【全40話】英梨々とラブラブ過ごすエッチな夏休み 作:きりぼー
ボツにしようかと思ったけど、せっかくなので残してみた。
倫也と英梨々もこういう関係性になってきたのね。
知識があれば実戦で何もかも上手くいくわけではない。
だからといって、まったく役立たないわけでもない。
英梨々にあるのはエロさでなく、優しさなのかもしれない。
7月31日(日)夏休み8日目
7月の最後の日。夏休みが始まって、もう一週間が過ぎた。
俺は課題がまったく進まない。
俺の部屋のテーブルの上で英梨々が原稿を描いていた。今は下書きの段階なので、俺が手伝うことは特にない。
「ねぇ、倫也」
「どうした?」
「ラブホ行ったことある?」
何を聞かれるかと思ったら、この質問である。もちろん行ったことなどない。とはいえ、そんなことは英梨々だって知っているはずだ。いや、むしろ『ある』と答えた方が、話が発展するだろうか。
「あるぞ」
「つまらない嘘はいらないから、話を先に進めていいかしら?」
「冷たいなっ!」
「それでね、ちょっと今、原稿に詰まっているんだけど・・・」
「・・・んで、何に詰まってるんだ?」
「背景描写。ラブホテルが舞台の連続監禁凌辱もの描いているんだけど」
内容が意味不明だがそこに反応してもしょうがない。この顔でエロ同人作家という腐女子だ。エロ同人作家にも得意分野があって、英梨々の場合は凌辱物が得意だ。それが本人の願望なのかどうかは知らない。歪んだ性癖など真剣に分析したいとは思わない。
「それで?背景の資料が足らないのか?」
「そうなのよ。やっぱりネットで拾った情報だけじゃ、実感がわかないじゃない」
「俺は、お前の同人の内容の方が、実感わかないけどな」
「それはファンタジーなんだから問題ないでしょ?あたしが悩んでいるのはリアリズムのところなのよ」
「ファンタジーもジャンルが広いんだな・・・ で、要するにラブホに取材に行きたいと?」
「そうよ」
「いってきたら?」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?一人で行けるわけないじゃない」
「よし。お約束のセリフがでたところで行くか」
ラブホ見学か、上等じゃないか。今日で俺も童貞を卒業だな。部屋でずっと2人なのに、未だに結ばれてない方がおかしいが、あまりにも日常的すぎるのが原因かもしれない。場所を変えれば、さすがに事は成就するに違いない。
「じゃあ、いったん着替えてくるから、倫也はできるだけ大人っぽい恰好してらっしゃいよ」
「どうして?」
「高校生がラブホ入ったら補導対象なのよ?あんたそんなことも知らないの」
「知らねぇな・・・シャツにサマージャケットでいいよな?」
「それでいいわよ。じゃ、また後でね」
「お・・・おう」
こいつの頭の中が心配だが、もしかしたら英梨々がものすごく発情したのかもしれない。
英梨々を家から送り出して、俺は自転車に乗って普段はいかない遠くのコンビニまで走った。そこでコンドーム(6個入り)を一箱と、いらない雑誌と、いらないお菓子と、いらないドリンクを一緒に購入して戻ってきた。普段、新聞配達をしている成果がこんなところで役立つとは。はぁはぁ。
汗を少しかいたがシャワーは現地で浴びればいいだろう。サマージャケットを着て、英梨々が戻ってくるのをリビングで待つ。なんだかそわそわして落ち着かない。やばい、英梨々とラブホテルとかもう想像しただけで興奮する。
チャイムが鳴ったので扉を開けた。英梨々が立っている。
ふむ。怪しい。
黒のサングラスにマスク。髪型はツインテールだが、帽子をかぶっている。それだけでもう不審者そのものだ。服は黒いワンピース。肩がでていて、胸元もV字なので鎖骨がはっきと見える。丈は膝上で短い。黒いパンストを履いていて、靴も黒のヒールだった。デザインが洒落ているので喪服には見えないが、いささか黒すぎの気もする。
「で、どこまで行くんだ?」
「池袋は学校の子に合う可能性が高いから、沿線の駅までいくわ」
「わかった。おまえラブホの場所は知っているのか?」
