おまえ、トートロジーの使い方わかってないだろ」

「えっ、間違ってたかしら・・・」

「トートロジーは同一の文だろ。A=Aがトートロジーだよ」

「あんたって、小難しいわよね。例えば?」

「そうだなぁ・・・スイカは夏に喰うのが旨いよな!」

「そうね、なんでかしら?」

「夏だからだろ」

「はぁ?あんたバカなの?それ解答になってないじゃない」

「だから、これがトートロジーなんだって」

「ふーん。一言言っていいかしら?」

「どうぞ」

「どうでもいい」

「だなっ!」

 

 まったくもって暑い上にさらに窓を開けているのでセミの声がうるさい。やっぱり窓を閉めて冷房をつけるか迷う。英梨々はあまり冷房が好きでない。

 

「ねぇ、倫也。スイカといえば?」

「壊れたラジオかよ・・・スイカといえば、スイカ割りかな」

「そう!それよ。とっとと答えなさいよ」

「周り道がいいんだろ。人生なんてのんびり過ごして、いかに楽しく暇つぶしをするかなんだから」

「それ、負け組のもっともらしい言い訳だから気を付けないさいよ」

「・・・。で?スイカ割りがどうした?」

「やりましょ。スイカ割り」

「どこで?」

「う~ん、倫也の庭でもいいけど、あたしの庭の方がいいかしらね。人目に付かないし」

「そうだな」

 

 俺の家の庭もなかなか広いが道路に面していて丸見えだ。英梨々の家の庭は芝生な上に、塀で囲まれている。まぁ、スイカ割りって普通は海辺でするものだと思うが。

 

「じゃ、買いに行きましょ」

「いいけど、用意してるんじゃないんだな。英梨々の家だと高級なスイカがありそうだけど」

「スイカ割りのスイカなんて安物でいいのよ。あれって割れた時に中がぐっしゃっりするし、汁がけっこう流れてしまうし」

「ふむ」

 

 確かにスイカ割りは娯楽であって、スイカをおいしく食べるための作業ではない。食べ物を粗末するなと目くじら立てるほどではないが、無駄は無駄である。

 そういうわけで、俺と英梨々は駅前のスーパーまでスイカを買いに行くことになった。

 

※※※

 

 近所スーパーにスイカが丸ごと並んでいる。価格帯はだいたい2~3000円。この時期は近場の三浦や千葉産のものが出回っている。

 

「一番の大きいのがいいわよね」

「よくわからんが、好きなのでいいと思うぞ」

「好きも何も、どれもスイカじゃないの」

「まぁそうだけどさ」

「すみませーん。スイカ買いたいんですけど、選んでもらっていいですかぁ?」

 

 英梨々が野菜売り場のお兄さんに声をかけた。振り返ったお兄さんは一瞬固まって、英梨々を上から下まで見て、それから気を取り直して、スイカを選び始めた。

 

「どれも、甘いっすよ」

「スイカ割りしようと思って」

「なら、大きいコレがいいんじゃないっすかね」

「じゃあ、それで。レジまでお願いできますか?」

「はい」

 

 もはや、すべての若い男性は英梨々の奴隷なのである。NOはありえない。もちろんこの程度ならどの人が頼んでも同じ結果だろうけど。お兄さんはその後、俺の方をみて値踏みした。ふふふっ、お前が俺に対してどう思うが、俺が英梨々の彼氏なのだよ。っと、妙な優越感を表に出さないように、俺はさっと目をそらした。いらぬ誤解と反感は買いたくない。

 

 会計を終えてスイカを持って帰る。これがなかなか大変そうだ。一応専用のダンボールに入っていて、持ち手もある。とりあえず俺が両手で持って歩いた。が、いかんせん重い。

 

「英梨々、これ一人じゃ無理だわ」

「ジャンケンしましょうか。電信柱三本分」

「おう」

 

 かくして、ジャンケンをしながら、俺と英梨々は勝ったり負けたり、連続して負けたら距離を短くしたりして、運んだ。途中で飽きたのと手が痛くなったので、2人で持つことにしたら、けっこう楽になった。

 

「最初からこうすればよかったな」

「けど、これも手が痛くなりそうよ」

「スイカ、重いんだな」

「配送してもらえばよかったかしら?」

「近所だしなぁ・・・」

 