「知らないけど、繁華街ならあちこちにあるじゃない」
「まぁそうだな。でも、いろんなタイプがあるみたいだぞ?」
「うん・・・でも、どこでもいいのよ。新しくて一番高い所に行きましょ」
「どこでもよくねぇじゃねーか」
スマホでサクッと検索して、タクシーをつかまえた。奥に英梨々を座ってもらい、俺も乗り込む。運転手にホテルの近くの場所を指定する。さすがに直接ホテルの名前は出せなかった。英梨々はタクシーが走っている間、黙っていた。こうして顔を隠しているとアイドルに見えなくもない。俺はさしずめマネージャーといったところか。
タクシーは英梨々が清算した。どこにでもある繁華街で、見慣れたチェーン店が並んでいる。少し中心部から離れたらラブホ街に出た。昼間の料金は3800円からと安いようだ。2時間休憩のところもあり、サービスタイムで4時間のところもある。システムがいまいちわからない。
検索で見つけたラブホを発見する。確かに新しい気がする。チープな作りの入り口の方が入りやすそうだが、ここは重厚な入口があった。
「ほら、倫也。入るわよ」
「お前、大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。まさか、倫也・・・変な事考えてないでしょうね?」
「考えてるが?」
「帰ろうかしら・・・」
「えっ・・・お前、もしかして、そのつもりないの」
「ないわよ。いやよ、こんなラブホで初体験なんて」
「あ~そうですかぁ・・・で、何しに来たんだっけ」
「取材よ、取材。わかった?」
「お・・・おう」
生殺しだな。けれど、本音はわからない。部屋にはいったら英梨々の気も変わるかもしれない。そもそもラブホに入った時点で合意だろう。もうすでに、俺のはポジションが悪くて気になる。落ち着け。俺。
「行くわよ」
そういって、英梨々が俺の手をとった。恋人として入る。まぁ不倫関係には見えないだろう。中のロビーは意外と広かった。正面に、部屋の写真とボタンがある。明るいパネルの部屋と、暗くなっているパネルの部屋があるから、暗いところは使用中なのだろう。日曜の昼間なのに、半分ぐらいが暗い。料金にはクラスがあって、一番上のSクラスは11800円だった。昼間のサービスタイムなので午後5時まで使用可能。あと3時間近くあった。
「高くね・・・?」
「一番下のでも、5800円じゃない。そんなかわらないわよ」
「倍違うよねぇ!?」
「ほら、エスコートしなさいよ。いつまでもこんなところにいたら恥ずかしいでしょ」
俺はボタンを押した。カードキーが出てきた。受付の人は一応いるようだが、こちらからは顔が見えない。インターホンを押すと出てくるようだ。とりあえず今は必要ない。俺はカードキーを受け取って、奥のエレベーターに向かった。観葉植物がやたら多い。
「なんか、ドキドキするわね」
「そりゃあ、そうだろうよ」
エレベーターが無駄に金色で装飾されている。センスがいまいちわからない。最上階の5階のボタンを押す。
だいたい各フロアに6つの部屋があったが、最上階は3つの部屋だ。俺たちの501号室は、廊下を隔てた半分がすべてそうだった。スイートルームということなのだろうか。
カードキーで扉を開ける。中は思ったよりも広かったし清潔感があった。大きなテレビ、カラオケ設備、キングサイズのベッド。ガラス張りのバスルーム。テーブルとイスもちゃんとあった。絨毯が分厚い。
「あら、いいところね。ラブホテルって感じはしないけど、何がちがうのかしら?」
「そのバスルームが透明なガラス張りのところじゃね?」
「ほんと。でも、それだけよね?」
「とりあえず、色々調べてみたら?俺、何か飲んでいい?」
「好きにしなさいよ」
備え付けの冷蔵庫を開けると、プラスチックのケースで仕切られていた。ボタン押すと開けることができる。俺はコーラを買った。瓶のコーラが少し高い。備え付けのグラス2つに注ぎ入れる。
英梨々はスマホを使って、さっそくあちこちを写真に撮っている。仕事熱心なんだな。
「とりあえず、飲んだら?」
「なんだか、時間がもったいないわね。やっぱり泊まりじゃないと落ち着かないわ」
「3時間もあれば十分なんじゃねーの」
「そうでしょうけど、別にあたしが言いたいのはそういうことじゃないのよ」
「マスク外せば?」
「うん」
英梨々がマスクとサングラスを外してバッグにしまった。イスに座ってコーラを手に持った。なんとなくグラスをぶつけて乾杯をして、それから飲んだ。美味いコーラだった。喉がずいぶんと乾いていたようだ。
英梨々はコーラを飲み干すと、バスルームの方へ移動した。こちらからはバスルームで写真撮影をしている英梨々が丸見えだったが、お湯を張ったら湯気で見えにくくなるのかもしれない。
俺はベッド周りをチェックする。あちこちのスイッチを押して照明を確認。頭のところではオーディオなどもいじることができる。気が付かなかったが、さっきまでクラシックが流れていた。有線のパンフレットがあり、チャンネルをアニソンに合わせてみたが、子供向けの曲が流れてしまったのでポップスに変えた。
ベッドの上はフカフカで上等なのがわかる。ブランケットもいいものを使っている。ラブホでもけっこうコストをかけていることに驚いた。さすがに評判のいいところは違うのかもしれない。
バスルームの方から水を出す音が聴こえた。シャワーを英梨々がいじっている。俺はベッドに仰向けになった。どうにも体が落ち着かない。トイレにいって賢者タイムになった方がいいかもしれない。英梨々にまったくその気ないならしょうがない。でも、それはそれで問題な気もする。やっぱり俺がリードすべきなのだろう。
「ねぇねぇ、倫也~」
「どうしたぁ?」俺は顔だけあげて、バスルームの方をみた。
「せっかくだしお風呂はいるぅ?」
「お前と?」
「はぁ?なんであたしが倫也と一緒にお風呂入らないといけないのよ」
「なんでって言われてもな・・・」
恋人だから。かな?
俺、おかしいこといったかな。やっぱり一緒にお風呂に入るのは、一線を超えてからだろうか。そりゃあそうだよな。そうなのか?
「とりあえずお湯を張っておくから考えておきなさいよ。泡風呂にできるわよ。ジェットついてるから」
「ほぉ・・・泡風呂か・・・」
だめだ。悶々とする。風呂に入ってスッキリしようか。いやいや、スッキリして外に出たら、英梨々がその気だったりして・・・そうなるともったいない。
とりあえず自制心を総動員して、様子をみる。
「あとね、ガウンもあるわよ。品物はまぁまぁね。バスタオルもそこそこいいもの使っているし」
「それじゃあ、せっかくだし使わないともったいねぇよな」
「そうね。あたしは入れないけど・・・」
「なんで?」
「だって、ガラス張りじゃない」
「それがいいんじゃねーの?」
「あんたねぇ・・・見たいのかしら?」
「さぁ~て、風呂はいってくるかな」
「誤魔化したわね」
そんなの見たいに決まっている。変態と言われようとも、ガラスに顔をくっつけてガン見したいのをどれだけ我慢できるかでしかない。マジックミラーなら我慢しない。そんなもんだろう。
英梨々がバスルームを一通り点検が終わったようで、歯を磨きながら出てきた。
「なんで、歯を磨いてるんだよ」
「アメニテふぃーふぁもったいふぁいじゃふぁい」
泡のせいで活舌が悪い。
「せこいな」
「もってかえりゅようなせこいふぁねふぁしたくふぁいのよ」
口をゆすいでからしゃべれ。
英梨々がベッドに腰を掛けた。リモコンでテレビをつけ、それからチャンネルを変えた。有料回線とも契約していて見放題になっていた。英梨々がAVに切り替える。いきなり行為中の場面が大きく映し出されたが英梨々は別に動じない。
「おいおい・・・」
「モザイクでかいわね」
「おやじか!」
「なんで、ネットに無修正が溢れているのに、いまだにモザイクがかかっているのかしらね?」
「さぁな」
なにしろエロ同人作家なので資料としてエロビデオも見る。お気に入りの場面で一時停止を押してデッサンに起こすなど日常茶飯事なのだ。おまけにネットの無修正サイトでみているから、この程度ではまったく動じなくなってしまった。この性的な歪みをどうしてくれようか?