 疲れたら一度スイカを下ろして、左右を入れ替えてまた持ち上げた。なんとか英梨々の家まで運び終わり、庭先に回り込んだ。

 

「スイカってやっぱり冷やすわよね?」

「たぶん、その方が旨いんじゃないか」

「じゃあ、冷水に当てましょうか」

「こんなでかいタライあるか?」

「プールでいいわよ。空気を入れるの手伝いなさいよ」

 

 英梨々が倉庫からビニールプールと、足で踏む空気ポンプを持ってきた。ずいぶんと懐かしい、家庭用子供プールであるが・・・俺の記憶が正しければ、これはとてもでかかった気がする。

 

「あたしは、何か飲物持ってくるから、空気頼むわね」

「あいよ」

 

 英梨々が家の中にはいったので、俺はたたんであるビニールプールを広げた。そうそうでっかいんだよ。5メートルぐらいある。幅は2メートルぐらいか。付属品でビニールの滑り台もできる。こちらは後回しでいいだろう。俺はとりあえず空気穴にホースを差し込み、足で踏み始める。空気を入れるところが何カ所かあって、一か所ぐらいがパンクしても使えるしろものだ。

 

 太陽がまだまだ高い位置にあって眩しい。塀の上では、「また何かやっている」とばかりに野良ネコがアクビをしながらこっちを見ていた。

 俺はせっせと足で踏んで空気を入れていく。膨らんでくると、改めてそのでかさにため息がでる。底に近い方から膨らませて、こんどは水をいれていく。水をいれながら膨らませないと、水もなかなか溜まらない。

 

「倫也、ファンタグレープとファンタメロンソーダのどっちがいい?」

「メロン」

「はい。代わるわよ」

「頼む」

 

 英梨々も当然この作業が大変なことを知っている。水が少し溜まってきたのでスイカを投入した。俺は日陰で缶を開けて、メロンソーダをひと口飲む。炭酸は心地いいが妙に甘ったるい。ただの炭酸水の方がよかったかもしれない。

 

 英梨々が一段分膨らませたので交代する。英梨々が缶を開けてグレープ味を飲んだ。それから缶を眺めて、「こんな味だったかしら?」と言った。

「妙に甘いよな」

「そうね。もう少し、爽やかかと思ったけど、これなら炭酸水にレモンでもそえればよかったかしらね」

「俺もそう思った」

 

 その後も足で一生懸命に踏む。リズムが大事だ。急いで踏むよりも、空気をたくさん送りこむようにしっかりと戻してから踏む。また一段分膨らんだ。そして英梨々に代わる。「人間は暇だなぁ」とバカにして、ネコはどこかに行ってしまった。周りのセミが何かを訴えかけるように盛んに鳴いていた。

 

時が止まったかのように、同じ時間が繰り返される。

 

「せっかくプール膨らませるし、倫也も入る?」

「そうだなぁ。水着ねぇな。とってくるか」

「別に誰もみてないし、下着でいいわよ」

「お前が見てるだろ」

「なら、裸でいいわよ」

「よくねぇよ!」

「ケチ」

「それ、女の子のセリフじゃないよねぇ!?」

「ほら、代わりなさいよ」

 

 プールはだいぶ膨らんできた。あと一段で一応完成だ。滑り台はいらないだろうが。一応聞いてみる。

 

「英梨々、滑り台の方は膨らますか?」

「倫也が滑りたいなら膨らませば?」

「もう大きいし無理だろ・・・」

「滑りたいことは否定しないのね」

「懐かしいからなぁ・・・」

 

 英梨々は靴を脱いで、短い靴下を器用に立ったまま脱いで靴の中にしまった。芝生の上を歩いて、プールの中に入っていく。パシャパシャと水の音が涼しい。

 

「あ~、冷たくていい感じよ。倫也も入ったら?」

「これが終わったらな」

「よいっしょっと」

 

 足でバシャバシャと水を蹴っている英梨々を眺めた。陽光の中、ツインテールも水面と同じように輝いている。夏と太陽がよく似合っていた。

 英梨々が立ち土まって、Tシャツを少しまくると、短パンのボタンに手をかけてはずした。それから短パンを下ろして、立ったまま足を抜いて脱いだ。

 

「おいおい・・・英梨々!自宅とはいえ、まずいだろ」

「あらやだ、倫也のえっちぃ~」

「あのなぁ・・・」

「大丈夫よ。ほら」

 

 英梨々がTシャツをまくった。紺色の下着・・・じゃない、これは・・・水着か?

 

「ふふふっ」と英梨々が笑って、プールの中に横たわっていった。白いTシャツがみるみる濡れて、英梨々の身体にぴったりと貼りついた。下に着ていた紺色の布がはっきりと浮かび上がる。

 

「おまえ、水着着てたのか」

「そうよ。いいでしょ?」

「水着着たまま、街中にスイカ買いに行くとか、ちょっとした変態だな!」

「バカね。さっきそこで着替えたのよ」

「いや、変態は変態だろ」

「なによ~」

「普通、旧スク水なんて着ないからね!?」

「サービスよ、サービス」

 

 そう、Tシャツを着ているので、ちょっとわかりにくかったが、英梨々が着ているのは旧型のスクール水着だ。今時は同人誌や、エロマンガ、AVなどのエロ方面でしかみかけなくなってしまった。昔はクラスメートの女子がこれを着て、一緒にプールの授業していた。信じがたい。

 

 ・・・そして、俺は悲しいかな、股間が少し熱くなった。年頃の青年なんで勘弁してください・・・

 

 英梨々がスイカを中で転がしている。Tシャツまで脱がないのは、どこかやっぱり恥ずかしいからだろうか。脱がない方が逆にエロいのは、わざとなのか、無自覚なのか・・・

 

空気をやっと入れ終わった。俺もこのクソ暑い状況から解放されたい。

 

「終わったぞ」

「ありがとう。倫也も入ったら?気持ちいいわよ」

「そうだなぁ・・・」

「ブリーフかしら?」

「トランクスだよ」

「なら、別にいいじゃない」

「そういう問題なのか?」

 

 不思議とブリーフ一枚でプールだと怪しい人だが、トランクスなら柄によってはセーフらしい。とはいえだ。今の俺はズボンを脱ぐわけにはいかない。しょうがないので、ズボンを無理やり折りたたんで短くした。後ろを向いて、ポジションを少し直した。上のシャツだけを脱ぐ。

 

「この暑さだし、ズボンを濡らしてもすぐに乾くよな」

「そうね。別に乾かなくても濡れたまま帰ったらいいじゃない?誰も気づきやしないわよ」

「だな」

 

 俺もプールに入った。英梨々が水を俺にかけた。ひんやりとした水が気持ちいいが、英梨々の透けたTシャツが気になって仕方ない。ペタンコかと思った胸のふくらみが多少ある。その微妙な膨らみが妙にエッチィ。

 

 プールに水はまだ15cmぐらいしか溜まっていない。スイカが完全に浸るのには40cmぐらい必要か。まだまだ時間がかかりそうだし、冷たくなるのには、さらに時間がかかるだろう。

 でも時間はある。時間だけが2人にはある。どうしようもない焦燥感を抱えながら、俺も英梨々も水が溜まっていくのを待つだけだ。

 

 英梨々が盛大に俺に水をかけてきた。髪まで濡れてくる。

 

「コノヤローヤッタナー」と俺は、この使い古されたセリフを選ぶ。海辺で恋人たちが戯れシーンだ。そして、英梨々に水をかけた。両手いっぱいに水をすくって、英梨々の髪が濡れるぐらい盛大に、必死に水をかけた。

 

「キャハハッ」と英梨々が笑ったから、俺は「うふふっ」と言った。

 

「もう!バッカじゃないの!やめてよ、倫也!」

 

 英梨々が腹を抱えて笑いだした。よし、俺の勝ちだな。何に勝ったかわからないけど、俺は勝ち誇った気になる。英梨々はもう笑い転げて、八重歯どころか歯が見えているから、笑い方としてはお嬢様からは、かけ離れて下品ぐらいだけど、まぁ最高に可愛かった。

 

 腹を抱えて屈んだ英梨々は、俺から見るとTシャツの隙間から胸元が見えた。それはピッチリとしたスク水で谷間なんてぜんぜんないけど、やっぱりドキリとした。

 

 俺は座って、下半身をズボンごと水に濡らした。冷たいのでちょうどいい。少し冷めるぐらいでいい。静まってくれればいい。このバカで小学生みたいな英梨々が、今を笑ってくれるなら。それでいい。

 

(了)




よくない。

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