「ほら、お湯が溢れる前に入ってらっしゃいよ」
「覗くなよ」
「覗くわよ」
「はい!?」
「なによ。せっかくの資料集めなんだから当然でしょ」
「まじかっ!」
「前ぐらい隠しなさいよ」といいながら、英梨々が笑っている。
俺はジャケットをイスの上にかけ、シャツを脱ぐ。バスルームでズボンを脱ぎ、タオルで巻いてからトランクスも脱いだ。
英梨々が両手を広げてガラスにひっついている。健気なボケにツッコムべきだろうか。俺は英梨々の前に立った。ガラスの向うに英梨々がいる。こちらは裸で英梨々は服を着ている。タオルで隠しているとはいえ、すでに若干膨れている。ガラス越しに英梨々のおでこにデコピンをした。英梨々がニヤニヤ笑っている。ほんと、どうしようもない変態である。おまけにスマホを構えて撮影をはじめた。
俺はシャワーを浴び、体を洗う。バスタブには泡がすでに張っていた。その中に浸かると湯加減がなかなかいい。というか、俺の入浴シーンなんて何が楽しいんだ?こういうのは英梨々がするからいいんだろうに。
英梨々がバスルームに入ってきた。
「おまえなぁ・・・」
「だって、曇りはじめたんだからしょうがないでしょ」
「俺にもプライバシーがあるんだからね?」
「そんな人間みたいなこといわないでよ」
「人間なんだが・・・」
英梨々が気にせずにスマホのカメラで俺を撮影している。泡から片足を出したら、笑い転げていた。
「ガラスが曇ったなら、お前もあとで入れば?」
「そうねぇ・・・でも、倫也が覗いてきそうだし」
「せっかくだから撮影してやるよ」
「それ、犯罪だから」
「犯罪者がいっても説得ないんですけど!?」
英梨々が笑いながらシャッターを切る。BL向けなら、むしろ正しい撮影資料なのだろうか・・・
「そろそろ、のぼせるから俺は出たいんだが」
「出たらいいじゃない」
「それがな。英梨々・・・」
「なによ」
「こう見えて、興奮をしててだな」
「はぁ?あんた変態なの?あたしに見られて立っちゃったわけ?」
「そうだよ!」
「ふーん」
そういいながら英梨々がスマホを構えている。俺はお湯を手で掬って英梨々にかけた。
「ちょっとやめてよ。着替えないんだから」
「そこにバスローブがあるんだろ?」
「バスローブで帰れないでしょうが」
「ほら、とにかく出ろよ・・・」
「もうしょうがないわね」
英梨々がバスルームから出ていった。まったく、立場が逆ならセクハラもいいところだ。シャワーで泡を落として、俺は外に出た。
ドライヤーで乾かし、バスローブを着る。一応、歯も磨き、マウスウォッシュで口もすすいだ。あれ、準備万端じゃね?下の息子も準備万端だった。
俺が戻ると、英梨々がベッドのスイッチをあちこちいじっている。今は演歌が流れていた。冷蔵庫をもう一度開けて天然水を買った。料金は後払いのようだ。これを開けて飲む。体の火照りが少し冷めるが、下は落ち着かなかった。
「英梨々。風呂あいたぞ」
「あたしは入らないわよ」
「えっ?」
「入りたくないの」
「どうして?」
「どうしてもよ。いいたくない理由だってあるのよ」
「ふーん」
英梨々がベッドの上で足を崩している。ワンピースの裾が短いので下着が見えてしまいそうだった。ストッキングも妙にエロい。
俺もベッドの上に乗る。2人が乗ってもまだ十分に広い。
「なぁ英梨々・・・」
「倫也、近い!近い!あと、鼻息が荒すぎ」
俺は英梨々の肩を持って、押した。英梨々がベッドの上に仰向けになった。スカートがまくれ上がっているせいで、パンストが透けて下着が見えた。
「いたい」と英梨々は棒読みした。そんなに強くは押していない。
俺はかまわず、英梨々の上に覆いかぶさるように近寄った。英梨々が目を横にそらした。ツインテールの髪は乱れてベッドに広がっている。
白いうなじも、鎖骨の凹みも、少し汗ばんで光っているように見えた。
その首筋にキスをした。英梨々の匂いがする。自分の鼻息が荒いのがわかる。俺は興奮していて、英梨々がシャワーを浴びないことなど、どうでもよくなっていた。
「ううぅ・・・」と英梨々が呻き声をあげた。「ヒック」と息を吸った時の奇妙な音をだす。英梨々の瞳を見ると、涙がこぼれていた。
「えっ、英梨々。えっと、ごめん」
「ど・・・どきなさいよ」
「ああ、うん」
俺は慌てて英梨々の上からどいた。英梨々が体を転げてから、枕元のティッシュを数枚とった。それから涙を吹き、鼻をかんで、ゴミ箱に捨てた。
「・・・ごめん」
「倫也。あたし、しないっていったわよね」
「いった」
「どうして、こんなことするのよ」
「だってさ、英梨々。ここはそういうことをする場所だし・・・誘われていると思った」
英梨々がマクラをもって、俺に投げつけた。さらにもう一つの枕で、俺を叩いてくる。ヒステリックだった。
「バカッ!そんなつもりじゃないのに!信用してたのに!」
「だから、ごめんって」
「もういい」
俺は頭をポリポリとかく。俺は英梨々にひどいことをしたかもしれないけど、英梨々だってずいぶんと子供っぽいことをしている。俺たちは年頃の男で、恋人なはずだ。キスだってなんどかしている。そろそろそういうタイミングだって思っていた。俺が間違っていたのだろうか。
流れている演歌が状況にぜんぜん合わない。夏なのに冬景色を歌っている。
「今日はね。倫也。できないの。生理なのよ。だからお風呂も入りたくないし」
「・・・そっか。そりゃあ、悪かったな」
女の事情もある。そもそも生理だとなぜできないか俺はよくわかっていない。血がずっとでているのだろうか?女性の身体がどうなっていて、どんな問題があるのかを、保健体育の教科書程度のことしか知らなかった。
英梨々に申し訳ないと思いながら、どうにもこうにも収まらない。しょうがないのでトイレに行こう。
「ごめん。ちょっとトイレいって反省してくる」
俺はベッドから立ち上がった。裸にバスローブ姿である。自分でも膨らんでいるのがわかる。こればかりは自分の心ではどうしようもない。「ダメだってよ」「そうですか」みたいにはならない。俺は女性の身体について疎かったが、英梨々だって男性の身体に疎いと思う。もちろん責められないけど・・・
「ま・・・まちなさいよ。倫也」
そういいながら、英梨々が俺のバスローブの後ろを引っ張った。振り返ると、英梨々はペタンと正座を崩して座っていた。顔は耳まで真っ赤で下を向いている。目元のまつ毛がまだ少し濡れていた。
「倫也。そこに寝なさいよ」
「なんだよ?」 つい、乱暴な口調になってしまった。なんでこんなにイライラするのだろう。頭がむしゃくしゃする。
「いいから、寝て・・・よ・・・」 英梨々の声が消え入るように細い。
俺はベッドに戻って仰向けに横になった。英梨々がブランケットをかけた。俺の左側に英梨々がいる。いつも英梨々は俺の右側にいる。なぜかと言うと、手をつなぐときに英梨々は左手で手をつなぎたがるからだ。それが暗黙の了解だった。英梨々の右手はペンダコがあって、それを気にしていた。
「これから、することは忘れなさいよね」
「何が・・・」
そういうと英梨々はブランケットの中に潜っていった。
※ ※ ※
英梨々の指は細くて、そして、冷たかった。俺のよりはずっと冷たい。その手の感触は優しかった。俺はすぐにそんなバカなことをはやめさせようとしたけれど、何も抵抗することができなかった。そして、それは唐突のおとずれ、あっという間に絶頂を迎えてしまった。
自分でもこんなに早く達してしまったことに驚いた。気持ちがいいと思う間もなかった気がする。
バスローブとブランケットが汚れたかもしれない。英梨々の手は大丈夫だろうか。
英梨々はブランケットから顔を出すと、何も言わずに天井を見ている。
俺は横になって、英梨々の方をみた。まだ触りたかった。興奮は収まったようで収まっていない気がする。自分でもよくわからない。ただ、英梨々は満足気な顔をしていた。今はそれで十分な気がした。
「英梨々・・・」と俺は声をかけた。
英梨々は俺の方に体を向けた。まっすぐと俺を見つめている。サファイヤブルーの瞳に吸い込まれそうだ。大きな目で、少し濡れた長いまつげ。金色の髪が乱れている。
「今日は、これで我慢しなさいよねっ」
「ああ。ありがとう。英梨々」
「別に、お礼なんていらないわよ。あたしも悪かったわよ。倫也をバカにしてた」
「バカにしてたのかよ・・・」
「ううん。ごめん。信用してた。倫也はそんなことをしないって。でもちゃんと男の子なのよね」
「当たり前だろ」
「ふふっ」と英梨々が笑った。
部屋の音楽が演歌のままだった。ズンコド節が流れ始めた。俺と英梨々はそれに気が付いて、ベッドで横になって見つめ合ったまま、笑ってしまった。
はにかんだ笑顔に八重歯が見える。
笑うのが収まってから、どちらともなく口を近づけてキスをした。甘い香りに包まれる。
それから俺と英梨々は、残りの時間を何もせずに、ベッド上でただ何もしない時間を過ごした。
(了)
ふぅ・・・